ありえない。
俺は伊集院先輩が好きだ。
だけれど、悠貴は違う。
この人と、真綾ちゃんのことで言い合いになってるから、嫌ってるはずで。
「悠貴…なんで…」
「伊集院先輩。ちょっと待っててください」
そう言って、俺を少し離れたところまで連れて行く。
「…拓耶さ。伊集院先輩のこと、好きだろ」
「…そんな…こと…」
「俺にそんなに気、使わなくていいよ。伊集院先輩ってさ。優斗先輩とも仲いいし。拓耶にとって、そう遠い存在じゃないはずだろ。だけど、お前、避けてくれてたみたいだし」
そりゃ、悠貴が嫌いな人と、あまりにも仲良くなりにくいし。
そういうの、バレてたわけ…?
「でも、俺…」
「あの人の気持ちもわからないでもないし。もういいんだよ。仲良くなっておいで?」
なんとなくなにも言えなくて。
悠貴の好意を無駄にすることもできないし、実際、伊集院先輩のことは好きだ。
背中を押され、伊集院先輩の近くへとよろめく。
俺たちは悠貴に見送られ、その場をあとにした。
なにやってるんだろう。
早退して。
伊集院先輩の少しだけ後ろをついて部屋へと入り込む。
ベッドとかだと逆に緊張が走る。
「先輩っ…俺…やっぱ、出来な…」
わけがわからない。
どうしてこうなってしまったのかも。
だけれど、この人に言われたら、断ることなんてできそうにないし。
悠貴はいいって言ったけれど、やっぱり、悠貴が嫌ってた相手とするってのは、抵抗がある。
悠貴が好きな人とするのも抵抗あるけれど。
この人のことは好きだけれど。
悠貴も好きだから。
まだ、頭が混乱してる。
こんな状態でやっていいのかなって思うし。
駄目だろ…??
ベッドに寝転がる俺を上から見下ろすように圧し掛かられ、つい顔を逸らしてしまう。
先輩は俺の体に、自分の体を重ねるようにして。
どうしよう。
じっくりと手の平を俺のシャツに潜り込ませて、胸元を探られる。
「っんっ…っやめっ…ほんとに、俺っ…っ」
「乳首、立っちゃってるね」
そう言いながら、示すように指先が乳首を転がす。
「っくっ…ンぅっ…っ」
「…脱ごうか…」
俺はなんにも言えず、ただ、伊集院先輩に脱がされてって。
駄目だもう。
すっげぇ、力が入らない。
どうすればいいのかわかんなくって。
遠くから見てただけで初対面みたいなもんだし。
そっと俺を抱き起こして、強くキスをする。
「んっ…んっ」
すごい濃厚で。
舌先が絡まって、たまらなく気持ちいい。
「立って…?」
立ち膝状態にされ、同じく立ち膝の伊集院先輩の腕を掴んだ。
先輩はもう一度キスをして、そのまま、後ろから俺の背中を撫でて。
そっとお尻のあたりを撫でると、ゆっくりとその手を奥へ進め、指が1本、中へと押し入る。
「っんっ…んーっっ」
口を離されても、しばらくは伊集院先輩に寄り添って。
後ろの指がそっと動かされる感覚に耐えるように、先輩の腕にしがみついてしまっていた。
「はぁっ…ぁっあ…ゃめっ」
「どうして?」
やっと俺の言葉に答えてくれる。
この人には、はしたない自分をさらしたくないのに。
「悠貴くんに、中出しされてたっけ…。中、ドロドロだよ」
「くっ…んっっ」
「ほら…太ももあたりも、中のが出てきて、ベタベタ…」
「っやめっ…っっやっ…」
「かわいいね」
伊集院先輩が、少し体を後退させ、俺は自然と頭の位置が下がる。
先輩が、俺の口に股間のモノを押し当てて。
「ね…舐めれる…?」
強い口調でそう言われ、従わないわけにはいかなかった。
もし。
これで先輩がイけたら、途中で止めれるんじゃないかって。
そういう考えがよぎった。
「んっ…ぅんっ…」
ねっとりと舌を這わして。
伊集院先輩が感じるように。
「っせん…ぱぁっ…」
「ん…。いいよ…。すごくかわいい」
「っんっ…はぁっ…ん…っン…」
「俺も、ちゃんとしてあげないとね」
そう言うと、いままでの心地いいくらいの緩い愛撫をそっと強めて。
指が中を掻き回すように動かされる。
「っひぁあっ…やっあっ…ゃっやあっ」
体が大きくビクついた。
こんなに手を抜かれてたんだ?
