つまらない。
腑抜け状態だった。
夏休み入ってすぐ。
4年生は、夏季合宿だかなんかで、みんな1週間近く遠出してるし?
つまりは、俺の一番のお友達の桐生もいないわけで。
俺の彼女の尋臣もいないわけで。
保健の先生である柊も、出ていっていた。
「…5日も溜めてらんなくない?」
俺は職員室で、後ろを振り向くといる宮本先生にそう声をかける。
すぐさま、俺の意図を察してくれたのか、
「…樋口先生って、欲求不満になると、機嫌悪くなるんですか…?」
少し困った様子で、振り返ってくれる。
「普通の人間、そうじゃない?」
「まぁ…そうかもしれないですけど」
「桐生いねぇし、柊いねぇし」
ちょっと俺を伺う表情が『その2人がいないのと欲求不満となんの繋がりがあるんだ』とでも聞きたそう。
「…まぁ、それはいいんだけど」
そうつけたして。
「っつーか、危ないな…。尋臣が、桐生に襲われたり…」
「桐生先生は、雪之丞も一緒だから、大丈夫じゃないですか?」
桐生の彼女?
たしかに4年だけど。
「あいつなら、余計にあてつけとかでやりそうじゃない…?」
俺も、逆だけどやったし。
「それに、柊とか、危ないねぇ…」
あいつは、やらないと思うが、あえてそう言ってみたり?
「っあ…の人は…危ないかもしれないけど…」
「…一応、宮本先生、柊の彼女なんだからさ、もうちょっと言い様ない?」
「…そんな…自信ないですし…」
「それって、柊が誰も襲わないことに自信がないのか、自分が、彼女であることに自信がないのか、どっち?」
「…どっちもです」
困ったようにそう言った。
「…俺が宮本先生、犯すと柊が怒りそうだからやめとくわ」
「なっ…ぁ…」
一応、そう伝えてから、席をたつ。
俺は、すぐさま紙に『しゃべりかけたら食します』と書いて、自分の上着の背中部分に貼った。
「なっ…なに貼ってるんですか。やめてくださいよっ」
「…剥がしたら、宮本先生、犯しますよ?」
「…っそれは…」
「まぁさ。夏休みだし、そんな人いないから大丈夫。このまま外出ようとはさすがに思わないし?」
「じゃあ、そのまま、学校内歩いてるんですか?」
「すぐつかまるだろ」
時計を見ると、まだ少し、補習時間が始まるには早かった。
早いうちに行って、とっととやる相手決めてこれをはがしたいし。
「じゃ、行ってきまっす」
俺は笑顔で、今日の補習教室へ向かおうと職員室をあとにする。
「あのっ」
後ろで、宮本先生の声が聞こえたような気もしたけど、間違いかもしれない。
俺はそのまま、補充を行う教室、1年4組へと向かった。
っつーか。
相手、1年決定か?
悠貴でもいいんだけど、たしかあいつは今、家に帰ってるし。
しかも、あいつ、俺が好きとかホンキで言うから、もて遊ぶみたいな気分になるんだよ。
なんか、罪悪感あるわけだ。
わりきってないっつーか、あいつとやると単なるセックスフレンドですって感じがしない。
まぁいっか…。
とりあえず、俺は教室に入り込んだ。
すると、俺の後に続いて入り込んできたやつ。
「なにそれ♪♪」
「……拓耶…。お前、なんでいるんだ?」
3年なのに。
ここら辺は1年の区域だぞ。
しかもお前は補充なんて受けるような頭じゃないだろうに。
「俺、1年生の家庭教師してるから、教え方、学ぼうかなって」
「なるほどね…。ちなみに、誰の家庭教師? 俺の知ってる人?」
ってか、1年は全員知ってるけど。
「うん。4組の高岡みつるくんは、俺の教え子です♪」
「……だからか…。あいつ、数学だけはある程度出来るんだよ…」
拓耶は夏でもハイテンションだな。
「っつーか、なんで誰もいないんだ…。早すぎたか…?」
「智巳先生、2時限目からでしょ? 昨日と時間割、間違えてんじゃーん♪」
「…というか、補充なんだし、わざわざ曜日で時間割かえる必要、なくない?」
俺は、やっと、自分が時間を間違えたことに気づいた。
