「智巳先生♪セックスしよ」
智巳先生の管理する数学準備室まで行って。
智巳先生しかいないのを確認した後、ドアを閉めて。
そう言う俺に、あいかわらず冷静な顔のまま。
「何事?」
少しだけ笑ってくれる。
「欲求不満とかじゃ駄目?」
智巳先生はゆっくりと席を立つと、
「…それならいいけど?」
俺の方へと歩み寄る。
それなら…?
どんな理由だったら、駄目だった…?

「…知ってるよな? 俺に付き合ってる人がいんの」
「ちゃんと知ってますって」
そう確かめてから、俺のシャツのボタンを上から順に外していく。
「っ…せんせ…」
緊張する。
なんでもないフリしたいのに。
すべてボタンの外れたシャツの隙間から、智巳先生の手が滑り込んで、胸のあたりをそっと撫でる。
「ン…」
「ベルト…自分で外して?」
「…ん…」
ベルトを外すと、智巳先生は俺の体を反転させ、後ろから片手で俺を抱く。
智巳先生は、空いているもう片方の手で、器用にズボンのホックを外し、ジッパーを下ろした。
「っ……ン」
直に何度もこすりあげられ、自分のが次第に熱を帯びていく。
「はぁ…っ…ぁ…ん…」
「悠貴…。お前、イイ反応すんのな」
「っく…ぅン…っ…そ…っすか…?」
「……ん…」
俺のを扱きながら、もう片方の手…体を抱いていた方の手を、俺の目の前に差し出す。
「…舐めれる?」
「…ん…」
差し出された指を何度も舐め上げて。
おかしくなりそう…。
「…んっっぁふっ…っ…」
ぴちゃぴちゃと、智巳先生の指を舐める音が響く。
「悠貴…」
耳元でそっと呼ばれて、舌を這わされる。
「んぅっ…っぁ…」
「耳、弱いんだ?」
「はぁっ…んっ…」
自分がドコ弱いかなんて、よくわかんねぇよ。
直に触れていた手を退かして、体を支えると、今度は俺がさっきまで舐めあげていた方の手を下着へと突っ込む。
「っ…智巳先生…両利き…?」
「ん…。まぁな」
唾液で濡れた指先を、そっと奥の秘部へと押し当てる。
「っん…」
入り口付近をほどよく揉み解すようにしてから、指先を1本、中へと押し込んだ。
「っんくっ…ぁ…くっ…」
躊躇なく、指が奥へと入っていく。
「ぁっ…ぁっ…イっ…」
少し舌打ちするのが聞こえた。
「…やめよ…」
「な…ぁ…っ」
奥まで差し込んだ指を、一気に引き抜いて、俺の体を前に押す。
「っ…智巳…せんせ…?」
振り返った先には、少しだけあきれた様な表情の智巳先生がいた。
「…初めての奴がよく誘うよ」
やっぱ、わかる…んだ…?
「駄目ですか?」
「…なんで俺とやる? 欲求不満だから? 初めてのやつが欲求不満でやりにくる? 興味あるから?」
好きだから。
黙っていると、智巳先生が軽くため息をつくのがわかる。
「悠貴…。何度もやったことあるやつが、1回、俺とやるのと。初めてのやつがやるのと。重みが違うのはわかるだろ?」
「はい…」
「俺は、お前が自分から誘ってくるから、もう何度もやってんのかと思った。で、欲求不満の解消くらいなら構わないと思った。だけど、お前、初めてだし…。興味本位なら、悪いけどさ、他、あたってくれない…?」
「興味本位とかじゃ…。俺…」
もう、わかってんだろ…?
「…お前のさ…気持ちに応えれないって…。わかるだろ…」
智巳先生には、付き合ってる人がいるから…?
そんなのわかってる。
「俺、別に、智巳先生に付き合ってほしいわけじゃないし…。ただ、やってくれれば満足だから」
「…頼むよ…。お前ん中に、深く残りたくない」
「なんで? 付き合えないからこそだってば。智巳先生にとっては、単なる遊びのうちの1人と思ってもらってかまわないから」
付き合えないからこそ。
せめて、深く刻み込んでほしい。
「…やると、余計俺のこと、気にするとか…ない…?」
そりゃ、あるかもしれないけど…。
「初めてが智巳先生になれば…諦めれるよ」
「どういう意味だよ、そりゃ」
「やっぱ初めての人って、特別じゃん? もし、俺が何度もやってて、智巳先生がその中の一人だとしたら、俺の中で智巳先生が、他の人と変わらないみたいで…それだと、なんか諦めれないかもしれないけど…っ」
初めての人は、特別だから。
深く残るから。
それを智巳先生にしたい。
応えてもらえなくても、俺の中で、智巳先生が好きなこと、ちゃんと残したい。
「いつか、俺のこと嫌いになったときとか、後悔するぞ」
「大丈夫だよ。はじめての人って…。特別な人にする。智巳先生は、気にしてくれなくていいから…さ…」
「…しゃーねぇなぁ…」

