「須藤さん……。俺、すっごいずっとHしてたから、飢えてんだけど」
 まあだいたい予測はついてたんだけど。
「うん」
「事情によるって、朝言ってたじゃん? 駄目? そういう理由じゃ」
 駄目ではないんだけどな。
「俺がずっと相手し続けるわけにもいかないってのは、わかってる?」
「わかってるよ。須藤さんには彼氏がいるって。だから……とりあえず……っ」
 ああ。
 したくてたまらないわけね。
「そういう友達は、他にはいないの?」
「……中学の頃、やられても全然気持ちよくなかったから、同世代相手じゃ、ちょっと」
「でも、ずっとしてた相手は、同級生だろ」
「そうだけど。どうやって上手いやつ見つければいいのかわかんねぇし。かといって下手なやつにいちいち、教えたくねぇしっ。それに……っ」
 少し凍也は言い留まり、顔をそむけた。
「なに?」
「……あんまり……見せられない」
 普段、タチばっかだった凍也からすれば、やられて喘いじゃう自分は恥ずかしいんだろう。
「俺だって、別に上手かないよ。柊先生とかの方が上手いんじゃないかな。あの人、フリーだし」
「……あの人、やられたことあんのかな」
 俺みたいに、普段やられてるやつの方が安心ってこと?
「……とりあえずするけど。期待はすんなよ」
「……うん」
「よくないと思ったら、俺に気ぃ使わず、途中でも言いなよ。無理に続けても意味ないし」
 凍也は、俺ににっこりと笑ってくれた。
「優しいね、須藤さん」
「……別に。普通だろ」
「須藤さん、前に『大抵、やられる側』って言ってたよね。それって、やる側もしたことあるってことでしょ。すげぇ、安心じゃん」
 ため息を一つ付く俺なんてお構いなし。
 凍也は少し愉しそうだった。
 まあ、以前の凍也に少し戻ったようで、それはそれでいいのかもしれないなんて思う。
 立ち上がり、引き出しからジェルを二種類取り出した。
 ムードなんてもんはまったくない。
「なにそれ」
 凍也は床に座ったまま興味津々に、俺の手元を見上げる。
「ジェル。普通のと、ちょっと熱くなるやつ」
「なに、熱くなるのって。それ気になる」
「……この手の使ったことない?」
「普通に適当なジェルとかはあるけど、熱くなるとかそういうのはないよ」
「じゃ、やめとこう」
「えー」
「癖になると、困るだろ」
 そう言うと、しぶしぶ諦めてくれているようだった。
 なんだか、かわいらしい。

「凍也。ただやりたいってだけじゃなくって。なんか希望とかは?」
「希望?」
「どうされたいとか」
 凍也は、特に無いのか思いつかないのか、うーんと考え込んでしまう。
「まあ無いならいいよ。その都度、聞くから」
 コクリと頷く凍也の前にしゃがみこみ、とりあえず口を重ねた。
 ああ。
 別にキスとか不必要だった?
 まあいっか。
 雰囲気作り。
 というか、凍也ってやっぱりかわいいし。
 何度も舌を絡ませて。
 少しだけ上を向かせて、唾液を送り込んでやる。
「んぅっ…」
 軽く体をビク付かせる凍也を目の前にすると、久しぶりにこっち側の立場でやれるということに俺もまた興奮してきていた。
「凍也……俺の好きにしていい?」
 口を離し近距離で聞くと、少しだけ不安そうな目を向けたまま、それでも頷いてくれる。
 それを確認し、もう一度口を重ねた。
 凍也は俺に合わせて一生懸命、舌を絡めてくれる。
 俺が送り込む唾液を、飲み込んでくれているのもわかった。
 かわいくてかわいくて、そのまま押し倒す。
 左手で凍也の髪をそっと撫でながら口を離し、首筋に舌を這わすと、くすぐったいのか、体をよじらせた。
「……緊張してる……?」
「少し……。俺、どうしよう。うまく、感じられなかったら」
「それはそれでいいよ。中で感じられないなら口でしてあげれるし」
 そうとだけ答え、ズボンと下着を、抜き取っていく。
 凍也ももちろん拒むつもりはないようだが、素直に抜き取られた後、そっと俺を見上げた。

