体がおかしかった。
いやらしい。
悠真にイかせてもらったけど、あんなんじゃ足りないとか思ってるのかもしれない。

「はぁ…」
 教室へ戻っても、ついため息が漏れていた。

「どうしたのさぁ」
 透が心配してなのか、俺の顔を覗き込む。
「…ちょっとさ…。よくわかんなくて」
「なにが?」
「…まぁ、いろいろとね」

 人に気軽に言える内容でもないし。  あいまいに答えると、透もそれ以上、追及はしてこなかった。


 帰りの電車。
 時間、遅らそうか。
 となると1時間もどこかでつぶすことになる。
 
 別に。
 悠真と一緒の電車でもいいだろう…?
 
 なに。
 悠真のこと、気にしすぎてる。

 俺は止まっている電車に乗り込んだ。
 まだ、発車までには時間がある。
 しばらく、電車の中で待つことになりそうだった。

それなのに、乗り込んですぐ、まっさきに悠真の姿を捜してしまう。

「あ、慎―。なに、キョロキョロしてさ。俺のこと、捜してたとか」
「っそんなわけないだろ」
 駄目だ。
 なんか、今、声おかしかった。
 
 それが悠真にもわかってしまったのだろう。
「へぇ…。捜してくれてたんだ」
 勝手にそう解釈すると、俺の隣に座って、ズボンの上から股間を撫で上げてくる。
「っなっ…にして…」
「俺と一緒の電車、乗ってくれてるってことはぁ。こういうことされてもいいって気分な
わけだ?」
「っちがっ…。これ逃したら1時間ないだろっ」
「1時間くらい、すぐだろう? とか。車両かえるとかさぁ」
 俺がはじめから悠真と同じ車両にいたのが気分をよくしたのか。
 何度も、布越しに自分のモノを擦られて、期待してしまっているのか、俺の体はすぐに
熱くなっていく。
「悠真…っぁっ…」
 悠真の手が、器用に俺のズボンのボタンを外しチャックを下ろす。
 下着の中に手が潜り込んでいく。

「あっ…ん…」
 竿の付け根、袋をやんわりと揉みあげられ、体が小さくビクついた。
「あっ…あ…」
 ゾクゾクして、気持ちよくて。
 目を粒って酔いしれてしまう。

 悠真は、隣からかがむようにして頭を下げると、竿に舌を這わして丹念に舐めあげてい
く。
「んぅっ…ぁっあっ」
 ぴちゃぴちゃと音を立てて。
 
 唾液なのか、俺がすでに溢れさせている液なのかわかんないモノが滴っていく感触。
 
 その滑りを貰うようにして、悠真が指に纏うと、奥の蕾へと探りをかける。
 入り口あたりを指がゆっくりとさ迷って。
「ぁっ…あっ…」
 早く…。
 なんてこと。
 言えるわけがないし、言う気もないんだけれど、体は変に反応してしまう。
 少し腰が浮いて、早く入れてほしいと誘ってるみたいだって自分でも思う。

「入れて欲しいんだ…?」
 耳元で、悠真が囁くように聞いてくる。
「んっ…違…っ」

 舌での愛撫を止められて。
 指先が、入り口をさまようだけ。  

 じれったい。
 舌が、俺の耳を舐めて、水温が頭に響く。
「ねぇ…。ヒクついてんだけど…」
「っ知らな…」
「腰も、浮いてきちゃってる」
「んぅっ…知らない…っ」  
わかってる。  
だけれど、そんなの恥ずかしくて肯定できるわけがない。
「そっかぁ。知らないんだ」
 わざとなんだろう。
 そう言って。
 焦らすように、入りそうで入らない位置を行ったり着たりする。
 気が狂いそうだった。
「んぅっ…ぁあっ」
 大した刺激を受けているわけでもないのに、感じたい欲求からか、無駄に声が漏れる。
 悠真のもう片方の手が、俺自身を擦り上げていた。
 腰が動いて、まるで悠真の指がもっと、俺のソコをこすってくれるようになすり付けて
るみたいだ。
「はぁっ…ぁっんっ悠真ぁっ」
 やらしいのに、止まらない。

 自ら、悠真とは逆側の足を椅子の上へと乗せ、開脚してしまう。

 もっと。
「だ…めっ…ぁっあっんっ…もぉっ」
「なぁに…?」
 優しい口調で、俺に聞く。
「んっあっ…悠真ぁっ」
「入れて欲しいんだ?」
 確かめるように、ゆっくりとした口調。
 俺は、羞恥心に絶えながらも、二度ほど頷いた。

「ちゃんとぉ…クチで言って…?」
 いつもと違う、頼むような優しい口調。
「あっ…やっ」
「嫌なの?」
 亀頭の先を指がぬるりと滑る。
 滴る液を纏ったぬめりのある指先が、さっきから何度も入り口をさ迷っている。

 もう限界かもしれない。
「いれ…てっ…」
「え…? 聞こえなかったな…」
 わざとなのか。
 めちゃくちゃ恥ずかしい。
「ぁあっっ…入れて…ぇっ」
 溢れる涙が生理的なものなのか精神的なものなのかわからない。
 
 悠真の指が入り込んでくると、また、体中がゾクゾクしてくる。
「んぅンっ」
「ねー…。なにがあったのか、教えてよ」

 なにがあったか?
「あっぁっ」
「なんか、あったんでしょ。おかしーもん。慎じゃないみたい」
 指を動かされながら、そう聞かれても答える余裕などもちろんない。
「あっ…んっやぁあっ」
「教えてくれるんならぁ、気持ちよくイかせてあげるけど?」
 交換条件みたいなものだった。
 気持ちよくしてほしいという欲求だけが膨れ上がって、俺は頷いた。
「じゃ、イかせてあげる」
 
