「あのさ。最後まではやらないにしろ、とりあえずそれ、抜いてやろうか」
 それ。
 中途半端な状態になってしまっている僕の体だ。
「っ……いいよ、そんなの」
「いいんだ?」
 いいってどっち?
「違っ。自分で……するからっ」
「桜井には触らせて。俺は駄目?」
 いつもなら駄目だと答えていたはずだけれど、好きだと言われた後だ。
 一瞬、答えに戸惑ってしまう。

 その隙を狙ってか、横向きに座っていた僕の正面から、東琶がそっと股間に触れる。
 払いのけることが出来なかった。  

「大丈夫?」
 大丈夫かって。
 わからない。
「や……め」
 やばい、声うまく出ない。
 ズボンの上から、東琶がゆっくりと撫で回す。
「んっ! ぅンっ」
 こんなの。
 駄目だ。
 東琶の手つきは見ているだけでいやらしい。
「東……琶っ…」
「……やべぇって。名前呼ぶとか。マジで止めれなくなるし」
「ゃっ…」
「わかったって。最後まではしねぇから」
 途中まではするってこと?  

 桜井くんに下ろしかけられていたズボンのチャックを東琶が下ろし切ってしまい、ボタンを外す。
 
 嘘だ。
 頭が混乱して、抵抗しなきゃいけないことなのか一瞬わからなくなった。
 じかに取り出され、やっとヤバイと気付くがもう遅い。
「やめ……っ」
「熱……。興奮してる?」
 してないなんて言えるはずがない。
 硬くなったそこを手に取られているわけだし。

 なに僕、興奮とか。
「ンっ……っ離し……っ」
「すっげぇ……俺が触っただけで、おっきくなってさ。溢れてきてるし」
 やだ。
 溢れてきてるとか。
 恥ずかしいのに、それを示すみたく東琶が先端を指でつつく。
「あっ……やっ」
「お前って、こんなに先走り出しちゃうんだ? ぬるぬるしてる」
 東琶の指先が、円を描くよう亀頭を撫で、体がビクついた。
 ゆるゆるとした速度で。
 だけれど、すごく強く感じてしまう。
「ゃあっ! あっ……あっ…んぅっ!!」
「気持ちイイ?」
「東……琶ぁっ…そこ、やぁあっ」
「お前、ココ弱いんだ? 竿もちゃんと擦ってやるから」
 そう言って、亀頭を撫でたままもう片方の手が竿を擦り上げていく。
「あっ……あっ、やっ。んぅ…っ! だめ…東琶っ…だめ……っ」
「どうして」
「ぁんんっ……もぉ……やっだ…っ」
「ホント、すっげぇ音。お前エロいよ。それにそんな声出してさ。手でやってるだけだぜ? Hしたら声、枯れんじゃね?」
 声。
 息止めないと出ちゃうし。
 苦しい。
 学校なのに。
 東琶はしゃがみこんで僕のをじっくり見てるし。
「東琶ぁっ……やっだ……あっ……もうっ…やっ」
「……イきそ? はやくね?」
「っんぅっ…やめ…てよぉっ……ぁっあっ…僕っ…」
 イきそうだってわかってるんだよね?
けれど、全然止めてくれそうにない。
 どころか、さっきよりも強く擦りあげられ、亀頭から溢れる液を先端に塗りたくられる。
「やぁっ……もぉ離しっ……」
言わないと、止めてくれない?
恥ずかしい。
けど、このままじゃ本当にやばいし。
東琶の前でイクなんて、絶対バカにされるし。
 イクくらいなら、今、ちゃんと言って止めてもらったほうがまだマシ…?
「っ……東琶ぁっ…あっ、もう…っ出ちゃう…からっ…っ」
「……天然でその態度? やっば。ホントお前かわいいな」
「あっ…聞いてっ」
「聞いてるよ?」
 止めてくれないの?
 ……こんな状態で止めてくれるくらいなら、はじめから手出してない?
「やぁっ…あっ…ぃくっ…やっ…東琶ぁっ。もうっ」

