悠真は俺になにも聞かず、ただわかったと頷いて、1組の教室へと向かった。


「慎之介、おはよう」
透がそう声をかけてくれて。
バイブのことを思い出し、少し羞恥心を感じる。
「おはよ」
「ねぇねぇ、使った? どうだった?」
思った通り。
透は直球で俺に聞く。
「透は?」
「使ったよ。えへへぇ。気持ちよかったぁ♪」
思い出すように、うっとりと。
そう答えるもんだから。
なんか、透が言うとかわいいんだよなぁ。
俺が、そんな風に答えたら単なる変態みたいだ。
「ねぇ、慎之介は?」
そう催促されてはしょうがない。
透だって答えてくれたわけだし。
これで、透が『実は俺は嘘でやってません』とかだったらめちゃくちゃ恥ずかしいけど。
たぶん、透は真実を語ってくれてるだろう。

「使ったよ。…気持ちよかった」
でもって、ホンモノ欲しくなったりしちゃったんだけど。
「あのさぁ。透は、あぁゆう玩具で遊んで。実際、やりたくなったりしないの?」
「うーん。なるねぇ。だから、しちゃうときもあるよ。手ごろな人と」
…透ってやっぱりそういう子だよなぁ。

授業中も気が気じゃなかった。
悠真を誘ってしまった。
一緒に帰ろうって。
そう。
ただ一緒に帰るだけなんだけれど、俺たちにとってはもっと重いというか。
やりたいとか考えている自分がバレていそうで。

なんで、あんなこと言っちゃったんだろう。
だけれど、言わなかったら、帰り一緒になれるかわからないし。
…どっちにしろ、一緒にはいたいとか思ってるんだよ、自分。

偶然を装いたかったような…。
こんな風に、約束するのって、妙に照れる。

実際、俺が悠真と一緒に帰りたいって思ったのは、やりたいだとか考えてのことだし。
恥ずかしいよ。
なにしてんだ、俺は…。


帰り。
なんとなく、グダグダ帰る準備をしていると、悠真が迎えに来てくれた。
俺以外、クラスには少ししか生徒もいないし、いいんだけど。
少し、目立つんだよなぁ、こいつ。

「じゃ、帰ろっか、慎♪」
なんでもないテンションで。
「今日さぁ、数学でいきなり当てられて、わけわかんなくって」
そんなどうでもいい内容の話ばかりを振られる。
あぁ、こいつって結構、普通の会話もまともにするんだなぁなんて思いながらも、気が気じゃない。

電車に乗り込むと、二人きり。

「どうして、今日は一緒に帰ろうって言ってくれたの?」
本題…と言わんばかりにそう俺に問う。
「…別に…なんていうか…」
「俺と一緒の電車乗るイコール、やっちゃってもいいってことだよ?」
軽く笑ってそう言われる。
どんな理屈だよ、それ…。
そう思うけれど、そんなのわかってる。
それでいて誘ったわけだし。
「悠真…っ、俺…」
「どうしたの?」
「その…さぁ…」
「…したいの?」
そう問われ、悠真の顔はもちろん見れずに、緊張した体のまま、かすかに頷くことが出来た。

その俺の顔を掴むようにして、悠真は口を重ねてくれた。
「んっ…ぅんっ」
舌が絡まって、体中が熱くなる。

そっと口が離れて、やたら真面目に顔を見られてしまう。
「な…に…」
「慎…真面目にしたいんだけど。家、来て…?」
家。
悠真の?
真面目にするって?
そりゃ、電車でするのを嫌がってたのは俺だし、いまだって、もちろん、こんなところでするのは間違ってるって思ってる。

だけど、そんないきなり…。
したいって聞かれて頷いたけど?
でも、どうなるわけ?
 無償に緊張する。

「いい…けど…」
一応、そうは答えるけれど、どうなるのか予想もつかないし、考えがまとまらなかった。

なにやってんだよ、俺は。

それから、悠真はなにか考えてるのか。
なにも話してくれなくて。
ボーっと外を眺めていた。
俺も、なにも話せずにいたし。

「行こう?」
手を取られ、悠真が降りる駅だと理解する。
俺は緊張しながら悠真のあとを着いて行く。

会話もなく、家。
鍵を開ける悠真の後についていって。
ベッドのある部屋まで。

「座っていいよ?」
「あのさぁっ…。なんで…急に黙るわけ?」
気になっていた。
この会話のない変な空気。
絶えられなくてつい聞いてしまう。

悠真は、苦笑いして。
「ん? ごめんごめんー。どうした? 気になったの?」
いつもみたいなテンションの高さで俺に聞いてくれる。
「いろいろと、考えちゃってた。慎のこと、どうしちゃおうかなぁって♪」
にっこり笑ってそう言って。
俺の目の前で悠真はシャツを脱ぐ。
意外に鍛えられているその姿を見るだけで、ゾクゾクした。
なんでだよ。
やっぱり、俺、悠真が好きなんだ…?

