「っ…」
そんなことない。
そう言おうとしたのに。
そうは言えなくて。
つい黙ってしまう俺を見てか、悠真がにっこり笑う。
「なぁんて♪冗談だから、気にしないでいいよぉ。ちょっと慎のこと困らせてみたかっただけ」
冗談?
違うだろ。
ショックを受けてる俺を見て、気にしてそう言ってるだけだ。
「俺は、慎が好きだから。慎が俺を好きになってくれるまでずぅっと待ってるからね」
そう言ってくれてた。
なんなんだろう。
こいつは。
「なんで? 俺は…」
悠真が好きなんじゃなくて。
Hが好きなんだって。
お前だってわかってるくせに。
こんな風に、悠真のこと好きかどうかもわからないのに、やる時点でどうかとも思うけど。
わけわかんない。
「慎。大丈夫だよ。慎が兄貴としてたからって引いてないし、それでエロくなったとしても、単なるきっかけにすぎないし。俺が慎を好きなのにかわりはないから、慎が俺を好きになってくれたら、それで俺はうれしいし。あ、でも俺のこと好きになってくれたら、俺以外の人とはあまりしないでね。…いいよ、俺じゃなくってHが好きってんでも。今はね。でも、もうすぐ俺とのHじゃなきゃ駄目ってなっちゃうから」
なんでそんなこと言えるんだろう。
なんていうか。
心が広いっつーか、器がでかいっつーか。
意外にすごい奴なのかもしれない。
その後も、悠真がなんでもない話をしていたけれど、はっきり言って頭に入ってない。
クラスの係りの話だとか、どうでもいいことだった。
「で。慎は、自分から欲しがっちゃったんだ?」
今日のこと。
正兄に聞いてもらって。
というか、聞かれて。
拒むことも出来ず、一部始終を話した。
と言っても、兄貴のことを相談したのまでは話さなかった。
ただ、やってしまったということだけを告げた。
悠真としてて。
欲しいと思ってしまったけれど。
態度には表していない。
焦らされてしょうがなく、少しは言葉にしたけれど。
「違…うよ…」
「欲しがってないの…?」
正兄のモノをあそこに咥えこんで。
いわゆる騎乗位の状態。
俺の手は後ろ手に縛られて、正兄の指先が焦らすように、俺の股間のモノを撫でた。
「ん…ぅん…」
「駄目だな…。欲しいときはちゃぁんと口で、言わないと。素直にならないと駄目だぞ…」
正兄の指が。
亀頭を撫でて、すでに溢れてしまっている先走りの液を塗りたくる。
「ぁっあっ」
「たとえば、そいつのことが好きじゃなかったとしても。やりたかったらやればいいんだよ。自分を気持ちよくしてくれる道具くらいに思えばいい。そいつが好きなら好きで、なおさらすればいいし。恥ずかしがって溜めてちゃ損だろう…?」
その言葉の意味とか、考える余裕なんてあまりなくて。
だけれど、頷いてしまっていた。
「そう…。いい子だな…。動いていいぞ」
そう言って、太ももをそっと撫でる。
「っそん…なの…」
「欲しい。けど、自分で動くのは嫌だなんて。我侭ってもんだろう…?」
我侭…なのか…?
体の方も限界だから。
俺はそっと、腰を動かす。
「んぅっあっ…あぁあっ」
「自分が、気持ちいいと思うように動いてみな…」
少し掻き回されるように腰を動かして。
それだけじゃ物足りなくて、上下に体を揺らす。
「ゃんっあっ…はぁあっんぅうっ」
抜き差しされる感触が、ものすごく気持ちいい。
もう恥じらいとか、吹っ飛んじゃって。
俺は、無我夢中になってしまっていた。
ベッドのきしむ音が響く。
「んぅっあっ…正兄ぃっあっもぉっ」
「そんな甘い愛撫で。一人だけイくつもりか…?」
そう言うと、俺の腰をつかんで、下から突き上げる。
「ひぁっあっ…あぁあっ…んっあんっ」
「もっと、かわいい声、出しな」
「やんっあっ…やぁあっ…正…兄ぃっあっ…いくっあっ」
「じゃあ、昨日、教えたように言ってみな…?」
