すぐに家を出てくれたのか、9時半くらいになって悠真が家に来た。
「ご、ごめん。こんな遅い時間に……」
 玄関まで出迎えると、悠真はにっこり笑って、俺に口づける。
「ん……」
「いいよ。俺とえっちしたかったんでしょ」
 言葉を挟んで、もう一度、深く口を重ねると、悠真は容赦なく舌を割り込ませてきた。
「ん……ふ……はぁ……ぁ、部屋で……」
「うん。そうだね」
 もっと欲しい気持ちをなんとか抑えて、自分の部屋まで移動する。
 部屋に入って鍵を締めた直後、悠真は期待通り、もう一度、キスしてくれた。
「ん……んぅ……」
 俺をドアに押し付けるようにして、逃げられない状態で、何度も舌を絡め取る。
 そのまま、悠真は俺のズボンと下着をずりさげると、勃起してるモノを右手で撫でた。
「んぅ……んー……はぁ……ぁ……」
「はぁ……さっきいっぱい出してたのに、どうしてもうこんなに大きくしてんの?」
 口は離れてしまったけど、目の前で問いかけられる。
「はぁ……だって……ぁ……あ……」
「したかったんだよねー?」
 小さく頷くと、悠真はその場にしゃがみ込んだ。
 改めて、ズボンと下着をひざ下までおろされると、俺は促されるようにして、足を引き抜く。
「出したの、きれいに拭いちゃった? ナカは、どうなってる?」
 ちょっと前に、ローションをつけて指を入れたせいで、そこはまだぬるついていた。
 指先で、少し触れられるだけで、ひくひくしてしまう。
「ぁ……あ……うう……そこぉ……なか……ぬるぬる、してる……」
「ふぅん。かわいい。でも先に、さきっぽ弄ろうね」
 悠真はそう言って触れていた入り口から指を離すと、亀頭を手のひらで包み込んだ。
「ぁあっ……あっ、んっ……んっ」
 少し撫でられると、すぐに立っているのがつらくなって、その場に座り込む。
「慎の顔、もっと近くで見たいなぁって思ってたからちょうどよかった〜。ちゃんと足開いて、顔上げて?」
 最初から開いていた足を、さらに開いて、そっと顔をあげると、悠真が俺を見て舌なめずりをした。
「すごいえっちな顔してる。ここ、きもちいい?」
 悠真の手が、ゆっくり亀頭を撫で続ける。
「はぁ……あぁ……あっ、んっ……きもちい……ぁあっ、きもちいい……」
「気持ちいいねぇ。なんか出てきちゃってるみたい」
 いっぱい先走りの液が溢れて、悠真が手を動かすたび、くちゅくちゅと音が鳴った。
「んぅんっ! はぁっ、あっ……ああっ、あっ、悠真ぁ……」
「さっき、自分でもしたよね。どっちが気持ちいい?」
「悠真……あっ、悠真のが、きもちい……ああっ、ぁんっ、んっ……あっ、ああっ、いく、いくぅ……! あっ、あっ、んぅんんんっ!!」
 少し前にも出したのに、また射精してしまう。
 悠真は、俺の先端に手を触れたまま、空いた左手で俺の顔をあげさせた。
「慎……俺のこと考えながら、1人Hする予定だったんだよね?」
「そう……だけど」
「見たいなー。慎の1人H」
 せっかく悠真が目の前にいるのに、なんで1人でしなきゃいけないんだろう。
「……やだよ。そんなの」
「えー。見せてくれたら、慎がして欲しいこと、いっぱいしてあげる」
 見せなくても、すればいいのに。
「もう、2人ですればいいだろ」
「するよ。1人Hって言っちゃったけど、俺に見られながらオナってるわけだから、2人でしょ」
 そんなの2人でしてるとは言わない。
 そう言いたかったけど、さっき画面越しに見られながらしたとき『1人でしてない』って言ったのは自分だ。
 こうなると、悠真はいつまで経っても俺を焦らしてきそうだし、早く折れた方がいい。
 見られたことは、前にだってある。
 ちらりと、視線をベッドの隅に向けると、そんな俺に気づいたのか、悠真が小さく笑った。
「取ってきてあげる」
 座る俺をよそに、悠真はベッドに置いたままのバイブを取ってきてくれる。
「い……いいよ。今日は、使わない」
「なんで?」
「強い、から」
 それを使った後に、振動のない悠真のモノでどう感じるかわからない。
 振動させないにしても、それなりのサイズだ。
 もし、悠真であまり感じなかったりしたら……。
「いいよ? 俺より感じちゃっても」
 まるで、俺の考えを見透かすみたいにそう言うと、悠真は手にしたバイブを俺に持たせる。
「いつもどう使ってる? 電源、入れてから入れんの?」
 目の前で問いかけられて、答える義理なんてないけど、拒む理由もない。
「……ナカで、いきなり動くとびっくりするから……」
 さっそく電源をオンにして、小さく振動させたバイブの先端を、入り口に押し当てる。
「んん、ん……ふぅ……」
「へぇ。そうやって揉み解すの?」
「そういう、わけじゃ……」
「じゃあ、あてると気持ちいいんだ?」
「ん……」
 気持ちいい。
 入り口付近から、振動がゆっくりナカの方へと伝染していく。
