「じゃあな。気をつけて帰れよ」
 そこで、悠堵さんとはお別れ。
「ありがとうございます」
「いや、いいけど。あー…あの薬さ。洗い流せばいいってもんでなく、結構、クるから、しばらく家でおとなしくしてなよ」
「……はい…」
 洗い流してももう駄目なわけ?
 風邪のときの座薬みたいなもんか…?
「結構、塗りこまれたろ? 塗ってすぐ洗えばまた話は違うけどな。あ、もちろん、洗った方がなにもしないよりはマシかもしれんがな。ナツがしたことが無意味ってわけでもないから」
 最後はナツさんのフォローをやっぱりするのか。
 好き…なんだろうな…。

 意識すると、薬がまだ抜けてないような感じがして。
 
ボーっとしてくる。
「はぁ…」
 電車の中でもいやらしいことばっか、考えちゃって。
 でもこんなとこだし、理性があるから、我慢…。


「…なにお前。すっげぇボーっとしてっぞ」
 家についてから、そう声をかけてきたのは、一番上の兄貴である正道兄。
「…ん…」
 体が熱い。
「こんな状態で帰ってきたわけ? 襲ってくださいって言ってるようなもんだぜ?」
 総兄とは違って、正兄は少し不良じみたところがある。
 家にいることはほとんどなく、会うのも久しぶり。
 たくらむように笑うと、すぐさま俺の手を引いて。
 抱きしめてから、お尻の方を撫で回す。
「っなっあっ…」
「男の味、知っちゃいました?」
 楽しそうに耳元でそう言ってから、俺の体を反転させて後ろから抱きなおした。
「慎は、真面目だから、まーだ、こういうことしない子だと思ってたんだけどなぁ?」
 正兄の手が、俺の股間を撫で回して、体がゾクゾクしてきて。
「んぅんんっ」
「でもお前、エロいしな」
 
「っちが…」
「お兄様が教えてあげような…」
 そう言って、俺を部屋へと連れ込む。
「正兄っ」
「いやらしいことしたいですってオーラ出まくってんぞ、お前。やりたいくせに。ちゃぁんと頼んでくれたらたっぷりかわいがってやるぜ?」
 壁際に俺を押し付けるようにして。
 そっと頬を撫でて。
「首筋にキスマーク、残ってんぞ…」
 指でそっと首筋を撫でられて。
 それだけなのに、ゾクゾクする。
「ゃっ…」
「はーやく、してくださいって素直に言いな…?」
 耳元でそうやさしく言って。
 股間をズボンの上から撫で回す。
「はぁっ…あっ…っ」
「俺相手なら恥ずかしくないだろ…? 体苦しいくせに…」
「っあっ…正兄ぃ…」
「な…? 俺とやらしいこと、しような…?」
 正兄にそう言われるともう、限界で。
 そっと頷いてしまっていた。

「お前はさ。ちょーっと理性がありすぎるだけで。ホントはエロい子だからな…」
 壁にもたれたままの俺のズボンと下着を下ろしてしまう。
「正…兄ぃ…」
 正兄が、しゃがみこんで、俺を見上げながら、股間のモノを擦り上げる。
「んっ…ぅんっ…あっ」
「自分で、擦ってみな…」
「え……。…や…」
「したことあるだろ…?」
 俺は、正兄の手と入れ替えるように自分のモノを掴んで、そっと擦り上げた。
「あっ…正兄ぃ…っ」
「恥ずかしい…?」
「んっ…ぅんっ…」
「でも、ホントは、恥ずかしいこと大好きだろ…?」
 そう指摘され、一気に羞恥心が高まる。  
見上げる正兄の視線から逃れるように顔をそむけた。
「違…っ」
「体だけじゃなく、ちゃぁんと口も素直になるとイイけどな」  
体は素直だと言わんばかりに。
 正兄の指が亀頭を撫でる。
「あっ…ぁんんっ」
「ほぉら…。溢れてきてるだろ…? ちゃんと見て…」
「んっ…んっ…やぁっ」
 見ると、少したくらむように笑った正兄と目が合ってしまう。
「正兄ぃ…」
 正兄は、俺の手をどかして、股間のを掴むと、そっとソレを咥え込んだ。
「んーっ…あっ…ゃんんっ」
 舌が絡まって、やばい…ほどに気持ちが良くて、おかしくなってくる。
 薬のせいだけじゃなくって、以前よりもこういった行為に慣れちゃったからかもしれない。
 素直に快感を得られる感じ。
 抵抗しなきゃとか、そういうこと、考えなきゃいけない相手じゃないからなのかもしれないけど。
「はぁっあっ…正兄ぃっ」
 音を立てて、舌で強く刺激されて。
 吸い上げられると、もう限界で。
「んぅっっ…あっ…やぁっ…んぅんんんっっ」