だから宮本先生も呼びとめてのか。
「…拓耶…。俺の背中の、読んだんだろ」
「読んだけど。なに貼ってんのさ♪」
「そのままの意味なんだけど」
そう言って、後ろから拓耶の髪に触れる。
「えーっ、そうなの? 困るなぁ」
「桐生や柊ともやってんだろ? 俺じゃ駄目なわけ…?」
すでに手で、拓耶のをズボン越しに撫でてやって。
「っ駄目…だよ?」
「なんで?」
珍しく拓耶が焦りを隠してる感じ。
チャックを下ろして直に取り出してやるだけで、体をビクつかせて。
「俺ら、結構、仲いいのになぜかやってないし?」
そう言いながらも擦りあげてやる。
「っぁっ…ンっ」
「お前、すっげぇ数学できるし? なぁんで俺ら、こんなストイックな関係なのかなって思わない?」
「はぁう…っ…っんぅっ…」
「…どういうあえぎ方、しちゃってんだ、お前。すっげぇ、かわいいんだけど」
「だっめ…だよぉっ…ぁっ…ンっ」
何度も擦りあげてやると、拓耶の体が震えて、俺に体重をかける。
「どうして?」
「っんっあっ…智巳ちゃっ…」
「気持ちいいだろ?」
「っ…ンぅっ…ぃい…けどっ」
いったん手を離して自分の指を濡らすと、後ろから手を下着の中まで突っ込む。
「っちょっ…智巳ちゃっ」
拓耶が体を震わせて、前にあった机に両手をつく。
ナイス体勢だし。
ズボンと下着を下ろしてやってから、指をゆっくり刺し込んでやった。
「っぁくっ…あっ…や…」
「狭いなー、お前。そんなやり慣れてないわけ?」
1本の指で中をゆっくり掻き回してやると、体をビクつかせ、そっとこっちを振り返ろうとする。
「っひっくっ…んぅっ…ゃめっ…ぁあっ」
「…なぁ…。なんで俺だけ駄目なわけ? 俺が嫌い? 柊や桐生はいいんだろって」
耳元で優しくそう言うと、そっと俺を見た。
感じまくって涙目で。
めちゃくちゃかわいいんですけど。
「だってっあっ…あっやぁっソコっ…ンやっ…っ…変っ」
「なにが変だって?」
面白い。
ほどに、感度がいい。
わざと気づかないフリをしたままで、前立腺を刺激してやる。
「っやっ…やぁあっ…んーっ…ぁんんっ…」
泣きそうな声を漏らして、机に強く爪を立てるのが伺えた。
「いきそうだったりする?」
「っはぁっ…あっんぅっ…ひぅっうんっ」
頷く姿もかわいいじゃん。
「イってもいいし。気持ちいいなら素直にどうぞ」
そう言いつつも、指先の動きをわざと焦らすように緩めるのは、常識だろ。
「あっ…ゃあっ…智巳ちゃぁっ…」
「なに?」
「っンっ…違っ」
首を横に振って。
なんでもないと示して。
ホントは、して欲しいくせに、欲しがろうとしない。
「…そんなに俺とやるの拒みたいわけ」
「あっ…だってっ…」
「まぁ俺はサドじゃないから、とりあえず、イってから言う? それともイくのもいや?
こんなとこでやめれんだろ? イっとこか」
サドじゃないなんてのはモロに嘘だけどな。
勝手に、自分で結論付けてから、そっと指の数を増やしてまた、少し強めにかき回してやる。
「あんぅっ…あっやぁっ…」
「嫌? どうする?」
「っあっ…ぁんっ…ゃめ…」
「どっち?」
やめて欲しいとは言わせないで、そう聞きながら、少しだけ愛撫の手を緩める。
焦らすように、ゆっくりと、心地いいくらいの刺激を送ってやって。
「あ…っ…はぁっ…智巳ちゃ…」
「気持ちいいだろ…?」
「ん…あっ…ぃい…っ」
「もっとさ、して欲しくない…?」
「っ…あっ…だ…って…はぁっ…」
「…言ってくれれば、拓耶が好きなようにしてあげるから…。なんでも言って?」
やさしくそう囁くように耳元で教え込む。
軽く耳に舌を這わすと予想外だったのか、体を震わせた。
「っあっ…んぅ…」
「やめる…?」
そっと指の動きを止めて、ゆっくり引き抜きかける。
「っ…あっ…してっ…智巳ちゃっ」
ホントに俺が止めるとは思ってなかったのか、いざ抜きかけられ、慌ててそう答えてくれていた。