さっきまでとは全然違う。
涙が溢れてきていた。
「どうした…?」
「ゃんっやっあっ…やあっ」
「感じやすいんだ…?」
「ちがっぁあっ…だ…めっあっ…せんぱぁっあっ」
「なに…?」
「ひぁっあっ…やっやぅっ…いっちゃう…っんぅっン」
「そんなに気持ちいいんだ…?」
もう片方の伊集院先輩の手が、俺の頭を撫でて、ものすごくゾクゾクした。
「はぁっあんっあっ…やめっあっ」
「…出してもいいんだよ…?」
やさしい声で、そう言ってくれて。
だけれど、こんな早く先にイってしまうなんて、恥ずかしいし申し訳ないし。
「っゃ…だめっあっ…ぃやあっ…」
「いいよ…。開放して?」
相変わらず、激しく中をかき回しながら、それとは対照的に俺の頭をそっとやさしく撫でてくれる。
「あっんっ…やぁっあっイ…っあっイっちゃぅっ…ぃやっ…やぁあああっっ」
恥ずかしい。
いつもはそんな感じない羞恥心を、この人相手だと感じてしまう。
伊集院先輩は、ぐったりしてる俺の体を、後ろから抱いてくれた。
「…や…」
「バイブとか、使ったことある…?」
「…ローターしか……」
「じゃあ、使ってみようか」
そう言って、俺にバイブとローションを手渡す。
「っ……こんな……俺っ…」
「なに?」
「入らな……」
「そんなことないよ。大丈夫」
耳元でささやくようにそう言って。
後ろから、俺の膝裏に手を回し、大きく開脚させられる。
「っ……」
どうしよう。
断れない。
「…ゆっくり…入れてごらん…?」
足を持ち上げられて、体が沈む。
上から、伊集院先輩が、俺の体を見てる気がして、気持ちが昂っていった。
「っ…出来な……」
「どうして?」
理由なんて。
こんな、恥ずかしい姿。
伊集院先輩にさらしたくないし。
だけれど、それを望んでるのは伊集院先輩で。
考えがまとまらない。
「…出来ない…?」
もう一度、そう耳元で聞かれて。
やっぱり。出来ないなんて言えないし。
バイブにローションを垂らして、ゆっくりと。
自分の中に押し込んでいった。
「っくっんっ…んぅうっ」
「ほら…大丈夫でしょ…?」
片足を離され、あまった手が俺の股間をなで上げる。
「っあっ…んぅ…だっめ…ぁあっ…おっきぃっ…」
「手伝おうか…?」
伊集院先輩がそう言って、バイブを持つ俺の手に、手を重ねた。
すると、ゆっくりまわすようにして、中へとさらに押し込んでいく。
「っあっ…やぅっあっ…せんぱっ…ぁあっ」
大きくビクついてしまう俺の首筋にそっとキスをしてくれて。
やばい。
蕩けそうで。
中を、バイブでゆっくりと探られる。
「どんな感じ…?」
「あっ…ぁん…っ…や…っ」
「もっと悦くしてあげるからね…」
いいかげん奥まで入りきったバイブの電源が、伊集院先輩の手で、そっとオンにまわさる。
「っアっぁあっ…んーっ」
「大丈夫?」
「やっだめっ…いやっ…あっ…これっ…やぁあっ」
バイブを抜こうとする俺の手を後ろから先輩は、取り上げてしまう。
「っ!!やっ…」
振り返る俺に、にっこり笑って。
両方の手を背中で一まとめにして、片手で、掴み取られる。
「あんっあっ…はぁっ…せんぱっぁっっあっ」
「ローターも使おうか?」
「もぉっっやっあっ…」
今度はローターを取り出して。
電源が入った状態で、俺の股間をローターでなでていく。
「ぁふっ…やっやぁあっ…んっあっあっ…ぁんっ」
「かわいいね…」
その声すら、もう俺を感じさせてくれる。
「ぁんっあっ…せんぱぃっあっ…っあぁあんぅっ」
だめだもう。
ものすごく恥ずかしい。
頭がボーっとする。
涙がボロボロ溢れてくる。
「どうして、そんなに泣くの…?」
「っあっんっ…やぁっやっ…だめぇっ…いくっ…っ」
「そんなに気持ちいい?」
「はぁっんっ…ぃいっだめぇっ…やぁっやぁあああっ」
恥ずかしい。
また。
もうイってしまって。
伊集院先輩は、バイブとローターのスイッチをオフにする。
バイブが抜き取られ、体中から力が抜けた。
もう俺、トロトロだ。
仰向けに寝転がる俺の体の上に、伊集院先輩は体を重ねる。
「入れていい…?」
いまさら、断れる状況ではない。
だけれど、一瞬、頭の中に悠貴が浮かんだ。
「や…め…」
悠貴が。
憂が。
いろんな人のことが頭の中に浮かぶ。
それなのに。
伊集院先輩は、俺の中へと自分のモノを押し込んでいく。
「あっやっぁああっ…」