 緩い、鈍い刺激。
 もっと欲しくて、バイブの先端を咥え込む。
「んんんっ! んっ……はぁ……はぁ……」
 悠真が来る前に指で少し解したとはいえ、久しぶりの物量で息が詰まりそうになる。
「ああ……1人でするときは、いっぱい声我慢しちゃうんだね」
「うぅ……だって……」
「うん。ねぇ、俺の前では、もっと声出して。我慢しなくていいよ」
 聞かせたいわけじゃない……と思う。
 でも、我慢するのも苦しくて、しなくていいって言ってもらえて、我慢の必要性を感じなくなってしまう。
「ぁあっ、あっ……悠真ぁ……」
「なに?」
「ん、んぅ……きもちぃ……あっ、あん……あっ、あっ、んんっ!」
 感じて強張ってしまう俺の頬を悠真が撫でてくれる。
「かわいい。すごい感じてるね。もっと入れる?」
「ふぅ、ぅん……んん、あっ……ああっ、あっ……んぅん、いくぅ……!」
 少し深く入れただけで、イきそうになって体が小さく震えた。
「もうイッちゃうの? オモチャ使うと、そんな早くイけるんだ? いつもそう?」
「はぁ……ちが……あっ……ぁあっ、ひさしぶりで……あっ、あんっ、んっ」
 振動ですぐイクこともあるけど、悠真に見られてるせいで、余計感じてるみたい。
「いいよ。イッて」
「はぁっ、うん、んっ……あっ、あんっ……あっ、あっ、んぅんんんっ!!」
 ビクビク体が震えて、いいところに振動を当てながら、また射精する。
「はぁ……はぁ……ん……はぁ……」
「おつかれー。かわいいなぁ、慎之介は。こんなにいっぱい出しちゃって」
 振動を止めて、ゆっくり体を落ち着かせようと思ったのに、目の前の悠真が企むように話すせいで、期待せずにはいられなかった。
「すっごい感じてたけど、やっぱり俺より感じちゃったかな」
 そう言いながら、悠真がバイブを引き抜いていく。
「あ……ああっ……待って……あっ」
「んー? まだ入れてたい?」
「ん、んん……かんじ、て……んんっ、んぅんん!」
 全部引き抜かれた瞬間、体が大きく跳ねてしまう。
「ああ、ごめんごめん。強かった?」
「ん……」
「じゃあ、俺は優しくしてあげるね?」
 悠真の笑みが、言葉通りの意味じゃないと思わせてきた。
「どう……すんの?」
「んー……射精ばっかして疲れちゃったかもしれないし、別のイき方、しない?」
 別のイき方……?
「なに、それ」
「ああ、もしかしたらーって思ってたけど、お兄さんに教えられてない?」
「なに……」
「射精とかトコロテンとかじゃなくてさ。出さずにイっちゃうの。ドライってやつ? 甘イキとかメスイキとか言われてるっけ」
 よくわからなくて首をかしげる。
 つまり、兄さんが教えてくれていないことだ。
「甘イキは、ときどきしてそうだよねー。射精しないで緩くイっちゃうやつ」
 ときどき体が大きく跳ねて、気持ちいい感覚になれるのが、もしかして甘イキだろうか。
「さっきの……?」
「ああ、引き抜いたときビクついちゃってたやつ? あれ、甘イキしてた?」
「わかんないよ……。すっきりしてないし。なんか……すごい、感じた気はするけど、変に力抜けただけで……」
「んー、気持ちよかった?」
 気持ちは……よかった。
 頷くと、悠真はにっこり笑ってくれる。
「じゃあ、イッちゃってるかもしれないね。甘いのだけじゃなくて、しっかりメスイキしたくない?」
 悠真に問いかけられて、体が疼く。
 たぶん、期待してるんだろう。
 でも……それがなんなのか、俺には知識がない。
 透にもっといろいろ聞いておけばよかった。
 聞いてからにする?
「悠真は……知ってんの? それが、どんな感じか……」
「んー……ごめんねぇ。俺、後ろ未開発だから経験ない。ちなみに慎之介とする前から童貞じゃなかったけど、そこまで突き詰めたHしてないから、メスイキさせたこともないかな」
 じゃあ、悠真もよく知らないんだ。
 それを聞いて、不安とは違う感情が押し寄せてくる。
 お互いはじめてじゃなかった俺たちが、まだ知らないこと。
「あ、実戦経験はないけど、勉強はしてるよー。体に害のあることじゃないし、無理そうならやめる」
 よくわからないけど、いま体感しているかもしれない甘イキの、もっと上のやつなんだろう。
 それなら味わってみたいし、なにより――
「ねぇ、慎之介。俺に慎之介のはじめて、ちょうだい」
 俺が思っていたことを、悠真が代弁してくれる。
 俺のはじめてをあげたいし、悠真のはじめてをもらいたい。
「……悠真も、はじめてってことだよな」
「うん。無事、イかせられたらだけど。慎之介、もらってくれる?」
 もらうって表現があっているのかどうかわからないけど、悠真にして欲しい。
「……もらう。もらうから……もらって」
 そう告げると、悠真はやらしい笑みを浮かべて、俺に覆いかぶさってきた。