よっしゃ。
っと、心の中でガッツ。
「して欲しいの…?」
「っ…や…」
「ん…どうする?」
「っっ…あっ…」
「言ってくれないと…。拓耶がいやだと思ってること、しちゃうかもしれないし。ほら、今、散々、嫌がられちゃったし?」
わざとそういう言い方をしてやって。
指を動かさないでいると、そっと俺を見て。
涙目でめっちゃかわいいんですけど。
「どうした?」
「っ……あ…っ俺…」
「なに?」
「っ…変…だよ…」
「どうしたんだ、お前、いきなり」
「っだってっ…こんなっ…」
急に恥ずかしそうに俺から顔を背けて。
「っっねだっちゃいそーで…っ」
小さな声で俺も見れずにそう言った。
かわいーやつだな、こいつは。
「別にいーだろ。恥ずかしい?」
「だって…そんなの…っそれに…」
「俺がこうやってお前襲ってて。お前は好きなようにねだって。誰にも遠慮する必要ねぇよ」
引き抜きかけた状態の指を中で動かしてやると、いきなりのことだったからか、体を大きくビクつかせながら上体を下げ机にしがみつく。
「っくぅっ…んーっ…ぁっあっ…智巳ちゃぁっ」
「して欲しいこととか、ちゃんと言えよ?」
そう言うと、俺の方は見ないで、それでもただ何度か頷いてくれる。
「はぁっ…あっ…奥っ」
「奥がイイんだ?」
「っやあっ…欲しっ…」
そう言うと、自然になのか、ズボンから片足を引き抜いてくれる。
足広げたいんですかと。なんともおいしい子だ。
「いいよ」
俺は、指が届くぎりぎりまで刺し込んで動かしてやった。
「はぁっあっ…やぅっ…ぁあっ」
「どぉ?」
「っぃいっ…智巳ちゃぁっ…あっいいっ…よぉ…っ」
「イきそう?」
「っんっぃくっ…やぁうっ、あっあっ…やぅっ…あっあぁああっっ」
拓耶は、大きく体を震わせて、欲望を弾けさせた。
「っ…はぁ…っ…智巳ちゃあ…」
まさにエクスタシーと言わんばかりの声を漏らして、座り込もうとする拓耶の体を後ろから抱き支える。
指をそっと引き抜いて。
耳元に舌を這わす。
「あ…っ…」
「物足りた…?」
シャツの中にすべり込ませた手で胸元を撫でてやって、もう片方の手で股間のモノをまた、こすりあげてやった。
「っはぁっだめっ…智巳ちゃぁっ…」
「どうして…?」
「っあっ…ん、もぉっ…おかしぃ…」
「もっと…おかしくなってみよっか…」
そっと、自分のすでに立ち上がってしまっているものをいままで指を入れていた箇所に押し当てる。
「っあっ、だめっ」
「駄目?」
「…っクチで、する…からっ」
別に、口でやられても気持ちいいし、かまわないんだけど。
どうにも嫌がられると、求めたくなるもんだろ?
「どうして…そういうこと言うんだ? お前」
耳元で、そう言いながら、ゆっくり押し込んでいく。
「あっぁああっ…やっやだっ」
久しぶりに嫌がる相手とやるなー…なんて。
すげぇ燃えるかも。
やっぱりサドだって実感する瞬間だよな。
「んぅんんっ…抜い…っぁっやっ」
「抜いて欲しいって感じじゃないけどな…」
「だってっぁあっ…ぁんんっだっめ…だよぉっ…あっ…ぁあっ智巳ちゃぁあっ」
泣きそうな声。
「悦くない…?」
ゆっくりと、焦らすように抜き差ししてやって。
拓耶の髪をやさしく絡めとる。
「はぁあっんっ…あっ…ゃっだっ、やぁっ…駄目っっ」
「気持ちイイんだ…?」
「っんっあっぅんんっ…だっめ…ぇ…っ」
「もっと…感じろよ。いらんこと考えるなって。難しいことはやり終わってから、考えればいいだろ?」
自分で言っててめちゃくちゃだなーって思うけど。
拓耶もまぁ少し納得しつつあるくさいし。
腰の動きを早めてやる。
「んっあっ…あっやぁあっんっ…やぁっやっっ」
「拓耶…イイだろ…?」
「んぅっっぁっあっ…やめっやぁあっ」
ホント、嫌がるな、こいつは。
「柊や桐生はよくて…俺は駄目なんだ…?」
ちょっとだけ凹むじゃん?
