急いで保健室から出ると、すぐ近くのトイレに駆け込む。
 幸い、そこには誰もいない。
 個室で、俺は勃起してしまっていた性器を取り出した。


 これまで何度も、佐々を抱く想像はしてきた。
 俺の下で乱れてくれて、気持ちよくなってくれて、喘いでくれる。
 でも、一度だって、抱かれる想像はしてこなかった。
 佐々が言う通り、俺はこれまで一方向からしか物事を捉えていなかったんだろう。
 相手の視点に立つこともしてこなかった。

 上を向かされて口を塞がれることが、あんなに苦しいんだってことすらわかってなくて。
 それを佐々に、たしなめるように教えられた瞬間、なぜだかすごく興奮した。
 キスで興奮していたのもあると思うけど、それだけじゃない。
 大人になってから、あんな風に誰かに注意されるなんてことはなかったし。
 その注意をしてくれる相手が佐々で。
 それもたぶん佐々が思う理想に近づくための注意だろう。
 どうでもいい相手だったら、きっと注意もしない。
 だから、俺は佐々の指導みたいな注意に、愛情を感じているのかもしれない。
「ん……」
 大きくなったまま、全然おさまってくれないモノをゆっくりと手で擦り上げる。
「はぁ……」
 佐々は、たぶん気付いてた。
 俺が勃起してること。
 気付いてないフリしてくれたけど、気付くに決まってる。
『ねぇ、なんで大きくしてるの?』
 そう俺に尋ねる佐々を想像するだけで、また一段と質量が増した気がした。
「はぁ……は……」
 学校なのに。
 キスしかしてないのに。
 こんなことしてないで、治まるのを待った方が絶対いいのに。
『……こんなに上向いて長くキスすんの、苦しいでしょ』
『舌も……出すの辛かったよね』
 そう新しい気づきを与えてくれながら、俺のこと理解してくれる佐々に、ものすごく感情が揺さぶられて、興奮してしまったんだと思う。
 たしなめられるのって、どうしてこんなに気持ちいいんだろう。
 キスという性的なことをしながらだったから、変な勘違いを起こしているのかもしれない。
 勘違いかもしれないけど、もっと……もっと、佐々が指導してくれたらいいのに、なんて思ってしまう。
『学校で勃起なんかさせたらダメだよ』
『……しかたないから、抜こっか』
 頭の中で、佐々を想像する。
 駄目だって言いながら、それでも甘やかすみたいに俺のに手を添えて――
「……っ! ん……」
 思い浮かべた瞬間、電流が走ったみたいに身体がビクついて、声が漏れそうになってしまう。
「はぁ……う……」
『声、殺さないで。もっと俺に聞かせてよ』
 こんなことを言う佐々は俺の勝手な想像でしかない。
 これまで考えてもみなかったのに、なぜかいまは考えてしまうし、ものすごく興奮して止まらない。
 もっと想像したい気持ちと、どうにか抑えなくちゃならない気持ちが入り混じる。
『とりあえず……一回出しとこっか。我慢できないでしょ』
「ん……はぁ……」
 できない。
 我慢なんてできるはずない。
『すごいね……こんなおっきくなっちゃうんだ? いいよ。イッて。ほら、俺が擦ってあげてるんだから、イッてよ』
「ん……ぅん……はぁ……ん……くっ……ん……はぁ、はぁ……んんっ!!」

 とうとう想像上の佐々に促されるようにして、出してしまう。
 羞恥心よりも快感が勝って、頭が真っ白になりかけていた。


 佐々に抱かれるとして、俺はどんな準備をすればいいんだろう。