「凍也、見られるのは慣れてるんだろ」
「……でも、須藤さんに見られるのは初めてだし」
 恥ずかしいんだろうか。
「上は? 脱げる?」
「……うん」
 少しだけ恥ずかしそうにしながらも、凍也は軽く体を起こし、上に着ていた服を脱ぐとまた、寝転がって俺を見上げる。

 飢えていると言っていただけあって、凍也の股間のモノはすでに上を向いていた。
 それを無視する形で、後ろの入り口へと乾いた指を這わす。
「え……そのまま入れるの?」
「入れないよ。確認してるだけ」
 そっと、外側の襞を撫でてやると、それだけで体を少しビクつかせる。
 大丈夫そうだな。
「凍也。膝立てて。もう少し足、開いて」
「……うん」
 また不安そうな顔で、足を開き膝を立ててくれる。
 すごくいやらしい光景で、ゴクリと喉が鳴った。
 ただの処理だと思ってもらわなきゃ困るんだけど俺の方も興奮していた。

 何度か、指先で入り口付近を擦ってやると、凍也は顔を背け、腰を浮かせる。
 それに気付きながらも、ゆるゆる撫で続けると、次第に腰を揺らしはじめた。
「んっ…っ…ぅんっ」
 恥ずかしいのか、両腕でそむけたままの顔を隠してしまう。
「凍也。ジェルつけるから。少し冷たいよ」
 俺の指先を見もしない凍也に一応教えてやって、自分の指先にジェルを垂らしながら、ゆっくりと入り口へ塗りこんでいく。
「んっ! ……ぅんっ」
 ぬるぬるとした感触。
 凍也は腰をくねらせながらも、ソコをヒクつかせていた。

 思った以上に、Hな体で。
 俺の指は、拒まれることなく、中への侵入を許される。
「ぁっ……あっ…んーっ」
 ゆっくりとした速度で、人差し指1本。
 奥の方まで入り込んでしまう。
「あっ…あっ」
「凍也……平気?」
「っ…やっ」
「や? ……やめる?」
 凍也はやっと、顔から腕をどかし、代わりに俺の左腕へと爪を立てる。
 もう片方の手は、自分の胸元に爪を立てていた。
「凍也?」
 俺が呼びかけると、やっと逸らしていた顔を俺の方へと向けてくれる。
 涙をたくさん溜めて、今にもあふれ出そう。
「思い出す……? いやならやめる」
「っ違っ……」
 精神的なものかと思ったが、どうやら生理的な涙のようだ。
 少しだけ退こうとした俺の指をきゅうっと締め付ける。
「んぅっ」
 ゆっくりとした速度で、中を少し掻き回すと、大きく体をビクつかせた。
「あっ…んっっ! やぁっ」
 俺が回す速度に合わせるようにして、声を洩らす。
 目を瞑った凍也の瞳から、とうとう涙がこぼれた。
「はぁっ…須藤さぁっ…あっ…だめっ」
 駄目?
 見れば、凍也の股間のモノからはすでに先走りの液が、たくさん溢れ出ていた。
「……どうして?」
 理由なんてわかっているが、それでもつい聞いてみてしまう。
「っ…ぃく…っやぁっ…ん、須藤さっ…」
「……いいよ、イって」
 俺はいままで触りもしなかった前立腺辺りをぐっと押さえてやる。
「ぁあっ! …だめ…ぇっ…そこっ…」
「我慢しなくていいから」
「やぁっっっ…やぁっぁああっんぅうっっ!!」

