「…いきなり出てったかと思ったら、連絡なしで帰ってこないってどういうこと? カギしめていいのか駄目なのか、困るだろって」
昨日の夜、水城の部屋でしゃべってる最中。
深敦に呼ばれて、部屋を出て。
酔った深敦の相手をしていたら、帰るに帰れなかったわけだ。
「悪ぃ…って…。深敦が酔っててさぁ」
ベッドに寝転がっている水城の隣に俺も寝転がってから、横を向く。
「まぁいいけどさ。で、やってきたわけ?」
「…一応な」
「ま、据え膳食わねばってやつ?」
「ってかさぁ。深敦に口でやられて、死ぬかと思った」
やられたというか、俺がやらせたんだけど。
「…いーじゃん。ノロケ?」
「違ぇよ。ただ、なんつーか…。酔ってたから、覚えてねぇと思ってやらせてみたけど、駄目だわ、俺。声、出そうで」
少し水城が企むように笑うのが見えた。
「かわいくて、いーじゃん?」
「…かわくねーよ。ホントは怒ってるわけ…?」
「別に?」
そうは言いつつも、水城の手が、俺のズボンを脱がしにかかる。
「…俺、疲れてんすけど…」
「いっつも、啓吾がしたいときに俺が相手してんじゃん? たまには、俺に付き合ってよ」
ごもっとも。
「別にいいけど」
「あとで嫌がんなよ」
そう言って、俺のズボンと下着を脱がしていく。
「…なんか…水城がリードすんのって、初めてじゃん?」
「だな。いっつもお前だから?」
「強姦まがいみたいなのはあったけど」
「あれはノーカウントで」
変な感覚。
躊躇うことなく、水城は俺のモノに舌をつけて舐め上げた。
「っ…ん…」
口に含まれて、舌先が敏感なところを強く擦って。
体が一気にソノ気になっていく感じ。
「はぁっ…水城…」
口を離すと腰を引き寄せられ、あろうことか、後ろの秘部、入り口に舌を這わされた。
「っなっ…あっ…ゃめ…っ」
「やっぱ、こっちの方が、感じるわけ?」
そうとだけ言ってから、ゆっくりと舌先が挿入されていく。
「っんっっ!!!」
何度も舌先が出入りするのがわかる。
体が変すぎる。
「っくっンっんっ…はぁっ」
心地イイという言葉が合う。
ボーっとして、たまらなくて。
腰が動いてしまって。
「あっ水城ぃ…」
あたりにいやらしい水音が響いていた。
たっぷり舐めあげられたソコに、今度は水城の指が入り込む。
「っぁっあっ…っくぅンっ…」
やばい。
なんか、こんな風にリードされんのってホント慣れてなくて妙に恥ずかしいし。
それを悟られないよう、なんとなく顔を背ける。
「どうした…? 啓吾」
耳元で、熱っぽく水城が俺に声をかける。
わかっててからかうでもなく、普通に聞かれてんだけど、その声にすらちょっと反応しちまうし。
「んっ…ゃめ…あっ…ゃばい…」
「やばいって、なに」
俺の体を気遣うように指先が中をじっくりと探っていく。
「んーっ! やぁっ!」
なに俺。
嫌なくらいに反応しやがる。
今日の俺、最悪。
水城がリードなんてすっからだ。
しかもこんな優しく。
もっとガンガン欲望任せにやってくれりゃ、俺だって、それなりにサラっとイって終われただろうに。
体がビクつくのを見られていると思うと恥ずかしくてたまらない。
恥ずかしい。
そう思うと、耐え難く、一旦中断しようと、水城を見た。
視線に気づいたのか、俺の中に入り込む指を見ていた水城が、そっと顔をこちらへ向ける。
「…どうした、啓吾」
「っ…はぁ…ちょっと…待っ…」
「あぁ。啓吾って優しくされんの、慣れてないんだ?」
「な…」
「じゃあ、なに?」
そう言いながらも、指をゆっくりと引き抜きながら、俺の反応する場所を探られていく。
体がはねてしまうと、そこを重点的に、指の腹で優しく押さえつけられた。
「あっ! んっ…待てっ…て…っ」
「いいよ、待つから。緩く撫でるくらいいいだろ」
緩く。
じわじわと、前立腺を撫でられる感触に、体がゾクゾクして。
緩くでも無理だと、首を横に振る。
