どうしよう。
 なんか体熱いし。
 落ち着けないと。
 一回トイレで抜いてくる?
 でも、そんなこと学校でするのもどうかと思うし。
 というか、昼休み中に着替えないといけないよな。
 まだ体操服。
 僕は東琶に買って来てもらったパンを食べ、ベッドから降りる。
「あれ、もう大丈夫なの?」
 保健室の先生。
 椿先生も一緒だ。
 この二人、もしかして付き合ってるのかな。
 ご飯、一緒に食べてるし。
 って、それだけだけど。
 あんまり先生が二人で食事してる姿って見たことないから。
「もう、戻ります」
「そう。また体調悪くなったらいつでもおいでね」
 初めて来たけれど、保健の先生って結構優しいんだな。



 なんだかこんな昼休みに一人だけ体操服で、みんなの視線が痛い。
 これも自意識過剰かもしれないけれど。
 もしかしたら目立ってるんじゃないかなって。
 とにかく戻ろう。
 そう思ったのに、僕の目の前に人。
 思わずぶつかりそうになったが、慌てて足を止める。
 邪魔にならないよう、道譲らなきゃ。
「どうして、体操服なの?」
 誰だろう、この人。
 顔をあげて確認してみるがやっぱり知らない人だった。
「えっと……4時限目が体育の授業で、ちょっと保健室にいたので……」
 素直にそう答えたのに。
 腕を取られる。
 痛い。
 なに。
「……素肌に着てるんだ? ここ」
 腕を取っていないほうの手が、僕の胸元をそっと撫でる。
 いきなりのことで頭が働かない。
「少し硬くしてるよねぇ」
 さっきまで、エッチなこと考えてたせいか。
 下が治まったから大丈夫だって思ってたのに。
 というか、そんなのジロジロ見なきゃわからないはずだよね。
 もしかして、かまかけられた?
 なんにしろ、触られて確認されては逃れようがない。
 でもほら。
 少し寒いとそこが硬くなるとか、あるじゃんか。
 そういう感じ。
 そう言い訳したいのに、服の上から撫でていた手が、中に入り込む。
「えっ……」
 後ずさりをすると、なにかにぶつかった。
 振り返って確認すると、また知らない人。

「なにしてんの?」
「いや、かわいい子見つけて。こんな時間に体操服で、乳首硬くしてんの。ね?」
 恥ずかしくて顔が熱くなる。
 同意を求められ、どうにも出来ずに顔を逸らす。
「そうなの?」
 後ろの人が確認するように体操着の中へと手を突っ込んできた。
 両方の胸を撫でられ、突起を押しつぶされる。
「んっ!」
「んー……ホント、ちょっと硬いねぇ」
 指先で転がされ、さっきまでの感覚がよみがえってくる。
 また体、熱くなってきた。
 どうしよう。
「はぁっ……っんっ」
「気持ちいいの? すごい、どんどん硬くなってきてる」
「見せてよ」
 僕に言ってるのかわからないけれど、後ろの人が体操着を捲る。
「かわいー。ぷっくり膨らんじゃって。なに。感じてるの?」
 感じてる?
 僕が?
 ココで?
「っ……んっ」
 違うって言いたいのに、声がうまく出ない。
 前の人が、確認するみたいに突起を指先で撫でると、ゾクゾクして体が震えた。
「はぁっ……っ」
「俺も、もっと触らせて」
 後ろの人が、片腕で俺を抱きしめて、もう片方の手が、ズボンの上から股間に触れる。
「っ……!!」
 嘘。
 そんなとこ。
「こっちも、硬くなってきてるね」
 耳元で、そう教え込まれ、恥ずかしさから涙が溢れた。
「っ……ゃ……っ」
 何度も、布越しに擦られ足に力が入らなくなる。
 それでも、後ろの人が支えているせいで座り込むことも出来ない。
「んっ……んっ」
「見ていい?」
 見るって。
 そんな。
「っ……だ……めっ」
「駄目なの?」
 そう言いつつも、前にいた人がしゃがみこんで、俺のズボンと下着を下ろしてしまう。
「どうして駄目なんて言ったの? 恥ずかしい? すごくかわいいのに」
 勃ちあがってしまっている僕の先端を指でゆるゆると撫でられる。
 直接的な刺激に体が大きく撥ねあがった。
「あっっ」
 声。
 抑えないと。
 そう思った矢先、後ろの人に両腕を取られていた。
「すごい君、かわいい声出すねぇ」
「それに、すごいココ、濡れてる」
 指が。
 ぬるぬるって、先端を滑っていく。
 そのたびに、その刺激のせいでまた溢れてくる。
「んぅっ…やっ……ぁっあっ」
「気持ちいいの?」
 東琶に撫でられたのをつい頭で思い出していた。
 円を描くように撫でられて、たまらなくて。
「っやぁっ…あっ…っそこっ」
[ん、ココ大好きなんだ? Hな液、たくさん出てくるねぇ]
 すごい感じる。
 ぬるぬるしてる。
「ひぁっ…あっ……とまんなぃ……っ」
「ね。すごい出てくる」
「ぬるぬるしてて、ホント気持ち良さそう」
 気持ちいい。
 人が横を通るのが分かった。
 最悪だ。
 見て見ぬフリされてる。
 知り合いだったらどうしよう。
 そう思うのに、何度も指で撫でられて、なかなか体が落ち着かない。

