「ね。これから暇? 俺ん家、こない?」
昼ごはん後、透にそう言われ、俺は透の家に寄ることにした。


「ただいまー」
そう言う透につづいて、俺も中へと入り込む。

「ここね。俺の部屋」
そう教えられドアを開く。
「っあっ…ゃあっ…ンぅっんーっ」
…いきなり。
目の前で、やってる2人が…。
男同士で。
「あ。ごめん。部屋、かえよっか」

そう言われて別の部屋に行くけれど、なんで透はこんなにあっさりと見過ごしてるわけ…?

俺はなにも言えずに、透と一緒に隣の部屋へと入った。
「ごめんねー。あれ、弟。あ、かわいい方が弟だよ」
そんなしっかり見てないんですけど。
でも、言い方からして、女役だった方が弟なのだろう。
「透は、あーゆうの見慣れてるんだ?」
「まぁね。慎之介は? あーゆうこと、したことないん?」
見たことない…って聞かれるならともかく…。
「したことなんて…ない…けど…」
「微妙にあいまいな答え方だねぇ。ホントに?」
…俺、あいまいな答え方、したかな。
ちょっと、はっきり『したことない』って力強くは言えなかったけど…。
「……透は…?」
「俺? 俺はぁ…まぁあるけど」
ある…んだ…。
「あのさ…相手は男なわけ?」
「一応」
透って、結構、かわいい顔してるしな…。
「で。慎之介は?」
こうやって、聞くだけ聞いといて隠すなんて出来ないし…。
というか、さっき、したことないって言ったんだけど。
やっぱ、疑ってるんだな…。
「俺は…途中までしか…」
「え、そうなんだ? どういう関係の人と?」
「…どういうって…。誰にも言わない?」
透は真面目な顔でうなづく。
こんなん、誰にも話せることじゃないし。
かといって、一人で、抱え込んでるのも結構、苦しかったりするもんだ。

「実はさ…。悠真に…。だから、ホント、あいつ困るんだけど」
「悠真さん…? え、嘘」
こんなうそ、言ったところでなんの利益もないっての。
「電車が一緒でさ…。あんなの…痴漢だよ」
「じゃあ…電車の中で…途中まで?」
「…ん…」

俺は、透に悠真とのことを一部始終を話した。

人に聞いてもらえると、少し気分が晴れる。
余計に意識してしまうこともあるけれど。
それでも俺って、こういうことに免疫ないっつーか。
ましてや男同士だし。さっぱりわかんないから。

「それは、そうとう気に入られてるんだよー。あの人、好き嫌い激しいって有名だし。好きじゃなかったら、わざわざ手なんか出さないよ」
「…そうか?」
「だって。別に暇つぶしって感じじゃないでしょ? いくら電車に乗ってる時間が長いからってさあ。クラスも違うし」
そりゃあな。
わざわざ、話しかけたりしてくれなくてもいい関係だと思う。
「…痴漢に気に入られても…」
「あはは。そういうイメージが強いんだろうね。悠真さんの行動がはじめっからそんなんだとさ。でも、あの人、そんな軽い人じゃなさそうだし。って、俺があの人のこと、なんか言える立場じゃないけど…」

たわいもない話をしていると、すぐに時間がたってしまう。
夜7時くらいになってしまった。
外はもう暗くて、俺は透の家をあとにした。

駅まで向かう道。
少し寒気を感じた。
後ろから、誰かついてくる…?