智巳先生は、近くにある低めの机に腰掛けると、俺をジーっと見上げる。
「…来いよ…」
「うん…」
「…跨いで」
ズボンも下着もすべて脱ぎ去って、少し戸惑いながらも机にあがり、智巳先生の足を跨ぐ。
俺は、机に立膝を突くような状態。
「…いいよ。腰、下ろして…。背中、手、まわしな」
「ん…」
言われたとおり、腰を下ろして手を智巳先生の背中に回すと、もう一度ぬらし直した指先を、俺の中にゆっくりと押し入れていった。
「っはっ…ぁんんっ…あっ…」
「…力、抜きな」
「んっ…ぅンっ…」
智巳先生は、中に差し込んだ指をそっと前後に動かす。
「っぁっ…く…っぅンっ」
「大丈夫か…」
「ぅンっ…平気…」
智巳先生は、指をもう一本、中へとゆっくり増やしていった。
「っくっ…ぁあっ…やぁっ…」

俺がはじめてで比べようがないのだけれど。
俺の中へと差し込んだ指先の動きとか。
もう片方の、俺の体を支えてくれる腕の力とか。
ものすごくあったかくって。

智巳先生って、好きでもない人にでも、こんなあったかくできるんだ…?
彼女には、もっともっと、優しいんだ…?
「…苦しいよ…」
すがりつくように、俺は、智巳先生の体に抱きついていた。
「…やめとく…?」
「…やめない…っ。…早く……」
指で、何度も慣らしてくれて。
やさしくやってくれればくれるほど、切なくなってくる。
「ぁっ…はぁっ…やぅっ…せんせぇっ…もっ…ぃいっ早く」
「んな焦るなって」
「…っ…やっっ…せんせ…っ」
顔をあげると、不意に目が合う。
「…智巳先生……キス…して…ぃい…?」
「…いちいち、了承得んでもいいって」
なんでもない行為だから…?
なんとも、思ってくれない?
智巳先生の頭に手を回して。
思いっきり口付ける。
「ンっ…んぅ…」
智巳先生の舌が、俺の舌を絡めとってくれて、気持ちよく吸い上げてくれる。
「んっ…はぁ…っん」
何度も重ね合わせても、気がすまないような気がした。
「…入れて…」
そう言って、もう一度、軽く口付けて。
いまだけは、俺だけのものになってくれてる…?
「ねぇ。俺で、勃ってくれた?」
「恥ずかしいこと、聞くな。 あたってんだろって」
智巳先生は、俺から指を引き抜いて、代わりに昂ぶった自分のモノを、押し当てる。
「よかった…」
ゆっくりと時間をかけて挿入される智巳先生を、受け入れて…。
智巳先生が気を使ってかゆっくりやってくれるおかげで安心できた。
「ぁっふ…く…せんせ…っ」
もっともっと、好きになる。
「っ…はぁっ…やぅっ…んっ奥っ…智巳…せんせっ」
奥の方まで入り込んだモノを、ゆっくりと抜き差しされる。
俺の体を、支えてくれて。
「っ…せんせぇ…っ…」
やっぱ、やめといた方がよかった?
つながったまま、智巳先生のシャツのボタンをはずしていく。
はだけた状態の胸へと、自分の体を寄せて。
やさしく抱きしめられて、強く抱きしめて。
もっともっと、つながりたい。
「っぁっ…んっ…キスしてよっ…」
軽く笑って、俺の頭を支えると、口を重ねてくれる。
「っんっ…っぅんっ…はぁっ」
体中がおかしくなる。
熱くて考えがまとまらなくなっていた。
「っもっと…っせんせっ…」
深いキスを。
そして深く貫いて。
俺だけを見てほしい。
今だけ。

