「だからね?」
 だからねって…言われましてもっ。
「なっ…」
 ズボンと下着を脱がされていく。
 こんな風にされたら、やりたいから適当にうまいこと口で言ったみたいじゃないか。

 悠真は俺の前の床に、座り込んで。
 俺はいすの上。
「足、あげてよ」
 悠真が、俺の足を無理やり、椅子の上にあげるもんだから、開脚状態。
「…ばかっ…だれか来たら…っ」
「別に、いいじゃん」
 あっさりそう言って、俺の股間のモノに舌を這わす。
「んっ…んぅ…っ」
「大丈夫だって。そうそう人なんてこないし」
 腰が、だんだんと前へとずり落ちていく感じ。
 悠真へと寄ってしまう。
 悠真は、あろうことか、後ろの蕾にまで、舌を這わし、ゆっくりと挿入する。
「んっ…やっ…あっやめっ…」
 何度も出入りされて、頭がおかしくなってくる。
 うまく考えられない。
「はぁっ…やっ…ぅんっ…」
 わざとなのか、なんなのか、いやに音が響く。
 ぬめった感触に、体がビクついた。
 悠真の口が離れるのが名残惜しかった。

「いい…? 入れても」
 なんで、そんなこと聞くんだよ…。
 立ち膝で、悠真は自分のモノを俺のソコへ押し当てる。
「や…っ…!!おっきぃ…っ」
「慎ってば、そんなこと口に出して言わないでよー」
 笑ってそう言われ、自分が馬鹿なことを、口に出してたと気づく。

 昨日、痴漢のだって、ナツさんのだって、兄貴のだって。
 暗かったし、まともに見ちゃいなかった。
 痴漢とは最後までしていないし、ナツさんは後ろからでよくわからなかった。
 それに、薬のせいもあってか、そんなとこまで気が回らない。
 今、物理的に、ソレがソコに入ると考えると、どうも、身構えてしまう。

「っ…そんなん、入んねぇよ…っ」
「えー? 知り合いとか兄貴とかとやったんでしょ? そいつらが、そんなに小さかった
とでも言う?」
「っそうじゃ…ないけど…っ」
「大丈夫だよー…。俺、優しいからぁ」
 俺の腰を悠真が引き寄せるもんだから、上体が変に下がっていた。
ゆっくり、中へと自身を押し込んでいく。
「ひぁっあっ…くっんっ」
 すごい圧迫感。
 理性があるせいなのか、ものすごく羞恥心にかられる。
「慎…力抜いて…」
「あぁっ…んっ…んぅんっ」
「どうしたのぉ…? もう慣れてるんでしょ? ちゃんと俺のことも受け入れてよー?」
 困ったように、まるで、小学生の我侭みたいな口調。

「やっ…やぁっ」
 別に、悠真が嫌いだからとかそんなんじゃない。
 ナツさんのときも、兄貴のときも。
 頭がうまく働いてなかったから。
 こんな風に、精神的になにか深く考えさせられることもなかったし、羞恥心だって薄か
ったんだと思う。
 悠真が俺の頬を撫でながら、ジっと俺を見て。
 ゆっくりと体を押し進めていく。
「ぁああっ…悠真ぁあっ…だめっ」
「大丈夫だからぁ」
 目を瞑ると、涙が頬を伝った。
「あんんっ…もぉっ、入んなっ」
「んー? ほんとぉ?」
 俺は、わけもわからずに、コクコクと頷いていた。
「ほんとかなぁ?」
 楽しそうにそう言って。
 俺の足を開かせるように、太ももを強く押さえつけられる。
「なっ!」
「見える? 慎、体柔らかいもんねー」
 わざと、俺にソコが見えるようにしながら、ゆっくりとまた挿入を再開させる。
「ぁっあっ…やめっ」
「ほらぁ。まだ入るでしょ…? 嘘つきだねぇ、慎」
 少し企むような笑みを見せて、全部、悠真が奥へと押し込んでいった。
「はぁっあっ…ぁあ…っ」
「どんな感じ…? 全部入っちゃった。入らないと思ったのにねー?」
 あてつけのようにそう言いながら、俺の股間のモノを指先でなぞる。
「んぅっ…あぁあっ」
 体中がゾクゾクしていた。
「へぇえ…。後ろに入ってると、前も敏感になっちゃう?」
 楽しそうに亀頭を撫でて、溢れている液をまるで塗りたくるみたいにされる。
「ぁあっ…んっ…やぁあっ…」
 体が大きくビクつく。
 変なこと、するからだ。
 こんなの、おかしいだろ?
 涙があふれて来る。
 後ろは奥に入り込んだまま動かさないで。
 敏感な亀頭の部分を何度も指が行き来する。
「あぁあっ…やめっ…あっ…やあっ」
「わかる? どんどん溢れてんの」
「やあっ…わかんなっ…」
 そう言ったあと、馬鹿だと思った。
 そんなこと言わなければよかったと思った。
 だからって、『わかる』なんて言えるわけないだろう?