 体をビクつかせ、凍也が射精する。
 ドロリとした液が凍也の腹の上に乗っかった。
「……凍也、溜めすぎだろ」
「んっ……」
 顔を真っ赤にして、それでも少しぼーっとした様子で、腰をくねらせる。
「ぁっ……須藤さっ」
「ん?」
「んっ! ……俺っ……」
 し足りないんだろうな。
 指を二本に増やし、ゆっくりとそこを押し広げていく。
「はぁっあっ……んぅっ! 須藤さぁっ……あっ」
「もうちょっとジェル足すよ」
 入り込んだ2本の指にジェルを垂らして、中へと塗りこむ。
 すべりのよくなったソコは、ぐちゅぐちゅといやらしい音を響かせていた。
「んぅっ……ぁあっあっ…だっめ……ぅああっ……」
「だめ?」
「んっ! あっやぁあっっ……ぁああんぅっ!!」
「続けていいの?」
 なにも応えられずにいる凍也をほっといて、指で中を掻き回していく。
 そのたびに、凍也は体をびくびくと震わせていた。
「須藤さっ……んっ!! ぁあっ! やぁああっっ」
 
 凍也の声はいやらしくて。
 かわいくて。
 お腹に乗った精液が乾く間もなく二度目の射精をする。
 その姿を見ていたら、俺の方も抑えられそうになかった。
 なんとなく凍也に合わせてやるだけのつもりだったのに。
 凍也が満足したのなら、途中で止めてもいいなんて思っていたのに。
 今はもう、やりたくて仕方ない。
 そんなことを思いながら、少しだけ緩やかに中を掻き回し続ける。
「ひぁっあっ……ぁんっ! あぁあっ」
「……凍也、声殺すの苦手?」
 凍也は、涙を溜めた目で俺を見上げて軽く頷く。
「……いいよ。もっと声出して」
「ぁっんっ! だっめっ……須藤さっ……あっ」
「なにが?」
 俺って、本当はやっぱり少しSかもしれないなんて思ってしまう。
 それでも、俺にいじめられているだなんて凍也は思っていないだろう。
「イっ……ぁっあっ……イったのにっ……あっ、掻き回さなっ……」
「どうして」
「だめぇ……俺っ……あっっ……またっ」
 ああ、本当に余裕なさそうだ。
 かわいいな。
「いくっ……やあっ……いくっ、イクっ須藤さっ」
「いいよ」
 いいけど、正直、これでやめるつもりはない。
 なんとか、それを言いとどまる。
「はぁあっあっ……! あっあぁあああっっ」

 すごいな。
 立て続けに3回も。
 後ろだけでだし。
 相当、開発されちゃってるよな。
 まあ俺も、凍也がいままで相手してきた子供よりは自信あったりするけれど。
 テクニック的な意味でね。
 
