裸のままコーヒーを飲んでしばらくしたときだった。
 体はだるいしゆっくりしたいのに、なぜかしたくてたまらない。
「はぁ……」
 コーヒーを飲んだのは間違いだったかもしれない。
 無駄に目が冴える。
 そして俺は、あることを思い出した。
 間接的に、自分の体にも媚薬が入ってしまっているかもしれないということ。
 正直なところ、精液で洗い流せるわけがない。
 というより、少し拭い取ってやったくらいのものだろう。
 
 なんとなく精神的なもんで、いつもより感じてるんだと思ったし、悠堵にもそう思わせてしまった。
 勝手に思わせておけばいいんだけど、妙な罪悪感を覚える。
 それより、とにかくしたいし、その理由を勘違いされたくはない。
 もちろん、精神的なものもあるとは思うけど。
「……薬、効いてたかも」
「んー?」
「慎之介が使われてたやつ。俺も間接的に効いてる気がする」
「ああ……だからあれだけ感じたって?」
「そう」
 悠堵は、小さくため息を漏らした。
「……がっかりした?」
 そう尋ねる俺を見て首を振る。
「別に。外でしてた時は忘れてたけど、うちに来てからはその可能性も考えてた」
「ふぅん……」
「結構、乱れまくってたし。それで? わざわざ言い訳?」
「そんなんじゃねぇけど。そうじゃなくて……」
 したい。
 言うより早く、悠堵をベッドに押し倒す。
「悠堵……お前、さっきもっかい抱いていいか聞いたよな?」
 もう一度、悠堵のモノに触れようとしたところで、逆に押し倒し返された。
「なに……」
「それはこっちのセリフ。なに? したいんだ?」
「いいから、早く……」
「お前ってときどき、めちゃくちゃエロいよな」
「薬が効いてるだけ。まだヤれんだろ。とっととやれよ。やんねぇなら、別の誰か呼ぶ」
 ついそう告げてしまうが、どうやら気に食わなかったらしい。
 少し冷めた目で俺を見下ろす。
 それでも、やる気はあるんだろう。
 悠堵はすべて服を脱いだ後、すでに勃起したモノを俺に押し当てた。
「あ……」
 期待しているせいか、お互いのが触れ合っただけで体がゾクリと震え上がる。
 両方の手首を悠堵が掴んで、顔の横へと押さえつけられる。
 悠堵に見下ろされるのは嫌いじゃない。
 慣れなくて、興奮する。
 薬が入っているせいで、余計にそう感じるのかもしれないけど。
 こいつの顔は好みだ。
 体も、声も。
 まあタイプじゃなきゃ、そもそもこんな関係にはなってない。

 もうなんでもいいけど、早くしたい。
 足を開いて、膝を立てて、腰を浮かせる。
 まだ、ちゃんと事後処理していないせいで、2回も中出しされた精液が入ったまま。
 すぐにでも、一気に入れてくれていい。
 つーか、入れられたい。
 そう思うのに、悠堵は俺の上で腰を振って、俺のと擦り合わせるだけ。
「ふぅ……はぁ……ふざけんな……」
 熱くて硬いので撫でられて、すごく感じるけど、もちろん欲しいのはそれじゃない。
 むかつく。
「はぁ……はぁっ……ん……んぅ……焦らしてんじゃねぇ……!」
「さっきさ……本当はどんだけイッてた? 体すっげぇビクつかせて、潮吹きまでして」
「いいから、とっとと……ん……はぁっ、あっ……んん!」
「腰くねらせまくってんな」
「はやく……んっ……いれろって……はぁっ、はや……く……あっ……んんっ……」
「ナツ……イきそうになってる?」
 イきそう。
 むかつく。
 ああでももうなんでもいい。
「はぁっ……あっ……んっ……んっ! ああっ……んっ、んぅんんんっ!」

 些細な刺激で体がビクついて、射精してしまう。
 入れられてもいないのに。
 別に、入れられてイくのが普通とか思ってるわけじゃないけど。
 こんな最悪のタイミングで、悠堵は容赦なく性器を押し入れる。
「ああっ! あっ! くぅっ……あぁああっ!」
 イッたばっかりなのに。
 まだ体が全然落ち着いてないのに。
「やぁっ、あっ……ああっ! んっ! んぅんん!」
 体のどこにどう力を入れればいいのかわからなくて、気づくと少し漏らしていた。
「ふっ……続けるよ?」
 続ける。
 その言葉をなんとか理解する。
 待ってって、言わないと。
 こんな状態で、続けるなんて。
 奥まで入り込んだ肉棒で、ナカを掻き回されていく。
「あっ、あっ! あんっ! んぅっ! はぁっ……あんっ、んっ! あああっ!」
「すっげぇ声出てんなぁ。気持ちいい?」
 気持ちいい。
 むかつく。
 ああ、でも……。
「ひぁあっ! あっ、あっ……あぁあっ! あぁあああっ!」

 また体がビクついた。
 さっきのとは違う。
 射精したばっかだし、ナカでイッてしまう。
 やっと腰を止めた悠堵が、俺を見下ろしながらニヤリと笑った。
 むかつくけど、反抗する気力はない。
「別の誰か呼ぶって? こんなソッコー射精して、失禁して、ナカイキする姿、俺以外にも、見せれんだ?」
「見せねぇよ……」
「そんじゃあ、ハメる側のつもりだった?」
 そんなことまでとくに考えていない。
「どっちでもいいけど、誰にされてもこんな感じるほど、淫乱な体じゃねぇし」
「でも、薬入ってんだろ?」
「入っててもだっての。やりたいとは思うけど、こんなに……感じない……」
 悠堵だから。
 そういちいち告げるつもりはないけど、こいつはわかってんだろう。
 あえて突っ込まれることもなかった。
 少し腰を浮かすと、またナカで悠堵のが擦れて、体がゾクゾクした。
「ん……んぅ……あっ……ん……」
 やっと悠堵が俺の手首から手を離してくれる。
 悠堵の首に手を回して、なんとか起き上がる俺を、悠堵が抱き寄せた。
「悠堵……」
「なに?」
「もう1回……」
「1回で終われんの?」
「さぁ……。とりあえず……もっかい……お前、イッてねぇんだろ」
 抱き着いたまま、上に乗っかるようにして腰を振ろうとしたけれど、うまく力が入らない。
 そのことに気づいたのか、悠堵が俺の腰を掴んで揺さぶってくれる。
「ひぁっ……あっ、あっ……ああっ、ん……!」
「俺がイクまで付き合ってくれる気?」
「はぁっ、あっ……違ぇよ。あっ……俺が、満足するまで……ん、んんっ……やめんじゃねぇ」
「はいはい」

 いつになったら、俺は満足するんだろう。
 薬の効果が切れたら?
 疲れたら?
 もうイッたってのに。
 それでも、悠堵としていたい。
「悠堵……」
 もしかしたら、これが好きってことなのかもしれない。
 ふと、そんなことを思いながら、悠堵にされるがまま、何度も貫かれるのだった。