「わかんないんだ?」
 ほら。案の定。
 本当はわかってるって。
 それがわかってるだろうに、わざと少し困った表情を見せる。
 こんなの、絶対作り物。演技だろう。

 悠真は俺の手を取って、俺の股間へと導く。
「ほらぁ。わかる?」
 わかってるから。
 悠真が力の入らない俺の手の指を持って、ヌメりを触らせる。
「んぅっ…」
「ね? ぬるぬるでしょ?」
 少し勝ち誇ったように、子供っぽくそう聞かれ、俺は恥ずかし過ぎて、顔を逸らした。


 そんな俺を見てなのか、クスって。
 あぁ…。
 いつもの楽しそうな笑いじゃなくて。
 いやらしい感じの笑い。
「慎…」
 声のトーンが変わる。
 駄目だってば。  この悠真に当たるとなんか、めちゃくちゃドキドキする。

 なんで、こんなにドキドキするんだよ。
 
 だって、いつもと違う。
 少し怖い感じもするから。
 恐怖心からドキドキしてんのか?
 それもあるけれど、この誘うような声が。
 変に感情を高ぶらせていく。

 顔を向けると、いつもとちょっと違う感じで。
 サドっぽい笑みで、俺を見つめる。
「かわいーね…。きゅぅきゅぅ締め付けてんの」
 低い声のトーンのままで、そう俺に教えながら、指先が俺の股間をそっと撫でる。
「んぅっ…」
「ほらね…。こうやって、俺が指を動かすたびに、ヒクつかせて、締め付けてくんだよ」
 俺に教え込んでから、悠真は俺の耳元で、
「動いて欲しい…?」
 たくらむような口調でそう聞く。
 いつもの子供っぽいのとはだいぶ違っていた。
「どういうのが好きかなぁ…? ガンガン突かれたい? それとも、掻き回されたい…?」
 耳に舌が這うだけで、ゾクリと背筋に電流のようなモノが走る。
「すごく、慎のコトわかるよ。体は素直だから…ね」
 悠真は、俺に軽く口付けしてから、腰をそっと小刻みに前後させる。
「ぁあっ…やぁっっ」
「どぉかなぁ? 感じる?」
「ひっあっ…やぅっ…だっめっぁあっ」
「だめなの? なーにが駄目か言ってくんないとねぇ」
 俺の言葉なんて、聞いてくれないで、奥まで入り込んだ肉棒で掻き回される。
「だめっ…あっだめぇっ…もぉっ」
「なに…?」
「ぁンっ…やぁあっ…やぁあああっ」
 俺は絶叫するように大きな声を出して、そのままイってしまっていた。


「早いなー…。駄目だよぉ、慎…」
 いつもと同じような台詞回しなのに。口調が誘うようにいやらしい低いトーンの声。
 すごく大人びて見える。
「俺のことも、イかせて…?」
 そう言うと、また、引き抜きかけたモノで奥を突く。
「ひぁっあっ」
「ピストンで感じるくらいには調教されてるわけ?」
 内壁が擦られる。
 前立腺を硬い部分がこするたびに、ものすごい甘い刺激が体中に響く。
「ぁあんっ…悠真ぁあっ…」
「かわいーねぇ。そんなに感じるんだ? もうすぐ駅、到着―…」
 楽しむような声。
 電車の速度がのろくなり、駅につく。
 俺らの降りる駅ではないし、誰か乗ってくる気配もないが、ドアが開かれると羞恥心に
かられる。
「んぅっ…んっ」
「我慢しちゃうの? 駅員さんがいるから、大声出しちゃうと来ちゃうかもしれないもん
ねぇ?」
 そう言いながらも、突き上げる速度を速めてくる。
「ひぁっんっ…んーっ…やっあっ…んーっ」
「いいよ…声出して。聞かせて?」
「やっんっ…んぅっ」
「うーん…」
 悠真は少し考え込みながらも、そのままの速度を維持していた。
「はぁっやっ…んっぁんっ」
「気持ちよさそーだねー…」
 そう言ったあとだった。
 いきなり、抜き去ってしまう。
「なっ…あっ…」
「やめて欲しくなかった…?」
 たくらむような口調。
 だって。そうだろう?
 なんでやめるわけ?