そう思って振り返ろうとした。
が、ちょうど振り返る前に、体が誰かに抱きしめられてしまう。
「っなっ…」
「かわいいねぇ。こんなにビクついちゃって」
そりゃ、びっくりするだろ?
「っ離してくださ…」
って、俺、なにこんな人相手に敬語使ってんだか。
「ここら辺で見ない顔じゃん?」
そう言われて、腕を取られると、正面を向かされ、無理やり口を重ねられる。
「っんっ…」
なに、こいつ。
ホントにやばい…?
「すっげぇかわいいねぇ」
そっと首筋にキスをして。
俺が、そいつをどかそうと手に力をこめるけれど、意味をなさない。
「女はやばいけど、男なら強姦してもまぁ、どうにでもなるからなぁ」
その言葉を聞いてゾっとする。
「な…ぁ…」
だめだ。
俺、完璧、怖がってる。
足が動かない。
「怖がらなくてもいいよ。君、かわいいから、やさしくしてあげるね…」
そう言うとその場に座り込みそうなくらい力の入らない俺の体を抱えて、近くの公園まで行くと、ベンチに俺を下ろした。

そいつは、俺の正面にたつと、少し体を屈ませて、ズボンの上から俺の股間を撫でる。
「ぁっ…あ…っ…」
「怖い…?」
そう言いながら、ズボンのチャックを下ろして、直に俺のを取り出す。
俺って、なんて無力なんだろう。
動けない。
そいつはしゃがみ込んで、俺のに舌を這わす。
「っあっ…ンぅ…っ」
ズボンと下着が脱がされて。
駄目だろ…?
俺、抵抗しないと…。
「っやめ…っ」
俺の言葉なんてもう無視で。
ベンチの上に、両足を広げて置かれてしまう。
「っ…」
「気持ちいいの、使ってあげる」
そう言うと、なにかを指に塗りつけるのが目に入った。
けれども、俺は逃げれないし、うまく声が出ない。
「薬は、初めて…?」
ひんやりとした感覚とともに入り込む指先。
中に、薬が塗りたくられるかのようにされてしまう。
「ひぁっあっ」
「熱い…?」
冷えた薬の感触はすぐさま、熱く感じさせられる。
「ゃあっ…うっ…あっあっ」
「もしかして、処女じゃないんだ…?」
楽しそうにそう言うと、2本目の指が中に入り込んでくる。
「ぁあんぅっ…ゃめっっ…」
体が跳ね上がる。
「気持ちいいんだ? 声、出しまくりじゃん…?」
「っん…ぁあっやぁっっ…」
変…。
体中がいやらしくなっちゃってるような。
「入れちゃってもいいかなぁ?」
そう俺に聞いて。
自分のを取り出すと、指を抜いて、代わりに入れようとされてしまうもんだから、さすがに緊張が走る。
「やめ…あ…ぁっ」

「強姦なんてかっこわりーことしてんじゃねぇよなぁ」
そう言う声が聞こえて、バコって、すごい音がしたかと思うと、俺の目の前にいた人
が、少し遠くまで吹っ飛ばされている。
「…え…」
顔をあげると、悠堵さんとナツさん。
「慎之介、大丈夫?」
ナツさんはそう言ってくれながら、上着を俺の足にかけてくれていた。

「…あ…」
「ったくさぁ。青姦しようとしたら、先にいるし? 誰かと思ったらお前だしさぁ。
ま、強姦くさかったから、蹴っ飛ばしといたけど。手、ぬいたるから、続きしたかっ
たら、かまわねぇけど、どうする?」
俺は首を横に振って、合意じゃないことを示す。
「んー。じゃ、もうちょっと、痛めとくっかな」
楽しそうにそうつぶやく姿は少し怖いけれど。
でも、助かった。


「お。なにこれ」
そう言って、俺の横にあったビンを手に取る。
さっき塗られた薬だ。
「…さっさと洗い流さんと、つらいだろ。自分で出来そうにもねぇしな、お前。俺がしてやろっか」
そう言って、俺の足の上にかぶせられた服をどかす。
「っあっ…」
「おい、悠堵っ。…慎之介、恐がってんだろ」
バレバレ?
たしかにそう。
ナツさんがやさしく俺を気遣ってくれる。
「悠堵は、早いとこ、さっきのやつ、どうにかしとけよ」
そう言って、悠堵を俺からどかす。
「っナツ、お前っ…」
「…なに?」
「……まぁ…いいけどさ…」
少しだけ間を置いてからそう答えて。
悠堵さんって、ナツさんにはホント弱いっつーか。
従っちゃうんだな…。
俺をジっと見て、少し考えるようにしてから、痴漢の所へと向かっていった。
…なんなんだか…。