正兄の口の中に思いっきり出してしまう。
「ん…。たくさん出たな…。まだイけるだろ?」
 俺が出しちゃったことに関して、大してつっこまれないもんだから、少し安心する。

 ベッドに移動して。
 全裸で寝転がる俺へと正兄が体を重ねて。
 股間を撫でていた手が、奥へと進み、指先が入り口をそっと行き来して撫でていく。
「はぁっ…あっ…んぅっ…」
 おかしいだろ、俺。
 こんなんで、感じるなんて。
 
 正兄は、自分の指を唾液で濡らすと、そっと俺の中にその指を差し込んでいく。
「あっんっ…んぅンっ」
「気持ちいい…?」
 ゆっくりとじらすように、中をかき回されると、自然と足が開いて、体が求めるように
寄ってしまう。
「んっ…ぁっんっ…んーっっ」
「ほぉら…。もっと声、出してみな…」
 そう言いながら、指の動きを激しくさせるもんだから、体が大きく跳ね上がってしまっ
ていた。
「あぁあっ…正兄ぃっ…あっ…あんぅっ」
「そぉ…。いい子だ」
「やぁっっ…イっちゃぅっ」
「もうちょっと、我慢しような…?」
 指を2本に増やされて。
 ソコを広げられる感覚に、体中が制御できなくなる感じ。
「ひっあっ…あぁあっんっ…あんっやぁあっ」
「総一郎もいやらしいけど。お前もやらしーよな」
 この兄貴は、総兄とも、こういうことしてるんだろう。

「はぁっあっ…んぅっ…やぁんっ」
「いいか…? いくら気持ちよくても、ちゃぁんと相手の言うことは聞くんだぞ…? そ
れが礼儀ってもんだ」
 俺は、快楽におぼれながらも、正兄の言うことを理解して、頷いた。

 俺にとって、正兄の言うことは、なんでも正しくて。
 たぶん、総兄にとってもだろう。
 それが正しいものだと。
 そう思わされる。
 それは違うだろって。
 そう反発する気にはならなくて。
 自分の意思が弱くなる。

「正兄ぃっやっあっ」
「そぉ…。お前も高1だしな。いい人、見つけるんだぞ」
「んぅンっあぁああっ…わかんなっ」
「高校で、お前のこと、気に入ってくれそうな奴はいたか?」
 俺のこと。
 悠真はたぶん、気に入ってくれてるんだろう。
 からかってるだけなのか、わからないけれど。
 そっと頷くと、正兄がやさしく笑ってくれるのがわかった。
「じゃあそいつに、手、出されたのか…?」
「ぁあっ…ぅんっ」
「よかったな。人に好かれる魅力がお前にはあるんだよ」
 よかったことなのか、よくわからない。
 それでも正兄に言われると、よかったことなのだと、感じてしまっていた。

「じゃあ…。そろそろイかせてやるから…。気持ちイイことだけ考えて、羞恥心はなくせ
な」
 そう言って、俺の中を2本の指で掻き回しながら、余った手で股間のモノも弄られる。
「あぁあっんぅっ…正兄ぃっ…あんっ」
「いい子だ…」
 もう気持ちいいことしか考えられなかった。
「あっあぁあっ…んっんぅっあっあぁああっっ」