「ねぇ。俺、慎が好きなんだよ。だから、慎がしたくないならしないし」
 焦らしてるんだろう?
 俺から欲しがるの、待ってるだけじゃないの?
「今、やめたって俺はかまわないもん」
 かまわなって…そんな状態でやめれるわけ…?
 俺なんて1回イったにもかかわらず、やめれそうにないのに…。

「っ悠真…っ」
「なに?」
「…っしたい…」
「なにを?」
 意地悪だ。
 ずるい。
 だけれどもう駄目。
 俺の理性とか羞恥心は欲求に負けてしまっている。
「っ悠真ぁ…はやくっ」
「だからぁ、どうして欲しいの?」
「あっ…キてよぉっ…っ」
 涙で視界がぼやける。
 悠真が、愉しそうに笑ってるような気がした。
「欲しいんだ…?」
 また、悠真のモノが押し当てられる。
「んぅっ…」
「ね。入れて欲しい?」
 頷いてしまう自分が馬鹿だと思う。
 あんな風に擦られて、止めれるわけない。
 もう一度、イかせて欲しいとか思ってしまう。
「悠真…」
「かわいいねぇ。ごめんねぇ。焦らしちゃってぇ。かわいい慎が見たかったから♪」
 そう言い終えると、また中へ挿入させていく。
「ひっぁっんーっ」
「だからね…声、出して。かわいー慎を全部出してよ」
 
 このやりとりでどれくらいの時間がたったかなんて把握できなかった。
 だけれど、誰も乗り込まない駅を出発するくらいの時間は軽く過ぎていたのだろう。
 動き出す電車。
 あいかわらず、車両には俺らだけだと思う。

 腰を動かされると、またさっきの甘い痺れが体中を犯して理性を飛ばす。
「はぁっあんんっ…悠真ぁっ」
「そう…。やーとか、駄目とか言わないで…イイって言って?」
「ぁっあんっ…やぁんっ…ぃいっよぉっ」
「もっと欲しい…?」
「んっもっとっ…あっ…やんっ…ぁあっ」
「かわいすぎ…。ねぇ、中で出してもいい…?」
 体を重ねて耳元で、頼み込むようにそう俺に聞く。
「あっ…んっわかんなぁっ」
「わかんないの? でも、出されたことあるんだよね…。だから、俺もしちゃっていい?」
 もう、そんなこと考えてる余裕とかない。
「んっいい…からぁっあっもぉっ」
「そぉ? じゃあ、イっちゃうよ…?」
「あっあぁあっ…んっやぁあああっ」

 こんな電車の中で。
 3度もイかされて、中で出されて。
 俺って、変態じゃないの?
そう頭では思うけれど、気持ちよくて、変態だろうがなんだろうが、どうでもいいとさ
え思えてくる。


「…慎…」
 悠真が椅子に乗りあがるとそっと俺にキスをして、抱き寄せる。
「慎とやっちゃった♪」
 また、いつもの悠真だ。
 だけれど、なにか言い返す元気なんてなかった。

「……あのね、慎…。さっき、俺、慎はもともとエロいんじゃないかって…知り合いや慎の兄貴のことがきっかけで欲望に素直になれたんじゃないかって言ったよね」
 俺は、力なく悠真の腕の中で頷く。
「…それが慎とっては、もしかしたら嫌なことかもしれないよ。というか、今、こんな、欲望に理性が負けてる自分は嫌だとか思ってるかもしれない。俺は、欲望に素直なのはいいと思うけど、慎はまじめだから…」
 当たってるかもしれない。
 確かに、欲望に負けてる自分が、嫌だとか思う。
 けれど、どうしようもないじゃんって、そうとも思ってしまうけれど。

「でね…。だから、こんなこと言うのって、慎には悪いんだけど…」
 少し間をおいて。
「俺は、慎が好きだけど…。慎は、俺じゃなくって、Hが好きなんだよね…」

 さびしそうな口調でのその言葉に、ぼんやりとしていた意識が瞬時に覚醒し、体が硬直した。