「慎之介。さっき悠堵が言ったようにさ。ちょっとやばいから、洗い流そうか…? そ
のままで電車乗って帰るのは辛いだろうし」
確かに。
それは辛い。
結構、中熱いし。
たぶん、やばい薬なんだろう。
かなり申し訳ないけど、透の家で風呂でも借りる…とか…。

「…おいで…」
やさしくそう言うと、俺を担ぐようにして、公園の奥へと連れてかれていく。
結構、力あるんだな、この人…。
そういえば、結構軽々と、ラーメン2人前、片手で持ってたしな。
そんくらい、俺も持てるけど。

ってか。
俺、自分でするし。
せめて、ナツさんの家に連れてってくれるならともかく、公園の奥って…。
木が生い茂っている所。
「っナツさ…?」
「ヌくのが一番、イイんだよ…」
俺を木にもたれかけさせるようにして、体を下ろされる。
「…な…に…」
妙な緊張感が走った。
俺の前で、ナツさんが指を舐めるしぐさが目に入る。

下半身丸出しの俺の前にしゃがみ込むと、あろうことか、俺のモノに舌を這わした。
「っなっあっ」
俺が驚くのとは反対に、ナツさんはなんでもないことのように、何度も舐め上げて。
混乱してきた。
「んぅっ…あっ…ナツさぁっ」
体がビクつく。
薬のせいなのか、わからないけれど、体中が熱くて。
おかしくなってきてる。
「ゃめっあっ…んぅっ…ぁっ」
「…ちょっと、我慢してね…?」
そう言うと、立ち上がって。
さっき舐めたであろう指を、俺の中に正面からそっと差し込む。
「っんーっ…やっ…ぁあっ」
もう1本、指が押し入って。
奥まで入った指が、ゆっくりと俺の中をかき回すように動かされる。
「はぁあっ…んぅっ…んーっ」
「力…抜ける…? 慎之介…」
優しくそう言って。
そのあと、舌が耳元を這う。
「ぁあっ…はぁっ…ンっ…」
そっと頬を撫でて。
指が、中をゆっくり気持ちよく動いて。
もう、駄目そう…。
「はぁっぁんっ…ナツさっぁっあぁあっ…俺っ」
「なに…?」
「ゃうっ…もっ…ぁあっもぉっ」
「言って…?」
「はぁっあっ…んっ…イくっ…」
「いいよ…。そのまま、解放しちゃって…」
「ナツさぁあっ…ぁっあっ…やぁああっ」