「ひぁっ……やっ」
「じゃあそろそろ擦ってあげようか」
 後ろから、手が伸び、言葉通り竿を擦り上げられる。
 擦られて、先端を撫でられて。
 両方。
 東琶にもされた。
 東琶の顔が浮かぶ。
「はぁっんっあっ……東琶ぁっ…ゃあっ…ぁあっ」
「東琶? 彼氏?」
「君かわいいもんねー。じゃあ内緒かな、これ。いいよ。イっちゃっても」
 いいよなんて言っても、本当に出していいとは思えない。
 目の前の人にかかるかもしれないし。
 わからないのに、どんどんと射精感が高まっていく。
「ゃうっ…あっ……ぃくっ…っやぁっ」
「いくのやなの? どうして?」
「ぁあっ……だっめっ…ぁんっ…あっ……やあっ」
「駄目じゃないよ。イイから。イってごらん。見ててあげる」
 見られてるのに。
 こんな廊下で。
 この二人だけじゃない。
 向かい側の校舎からも見えているかもしれないし、いつだれが来てもおかしくない。
 実際、さっき通ったと思うし。
 声だって、聞かれてそう。
 近くのトイレに誰か入ってたら。
 誰かしらに見られているような気がして、恥ずかしくてたまらない。
「ぁあっんっ…もぉっ…やぁっやっ、出ちゃうっ」
「いいよ」
 東琶のことが頭から離れない。
「やぁあっ…ぃくっ…あっ…東琶ぁっ……やぁっあぁああっっ!」  

 本当に、イっちゃった。
 知らない人たちなのに。
 こんな廊下で。

「あの、お二人さんちょっといいですか?」
 誰。
 ぐったりとしてしまう俺の背後からかかる声。
「……悠真さん、どうして」
 悠真さん?
 中学時代の同級生だ。
 僕は関わりないけれど、東琶が確か仲がいい。
 東琶がそういえば、慎之介くんとできてるって言ってたっけ。
「いや、あなたたち夢中で気付かなかったかもしれませんが、普通にトイレ入って、ちょっと電話して、今でてきたとこなんですけどね」
 知らないうちに見られてたかと思うと恥ずかしくてたまらない。
「まさか、悠真さん、ここで止めろとか言います?」
「まあ、そりゃキツいですよね」
 この二人の方が先輩だからか、悠真さんは敬語。
 でも先輩たちも、悠真さん相手に敬語を使っていた。

 キツいって?
 ここで止めるのが?
 じゃあ、なに。
 どうすればいいの。
 最後までするの?
 それとも、僕も手ですれば許される?

