「…でさぁ、結局、部長って湊瀬先輩のこと好きなわけ…?」
美術部に、ちょっと遊びに来た時だった。
俺と優斗と美術部員の拓耶とで、優斗が用意したジュースを飲みながら話していると不意にそんなことを拓耶がふる。
「うん。好き」
そうやって言われるのは嫌じゃない。
「恋愛感情あるわけ?」
俺が聞きたくても聞けないことを拓耶はバンバン聞いてくれる。
少し聞くのが嫌な気もしたが、俺は拓耶をとめずに優斗の言葉を待った。
「遊び以外でだったら恋愛感情なしじゃ俺は人は抱けんよ」
「まぁたかっこいい事言っちゃてぇ」
拓耶はコロコロと笑っているが、俺はそんな笑える状態じゃなくって…。
結局、遊びなのかよくわかんねぇし。
「でもさぁ、凪って子は? 部長から告ったんだろ?」
「ん…。凪も好き。凪は女の子みたいな感じで好きで…。榛は男として好きなんよ。わかる?」
本人目の前にしてよくしゃべるな、こいつは…。
「じゃ、湊瀬先輩は? 部長のこと好きなわけ…?」
目を輝かせながらこっちを見るけれど、俺はもっぱら答える気はない。
「優斗と俺の話なんて拓耶、聞いててもつまらなくねぇ?」
「すっげぇ、おもしろいんだけど」
どうにか話を中断して別の話題に持っていきたかったのだが、どうも拓耶は俺らのことにやたらつっかかる。
聞かせたくない話ほど、相手は聞きたがるってのはまぁ、理解できるけど…。
「…優斗もさぁ、ベラベラ話して恥かしいとかないわけ?」
「ないよ。ホントの事だし、聞いてもらうのって楽しくない?」
「…もう…いいや。俺、戻るわ」
「待ってや。榛っ」
俺は、優斗の言葉を無視して美術室をあとにした。
「榛…写真部、行っていい…?」
「…ついてくんなよ…」
そう言っても優斗はいっつもついてくる。
俺が優斗に背を向けているうちに、いつのまに間を縮められたのか、いきなり不意打ちで、優斗が俺に抱きついてきた。
「っば…かっ。何抱きついてんだってっ」
「榛が気にするほど、周りはそう気にしとらんって。……榛……」
耳元でそうやって、切なげに言われるのが苦手だ。
俺が、優斗の気を落とさせてしまった気がして、罪悪感みたいなものを感じてしまう。
「……俺も…聞きたい。榛、俺のこと、好き……?」
「…んな事、聞くなよ…」
優斗が、俺に抱きついたままで、そっと股間に手を延ばす。
それに気づかなく、心の準備をしていない状態でズボンの上から俺のモノをそっと掴み上げられると、驚きから自分の体が変にビクンと跳ねる。
「…っっ…」
「……榛……」
そのまま、布越しにだけれど、いやらしい手の動きでソコを撫でられると優斗を引き剥がそうとする手に力が入らないだけでなく、自分の足にも力が入らなくなってくる。
「…っば…か…っ…離し…」
「…写真部…行っていい…?」
俺のズボンのチャックを下ろして、ペニスを引き出すと、直にソレを擦り上げながらねだるように耳元で聞く。
「…いい…から…っもう離せって…っ」
このまま、廊下でこんなことしてたんじゃ、さすがに周りが気にしないわけがない。
誰かきたらたまったモンじゃない。
優斗が素直に俺の体を抱く手を緩めるから、ホっと一息ついたところだった。
前に回った優斗は俺の腕に手を絡め、廊下の壁に俺の体を押し付ける。
「な…」
俺が反論する隙もなく、優斗は俺の口に自分の口を深く重ね、力が抜けてしまってる俺の体を片手で壁に押し付けたまま、あいた方の手で、露わになっているペニスを擦り上げた。
「ンっ…んくっ…んぅ……」
舌先が絡まっていやらしい音が耳につく。
優斗の背中に手を回して引き剥がそうとするが、力が入らないせいで役に立たず、このままではどうにも俺が欲しがって背中に手を回してるみたいで妙に焦ってくる。
「っ…はぁっ」
解放された口元からは、唾液の糸が引き、それに対して恥かしさを感じる俺とは逆に、優斗はうっとりした様子で、俺の頬に手を触れる。
「…じゃ…写真部行こっか……」
このまま廊下で続けれてもたまったもんじゃないから、早いトコ写真部に行こうと、足を進めようとしたその時だった。
「…ぁ…っ…」
動かした足がガクリと折れて、俺はその場に座り込んでしまっていた。
「なんやん、榛…。感じてまって腰砕けたとか?」
心配してる様子でなく、楽しんでいる感じで俺を見下ろしてくるのが腹立たしい。
「っちげぇよ…。ちょっと、足がもつれただけだって…」
普段だったら、こんな触られたくらいじゃ全然、足がもつれるとかないんだけど…。