 ゆっくりと指を引き抜く俺を凍也はボーっとした顔で見上げる。
「須藤さ……」
「大丈夫?」
「あ……須藤さんの指……。すご、気持ちい」
「そう」
「っ……したぃ」
「……うん」
「須藤さ、して……俺、まだ……」
「……俺も、したいよ」
 凍也の手を引き体を起こす。
 座ったまま、後ろから抱きしめた。
 凍也はまだ落ち着かず、大きく呼吸する。
 俺は俺で、興奮して息が荒くなっていた。
「須藤さっ……あ、俺のっ……触ってよっ」
「じれったい?」
「だってっ……さっきからずっとっ……」
「後ろだけで、結構感じてくれた?」
 耳元で聞くと、くすぐったいのかピクンと体を震わせ、そっと頷く。
「このまま、触らずに俺の入れるだけでもイけるんじゃない?」
「……イけると思うけど……俺っ」
 言いながら期待しているのか、凍也のモノが硬く大きく上を向く。
「なに」
「あ……も、自分でしちゃいそ……」
「我慢してるの?」
 俺は後ろから凍也の左手首と右手首を掴む。
「あっ……」
「自分で、擦らないようにしてくれてたんだ?」
「っ……ん、だって……。須藤さんがしてくれてるのに、俺が勝手にしていいのかわかんなくてっ」
 変なところ律儀だな。
「いいよ。そんなに気使わなくて」
「あ、それにね。ホントにさっきは余裕なくて」
「そう」
「今は、したいよ。ってか、してよ」
 そう言いながら、凍也はまるでせがむように軽く腰をくねらせる。
「……かわいいね。凍也」
「っ……かわいくないよ……。ね……はやくっ」
 本当にかわいい。
「言って」
「あっ……ぁっ……俺の……俺の、ちんこ触って……」
 後ろからでも、凍也が恥ずかしがっているのがわかる。
 凍也の両腕を開放してあげ、左腕で凍也の体を抱いた。
 空いた右手で、凍也のモノを掴み、人差し指で亀頭を撫でる。
「あっ……んぅっ!」
 ローションをまとったままの手でぬるぬると擦り上げると、気持ちがいいのか凍也は俺へと体を預けた。
「はぁっ……ぁっ須藤さぁっ」
「……入れていい?」
「ぅんっ……あっ……うんっ」
 凍也の顔が見ていたくて、その体をひっくり返す。
 凍也は素直に仰向けになると、そっと足を開いた。
「……須藤さ……」
 ローションを纏わせた自分のモノを押し当てると、凍也が少しだけ体を跳ねさせる。
「ゆっくり、入れるから」
「ん……」
 まるで処女みたいな凍也の反応が本当にかわいらしい。
 緊張と不安を隠しきれない様子が見て取れる。
 言葉通り、ゆっくりと中へと押し入るとまた体を跳ねさせた。
「ぁあっ!! んーーーっ!」
 すごい圧迫感。
 それでも、凍也は受け入れてくれる。
「はぁっ……須藤さっ……あっ……拡がっちゃっ……」
 指よりは拡がるだろうが、他人と比べて特別でかいというわけではないだろう。
「拡げられるの、苦手?」
「んっ……んぅっ、わかんなっ……」
「じゃあ、前も一緒にするから」
 奥へ奥へと腰を進めながら、凍也の勃ちあがったままの性器に触れる。
「ひぁ……あっ……ぁあっ」
 さきほど探った凍也の好きそうな前立腺付近をカリで擦ってやると、凍也の先端から蜜が溢れ出した。
「あんっ……あっ……ど、してっ」
「ん……どうしてって?」
 少しだけ動きを緩やかにして言葉を待つ。
「はぁっ……須藤さんとっ……初めてなのに……っ俺の気持ちいとこっ……なんでわかんのっ?」
「……凍也見てればなんとなく」
「ぁっ俺っ……そこ……そこ、すごい、悦くてっ」
「うん……」
 大きく抜き差しはせず、中で凍也のいいところに当たるよう腰を動かす。
 凍也は、ビクビクと体を震わせ先走りの液をまた溢れさせた。
「ぁあっあっ……あぁあっ……あんぅっぃくっ……あぁああっっ」
 我慢出来なかったのかすぐにイってしまう凍也に合わせ一旦、腰を止める。
 脈打つ内壁が気持ちいい。
「ぁっ……須藤さっ……ごめっ、俺っ……こんなにっ」
「いいよ、別に」
「続き、してっ……。須藤さ、イクまで」
「無理しなくていい」
「……してよ」

 10歳も下の子供が、甘えてくれながらも俺を気遣ってくれて。
 それがなんだか、すごくかわいらしくて嬉しく感じた。
 
 今度は、凍也の感じすぎる部分を少し避けるようにして中を出入りする。
「はぁっ……あっ……あっ……それっ……あっ、気持ちぃっ」
「ん……俺も、イイよ」
「あっなんかっ……んっ頭、ぼーっとしてっ……ぁっ」
 イった直後にはこれくらいぬるい刺激の方が心地いいだろう。
 ローションがくちゅくちゅと音を立てる。
 うっとりするような凍也の視線はものすごくいやらしい。
 次第に、凍也の方からせがむように腰をくねらせてきた。
「はぁっ……須藤さっ……中っぁっ中、きもちいっ」
「すごい……凍也、腰揺れててかわいいよ」
「とまんなっっ……すご……須藤さ、動くたびに、ぐちゃぐちゃってっ」
「うん……聞こえてる」
「……須藤さんのっ……硬いよぉ……っ」
 凍也の態度は演技に見えなくて、素直な感想に自分のモノが完全に中で大きくなる。
「……凍也……掻き回していい?」
「うん……っ」
 また、ぐるりと中を掻き回しながら、凍也の股間を擦りあげる。
 凍也は体を震わせながら、床に着く俺の腕をぎゅっと掴む。
「ぁあっ!! やぁっ……俺っ……すぐイっちゃっ」
「俺も……イくから」
 少しだけ乱暴に、中を出入りさせ前立腺を突きながら掻き回す。
「やぁあっ!! あっぁあっ……ぃくっ……須藤さぁっ……いくっぁっあぁああっっ!!」