「ひぅっ! あっ! 待っっ…ぁあっ…」
「……止めた方がいいの?」
頷いて、水城の左腕に爪を立てる。
「はぁっ、ゃめ…っあっ! だっめ、ぁっ…そこっ」
「すっげぇ、感じてるね、今日の啓吾…。いつもよりエロいし」
わかってる。
だから一旦、止めてくれっつってんだっての。
顔を背けた状態で、水城に目を向けると、水城は水城でそんな俺を見下ろした。
「ゃっ…あ…っやば…っぃく…っ」
「いいよ。イった方がいいだろ」
「違っ…やめっ…ん、ぃきたくなっ…!!」
「どうして…。1回しか無理? それならそれで、俺は口とかでいいし」
指先が、出入りしながらも俺が強めに反応した箇所を的確に突いてきやがる。
俺のこと、見すぎだろ、こいつ。
一番弱いトコ。
「ぁっあっ! ぃくっ…あっ、やっ!」
何度、首を振って『ダメだ』と示したことか。
「いいよ。イってよ…」
耳元での水城の声。
熱い。
耐えれず水城の腕に立てた爪を、つい食い込ませてしまう。
「やぁあっ! あっ! ンっ、やぁああっっ!!!」
体が大きく跳ね上がる。
それに合わせるように、水城が指の動きをそっと止め、俺もまたやっと、水城の左腕を掴んでいた手が緩んだ。
「…ぁっ…はぁっ…」
「…啓吾……あ…イった?」
「っ……はぁ…っ」
顔を背け、水城の視線から逃れた。
「啓吾って…出さずにイけるんだ…?」
射精を伴わない絶頂。
いわゆるドライってやつで、後ろをうまく使われるとこれでイける。
「ドライって、女がイく感覚と近いらしいけど、どう…なの?」
女みたいな姿を見られたような気分で、羞恥心にかられた。
水城に、見られるなんて。
最悪。
「まだ…気持ちイイ…?」
水城もある程度の知識はあるんだろう。
出してすっきり…てのとは違って、絶頂の気持ちよさから、まだ余韻が響く。
そんな状態で、ゆっくりと指を引き抜くと、今度は俺の股間を指先でそっと触れた。
「はぁっ…あ…っ」
「すごい…エロい顔してるよ、啓吾…」
「んっ…ばっか…ぁ…」
「顔赤いし。目も潤んでるし。恥ずかしい…?」
恥ずかしいに決まってんだろって。
股間を擦り上げられると、すぐにまたイきたい衝動にかられた。
「はぁっ…あっ…んっ! 水城っ…」
「なんか…トロトロだね、啓吾」
意味わかんねぇし。
けれど蕩けそうな感覚に、頭がボーっとした。
全身のドコを触られてもゾクっとする。
捕まれた腕すら、しびれるような、そんな感覚に体が震えた。
「ぁあっ! も…ゃ…早く済ませ…っ」
「冷たいなー…。一緒に感じてよ」
そう言うと、焦らすみたいに股間から手を離し、胸の突起をそっと撫でた。
「っ! んっ…ぅんっ!」
「ここだけでも、気持ちいい…?」
気持ちいい…。
すっげぇ、体中が敏感になってるみたいで、やべぇだろ。
感じすぎる。
「ん…っんっ!! ゃめ…っ水城、そこ、やめろって…っ」
「どうして」
水城の指先が、尖りまくっちまってる俺の乳首を両方摘んで、転がして愛撫する。
「ぁっ…ン! んーっ!」
「泣くなって」
あ…俺が感じてるのがわかってか、からかうような口調。
目を向けるとやっぱり、少し笑みを見せてきた。
顔を背け、無理に体を捻り、水城の手から逃れる。
「啓吾―。乳首触れないだろー」
「っもういいって、そこは」
「感じるから?」
「っ…そういうんじゃねぇしっ」
「じゃあ、触らせてよ」
「んなとこ…触ってもつまんねぇだろっ」
「そんなことねぇよ。楽しいし」
断る理由が、『胸で感じすぎるのが恥ずかしいから』だとか痛い内容しか思いつかなくて。
しょうがなく、仰向けになると、水城の舌が胸の突起を舐め上げる。
「くっ…んっ…はぁっ…」
ぬるぬるして、気持ちいい。
体を寄せた水城の肌に俺の股間のモノがぶつかって擦られる。
少し刺激を与えられると、胸なんかじゃなくて、早く欲しくなった。
「…水城…ん、もう…やめ…っ」