「だってぇっあっ…んーっ」
少しだけ、動きを緩めて。
「…今後、悠貴と会いづらくなる…?」
耳元でそう聞いてやると、体をビクつかせて俺を振り返った。
「わかってるっての、お前の考えることくらい」
拓耶の目から涙があふれているのがわかった。
生理的なものなのか、精神的なものなのか。
どっちもだろうな。
緩やかに腰を突き上げながら、拓耶の髪を撫でてやった。
「はぁっあっ…ん…」
拓耶は、俺に気持ちを気づかれたからか、嫌がらなかった。
「お前が泣くことないだろ」
「んっ…ぅンっ」
「悪ぃな。なにも考えずに…お前、相手にしちゃって」
「違…っん……」
「ありがとな…」
ホント。
いい子だよなこいつ。
「拓耶」
耳元で名前を呼んで。
振り返る拓耶と口を重ねる。
「んっ…ん…」
気分的に、俺が気づいてたせいか、少し落ち着いたみたいで。
素直に受け止めてくれていた。
「あっ…悠貴に…どう言えば…っ」
「…言わなくていいだろ…。俺も…言わないから」
「んっ…」
あとはもう、お互い、会話なんてなかった。
ただ、この行為に没頭する。
「んぅっぁあっ…智巳ちゃあっ…あっいいっ…気持ちぃいよぉ…っ」
あいかわらず、拓耶は泣きそうな声で喘いで。
なんだか、そうさせてるのは自分で。
罪悪感も多少はあるけれど、そんな泣きそうな拓耶を、愛おしく思った。
別に、サド精神からではない。
悠貴のことを考えて、悩んで、拒んで。
そういう葛藤してる姿見てると『あぁ、こいつってホント、優しい子なんだな』って思えるわけだ。
かわいいだとか、好きだとか。
そういった言葉を拓耶に言いそうになったが、無理やり押し殺した。
言えばきっとまた拓耶は悩んで、泣きそうになるんだろう。
「…悠貴の友達だもんな…お前…」
独り言。
拓耶の耳には届かないくらいの声で、ぼやいていた。
俺だって、彼女がいるわけだし。
拓耶にだって相手はいる。
だから、これは割り切った行為なんだよ。
それでも、俺ら二人は、たぶん、ホントはするべきじゃないんだ。
割り切っているのに、こんなにも心苦しい。
でも、俺よりも、拓耶の方がそれは感じているだろう。
それを乗り越えて、俺を受け入れてくれる姿が、ものすごく愛おしいモノのように思えて。
「…拓耶…」
拓耶が気にするから。
かわいいだんて言えないし。
その代わりに、何度も名前を呼んでいた。
「なぁ…奥で出していい…?」
「んっ…ぁあっ…ぅんっいいっ…ぁあっもぉ、やぁっやぁあああっっ」
強く抱きしめて。
深く繋がったまま、俺らは欲望をはじけだしていた。
割り切っている。
恋愛感情はそこにないし。
それは、お互いわかりきってることだ。
彼女に対して後ろめたさもさほどない。
全然、違うモノであるから。
拓耶の彼女に対しても、大丈夫。
「…拓耶…。お前、嫌がってんのにさ…悪いな…」
「違っ…。智巳ちゃんは別に悪くないし。気持ちよかったし♪」
あいかわらずのテンションで。
笑顔を見せる。
俺が、ほっとしたのもつかの間で。
作りきれなかったのか、拓耶の笑顔が崩れ、目から涙を溢れさせた。
「あっ…れ…」
俺に見られないように顔を背け、なんでもないフリをしようとする。
俺は正面から拓耶を抱きしめ、頭をそっと撫でてやった。
初めは欲求不満だからって。
誰か気軽にやれる相手って思ったけれど、途中からは少し違った。
こいつのこと、なんかかわいく思えて、たんなる欲求不満解消だとは言い切れない気持ちになっていた。
「…お前は、いい子すぎなんだよ…。割り切ってやれるくせに…。悠貴には真綾がいるんだよ。お前が苦しむことじゃない」
まだ、高校生に。
俺はなにを突きつけてるんだろう。
なんだかんだいって、こいつは恵まれてんだろうか。
こういう苦い経験って少ないんだろうな。
結構、弱いんだ。
「…悠貴も…いつまでも俺にくっついてるわけじゃないし」
だからって。
悠貴は俺が好きだと言っていた。
悠貴と拓耶は友達で。
拓耶は気にするんだろう。
「……ごめんな…」
「違っ……別に智巳ちゃんが悪いわけじゃないし。俺だって智巳ちゃん好きだしさ」
やばいな。
悪いってわかってるのに。
いま、自分で反省しただろって。
それなのに、こいつがかわいいもんだから。
「拓耶…」
拓耶の頬に手をあて、口を重ねた。
「んっ…」
抱きしめて、頭を撫でてやる。
ホント、かわいい。
「お前、かわいすぎだって。友達想いだな…。……忘れる…? 今日のこと」
「…そんな…ことは…」
ほら。
俺のこともちゃぁんと気遣ってくれる。
「…ありがとな。じゃあ、二人の秘密?」
「ん…」
もう一度だけ、キスをして。
俺らは、二人だけの秘密を持った。
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