何度も突き上げられ、射精感が高まる。
「ぁんっ…あっ…イく…っやっ、せんせ…っ」
「…ん…かまわねぇよ…」
イったら、終わりですか…?
少しだけ、不安のようなものがよぎるが、そんなことを考えてられるような状態じゃない。
気持ちよくて。
智巳先生が、くれる快楽。
それに溺れてしまっていた。
「っぁっ…もぉっ…んっぁっ…ゃっ、ぁああっっ」
溢れ出る欲望を、中で受け止めるのを感じながら。
最初で最後になるかもしれない行為に酔いしれて。
もう一度、智巳先生の体を抱きしめた。



やっぱ。
あきらめなきゃならない…?
そうはじめから決めてやったんだし。
智巳先生の言うとおり。
やらない方がよかったかも。
もっともっと、好きになっていた。
「…やさしすぎるよ…」
「ひどくした方がよかったって?」
あきらめれなくなる。
「…大丈夫…」
俺にとっては、ずっと特別な人だから。
「…ね。忘れないでよ」
「忘れねぇって。俺だって、逆に処女とはそうやらねぇし?」
いつもみたいに軽く言って。
俺の頭を小突いた。




「智己ちゃんだったんだ…。悠貴が智巳ちゃん好きだってのは、知ってたけど…」
拓耶が、俺の隣で寝転がりながら。
俺の相手は誰かと尋ねるもんだから、2年も前の話をしてやっていた。
そのころの、俺らの数学の先生。
今は、1年の担当に移動してしまっていた。
「隠すほどでもないけど、わざわざ言うほどでもないかなと」
拓耶は、少し俺の顔を伺ってから、俺の胸へとそっと顔を埋めた。
「…拓耶…?」
隠してたから、怒ってる…? わけねぇよな。
そんな大事なモンでもない。

俺は、拓耶が、処女だって知ってて。
あえて手を出した。
拓耶の中に、俺は深く残ってる…?

「悠貴。俺以外にさ。処女とやった?」
もぐりこんだ俺の胸からジっと俺の顔を見上げて拓耶がそう聞く。
「してないけど」
少し笑って言うと、拓耶も、楽しそうににっこり笑ってくれた。
「俺だけだ♪」
「ん…。処女は面倒ですから?」
「…面倒だった?」
「そうじゃないよ。相手が拓耶なら♪」
「よかった♪」
「それに智巳ちゃんと同じ。あまり相手にしたくないかな。深く残っちゃまずいだろ」
にっこり笑う俺に合わせて、拓耶も笑ってはいるけれど、頭の中では、なにかを考えてるようだった。

「…悠貴…」
また顔を俯かせて、胸へとすがり付く。
そっと、拓耶の頭に手を当てて、軽く引き寄せた。

俺のこと。
俺が智巳ちゃんのことを特別に想うように。
想って欲しくて。
深く残したくて。

わかってくれてる…?
拓耶は、あえてなのかわからないけれど、俺になにも聞かなかった。
俺も。
なにも言わないけど。

俺より頭もいいし。
わかってくれてるだろ。
拓耶にとって。
特別な存在になれてますように…。