「慎も脱いで?」
「っ…そんなの…っ」
「じゃあ、脱がしてあげる」
企むような低いトーンの口調でそう言うと、俺をベッドへと押し倒す。
上から、じっくりと見下ろされ、不敵な笑みを浮かべられて。
「慎之介…って、呼んでいい…?」
シリアスに、なんだかエロい口調でそう俺に聞く。
「な…んで…?」
「真面目にね。慎のこと、やろうとしてんの。名前、略してちゃ駄目でしょ。ね…慎之介…って。いい?」
体を重ね、耳元でそう聞かれるだけで、体がゾクリと震え上がる。
「んっ…ゃっ…」
その声。
いつもは、馬鹿みたいなテンションのくせに。
ギャップありすぎ。
「駄目なの?」
俺の耳元でそう問いながらも、右手がちゃくちゃくとシャツのボタンを外していく。
全部肌蹴たシャツの中へと入り込んだ手は、ゆるやかに胸元を撫でて、突起を転がされ、反射的に体がピクンと跳ねる。
「っ!!」
「かわいいねぇ…慎之介。感じる?」
「んっ…んぅっ…」
恥ずかしくて口を両方の手で押さえた。
そんな俺を見てか、軽く笑うのが聞こえ、余計に羞恥心を感じた。

悠真は体を起して、俺のズボンと下着を抜き取っていく。
俺は口を押さえたまんまで、なにも出来ず。

そんな俺を見下ろして
「まぁた、ここ、濡れちゃってるね…」
そう言って、亀頭を撫でる。
「っんっ!!」
悠真は、また俺の上にかぶさるようにして、俺の耳元に口を寄せる。
「ねぇ、慎之介…。ここは電車じゃないんだよ。声出していいの。俺しか聞いてないから。…聞かせてよ…」
そう言いながら、俺の両手を掴んで頭の上へと押さえつけてしまう。
「っな…っ」
「慎之介の、エロい声。聞かせて?」
悠真の指が、俺の亀頭からぬめりを取って、後ろの入り口を緩やかになでていく。
「っんっ…あっ…」
「わかる…? たくさん溢れちゃって、こっちの方まで、垂れてきてる。今日は、すごくエロい体だね…」
恥ずかしいことを指摘されながら、指先がゆっくりと入り込んできた。
「んっあっあぁああっっ」
体がビクつく。
涙も溢れてきた。
「ん…気持ちいいの…? 慎之介…」
あいかわらず、悠真は優しいような恐いような。
よくわからない落ち着いたトーンで俺の耳元で囁く。
「はぁっ…あっ…だっめ…っ」
「どうして? なにが駄目?」
ゆっくりと抜き差しされて、体が何度もビクついて。
恥ずかしくて死にそうだ。
「ぁっあんっ…だめっ…悠真ぁっ…」
「ん…教えて?」
「あっ…やっ…いっちゃうっ…」
ただ指入れられて、少し動かされただけで。
いってしまいそうなのが恥ずかしくて。
だけれど、言わないと、すぐにでも出てしまいそうで。
悠真に告げると、恥ずかしさから涙がボロボロ溢れてしまう。
「いいよ? イっても」
「やっ…ぁあっ…悠真ぁっ…やだっ…」
「イきたくないの?」
「んっ…」
「我慢しないで? じゃあ、2本にしちゃおうか?」
ゆっくりともう1本、指が入り込んで、今度はその2本の指が出入りして、中を掻き回していく。
「ぁあっ…ぁんっ…やっやぁあっ…だめっ…やぁああっっ」

