大切な大切な友達。
ものすごく気があって。
考え方なんかも似てて。
体の相性もよくてさ。
なんていうか、仲間とか兄弟って感覚に近いかな。
一緒にいるとラクで。
たぶんさ。
それぞれに恋人が出来てもずっと変わらず、仲間で、友達でい続けられるんだろうなって。
そんな風に感じていた。
そう思ってたのは、俺だけだったらしい。
気付いてたくせにって。
凍也の友達に叩かれて、思った。
俺は、気付いてて、気付かないフリしてたんだって。
すごくいいやつなんだ。
失いたくないなとも思った。
いや、失うなんて思ってなかった。
友達は、永遠なんだって。
子供じみてるけどそう思ってた。
「な、凍也。例えばさ、恋人同士が喧嘩して別れると、もうそのまま連絡取らなくなったりしがちだろ。でも、友達って、そういうの無いよな」
「絶対にそうとも限らねーけどな」
「基本的には、戻れると思うよ」
「まあ悪いとこあっても、それはそれでしょうがねーかって思えるしな。ダチってそういうもんかもな」
「俺は、恋人より友達の方が大事かも」
「うん、分からなくもない」
「だろ。友達ってずっとなんだよ」
俺には好きな人がいた。
智巳先生。
叶わないってわかっていた。
それでも好きで。
凍也はそれを知っていた。
だから俺が凍也のこと、そういう恋愛対象で見ることはないって、わかっていたはずなんだ。
それでもいいってさ。
好きだからとかじゃなくて、利害関係が一致したんだよ。
凍也も、1人の方がラクだって言ってたから。
お互いこんな状態じゃ、体は欲求不満になるでしょ。
だから、セックスするだけ。
セフレってこういうもんなんだなーなんて思った。
聞こえは悪いけど、それでもやっぱりそれなりに好意のある者同士だし。
欲求不満解消の道具だなんて思ってるわけでもない。
そういうこともし合える、友達なんだよ。
けれどクラスも違うし、凍也のこと詳しくは知らなかった。
知らないんだけど、知る必要無いと思った。
興味がないとかじゃなくって、知らなくても仲良くいられると思ったから。
類は友を呼ぶ。
そんな感じで、どうせ似てるんだろうって。
聞かなくてもそんな気がしてた。
大切な大切な友達。
だから、凍也が行為の後に、幸せそうに笑うのを見て、不安に感じたことがある。
もしかして俺のこと、恋愛対象で見てたりしないよなって。
1人身がいいって言っていたし。
俺は、智巳先生が好きだって伝えてあったし。
好きになられても困るから、そういうつもりならやらないよって初めに伝えてあった。
俺だって、困るし。
凍也はそんなようなことを言ってくれて。
だから俺は、こいつとはいい友達になれるって思ったんだ。
それぞれが別で恋愛して、傷付いて。
そんなときに慰めあったり、恋人がいても、一緒に楽しめるような、そんな最高の友達でいられるって。
「今日、後輩に告られてさ。なんか流れで付き合うことになってんだ」
「え、智巳先生は?」
「うん。まあいずれは諦めなきゃいけないんだろうなって思ってはいたんだけど」
「後輩のこと好きなわけ?」
「そうじゃないけど。とりあえず形だけ。別にちゃんとした恋人とかそういうんじゃない」
そっか。
なんつって、いつもと変わらずいられると思った。
凍也はそういうやつだろうって。
「じゃあ、もうやめよっか」
そう言った凍也の声はなんだか泣きそうな声にも聞こえたけど。
泣きたいのは俺の方だった。
なんでって。
俺たち友達じゃんって。
頭では浮かぶのに声には出なくて。
友達だと思ってたのは俺だけだったんだってわかった。
凍也は俺を恋愛対象で見ていたんだって。
凍也とバカみたいに繰り返したセックスは、楽しくて、気持ちよくて。
きっと凍也も同じことを考えて、思ってるんだろうなって感じていた。
親近感や安心感を覚えた。
それも全部、思い違いで。
俺と凍也は違うことを考えていたんだ。
友達だと思ってたのに。
だから、凍也のこと、大好きだけど。
違うんだ。
恋愛とかそういうんじゃない。
なにも言えず、うんと軽く頷くだけの俺を置いて、先に凍也は保健室を出て行った。
なんでもないフリをして教室に戻ると、追い討ちをかけるように、凍也の友達が俺を叩いた。
気付いてたくせにって。
俺はただ凍也と、友達でいたかった。
それだけなのに。
あれから、1年が経ってしまった。
連絡を取らなくなった俺たちは、なんだか恋人同士だったかのように思えた。
「な、凍也。例えばさ、恋人同士が喧嘩して別れると、もうそのまま連絡取らなくなったりしがちだろ。でも、友達って、そういうの無いよな」
「絶対にそうとも限らねーけどな」
「基本的には、戻れると思うよ」
「まあ悪いとこあっても、それはそれでしょうがねーかって思えるしな。ダチってそういうもんかもな」
「俺は、恋人より友達の方が大事かも」
「うん、分からなくもない」
「だろ。友達ってずっとなんだよ」
いまでも、あのとき凍也と話した内容をしっかりと覚えている。
失いたくなくて、大事にしてたのに。
傷つけて泣かせてしまった。
それでも、俺は凍也を信じていて。
戻れるんじゃないかって思ってる。
もし、凍也が俺のこと友達だって思ってくれているのなら。
戻れるはずなんだ。
ずっと俺は、待ってるから。
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