気を取り直して、立ち上がろうとするけれど、どうにも力が入らなくなっている。
優斗に出された手をとって、一応立ち上がるが、どうもおかしい。
「…優斗……なんか……疲れた…」
「しゃーないなー。おんぶしたるわ」
こんなん恥かしいけど、このまま廊下で動けなくなっているのも辛い。
周りに見られたとしても足でも痛いように思うだろ…。
優斗におぶわれると、嫌でも股間が優斗の背中に触れてしまっていた。
「っ…ん…優斗……」
「…なに…?」
「…っ待っ…て……」
「なんでやん。早く写真部行こって」
俺の言葉を無視して歩きだすと、思ったとおり、揺さぶられた体の一部が優斗の背中で擦られて熱くなってくるのがわかる。
さっき優斗に直に擦られてたせいで、体がなんかその気になっちゃってるらしい。
「っ…ん……はぁ…」
優斗の背中から落ちないように必死でしがみつくけれど、どんどんと体がずり落ちていく。
そのたびに優斗が軽く体を跳ねさせて、俺をおぶり直してくれていた。
写真部に向かっている途中だったが、このままでは部員にこの恥かしい姿をさらすハメになりそう。
「…優斗……生徒会室に…」
寮に戻るには一般の道を通らねばならないし、保健室はこの時間、人の出入りが激しいから避けておきたい。
生徒会室が一番、見られないで済むだろ…。
「…はいはい…」
小さい子供のわがままでも聞いてくれるような態度で、生徒会室に向かってくれる。
その態度は少し気に食わなかったが、もう慣れてしまっていた。
昔から、こんな感じ。
俺はもう、わがままをずいぶんたくさん言ってきて、優斗もまた俺にわがままを言っていた。
「……優斗……駄目……」
「何…?」
何…じゃねぇ…。
絶対、なんか仕込まれた。
理性が吹っ飛びかけてる。
美術室で飲まされたジュースか…?
「…熱い…」
「…もうすぐ生徒会室だで、もうちょっと我慢しやぁて…」
「……ん…っ……」
我慢出来なくなりそう…。
腰とか動いちゃいそう。
「…優斗…も…早く…」
「わかったって…」
少し早めに歩いてもらい、生徒会室に着くと、そっとソファーに下ろされる。
「…鍵…」
「はいはい」
優斗が鍵を閉めてくれてるうちにもどんどんと自分の体が熱くなっていくような感覚。
「…優斗……」
「そんなに…欲しいんなら誘ってみてや…」
「ふざ…けんなよ。お前が薬…入れたんだろっ?」
「あー…バレて…?」
「…バレるに決まってるだろ…。…どんな…やつ……?…すっげぇ効き目…」
俺はもう息が荒くなってしまっていて、目も虚ろになってそう…。
ソファーに大きくもたれかかっていた。
「小さいスプーンでな。1杯ジュースに混ぜて入れるんだってさ」
「…ぅん……」
「で、榛ってさ…。いつもわりと理性保ってるから…2杯入れてみた」
やめてくれ……。
泣きそうになってくる。
「怒ってる…?」
「…怒ってねぇから……もぉ…っはやく……」
自分が泣き出しそうな声でねだるみたいな事を言ってしまっているのに気づき顔が爆発しそうに恥かしくなってくる。
「…どうして欲しいんよ……」
「…っ…っ……優斗…っ…」
「…言って……」
どうして欲しいかなんて、言えと言われて言えるもんじゃない。
黙ってると、優斗は俺のズボンと下着を脱がし、俺の足をソファーの上にあげさせる。
ゆっくりと俺のペニスを手にとって擦り上げられると、それだけで体がおかしなほど過敏に反応してしまっていた。
「っン…っ…あっ…優斗…」
「自分でしてみやぁて…」
「…っゃ…」
優斗は俺の手を取って、その手を無理やり露わになってしまっている俺の股間に運ばせる。
「でらベトベトやん?」
「…っ…」
そんなことは、もう言われなくてもわかってるっての…。
ペニスを握らされてしまった俺の手を、優斗がさらに包み込む。
「動かしてみやぁて…」
俺に動かすことを要求しつつも、優斗は俺の手ごと擦り上げてくる。
「っぁ…ンっ…あんっ…っ…」
…いや…
俺、いつもよりすっげぇ女みたいにやらしい声出しちゃってる…。
いつのまにか、優斗の手が離れてしまっても、自分の動かしている手をいまさら止めることが出来ず、俺は自慰にふけってしまっていた。
「はぁっ…ん…っ…」
「…榛……こないだココにカメラ置いてったの覚えとる…? ほら…」
優斗は近くの机の中からカメラを取り出して俺の前に見せる。
「…ぁっ…ん…」
俺は頷いて答えていた。
「榛っていっつも撮ってばっかりだであんま撮られたことないんじゃないん? 撮らせてや」
それで今の俺を撮るわけ?