熱い。
熱くて。
蕩けそう。
「あっぁんっあっんっ…やぁあっ…」
腰を動かされるたびに、声が漏れて。
恥ずかしくてたまらなくて。
恋人とそうでない人と。
わりきって出来る。
だけれど、いままでは友達としかしたことがなかったから。
この人は。
全然、関わりのなかった人で。
ただ、いま、やるだけのために、2人、関わって。
全部、知らない人に、全部、さらけ出している。
まともに話したこともないのに。
こんな声、たくさん聞かれて。
こんな顔見られて。
たぶん、俺のこと、エロいイメージしかなさそうで、恥ずかしかった。
「ぁんっ…あっあぁっ…んぅっ」
「感じる…? すごい、エロい声…」
顔が熱い。
俺、すっげぇ恥ずかしくて。
やばい。
声、抑えらんないし。
「やっ…はぁっぁあんっ…せんぱいっ…ぁっあんっ」
「バイブの方がよかったかなぁ?」
バイブより俺が感じちゃってるって。
わかってるくせに。
なんでだろう。
バイブの方が刺激は強いんだけど。
精神的なものが大きいのだろうか。
すごく感じる。
強すぎる刺激でつい出てしまう声とはまた違う。
ホントに。
感じて出ちゃう、エロい声だ。
「ぁっあんっ…せんぱぃっ…ぃいっ…いいよぉっ…あっっ…もぉっ」
「またイっちゃうの?」
そう指摘され、恥ずかしくてたまらない。
伊集院先輩の腕を掴んだまま、顔だけを逸らした。
「んっ…やっ…ぃくっ…」
「ん?」
「ぁっあっ…だめっ…あっぃくっ…やぁっもぉっ…」
「いいよ…。じゃあ、中で出すよ?」
「っあっんっ…ぅんっっ」
「悠貴くんのと混ざっちゃうねぇ」
その言葉にものすごく羞恥心を煽られる。
「あっ…やぁっやだっ」
「どっちかなぁ? イっていいの? 我慢した方がいい?」
もちろん、俺だけがイかせてもらっているのに、我慢しろなんて言えるわけがない。
が、そんな悠貴のと混ざるだなんて。
俺は、自分の顔を腕で隠す。
「悠貴っあっ…悠貴ぃっ…あっいっちゃうっ…だめぇっ」
「イって?」
「ぁんっ…やぁあっ…ぃくっあっあぁあああっっ」
俺がイってしまった直後くらいに。
伊集院先輩は俺の中から抜き取って、外に出してくれていた。
ほっとするような。
申し訳ないような気持ちになった。
その後、力尽きて、俺は眠ってしまっていた。
どれくらいの時間が経っただろう。
目を開くと、俺の寝転がるベッドに伊集院先輩が座り込んでいた。
「先輩…」
「ん? おはよう」
「……なんか…すいません…」
「どうして?」
どうしてって。
「…俺、伊集院先輩のこと、憧れてて…好きで。こんな風に出来るの、もちろん嬉しいですけど。悠貴も大事な友達で…好きで、わけわかんなくて…っ」
言ってるうちに涙が溢れた。
自分でもよくわからない。
「悠貴の…名前呼んじゃって…」
伊集院先輩は、俺にそっと口を重ねてくれた。
「気にしないで…。ホント、悠貴くんはモテるんだねぇ」
真綾ちゃんのこともあるんだろう。
苦笑いして、伊集院先輩は俺に言う。
「っあのっ…真綾ちゃんのことなんですけど…。悠貴も、悪気はないんです…」
「…うん」
「悠貴も、たくさん悩んでてっ…もちろん、真綾ちゃんを悩ませたのも悠貴ですけど。 俺は、悠貴がすごい悩んで苦しんでたの、ずっと見てきてて…っ」
「拓耶くんにそんなにも思われてるなんて。ホントに。悠貴くんは幸せ者だね。なお さら憎くなっちゃうけど。もう、大丈夫だよ…。真綾が選んだ人だしね」
俺の頭を撫でてくれた伊集院先輩の表情が。
なんとなく寂しそうに見えた。
「また、あとで悠貴くんとは話し合うつもりだから」
「…はい」
「まだ、疲れてるだろ? 寝てていいよ?」
「…ありがとうございます…」
伊集院先輩が悪い人だとは思っていない。
むしろ好きだし。
そう思うことが、悠貴に対して後ろめたさもあったけど。
仲良くなってくれたらいいのに。
話し合うって?
ちゃんと、まともに話せるのかな…。
不安だ。
そう目を向けると、通じてしまったのか。
「大丈夫だよ」
にっこり笑ってくれる。
大丈夫…。
そう。
今日だって、悠貴が伊集院先輩を呼んでくれたわけだし。
大丈夫だろう…。
俺は頷いて、伊集院先輩に頭を撫でられたまま、もう一度、眠った。
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