「そんなに嫌? 啓吾って、乳首だけでイけんじゃないの?」
「…いいから…っ。…もうっ」
「なに…」
耳元で聞かれる。
目を向けると、目が合った。
涙で視界はぼやけてたけど、わかる。
なんか、水城が愉しそうで、妙に恥ずかしくなった。
「なに?」
催促され、ますます体が疼く。
「あっ…はや…く…」
「ココ?」
水城の指が場所を示すよう、入り口を撫でた。
けれど、撫でるだけ。
入り込んではくれなくて、そこがヒクつくのも自分でわかった。
「水…城っ!」
「啓吾、涙腺ゆるんでる? 目ぇ、ウルウルしてる」
水城の言う通り。
瞬きすると、涙が伝った。
「早く…っ…なぁ、もう…っ」
「言ってよ」
「………ん……っ…欲しぃ…」
俺がそう言ってしまうと、水城の口が俺の口に重なった。
「んっ! んぅんっ!」
舌が絡まる。
こんな行為は無意味だ。
そう思うのに。
ゾクゾクしてたまらない。
もっと。
焦らされているからじゃない。
水城の存在自体が妙に愛おしく感じて欲している自分に気づく。
背中に手を回すと、水城自身が、俺の中に入り込んできた。
「んーーーっ!!」
口が離れる瞬間、送り込まれた唾液を飲み込んだ。
中に入り込んだ物量に耐えるべく、背中に爪を立てる。
「ぁっあっ! ひっぅ…っ」
「キツい…? 啓吾がエロいから、いつもよりでかくなったかも」
「ばっか…。ぁああっ!! 水城…っ、すっげ、ぃい…っ」
「ホント? 啓吾にそう言われると、自信つくかも」
ただ、気持ちいい快楽だけが手に入ればそれでいい…そういう行為のはずなのに。
抱きしめたくなった。
髪を梳かしてくれる水城の手にすらゾクっとした。
熱っぽい視線で俺を見てくれるのに、顔が熱くなる。
ホント、涙腺ゆるんで視界がぼやけているせいか、近眼だからか。
目の前の景色を自分のいいように解釈しちまっているのかもしれない。
水城が、俺のことちゃんと見てくれている。
それだけで、体がおかしくなりそうだ。
いつもは、俺が上に乗っかって好き放題動いてるだけだったかもしれない。
そりゃ、たまには抱き合う体位だってあっただろうけど、こんなじっくり見てなかったから。
「啓吾…」
水城。
水城は、俺を抱いてるんだよ。
誰の代わりでもなく。
俺自身を。
水城に抱かれてる。
水城自身だ。
「ぁあっっ…んっ、水城っ」
何度も出入りしては、感じるトコロを擦りあげてくれて、そのたびに体がビクついた。
背中に爪を立てるだなんて。
友達同士でしていい行為じゃねぇよ、なんて頭をよぎる。
浮気の証拠みたいなもんだ。
いやがらせをしたいわけじゃない。
ただ、強く水城を抱きしめたかった、それだけ。
それに応えるよう水城はまた俺に口を重ねた。
「んっ! ぅんっ! ぁっんぅっ」
触れ合う舌先。
体を動かしながらも無理に絡ませて、流れ込む唾液が喉を通る。
なんかもうぐしゃぐしゃだ。
頭ん中も、体も。
目を閉じると、ベッドの軋みや濡れた音が響いきた。
水城の息遣いが、俺のと混じっていく。
もう一度、強く抱き寄せた。
「あっあっ…んっ! ひっ…ぅっ…ぁあっ、あっんーーーっ!!!」
息苦しいのに、深く口を重ねていた。
イってしまい自分のから溢れ出ていく感触と、水城のが中に流れ込む感触。
少し名残惜しむようにして、そっと口を離す。
見上げると水城と目が合った。
なんとなくもう一度、口を重ねた。
水城からってわけでも俺からってわけでもなく。
ホント、なんとなくお互いに。
舌まで絡めて。
もうイっちまったってのに。無意味だろうに。
妙な感覚に襲われたけれど、この感覚の意味とか、突き詰めないほうがいいんだろうなって、そう思うから。
考えることを放棄した。
そう。考えなくていい。
すぐに、俺の立てた爪あとも、消えてなくなるだろう。
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