昨日。
教えられたこと。
駄目だ…。
覚えてない。
「あっ…わかんなっあっ…ゃあっ…いくっやっあぁああっっ」
俺は、正兄の了解を得ないまま、欲望を弾け出してしまっていた。
正兄は、ため息をつく。
「…駄目だなぁ。慎は」
「…ごめ…」
「慎がかわいいから、たくさんの人にモテてかわいがられるいい子になれるようにって思って、してるんだからな…?」
そう教え込んだあと、紐のようなモノで俺のモノの根元を縛る。
「なっ…」
「だから、間違ってれば、ちゃんとお仕置きだってあるから。そんくらいわかるよな?」
そう言って。
俺の体をベッドに寝転がらせる。
「正兄っ…」
正兄は、自分のモノを引き抜いて。
それでも、俺の足は、膝を立てて開脚させられたままだった。
「これは、なにか?」
目の前に、見せられたのはローターだった。
「…ローター…?」
「そう。えらいな」
俺を褒めるようにしてから、スイッチを入れて。
振動するローターをそっと秘部へと押し当てる。
「ひぁっあっ…」
イったばっかの敏感な体が震え上がる。
すぐにまた、俺の股間のモノはそそり立ってしまう。
「あんまり感じると、紐、食い込むぞ」
俺にそう教えてから、ゆっくりと、ローターを中へと押し込んでいった。
「ぁああっ…だめっあっ…正兄ぃっあっ変…っやぁあっ」
「お仕置きの意味もわかってるだろう? 嫌とか言える立場じゃないから。でも、お 前の嫌がることを俺はするよ。ホントは嫌じゃないかもしれないけど?」
愉しそうにそう言って。
一番感じるところでローターの位置を留まらせると、ローターの勢いを強くする。
「ゃあっんっあっ…兄ぃっ…いくっ」
「イけないだろ」
そのまま。
今度は、ライターを取り出すからなにかと思えば、引き出しから取り出した赤い大きなローソクに火を灯す。
「っやっ…やぁあっやだっ…」
「ヤケドはしないよ。低温だから全然、大丈夫」
そう教えてくれてから、俺の足にロウを一滴垂らす。
「ぁっあっやっ」
足にロウがついた瞬間、体が大きくビクついてしまっていた。
「…それほど熱くないだろ」
一瞬、熱さを感じるが、すぐに収まっていた。
「足は、それほど敏感な箇所じゃないからな…」
そう言うと、今度は俺の腹あたりに垂らしていく。
「あっ…ぁあっんっ…やっ熱っ」
「そうか…。でも、感じるだろう…?」
後ろにローターを入れているからか。
こういった状況が余計に感じてしまうのか。
わからないけど、もうおかしくなってきていた。
ポタポタと、止め処なくゆっくりと、腹から胸元へとロウが落ちる。
「はぁっあんっ…正兄ぃっ」
「思い出せないのなら、しょうがない。だから、お前が思うように素直に、して欲しいこと言ってみな…。恥ずかしがる必要はない」
腰が変に動く。
やらしい。
もうおかしすぎる。
「あっ…イかせてぇっあっ…やあっ…もっとっ」
「もっと…なんだ…?」
なんだろう…?
もっと。
「欲し…ぃよおっ…正兄ぃっ…あっもぉっ…おかしいっ」
「おかしい?」
「あっ…変になっちゃうっあっ…あぁあっ」
熱い。
ポタポタと熱いロウが、俺の股間まで垂れる。
「やぁあっ…ぁンっ」
「ゾクゾクするだろう…?」
たくらむようにそう言って。
ロウソクの火を消して、適当な場所に放り投げていた。
俺の手首を拘束していた紐を取り、腕を引っ張って、引き寄せる。
「欲しいんだろ…? 自分で、俺に拡げて、ねだってみな…?」
耳元で、囁いた。
俺を、少しだけ突き飛ばすように、うつぶせに寝かせる。
「正兄…ぃっ」
「腰、あげて」
言われるがまま。
腰だけを突き上げて、正兄へと恥ずかしい格好をさらす。
ローターの機械音がやたら耳についた。
「はぁっあぁあっ…んっ」
「自分で、出せるか? ソレ。手は使わずだぞ」
それ…?
ローター?