我慢できない。  
すっごい我慢してるのに。
「はいはい、聞いてるから。そんな泣くなって。どうしたいの、お前。汚したくねぇの? ……お前のならいいよ」
 ぼやける視界の中、東琶の顔が僕のに近づくのがわかった。
 なに。
 東琶の伸ばした舌先が、僕の先端に触れた。
 嘘。
 ぺロリとひと甞めされた直後、咥えこまれてしまう。
「ぁあっ、東琶ぁっ…!」
「んー?」
 熱い。
 僕のに舌が絡まって、吸いつかれる。
 手で、ぎゅっぎゅって擦られて、体が何度もびくついた。
「やぁあっ、離しっ…あっイクっ…ん、いっちゃうっ」
 髪を掴んで引き剥がそうとしても無理だった。
 東琶の口ん中、出しちゃうの?
 そんなこと、出来ない。
 そう思うのとは裏腹に体は言うこと聞いてくれないし。
「東琶ぁっ…も、出来な…っ…ぁあっ…ごめっなさっ…ぁあっ…あぁああっっ!!」

 やだ、もう。
 東琶の口ん中で、イってしまう。
 まだ出てるし。
「もうっ…離しっ」
 飲まれてる?
「くっ、んっ、やっ…」
 無理やり引き剥がすと、東琶の顔に少し僕の出したのがかかってしまっていた。

「お前、飲んでる最中に抜くなって。こぼれちまったし、かかったし」
「っ……ごめ……」
「まあ別にいいんだけど。ってかなんでお前、イクとき謝んの?」
 なんでって。
「……東琶ん中……出しちゃうって、思って……」
「中出しみたいな言い方すんなって」
「……イっちゃって……僕のこと、バカにしてる?」
「してねぇよ。意味わかんねぇし。元々抜いてやるって言ってやりだしただろうが。そんなに俺の前でイったの気になるってんなら、お前もする?」
 僕がするって、どういう……。
 東琶が、自分の股間を指さして示す。
 見ると、ズボンの中で勃ちあがっているのがわかった。

 僕が東琶をイかせる?
「っ……そんなの」
「はいはい、出来ると思ってねぇからいいですよ」
「なんだよ、それ」
 やれって言われても困るけれど。

 僕だけってのも、なんだか申し訳ない気がしないでもない。
 というか。
「どうして……東琶、その、勃ってんの?」
「はあ? お前見たから勃起してんの」
「なんで……」
「……なんでって。俺、お前のこと犯したいって思ってる人間なんだけど」
 ……僕なんかで興奮したってことだよね。
 犯したいとか。
 僕でいいんだ?
 ……体だけかもしれないけれど、僕は東琶にとってそういう対象なんだと改めて実感する。

「もう、帰るよ。あの……誰にも……言わないよね?」
「お前、気にしすぎだし。まあいいけど。とりあえずは」
 とりあえずって。  

 なんだか力が入らなかったけれど、なんとか立ち上がる。
 東琶の視線から逃れるよう背を向けた。

「あのさ。一回、抱いていい?」
「っ……抱くって」
「ああ、深い意味じゃなくて。言葉通り。後ろから抱きしめるだけでいいから。……桜井だって、よろめいたお前のこと抱きかかえてたし」
「それは……助けてくれたからだし。そもそも許可得てするもんじゃ……」
「勝手にやるとお前、払いのけるだろ」
 ……そうかもしれないけれど。
「……駄目って言ったら?」
「しねぇよ」
 ……別に駄目ってわけじゃないよな。
「駄目なの?」
「駄目じゃないけどっ……なんで」
 その答えを聞く前に、後ろからぎゅっと抱きしめられた。
 きついくらいに。

「すごくね? 今まで俺がちょっとお前の手に触れようとしただけで払いのけられててさ。それが今、こうやって抱きしめてんの」
 耳元で話されると、少しくすぐったいような感じがした。
 東琶の、熱いのが僕に当たってる。
 まだ、興奮してるんだ……?

 なんだか心臓がバクバクして苦しくなってきた。
「……マジでこのままやりてぇかも」
「っそれはっ」
「待つって」
 そうは言われても。
 ……待たれて、どうすればいいのか。
「よく……まだわからないよ」
「だから、ゆっくり考えて」  

 中学のときからずっと見てくれてたんだよね。
 ってことは、結構すでに待っててくれて。
 これからだって。
 本当にずっと待っててくれるんじゃって気がしてきた。
 
 頷くと、やっと体を開放してくれる。
「よし。帰るぞ」
 いつもみたいに、またバシっと体を叩く。
 いままで通りの対応。
 少しほっとする。
 けれど、僕の中では確実に、東琶の存在は違うものに変わっていた。