 大きく体を跳ねさせる凍也の中から自分の昂ぶりを引き抜き、俺も外で達していた。
 凍也が自分で出した精液と、俺が放った精液が混ざって、すごくいやらしく見えた。

 そもそも精液まみれの凍也がいやらしいんだけど。

 凍也は何度も俺の名前を呼んでくれた。
 ただの欲求不満解消のはずなのに。

 脱力状態の凍也の体を濡れたタオルで拭いていく。
「凍也にかけちゃって、ごめん」
「いいよ、そんなの。俺、自分の精液めっちゃかかってるし」
 そう言って笑いながら、おとなしく俺に拭かれてくれる凍也はやっぱり無邪気でかわいらしかった。



「須藤さん、ありがと。すっげぇ、気持ちよかった」
 体も拭き終わり起き上がると、凍也はそう言ってくれる。
「……そう」
「うん。よかった」
 凍也は俯いたまま顔をあげなかった。
 さきほどの無邪気さはない。
 見ていられなくて、つい、抱き寄せてしまう。
 震える体で、凍也が泣いているのがわかった。
 俺はなにも言わず、そっと頭を撫でてやる。
「須藤さっ」
「うん……」
「俺、気持ちよくてっ」
「うん」
「……悠貴は、特別じゃなかったのかなぁ」
 いままでは、誰としても気持ちよくなかった。
 それが悠貴とやって、初めて気持ちいいと感じられた。
 今、俺とやっても気持ちがよくて、混乱しているのだろう。  

「……俺が、凍也を好きだから」
「え……」
「凍也のことちゃんと想って抱いてるから。気持ちよく感じてくれるよう努力したから」
「……うん」
「悠貴もそうだよ。凍也のこと、考えてた。別にそれまでのやつらが考えてなかったってわけじゃないだろうけど。たぶん、その何倍も考えてくれた。俺は、すでに悠貴に教えられちゃってる凍也の体を抱いたわけだから。悠貴よりも先だったら、凍也は気持ちいいって感じてなかったかもしれない」

 凍也は頷いて、俺にしがみついた。
「ありがと、須藤さん。優しいね。……裏切ったのは、俺なんだ」
「どうして」
「悠貴を好きになったから」
「……裏切りなの?」
「うん。ずっと友達でいようって。約束してないけど、そういうつもりでお互い始めたから」
 振られたことだけじゃなく、裏切ってしまった罪悪感から苦しくて、泣いているのかもしれない。
「好きになるのはしょうがないよ。悪いことじゃない」
「……好きにならなきゃよかった。好きになったせいで……せっかく友達だったのに」
「凍也は、振られたことよりも友達を失ったことの方が辛いの?」  

 凍也は少しだけ時間を置いて、頷いた。
「初めから、付き合うつもりとかじゃなかったし。けど、よくわかんないよ」
「時間をかければ、きっと戻れるよ」
「もう、どんな顔して会っていいのかわかんねぇし」
「……少し休憩しなよ。きっと、戻れるから」

 もう一度頷いてくれて、泣きつかれたのか、凍也は俺に抱きしめられたまま、うとうととし始めた。
 そっと布団へと寝転がらせる。
「ちょっと寝た方がいいよ」
「昼にも寝たよ」
「疲れただろ。もう1回、寝ればいい」
「じゃあ、須藤さんも」
 俺は眠くなかったが、凍也の隣に寝転がった。
 子供を寝かしつける親の気分だな。
 そんな立場になったことないけれど。
 
 安心してくれたのか、疲れてたのか、凍也はすぐ眠ってくれた。
 その寝顔を見ていたら、寝るつもりはなかったのに、なんだか和んでうとうとしてしまう。
 少しだけ、俺も眠ろうか。