たった少し、強く刺激されただけで。
もう欲望を弾けだしてしまう。

恥ずかしくて悠真の方が見られない。
「慎之介…。昨日、出来なくて、溜めてくれてた?」
2本の指が、ゆるやかにまた少しだけ掻き回して。
それだけで、落ち着いていた俺の股間のモノは、また硬さを増してしまう。
「はぁっあっ…」
「それとも、慎之介はエロいから、またお兄さんとか、他の人とやっちゃった?」
「んぅっ…そんなのっ」
俺は、首を横に振って、していないと示した。
「そう…。じゃあ、丸1日、我慢してたの? それとも、1人で遊んだ?」
なにも言えずに顔を逸らしていると、耳に舌が這う。
「んぅっ」
「どっち? 慎之介…」
なんでだろう。やってる最中にこんな風に聞かれると、答えなくてもいいはずのことまで、言わないといけないような気がしてしまう。
悠真は、俺が答えやすいようにか、突っ込んだままの2本の指の動きを止めた。
「っ…一人でっ…」
「へぇえ…。どうやって? ここん中、指、入れちゃったのかなぁ?」
場所を示すように、中の指が内壁を軽く突く。
「んっあっっ…」
「ね。…自分で指、後ろに入れちゃった?」
「あっ…して…なっ」
「え? おかしいなぁ。ずいぶんほぐれてんだけど、ココ。あぁ、もしかして別のモン、突っ込んじゃったとか?」
図星で、顔が熱くなる。
なにも答えれないでいる俺を見て、肯定だと受け取ったのか、耳元で、
「なぁに、突っ込んじゃったの? ココに…」
エロい口調で俺に聞く。
だから、その声だけで、結構やばいのに。
「はぁっあっ…やっ」
「玩具とか入れちゃった?」
「っ…んっっ…違…っ」
「どうして顔、逸らすのかなぁ…。そっか。慎之介は、ココに玩具入れちゃったんだねぇ」
俺の嘘なんでバレバレなのだろう。
「…かわいいねぇ、慎之介は…」
耳元でそう言われ、恥ずかしくて体が熱くて。
ゾクゾクする。

「やっ…悠真…っ」
「どうしたの?」
死にそうだ。
初めて見る悠真の裸に欲情している。
思ってたより、がっしりしてて。
どきどきする。

見上げると、上から見下ろす悠真と目が合った。
やばい…。
すごいかっこいい。
頭を撫でられて。
爆発しそうだ。

好きかもしんない。
やるのが好きだから、気持ちいいからドキドキしてるのとは違う。
悠真のことばっか考えてる。

かっこいい…。
そう理解したら、一気に羞恥心が高まる。

「顔、真っ赤だよ…?」
悠真が優しく口を重ねてくれる。
「んっ…ぅんっ…」
舌を差し込まれて、絡め取られて。

もういっぱいいっぱいだ。

俺の中に入り込んでいる悠真の指を締め付けてしまう。
それがわかってなのか、口を重ねたまま、そっと中の指がゆっくり動かされる。
「んっ…ンっ」
体がビクついて。
それを落ち着かせるように、悠真の空いている手が俺の頬を撫でてくれていた。

そっと口が離されて。
悠真は俺を見て舌なめずりをした。

「…そろそろ入れちゃおうか…? 俺の…」
指が引き抜かれ、悠真のが押し当てられる。
「っっ…」
「ヒクついてるねぇ。そんなに早く入れて欲しい?」
入り口でさ迷われ、じれったくて腰がつい寄ってしまう。
「エロいなぁ、慎之介は…」
そう言って、ゆっくりと悠真のモノが入り込んでくる。
「んぅっ…あっんーーっ」
「ほぉら、入ってっちゃうねぇ。すごい、気持ちイイよ…?」
「悠真っあっ…奥っ…やめっ…」
「へぇ。奥ねぇ。もうちょっと、入るかなぁ」
足を深く折り曲げて。
さらに奥へと入り込んでしまう。
「ぁあっ…んーっ」
「力、抜いて…?」
「はぁっ…あっっ…悠真っ…」
奥まで入るだけ入り込んで。
じっくりと上から見下ろされる。

企むような余裕のある笑み。

駄目だ、その顔…。
「んっ…悠真っっ」
ゆっくりと、悠真のが退いて、中に入り込んで。
軽く出入りを繰り返される。
「ぁあっ…あっあんっ…」
思わず出た声が恥ずかしくて、手で口を押さえようとしたのがバレたのか、両方の手に、それぞれ悠真が指を絡める。
ベッドに押さえつけられて、じっくりと俺を見下ろして。
「あっ…」
「いやらしいねぇ…慎之介…」
ゾクゾクした。
その声。その表情。