 イかされて。
 放心状態だった。
 そんな俺の体を起こして、後ろからそっと抱いてくれる。
「正兄…」


その日は、薬が入ってたからか。
たぶん、それだけじゃない。
考えるべきことが多すぎて、疲れてた。

正兄にされるがまま。
何度イかされたか、理解できないくらいだった。




「おっはよー。慎」
 昨日のこととで頭がいっぱいで。
 悠真のことはすっかり忘れてた。
 同じ車両につい乗り込んでしまってから、そう声をかけられてやっと気がついて。
「…おはよ…」
 しょうがなく、そう声をかけて、誘われるがままに隣の席へと座り込んだ。

 なんかもう頭がいっぱいいっぱいで。
 ボーっとしてしまう。
 悠真が俺の顔を正面から覗き込んできても、なんか、あまりちゃんと反応できなかった。
「…慎?」
「ん…? あぁ…おはよ」
「うん。それはさっき聞いたけど」
 少し間を置いてから。
 悠真は俺の口に口を重ねた。
「ん…っ…ぅん…」
「…慎…」
 俺の名前だけ呼んでから、また口を重ねなおして。
 右手が股間をさすってくる。
「んっ…ぁっ」
 キスしたままで、ズボンのチャックを下げられて、直に取られてしまうと、いつもなら
嫌がるんだけど。
 なんかもうよくわからない。
「あ……」
 俺の顔を見ながら、何度も擦り上げられて。
 俺は、その視線から逃れるように顔をそむける。
「んっ…ぁっ…んっんっ」
「慎…」
「はぁっ…あっ…悠真…ぁっ」
「どうしちゃった? 慎。らしくないね…」
「ン…っ…俺…っ」
 悠真の手が、ズボンの中まで入り込んで。
 そっと奥の入り口あたりを撫でられると、それだけで体がゾクゾクとしてしまう。
「んぅっ…」
「なにかあった…?」
 駄目だ。
 期待しちゃってる。
 気持ちイイこと。
 昨日、ナツさんにされて。正兄にさんざんやられて。
 
 気持ちイイことを、たっぷり知っちゃったからだ。
 たとえそれが薬のせいだったとしても、気持ちよかったことに変わりはなくて。
 それを期待しちゃうから。
「なんか反応しろって」
 少し冗談っぽく笑いながら、そう言って。
 ズボンから手を抜いてしまう。

 して欲しかったなんて。
 考えてる自分がいて。
 
 こんなの、俺らしくないと。
 そう思って、考えを振り払った。
「ごめん、ちょっと、別の席、座る」
 
 そう断って、俺は少しだけ離れた席へと移動した。

 なんで、俺はこんな風になってしまったんだろう。
 
『お前はさ。ちょーっと理性がありすぎるだけで。ホントはエロい子だからな…』
 正兄の言葉を思い出す。
 理性が。
 なくなってしまったのか。
 なくはないが、前よりは減ってしまったのだろう。

 どうすればいいのかわからない。
 やられたいって思ってる自分がいて。
 こんなの。
 おかしいことなんだろ。
 
 俺が受験にさえ失敗してなければ、こんなことにはなってなかったはず。
 勉強で忙しくて、それどころじゃなくて。
 こんな馬鹿なことするやつらも周りにはいないかもしれなかった。
 全部、環境のせい。
 
「はぁあ…」
 ため息がもれる。
「どうしたのさ?」
 心配するように、悠真が俺を覗き込んでいた。
「…別に」
 快楽に、負けてしまいたくない。
 もともと、俺は弱かったのだろう。
 じゃなきゃ、悠真にはじめ手を出されたとき、もっと嫌がって抵抗出来たはずで。
 気持ちイイことが好きな人間なんだ。
 
 惨めだな。
 俺の気持ちを裏切って。
 考える隙もなくて。
 
 俺って、人よりもいやらしいのかなぁ…。