生徒会室へと入り込むと、少し真面目そうな先輩。
だけれど、俺を確認して笑った先輩は、なんとなくサドっぽく見えた。
エセ優等生ですかね。
「じゃ、僕は出てきます」
良介先輩は手を振って生徒会室を後にした。
「…宮原先輩…ですか」
「そう。樋口智巳くんでしょ」
「はい」
「…わかってる? 用件」
「なんとなく」
「じゃあ、サクサクいっていい?」
「……はい」
そう答えると同時くらいに、壁に押し付けられて、口を深く重ねられる。
「んっ…」
舌を絡め取られ、ゾクゾクするようなキス。
息苦しくて、いっぱいいっぱいになる。
「ぅんっ…」
顔を下に向けるとなんとか解放してくれるが、ズボンの上から股間を撫で上げていく。
「っ…ん…」
チャックを下ろされ、直に取り上げられたソコを何度も何度も、擦りあげられて、少し頭がボーっとした。
「んっ…ぅんっ…はぁ…っ」
この人と最後まで…。
緊張が走る。
「どうした…?」
俺より背の高い宮原先輩は、少し屈んで俺を下から覗き込む。
「…いえ…別に」
「不安そうな顔してる」
楽しそうにそう言って、ズボンと下着を下ろしてしまい、用意していたのか、ローションを俺の股間に垂らしていく。
「んっ…!」
ヒヤリとした感覚に体がビクついた。
宮原先輩は、たっぷりと絡むローションを指に纏い、足の間、奥の入り口を撫でて示す。
「あっ…」
「…慣れてないの…?」
「っ……違…」
「隠さなくていいよ? 会長も見てないし、ビデオもないし。俺だけが証人だから」
「…別に…」
なにか言い訳するわけでもないけれど、慣れてないと素直に応えることも出来ないでいると、軽く耳元で宮原先輩が笑いながら、ゆっくりと指を押し入れていく。
「あっ…んぅっ…んーーっ!!」
「すっごい、キツいよ…」
奥まで入り込んだ指が、中を刺激するように掻き回す。
「あっあっ…んっ…ぅんんっ」
逸らしていた顔を無理やり宮原先輩の方へと向かされ、涙が伝う頬に舌が這う。
「2本目、入れるよ?」
「んっ…」
入り込んで、ソコを拡げられると、理性が崩壊するような感覚がした。
「ぁあっ…!! やっあっ」
宮原先輩の腕にしがみついて、肩に頭を押し付ける。
「ひぁっ…あっ…んっ」
「立ってるの、ツラい?」
辛いとは思うが、それを答える余裕はなかった。
けど、理解してくれたのか、一旦、指を引き抜いてくれる。
と、俺の体を抱き寄せて、俺の足の間へと宮原先輩の足が割り込む。
「支えててあげる」
耳元でそう言うと、また…今度は後ろから2本の指を押し込んでいった。
「んーっ…あっ…はぁっ…あっ」
宮原先輩に支えられながらも、俺はしがみついて。
気持ちいいのかなんなのか解らない刺激に耐えていく。
「智巳」
名前に反応し、上を向くと、宮原先輩が口を重ねてきて、絡まる舌先が気持ちよかった。
「…慣れてきた?」
「あっ…ンっ…ぁあっ…」
気持ちいい。
ローションのせいか、中がぐちゃぐちゃになっているのがわかる。
いやらしい音も響いていた。
ただ、しがみついてされるがままの俺にプライドはないのかと、頭をよぎった。
しょうがないだろ。
けじめだ。
こうでもしなきゃ、深雪先輩は、生徒会長に。
自分がどうなってでも、どうしても深雪先輩の初めての相手になりたかったんだよ。
感情が昂ぶって、生理的な涙と精神的な涙が混じる。
「ひぁっ…くっ…ぅんっあっ」
宮原先輩は、俺の頭を撫でながら、上を向かせてはその涙を拭うように頬にキスをした。
それから逃れるように俺はまた、宮原先輩の肩へとおでこを押し付けた。
「んっあっ…やっ…ぁあっんっあぁああっっ」
中を蠢く指先に何度も感じる所を突かれ、欲望を放っていた。
頭がクラクラした。
「……気持ち…悪…」
そう洩らす俺の頭をなでてくれる。
「座ろうか」
宮原先輩と一緒に床に座り込み、腕を引かれ、されるがまま、俺は宮原先輩の膝に頭を乗せ寝転がっていた。
膝枕なんてしてもらうつもりはないのだけれど、面倒で俺はそのまま。
「なに考えてた…?」
俺の頭を撫でながら、優しい口調でそう聞いてくれる。
「…別に」
「慣れてない上、考え事してたら、貧血起こすよ?」
「貧血…?」
あぁ、この気持ち悪いの、貧血か。
バカだな、俺。
ってか、慣れてないってバレバレか。
「ココに血が集まるから。立ってんのはキツいよ」
俺の股間に触れながら、そう教えてくれていた。
「ん…」
「言ってくれたら、寝ながらしたのに」
返す言葉もなく、少し沈黙。
なんだか、なじんでしまっているようにも思えた。
落ち着いたら、続きするんだろうか。
そう思うがなんだか無気力状態で、少し時間が経つ。
生徒会室のドアが開き、目を向けるとそこにいたのは生徒会長。
「会長。もう終わっちゃいましたよ」
なんでもないみたいに宮原先輩の声が響く。
俺は寝転がったまま、聞き耳を立てていた。
「早いな。せっかく見せてもらおうかと思ってたのに」
「今日は、もう無理ですよ。俺も、こいつも疲れ果ててますから…」
会長の機嫌を損ねないようにか、申し訳ないような口調でそう言って。
会長も理解したのか、それ以上、求めてこなかった。
俺も、実際、今やるとなったらキツいだろうし。
やりましょうなんて言えなかった。
宮原先輩だけでなく、会長にも慣れてないということがバレてしまうんだろうし。
平気なフリくらい出来ると思ってたんだけど。
結構、厳しいな。
俺は、体を起し服を着なおすと、その場に立ち上がる。
一瞬、またクラっとして視界が暗くなりかけたが、すぐさま元に戻った。
「行っていいですか…」
宮原先輩にでなく、会長に問う。
「…まぁ、いいか」
会長のその返事を聞き、宮原先輩に目を向ける。
俺の意図がわかったのか、
「俺、ちょっと着替えてきますね」
そう会長に伝え、なんでもない雰囲気で、俺の後をついて生徒会室を出てきてくれていた。
「…どういうつもりですか」
やったフリしてくれたわけだろう?