俺って、Mなんだ?
こんな風に見下ろされて、『いやらしい』って言われて。
すっごい感じてる。
すごく恥ずかしいのに。

「あっ…もっと…っ」
もう止められそうになかった。
見てられなくて顔を逸らす。
「もっと?」
「あっ…言ってっ…」
「んー…。ナニを言って欲しいの? いやらしい子だって、言われたいの?」
「んっ…ぁあっ」
「そう…。慎之介は、いやらしいよ…。俺の締め付けて離さないし? ヒクつかせて、少し俺が動くだけで、体中ビクつかせて…。エッチだね…」
耳元で教え込むようにそう言われる。
「あっ…違…っ」
「違わないでしょ…? 今日も、ずっとエロいこと考えてたくせに…。そうでしょ?」
「んっ…ぁああっ…」
恥ずかしい。
思考回路がおかしい。

悠真が、好き。
好きな人のが、入ってる。

耳元で、羞恥心を煽られて。
「ぁっぃっちゃう…っ…悠真ぁあっ…」
「だーめ…」
そう言うくせに、さっきよりも激しく中を突き上げられる。
「ひぁあっ…やぁっやぁあっ…ぃくっあっ…」
「我慢して? 俺のために…」
こんな風に言われるのは初めてだ。
いつも、イっていいって。
俺のためにって?
我慢出来ない。
「ぁあっだっめっ…ぃくっ…出ちゃうっ…あっだめっ」
「へぇ。出ちゃうの…? ちゃぁんと言えたら、イっていいよ?」
「なにっあっ…」
「どうして、イきそうなの? どうされたから? 教えて?」
どうされたからって。
見上げる悠真は、あいかわらず俺にとってすっげぇかっこよく見えてたまらなかった。
「ぁんっあっ…やっ」
「動いてたら、言えないかぁ…」
そう言って、悠真は動きを止めてしまう。
「な…」
「なに?」
「…っあっ…動…いてっ…」
「ん?」
「動いてよぉ…っ…悠真ぁ…っ」
「だーめ。先に、言って? どうされて感じた?」
どうされたかって。
それを思い出すだけで、また、より一層感じてしまう。
腰が自分から動いてしまっていた。
「んっ…あっ悠真のが…っ俺ん中っ入って…」
「うん、入ってるねぇ」
「何回も…突く…からぁ…っ」
「そう…。じゃあまた、突こうか?」
頷いて見せるが、それだけでは、行動に移してくれなかった。
「言いなよ…。言って?」
「はぁっ…突いてっっ…悠真ぁっ…」
「もっと」
「ぁっっ…中っ…突いてよぉっ…お願っ…」
「慎之介のお願いなら、しょうがないかぁ」
そう言ってくれると、もう一度、中を突き上げてくれる。
「あっ…悠真ぁっ…熱ぃっ…あぁあっ…やっ」
「もっとお願いして?」
「ぁっっんっっ…お願ぃっ…ぁんっあっ…もっとっしてっ」
「うん、してあげる」
「奥っ…あぁあっ…あんっあっっぃくっ…悠真ぁっ…イってぃいっ?」
「いいよぉ…。俺も、たっぷり中で出したげる…」
「ぁっあんっあぁっいくっ…やっあっあぁあああっっ」



一瞬、思考が飛んだ。
いや、一瞬じゃなくって、少し前からもう、自分が自分じゃないみたいだった。
イってしまって。
悠真が俺の中でイって。

頭がボーっとする。

正兄には見られてきた恥ずかしい欲望のままの自分を、悠真に見られた。
こんなんじゃまた、Hが好きなだけなんでしょって言われかねない。

悠真のこと、好きになってると思う。
だけれど、気持ちいいことも、求めてしまう。
それは悠真が好きだからなんだけど。
こんな風にしたら、悠真からすれば、ただ体だけ求めてるエロい子だっての。

なんで、こんなに俺、変態なんだろう。

「悠真…」
「慎之介はエロいねぇ…」
そう言われ、涙が溢れる。

次から次へと、涙が溢れてきた。
「っ慎之介っ?」
「俺っ……エロいから…」
「なんで、泣くの?」
悠真が好き。

「悠真…俺のこと、Hが好きな男だと思ってんだろ…?」
「好きじゃないの?」
「好きだけど…っ」

悠真の方が好きだなんて、すぐには言えなかった。

「ちょっと…寝たい」
「うん。いいよ?」
悠真は、俺の手を握ってくれた。

やっぱり好きだ。
どうやって伝えよう。

疲れた俺は、悠真に手を取られたまま、すぐにでも眠りについてしまっていた。