指を抜かれて体が大きくビクついて。
気が遠くなりそうだった。
今日、会ったばっかの人に、こんな風にイかされるなんて…。

「じゃあ、後ろ向いて…?」
俺は、思考回路が定まらないままのボーっとした状態で、体を反転させられる。
「…な…に…」
「洗い流そうね…。俺ので」
言葉の意味を理解するより先に、ナツさんのモノが、俺の双丘にあたった。
「っあっ…」
「入れるよ…」
そう言うと、いままで指が入り込んでいた箇所に、ナツさんのモノがゆっくりと押し
入ってくる。
「んーっ…ぁあっあっ」
信じられない。
ナツさんのが。
俺の、中に…。
「…もっと、力抜いて…落ち着いて…」
「はぁっ…あぁあっ…だ…めっナツさ…やあっ…」
「もしかして、慎之介、初めて…?」
なにやら、そう聞かれるのが無償に恥ずかしい気がする。
別にはじめてでも、おかしくないだろう?
ましてや、男だし。
そりゃ、童貞なんだってからかわれるならともかく。
女役だし。
って、別にからかわれてないけど。
「やっ…ぁあっ」
「そっか…。でもすぐに慣れて、気持ちいいことしか考えられなくなるからね…」
やさしくそう言って、かみの毛を撫でる。
「ンっ…」
「ゆっくり、動くよ」
そう教えてくれてから、俺の腰をつかむと、そっと中に差し込まれたナツさんのモノ
が退く。
「ぁあっ…やっ…やぁあっ」
それだけで、内壁をこすられる感覚に、体が大きくビクついて。
涙があふれてきていた。
少し退いたソレは、また奥へと入り込み、その繰り返し。
何度も、前後に出入りする。
「ゃあっやっ…やぁっあんっ」
「かわいい声で鳴くね…」
「んっ…やっ…んっ」
「いいよ…。声出して、ラクにして…」
体中が熱くて。
もう、うまく考えられない。
出入りするスピードが上がって。
さっきよりも、たくさん引き抜かれては奥へと入り込む。
ピストン運動の勢いが激しくて、足がガクガクしてきていた。
「やぁあっっぁんっ…熱ぃっっあぁあっ」
「ん…大丈夫だから…ね…」
「ぁあっ…だっめぇっ…変っ…ぁあんっ…俺っ…」
「中、出すよ…」
そう言われても、一瞬理解出来なかった。
「ぁあっ…やっナツさぁっ…ぁんっあっ…ぁあああぁあっ」


体が大きくビクついて。
俺がイってしまったのと同じように、ナツさんのが勢いよく放たれる。
「あっ…ナツさぁ…」
「ん…わかる…? もうちょっと…ね…」
「んっ…あっん…」
イってしまった直後で敏感になっている俺の体の中に、流れ込んできて。
体の制御が出来ない感じがした。

ゾクゾクと、体が震えた。
ゆっくりと、ナツさんのが引き抜かれる。
ナツさんの手が、俺の双丘を掴んで、入り口を広げるかのように左右に押えた。
「ぁっ…あっ」
「力抜いて…」
中から。
重力に従うようにして流れ出る液体が、俺の太ももを伝うのがわかった。

「んっ…う…」
「気持ちよかった…?」
「………ん…」

そっと、頷いてしまっていた。
力が入らない。
頭が。
物事を考えることを放棄してる。
ボーっとしてる俺の体を。足を伝う精液を、ナツさんがふき取ってくれているのが、
なんとなく理解できた。

「………最後までやるかよ、お前…」
横からの声に、体がビクついて。
現実に引き戻されるような感覚だった。
「…悠堵さ…」
振り向いて、確認する。
思えば。
ナツさんと悠堵さんは、恋人同士で。
俺とナツさんがこんな風に、やってしまって、いい風に思ってるわけがないっつーか。
でも、俺が悪い…わけじゃ…。
いやがらなかったから、お前が悪いとか言われたらどうしよう…。

「あのっ…」
「なんか文句あるん?」
タイミング的に、俺に向けての言葉かと思った。
ナツさんの声。
だけれど、店でのときとか、俺に対するときとは、ちょっと違う雰囲気の声。
ナツさんの視線は悠堵さんの方を向いていた。
「…ないわけねぇだろ」
「なんやん、言ってみ」
口調に反して、顔だけは、わりと笑顔。
なんか。
もめそうな雰囲気…かも…。
そりゃ、文句もあるよな…。
自分の恋人がほかの人とやったら…。

だけど、俺がなにか口をはさめるような感じではない。
「…お前のことだから、もしかしたら、やるんじゃないかとは思ってたけどな?」
強い口調で、悠堵さんが言う。
あ。だからか。
初めの方で、俺から離れるのを躊躇するように間をおいたのは…。
というか。
ナツさんて、どういう人なわけ…?
俺に、手、出しそうだったんだ…?