感謝なんて、したくなかった。
本当は、ありがたかったけれど。
「別に。やる気分にならなかっただけ」
にっこりそう言ってくれるけれど、なんとなく悔しかった。
同情された気分。
「じゃあ、どうして会長に、そう言わなかったんですか。ちゃんと自分は仕事したって、伝えたかったんですか?」
俺をやるのは宮原先輩の役目だから。
やる気がなくて、やりたくなくても、やったフリした方が楽なのかもしれない。
だけれど、本当は、この人、俺のために気遣ってくれているような気がして、むかついてしょうがない。
「いいだろ…。やったフリしておけば。俺も楽だし、智巳も楽だ」
「俺は、やるってそう決めたんです。けじめなんすよ。なのに…」
宮原先輩は、俺の体を壁へと押し付けて、少し冷めた視線を俺に向ける。
「…本当にやる気があんなら、それなりの態度取れよ。やりたくないけど、しょうがなくで相手されんの、気分悪いんだけど」
少しキツめの口調でそう言われ、なにも言い返せなかった。
泣きたくなってきた。
どうして、こうも上手くいかないんだろう。
視線を逸らすと、宮原先輩は、俺の体から手をどかしてくれた。
「智巳は、本当はやりたくないんだろう?」
「……よく…わかりません。でも、会長と約束して、やらなきゃいけなくて…」
使命感みたいなものに縛られる。
「智巳」
名前を呼ばれ宮原先輩を見ると、さっきとは打って変わった表情。
にっこりと俺を見て、笑ってくれる。
「ねぇ、頼みがあるんだけど。やったフリするし、智巳もその方が都合がいい。その代わりの条件として。…雅紀っているだろう? 水泳部の。彼の鍵当番の日を教えて欲しい」
そう俺に言う。
そんなの。
水泳部の部長である悟先輩に聞けばいいのに。
悟先輩の方が、仲いいだろうに。
俺が、貸しを作りたくないだとか考えてるのも、全部わかってるんだろう。
そういうのが、嫌だと感じる俺の性格すらも読まれてそうで。
「…わかりました。調べておきます」
素直にその条件を聞き入れた。
「じゃあ、今度、教えてね」
宮原先輩は、足を止めて、俺に手を振る。
ここで、さよならってこと?
「…先輩…俺、やっぱりいずれは…」
「…それでもいいよ。智巳の中でけじめがつかないんなら、相手する。また、今度ね。
とりあえず、今、会長から逃してあげた代わりとして、雅紀のことは頼むよ?」
今の時点で、逃してもらったのは、確かにありがたいことだったし、大した条件でもないから。
俺は頷いて。
宮原先輩に背を向け、その場を後にした。
やるって、結構、精神的にも肉体的にも大変だなんて実感する。
宮原先輩が大人に見えて。
俺自身が、ものすごく子供のように思えた。
なんの考えもなしに、感情的に深雪先輩をただ抱きたいと考え行動に出たことを少し悔いた。
深雪先輩は、俺のこと、馬鹿な子供だと思っているのかもしれない。
傷つけただろう。
そう思うと、苦しくてまた吐き気がした。
だからこそ、自分も誰かにやられなきゃ、気がすまなかった。
やられたところで、俺がやる気のない深雪先輩を自己中心的な考え方で、やってしまったことに代わりはないのだけれど。
取り返しの付かない過ちを犯した気になっていた。
深雪先輩のこと、傷つけてでも、どうしても欲しかったんだろう。
好きだから。
誰よりも特別な存在になりたくて。
俺は深雪先輩を傷つけて、初めての男という肩書きを手にいれた。
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