「やめ…」
俺が反論するのもむなしく、優斗はシャッターを切る。
「っば…か…返せって」
俺は優斗に飛び掛るようにしてカメラに手を延ばす。
「なんでやん。いーやんか。榛、でらいい顔してんで?」
「っいいからはやくっ…カメラっ」
取られないように手を上げる優斗の方に必死でくらいつくが、優斗の体がいきなり崩れ落ちる。
「あ…」
優斗が後ろに倒れ込むと、俺も優斗の体にのっかかるようにして、倒れ込んでいた。
「榛のズボンですべってまったやんかっ」
「…人のズボン踏んどいて、なに怒ってんっ…」
「…いや…別に怒ってねぇけどさ……。榛…それより…その……」
「な…に…」
苦笑いしながら、優斗は乗っかったままの俺の目の前にカメラを差し出す。
「…欠けた」
そう……そのカメラが大幅に形を変えている。
「…っおま……欠けたじゃねぇよ、そんな軽いモンじゃねぇだろ? 見てわかるやんかっ」
「…怒らんといてや…榛」
そっと、後ろから双丘に手を回し、優斗は奥の方に手を忍ばせてアナル付近を指が這う。
「っん…ひぁ…っ」
一気に力が抜けてしまうと、優斗の体の上に、自分の全体重を乗せてしまっていた。
「…っはぁ…優斗……」
カメラのこと…はぐらかされてる気がして、むかついてくる。
別に、事故だから、許さなかったわけじゃなかったのに、はぐらかされるとむかついてくる。
あとで…絶対、弁償してもらう。
とにかく今は、体の方がつらくて堪らなくなってきちえた。
思えば、これも優斗のせいっぽいけど…。
その時だった。
変な音楽があたりに響きだす。
優斗の携帯……。
優斗は、倒れ込んだまま……俺の下敷きになったままで、胸ポケットから携帯を取り出した。
「…誰……?」
「……あぁ…凪だわ」
俺は、優斗の体をまたぎ込んで倒れたまま、ただ、何も出来ずにいた。
こうゆう時にさ…欲しがったら、優斗も困るだろ……?
「はいはい?」
『あ、優斗先輩…? 今から、会える…?』
「…う〜ん……ちょっと待ってな?」
優斗は、携帯を押さえて俺を見る。
「…な…に…?」
「…榛…どうする?」
「なんで…俺に聞くんだよ…」
「…榛が…行って欲しくないって言ってくれるんなら行かない…」
「…行けって…」
ほぼ、即答していた。
「…少しくらい迷ってくれてもいいやん」
「彼女からの呼び出しをさ…ただの友達の付き合いの都合で断わんなって…」
優斗は、俺の返答に気を害したのか、アナル付近を指で何度も行き来させる。
「…っん…ぁ…や……ンっ」
ゾクゾクとした感覚が背筋を駆け巡り、声を押さえようと必死で優斗のシャツを掴みながら顔を伏せる。
「…凪…? ちょっと今行けそうにないわ。また、夜、そっち行くで……な…?」
『う〜ん……。わかった。じゃぁ、夜にちゃんと来てね?』
「はいはい。じゃぁね〜」
『ばいば〜い』
「ば…かぁ……っ」
「いいから黙って……。ほら、凪の断わったんだで、気持ちようやろうや」
「っ…ん…優斗……」
優斗は起き上がって俺を抱きながら、ぴちゃぴちゃと自分の指を濡らす。
その指を、背後から俺のアナルに這わせて、ゆっくりと中へと侵入させていった。
「っ…ぁ…あっ…くぅ…」
俺はというと、優斗の背中に手を回して抱きつくような格好になってしまっている。
指でゆっくりと円を描くように中を掻き回されるのがどうも苦手だ。
ぞくぞくしてきちゃって、何も考えれなくなる。
「気持ち…いい…?」
「ひぁっ…やぁ…ン…ぁあっ…イイ…っ優斗ぉ……っ」
「そーゆうこと榛言われんの……初めてかも…」
優斗に指摘されて、自分がものすごく恥かしい言葉を口走っていたのに気づく。
「っ優斗……っ…もぉ…はやく…っ」
「まだかんて。別に焦らしたいとかじゃなくって…まだ無理やん? 榛…らしくないやん」
まだ、少し指を入れただけの状態で、優斗のモノを入れたら…。
痛いかもしれないけど、この指での愛撫に物足りなさを感じてしまっていた。
「…いい…から…っぁ…も…出せって…っ」