「ぁっあっ…無理…っ」
「嘘つけって。無理ははずないだろ」
からかうようにそう言って。
俺の太ももを撫でる。
「やっぁっ…もぉっ…ぁあっイくっ」
「イけないだろって。それ、出したらイかせてやるから」
俺は、腹に力をこめて、ゆっくりとローターを押し出していく。
ありえないほどの羞恥心にかられる。
振動の刺激で、ついソコを締め付けてしまうと、出掛かったローターが中に入り込んでくるのもわかった。
「ぁンっ…あぁあっ…駄目っ」
「いつまで、チンタラ味わってんのかなぁ、お前は」
少しいらだつような口調が怖かった。
「ごめっなさっあっ…ゃあっ」
俺がまた力を込めたときだった。
正兄の手が、俺の股間を擦るもんだから、また締め付けてしまう。
「慎がそんなにローター気に入ってるとは思わなかったなぁ。いいよ…? そのまま、イかせてやろうな」
優しい口調。
だけれど、含みのある口調。
ローターが入り込んだままで、正兄は自分のモノを俺の中へと押し込んできた。
「ひぁあっ…やぁっあっ…ん、駄目ぇっ」
「自分が、早く出さなかったからだろう?」
奥まで入れられ、気が遠くなりそうなくらい感じてしまっていた。
「ぁあっ…正兄ぃっ…もぉっあぁあんっ…」
「しょうがないやつだな。外してやるから」
股間を縛っていた紐を解いてくれて。
一気に突き上げられる。
「ひぁあっ…んぅっあっ…あんっ」
「ほぉら…気持ちいいだろ。イっていいからな」
「やぁあっ…正兄ぃっ…あっぃくっ…あぁあああっ」
一息着いて。
正兄がタバコに火をつけてから、俺の頭を小突く。
「なに…」
「…慎。お前、その同じ学校のやったやつのこと、ちゃんと好きか?」
思いがけないことを聞かれた。
「……悠真……っつーんだけど、好きなのか…やるのが好きなのか、よくわかんなくて…」
一瞬、正兄が考え込むように顔をしかめる。
正兄にしては珍しいな。
「ま、悩むくらいならいいんじゃねぇの? お前、俺とやるときは、俺じゃなくってHのことしか考えてねぇだろ?」
笑いながらそう言って。
俺にタバコを勧めた。
「…いいよ、吸わないよ」
「はいはい。お前、いい子過ぎだよな。ホント、俺の弟かよって。……また、しばらく家帰らねぇから。次会うときまでに、その悠真さんと仲良くなっとけよ」
「っなんで…」
「お前、絶対そいつのこと好きになるから」
なんの根拠があるのかわからないけれど、正兄はそう断言した。
正兄はタバコの火を消して、身支度をし始める。
「…いまから出てくの?」
「あぁ。……お前さ、ひとつ気になってたんだけど。そのブレスレット、どうした?」
ブレスレット。
悠堵さんから貰ったやつだ。
「知り合いに貰ったんだよ」
「悠堵さんだろ」
なんで?
「悠堵さんのこと知ってるの?」
「当たり前だろって。っつーか、悠真さんって悠堵さんの弟だろ。だから悠堵さんとも知り合いなわけ?」
「違うよ。あ、悠真が悠堵さんの弟ってのはあってるけど…。全然、違うルートで知り合ってるから…。正兄はなんで知ってるの?」
さっき、冗談で悠真にさん付けしたのかと思ったけど、ちゃんとした意味でのさん付けだったのか…。
正兄は、少し言い留まって。
「お前と違って俺は遊びまくってるからな。裏情報は一通り知ってるわけ」
少し楽しそうに自慢げに言った。
「悠堵さんって有名なわけ?」
「あぁ。お前の行ってる学校の辺、一帯取り仕切ってる族の一員だろ」
「一員?」
「……総長って出回ってるっけ?」
リーダーのはず…だけど、ナツさんかもしれないって話も出てる。
「あのさ。一員の名前をわざわざ正兄、覚えてるの?」
「総長が夏彦さんで、夏彦さんの彼氏だからな。割と名前出回ってんだよ」
総長が夏彦さん。
その言葉に一瞬、体が強張った。
「悠堵さんがリーダーだって聞いてるよ。…でも噂では、ナツさんが裏のリーダーじゃないかとも聞いてるけど…」
「慎は夏彦さんとも知合いなのか」
「…というか、ナツさんに俺、やられたから…」
「あぁ。そうなんだ? …夏彦さんだよ、リーダーは。まぁ、チームに関係ない一般人から見たら悠堵さんが総長に見えてもおかしくないけどな」
ナツさん…。
そんな風には見えないけれど、でも、俺のことやった後、悠堵さんとの会話は少し怖い感じがしたしな。
「そのブレスレットな…。悠堵さんのオーダーメイドなんだよ。チームの奴はみんなしてるし、あとは、悠堵さんが気に入った奴にあげてるって噂だな。お前、気に入られたんだな。よかったじゃん」
「へぇ…」
よかったじゃん…。
っつーか。
つまり、見る人が見たら、チームの仲間とか勘違いされてもおかしくないわけ?
まぁ、わかる人ってそういないだろうけれど。
むやみにはずすと悠堵さんに怒られそうだし。
そういえば、悠真が透の腕のブレスレットに注目してたよな…。
俺はバレてんのかな…。
結構、制服の袖が長めだから見えてないかも。
あんまり学校には目立つようにちゃらちゃらつけてきたくないし。
「…よかったのかなぁ…」
「よかったっての。ま、これからいろいろイイことあるんじゃねぇの?」
正兄は、そう言って、身支度を済ませると、家を出て行った。
なんか、俺、どんどん違う世界に流されてってる気がするけれど。
大丈夫かなぁ。
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