 悠真は指を2本に増やして、くちゅくちゅと音を立てながら俺の中を掻き回した。
 指が、定期的にイイところを擦って、そのたびに体が震える。
「ぁっあっ…悠真ぁっあっ…ぁああっ」
「気持ちイイ?」
「あぁあっんっ…いいっ…あっ…あぁんっ」
「そう。かわいー…。どうしちゃったのぉ?」
 耳元で聞きながら、指がわざとなのか、イイところをずらす。
「あんっ…あっ…ぅんっ…やっ…」
「や…?」
 だめだってば…。
 そんな風に焦らされたら、恥もなにもかも捨てて、欲しがってしまう。
 悠真の指がイイところにあたるように、腰が動く。
「ひぁっ…んっ」
「言ってくれないと、どこがイイのかわかんないし、どうしていいかわかんないからぁ」
 絶対、そんなの嘘だって思うのに。
 もう拒めない。
「ぁあっんっ…っそこっ…」
「ここ?」
「あっ…そこぉっ…っもっとっ…悠真ぁあっ」
「……マジでかわいーわ…」
 いままでの猫かぶりの声をやめて、真面目な低い口調でそう言われ、変にゾクゾクした。

「いいよ…。イって…? あとで、ちゃんと全部したげる…」
 全部…?
 最後まで?
 そんなのを理解する余裕もない。
「ぁっあんっ…あっ…やぁあっ…あぁあああっっ」

 
 もう。
 そこが電車だっても忘れて、声を大にしてイってしまっていた。



 イかされたあとの嫌悪感はなく、脱力感と心地よさに見舞われていた。
 とろけるような感覚。
 ボーっとする。

 電車の扉がしまって。
 やっと、そういえば、ドア開いたままなのに、声、大きかったかも…。
 なんて、少し思う。
 だけれど、電車が移動して行くうちに、それを聞いてたかもしれない人たちと離れれる
と思えば、まだ少し気分がおちついた。

「で…。なにがあったの?」
 また。
 いつもの猫かぶりの悠真だ。
 やさしい口調でそう聞きながら、ボーっとしている俺を引き寄せる。
「ん…」
 まるで膝枕な状態で。
 だけれど、もう起き上がる元気とかなくって、どうでもよくなっていた。
 
 ここまできて隠すのもあれだろう。
「……昨日…痴漢に襲われて…。変な…薬、入れられたんだよ…」
「…痴漢…? 変な薬って…」
 思ってもいなかったのか、悠真の俺の頭をなでていた手が一瞬、止まっていた。

「別に、害のある薬とかじゃないよ。たぶん、媚薬の一種」
「…ふーん…。で。そいつと最後までやったわけ」
「…違う。やられそうになったところを、知り合いが助けてくれて…。だけど、この薬が
やばいからって…。早く洗い流した方がいいからとかいうわけのわからない理由で、……
っその…中で出されて…」
「最後まで知り合いとはしたわけだ?」
 悠真の口調が少し恐くなっていた。

「…う…ん…」
「だから、こんなに欲望に素直になっちゃったわけ?」
 たぶん、それだけじゃない。
「…お前、誰にも言わない…?」
「なにを」
「俺が、こんなんだって…。まだあるけど、引くかもしれない」
 自分で言ってて、なんだか泣きそうな声になってしまっていた。
「別に言わないし、引かないって」
 そう即答され、ものすごく救われた気がする。
 誰にも話せなくて、一人で抱え込んでしまうんじゃないかと思っていたから。
「……薬がまだ、残った状態で家について…。兄貴に何度もやられて…別に、無理やりや
られたわけじゃないよ。薬のせいもあるかもしれないけど、俺もたぶん…そういうの求め
ちゃってて…。なんか、俺、駄目になったかも…」
 さすがに。
 気持ちイイことしっちゃって、エロくなりました。
 とは言えなかった。
 が、理解してくれてるかもしれない。


「そっかぁ。でも、俺、慎はもとからエロいと思うけどな」
「なっ…に言って…」
「で、少しだけ慣れて、恥じらいが薄れて素直になったんじゃないのー? よかったじゃん」
 そう…か?
 
「じゃ、約束どおり、全部してあげる」
 そう言って、俺の体を起こす。
「…な…別に約束なんて…」
「知り合いや兄貴はいいのに、俺は駄目なわけ?」
「そういうんじゃないだろっ?」
 変に聞き分けのないガキみたいなこと言いやがって。

「…ねぇ。俺、慎を気持ちよくする自信くらいあるよ…?」
「……なに…言って…」
「それに。その知り合いも慎の兄貴も知らないけど。そいつらより、ずっと慎のこと、好きだって自信もあるから」
 少したくらむような笑みを見せられる。
「なんで…」
「ね…。だから、絶対、そいつらより、気持ちよく出来るし。慎が、俺じゃなきゃ駄目っ
てくらいにしてみせるから」
 なんの自信があるんだ、こいつは。
 ふざけてる。
 
 それなのに。
 妙に体が熱くて、ドキドキする。
 言ってることとかおかしいけど、本気っぽいし。
 俺のこと。
 好きでいてくれる感じが、すごい伝わってきて。
 やっぱりそれは、すごくうれしいとか思ってしまっていた。