「…やりすぎ」
一言。
そうとだけ言う。
「べっつに。強姦してるわけじゃないし。悪い?」
…そりゃ、強姦されたわけじゃないけど…。
「…俺が誰とやろうが、よくない? 悠堵だって、俺以外のやつとするだろ? 文句、
言える立場なんですかね」

だから。
笑顔のまま、恐いことを…。
「俺がどうとかじゃなくて。…慎之介、わけもわからずやられたって感じだろ?」
俺を見てそう言って。
……たしかにそう…。
「ナツ、相手考えろって。慎之介は、お前がよくつるむようなタイプのやつ等とは違
ぇんだよ」
悠堵さんの言葉に、ナツさんが黙り込んだ。

「……なんで、悠堵がそんなことわかるわけ?」
「どう考えても、わかるだろ。雰囲気で」
意外と。
この人、常識人か…?
というか、自分の恋人が、他の人とやるってのもだけど。
俺のこと、気遣ってくれてるみたいで。
悠堵さんって。よくわかんないけど、いい人かも…。

「…うっさいなぁ。わかるよ、そんくらい。ほっとけよ、もう」
ナツさんの肩に手をかけようとする悠堵さんの手を思いっきり払いのけて。
キレた感じではないけれど。
少し冷めた感じの、重い口調でそう言った。
悠堵さんが舌打ちするのがわかった。

「慎之介、帰れそう?」
少したってから。俺の体を気遣うようにして。
悠堵さんとの会話はなんにもなかったかのような雰囲気で俺にそう聞く。
「あ…はい…」
「駅まで送るよ」
そう言ったのは、悠堵さんだった。
少し、怖い気もしたけれど、一人で帰るのもちょっとだけ、不安だし。
ナツさんと二人きりなのも、ちょっと怖かった。

ナツさんの顔が一瞬、不機嫌そうになったが、すぐに笑顔で。
「手、出すなよ」
そう言うけれど。
「…お前が言うなよ…」
俺の気持ちを代弁するように、悠堵さんが言った。

まぁ、あの痴漢のせいで、やらざる得ない状況だったかもしれないけれど。
最後までやるのはどうかと思うし。
少し。ナツさんのことがよくわからなくなっていた。

ナツさんの横をすり抜けて。
俺と悠堵さんは、駅へと向かった。




「……なんか、頭の整理つかねぇってオーラ、出まくってんぞ、お前」
悠堵さんが、俺の横で。
そう声をかけてきた。
「…まぁ…よくわからなくて…」
自分がやられたこととかよりも、ナツさんという人がわからなくなっていた。

「…ナツは…恋愛感情に関して、少し冷めた部分があんだよ」
いきなり。
少し迷うようにしてから、そう切り出した。
「…は…あ…」
「愛はなくても、セックスは出来る。好きじゃないやつとでも平気でやるし、やらせ
る。……そういうやつなんだよ」
見下す感じではなく。
少し。
哀れむような口調だった。
「……慎之介、あいつとやって、どうだった?」
どうって、聞かれても。
「…そんなの…なんか、急で、わけわかんないし…。その…初めてだったし…」
悠堵さんは、一呼吸、間を置いて。
「ナツは……気遣ってくれるし、やさしくしてくれるし、気持ちよくだってするだろ
うけどさ…。愛とか、ねぇだろ」
そっと俺の頭をなでながら言った。

別に、ナツさんを恋愛感情で好きなわけではないけれど、なんとなく心が痛むような
感覚だった。
「…はい…」
気遣ってくれた。
やさしくしてくれたし気持ちよくだってしてくれた。

でも、そこに、愛はない。

「悪いな」
「はい…?」
「だから、悪ぃなっつってんだよ。俺はさぁ。こうなるって予想出来たくせに、止め損ねちまった」
別に。
悠堵さんは、まったく悪くないんですけど…。
「いえ…」
「俺も。あいつとやってても愛とか、感じねぇから、よくわかる」
タバコをくわえて。
少しかったるそうな口調でそう言った。

ナツさんって。よくわからない。
悠堵さんも、よくわからなかった。
悠堵さんは、きっと、ナツさんのこと好きなんだろうけれど。

深い話を聞いてしまえるほど、俺はこの人たちとは仲良くない。

気になるけれど、今は、なにも聞けそうになかった。