「悠真さん、話わかってんなら、なんで止めに入ってるんすか」
「んー。まあ普段なら見て見ぬフリしますけど。東琶って聞こえちゃったらねぇ。ちょっと俺じゃ判断付かないんで、東琶に相談してみたわけなんすけど」
 東琶に相談?
「その東琶くんは、どう言ってくれました?」
「ちょっとだけ、時間稼いどいてって」
 時間稼ぎ?
 じゃあ、悠真さんは今、時間稼ぎでこの人たちと話してるってこと?  

 僕や、先輩二人がなにか言う前に、勢いよく走りこんでくる生徒。
 三人。
 東琶と、透くんと慎之介くんだ。
 嘘だ。
 こんな三人に見られるなんて、恥ずかしい。
 
 先輩たちの手が緩んだすきに、とりあえずズボンだけ履き直した。
「あ、東琶。ちゃぁんと慎、連れてきてくれたんだ? ありがとうー」
 慎?
 慎之介くんのことか。
 まるで無邪気な子供みたいに慎之介くんの方へと悠真さんがかけよる。
「ああ。悠真、連絡と時間稼ぎ、助かった」
「どういたしまして」
 時間稼ぎの代償として、慎之介くんを……?
 なんだか慎之介くんに足を運ばせてしまって申し訳ない。

「君が噂の東琶くん?」
「……そうです」
 例え彼氏だとしても、この場合、やすやすと手を出されてしまった僕が悪いと思うし、なにも言えない気がする。
 しかも、僕だけイっちゃった。
 さっき悠真さんや二人が言ったようにここで止めるのはキツいよね……。
「先輩ですよね?」
「そう。俺たちだって、そう事を荒立てたくはない。基本、君たちを敵にしたくはないけれど、そっちだって、俺たち二年を敵に回す気はないだろう?」
「この子、先に俺たちの手で、イっちゃってるんだよねぇ。俺たちも同等レベルの楽しみ、いただきたいんだけど」
 向こうが弱い相手ならば、こんな道理、聞き入れはしない。
 けれど、先輩だし。

「透。……半年くらいのお願い」
「嘘でも、一生のお願いって言えよ」
 東琶が、透くんになにかをお願いするの?
「じゃあ、期限は無しとして。友達として。友達を救ってってのは?」
「……まあ、東琶に言われなくても、同じこと考えてたけどね」
 なに。
 透くんがこちらに来てくれる。
「先輩。……俺じゃ駄目ですか? 代わり」
 代わり?
 なに言ってんだよ、透くん。
「なんでっ。東琶、なんでそんなこと透くんに頼むんだよ」
「響くん。東琶に言われたからじゃないよ。俺が、響くんの代わりになりたいから」
「でもっ……」
 そりゃ、透くんはめちゃくちゃかわいいし、僕なんかとは比べ物にならない。
 役不足なはずないけれど。
「響くんみたいに初々しさは出せないかもしれませんけど」
「響くんっての? すごく上玉だってわかってるよね。透くん」
 嘘だ。
 そう言って、透くんにプレッシャー与えているだけだ。
 いまさら、僕がやりますって言っても、透くんの方があきらかにレベル高いわけだし、聞き入れてもらえなそうだよな。

「それに見合ったご奉仕、しますから」
「……それならまあ」
 まるで、透くんと僕を取り替えるみたいにして、僕は東琶に腕を引かれる。
 透くんは先輩たちの間へ。

 こんなのいいはずがない。
「響くん。気にしないで」
「そんなこと、言われてもっ」
「いいから。東琶。早く行きなって」
「了解」
 了解、じゃないよ。
 東琶があんなこと言い出すからいけないんだ。
 透くんは、東琶に言われたからじゃないって言ってたけれど。
 おかしいよ、こんなの。

「先輩、場所変えません?」
 透くんがそう言って、二人の先輩と去っていく後ろ姿をただ眺めることしか出来なかった。