優斗は俺の中から指を引き抜いて自分のズボンのチャックを下ろし出す。
なんとなくしょうがなく俺の言葉にしたがっているようだった。
「もぉ…勃ってる…やん…」
優斗の方こそ…俺を気づかっていちいち時間かけて指なんかで慣らしてんじゃねぇっての。
俺は優斗のペニスを手に取って、自分のアナルに押し当てた。
「…榛…」
優斗の顔が、少しだけ心配そうだった。
「…ば…か…。俺がしたいからすんだで…優斗は…気にすんな…」
俺が軽く笑ってそう言うと優斗も少し顔をほころばせた。
ゆっくりと…俺は腰を下ろして中にペニスを収めていく。
「ぃっ…ぁっ…」
さすがに…アレだけしか慣らしてないときついか…。
少しだけ痛みを感じるが、そのまま半ば無理やりに腰を沈めていく。
「やっぁ…ン…っや…優斗…っ」
痛みとか不安とか嫉妬とか快感だとかが混じってわけがわからなくなってくる。
「…無理…しんといてや……」
「ぁ…あっ…なん…で…お前が…泣きそ…に…なってん……」
「壊れん…といてな……。榛に…嫌われたら俺、やってけん…」
馬鹿…。
いっつも…自分ひとりで何でも出来ちゃうくせに、なにがやってけないんだよって。
昔から……そう…。
「おまえは…童貞かよ……っ。大丈夫だって…」
俺は優斗に抱かれながらゆっくりと、腰を動かし始めた。
「やぁあっ…ンっ…ひぁあっ…ぁ…駄目…っ」
「…榛…いつもより狂ってんのな…」
そう言うと、後ろから双丘に手を回して揺さぶりをかける。
「ンっ…やっ…ぁ…も…イクっ…」
「ん……。榛…俺のこと…好き…?」
「…っン……」
好き…。
つい、抱きつく手に力が入る。
小気味良いリズムで動かされ、生理的な涙が溢れてきた。
「はぁっ…イク…っ…んっ…ぁっあっぁああぁンっっ」
このあとも何回イかされたことか……。
薬を飲まされていた俺の体は何度イかされても満足できなくて。
理性を失ってしまっていた俺は、何度も恥かしげもなくいやらしい言葉を口にして、優斗のことを求めてしまっていた。
そりゃもう…彼女持ちだってことなんかその時は忘れてしまっていた。
「大丈夫…?」
「…大丈夫……」
ホントは、もう大丈夫なんかじゃなかったけどっ。
とりあえず大丈夫だと答えておく。
ぐったりと寝転がっている俺の前髪を掻きあげると、優斗はジっと俺を見る。
「……な…に……?」
「…榛……俺……の事…好きって言って……」
優斗は泣きそうな顔をして俺に言う。
「…な……んで……」
「言って…欲しいんよ…。ねぇ…別に嫌いなら嫌いって言ってもいいんよ。でも…俺、榛の気持ち一度も聞いたことないもん…」
なにを…いまさら…。
たしかに、一度も言ったことねぇけど…。
「俺ら…2人とも彼女おるやん…? こうやってお互い好きとか言ってどうすんだよ」
「…そ…うだけど……」
「お前はさ……。もう俺に好きとか言わんでいいから…。凪のことだけ、好きっていいなって」
そう言うと、優斗は申し訳なさそうな…泣きそうな顔をする。
「でも俺、榛の事好きだもん」
「凪が…かわいそうだろ……」
優斗は何も言えず、ただ頷いていた。
「…俺も…彼女いるから……。優斗のこと、好きって言わない…」
「…ぅ…ん……」
「…優斗……」
俺は、優斗の頭に手を回して、寄せながらそっと口を重ねた。
「…言わなくても…わかるだろ……?」
「…ん…。榛…もっかい……」
俺らはもう一度、深く口を重ね合わせ、お互いを確かめるように、舌を絡めた。
絶対に…恋人同士にはならないだろうなって……。
友達の延長みたいな形。
それなのに、優斗が、たまに無償に俺のこと、切なげに見るから…
友達として好きなのか、そうじゃないのかわからなくなってくる。
いるのが当たり前みたいな存在で…
いなくなるなんて考えたこともなくって…
いくらお互いに彼女が出来ても、俺らの距離が遠くなることなんてなかった。
恋人とは違うけど…
違う意味で…大切な存在…。
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