「啓吾、なんかお前に用だってさ」
深敦が、俺に言いに来てくれて、教室のドアの方を指差す。
「ん…さんきゅ…」
ドアに向かっていくと、知らない人だった。
「なに…か…?」
「業後、生徒会室に来て欲しいんだけど…。用件はソコで話すよ」
そう言われて、断わる隙もなく、そいつはいっちまうもんだから、俺はしょうがなく業後に生徒会室に行くことにした。

「…あぁ、啓吾くん…? よく来てくれたね。実はさ…優斗から頼まれて…」
「…なにを…?」
「優斗の彼女に手、出しちゃったんだって…? それのお仕置きを、代わりにしてくれって言われたんだよ…」
お仕置きだって?
まぁ、最後までじゃないにしろ、兄貴の彼女に手出しといて、なにもなく終われるとは思ってなかったけど?
だからって、なにするわけ…?
「…あんたがなにかするわけ…? 1発やらせりゃいいの?」
そいつは軽く笑って、俺の頬に手を当てる。
「理解力があって、嬉しいよ」
「…俺、受け向きじゃないんで」
やられる…?
俺は、嘘をついてでも逃げ出したくなっていた。
「…ホント…? 優斗の話と違うね」
兄貴は、一体、こいつに何処まで話したんだか…。
「試させてよ…」
そう言うと、いきなり俺を抱き寄せて、腰の辺りにいやらしく手を這わす。
「っ…な…ぁ…」
ゾクゾクするような感覚で、不安に飲み込まれそうになる。
こうゆうとき、必ず思い出しちまうのが、強姦まがいの被害者の自分で。
恐くなる。
まるで、自分が自分じゃないみたいに、精神が弱っていくのがわかった。
「…恐い…?」
耳元で少し笑って、言いながら、俺の体を反転させて、後ろからズボンのチャックに手をかける。
「……っ…やめ…」
そうは言ってもどうにもならず、そいつが、俺のズボンと下着を下ろさせると、直に、ペニスをつかみこんで撫で上げた。
「ば…っか……」
何度も何度も人の手で擦りあげられて、何も考えられなくなってくる。
「後ろは…もうだいぶ、調教され済みなんだろ…?」
「ん…っぁっ…離…っ…やめろって…っ」
立ってられなくなって、座り込んだ俺は、結果的にそいつから逃れるみたいになっていた。
立てなくなっている俺の前にきたそいつは、笑顔でローションを指につける。
足元で絡まっているズボンと下着を片手で器用に抜き取られて、どうすることもできずに、俺は下半身丸出しな状態。
「な……」
「めちゃくちゃ不安そうな顔してる。ごめんね…。優斗は大事な友達なんだ。せっかくの頼みを断わるのもね…。それに…啓吾くん、かわいいし…」
そこまで言うと、そいつは逃げ腰の俺のアナルに指を這わす。
「あ……ん…」
ゾクンと、体が一瞬震える。
少しだけ入口をさまよって、ゆっくりと、中へと指が押し入ってくると、俺の精神も崩壊気味で、なにがなんだかわからなくなってきた。
「っ…ん…やめ…っ」
「どうして…?」
そう聞きながらも指で中をかき回す。
「んーっ…ふぅっ…ぅくっ…っ」
そいつの指先が、的確に前立腺と言われるポイントを指先で突いてくると、もう限界で、わけがわからなくなってきていて…。
「んぅっ…やめっ…ソコ…っ」
「啓吾くん、かわいいね…」
「はぁっ……やっ…ぁっ…あっ…やっ…ぁああンっ」
久しぶりの、後ろからの刺激に、俺はアッサリとイかされてしまう。
あまりにも早くイってしまったことから、なんだか後ろめたさを感じていた。
それでも頭がボーっとして、わけがわからなくなってくる。
「……悦かった……?」
軽く笑われて、羞恥心が高まる。
そいつは少し乱暴気味に、指を俺の中から引き抜く。
「ひっ…ぁっ」
その感覚に、自分の体がビクンと震えていた。
やさしそうなそいつの顔が、一瞬真面目に俺を見据えるもんだから、変に恐くなって、少しだけ後ずさってしまう。
「自分でさ…こんくらい、入るでしょ…」
その言葉に見上げると、大きなバイブをチラつかされる。
誰が、自分から入れるかよ…。
答えられずに、黙り込んでいた。
「じゃ、俺が突っ込んであげようか?」
そう言うと、俺の脱力した体をソファに座らせて左右に大きく足を開かせる。
「なっ…」
ローションをバイブに垂らして、ソレをアナルに押し当てられると、体が強張って、動けなくなってしまっていた。
「入れるよ…」
いちいち予告してんじゃねぇよ…
とか、心の中で、悪態付くけど、表ではそんな態度はもう取れない状態で…。
ゆっくりと、大きなバイブが、ソコを押しひろげて中に入り込んでくると物事が考えてられなくなってきていた。
「んーっっ…ぁくっ…ンっ…」
刺激に耐えるのと、声を防ぐのとで、指を噛む。
「傷つくから…止めな…って…」
そいつが、俺の手を取ってしまうもんだから、声が殺しきれなくなる。
「ぁあっっ…ひっくっ…ぅくっン…ゃ…ぁあっ」
「そんなに、泣くほどイイ…? たくさん拡げられると感じちゃうタイプなんだ…?」
やばいって…。
涙腺緩んでる…?
涙が止まらなくなってきてる。
すごい、感じてる…?
「ゃくっぅンっ…はぁっ…あくっ…」
「…イイ…?」
そう言われると、自然とそっと頷いてしまっていた。
「…そう…かわいいね…。少し押すだけでどんどん入ってくよ…」
「ふぅっ…ぁンっ…はぁっ…先輩…っ」
「やばいな…ホントにかわいい…」
苦笑いすると、俺の髪の毛に手を絡めて深く口付ける。
「んふっ…んっ」
いやらしく舌を絡め取られ、吸い上げられると気持ちよくって…
抵抗するべきなんだろうけど、出来なくって絡め返してしまっていた。

そのとき、ドアをノックする音が鳴り響く。
ドアの方へと行こうとする先輩の手をつい、とって止めてしまっていた。
「はぁっ…ぁあっ…ンぅ…」
「…待ってて…。すぐ戻ってくるからね…」
にっこり笑って、もう一度軽くキスをして先輩はドアへと向かっていった。

あぁ…俺、なにしてんだろ。
でも、こんなん突っ込まれてっから、頭がまともに働かない。
入ってるだけの刺激に足らなくって、つい、自分でバイブのスイッチを入れてしまう。
「ぁああっ…やぅンっ…ぁっ…ひっ…くぅンっ」
それどころか、つい、そのバイブを抜き差ししてしまっていた。
もう、抜き差しする手が動いてるのか、腰が動いてるのかもわかんないような状態。
なんにも考えられなくって、ただ快楽だけを求める感じ。
「はぁっ…んっ…あぁっ…ンやぁっ…っぁっ…やぁあっっ」
自分で、イイところをバイブで突きながら、とうとう耐えれずイってしまい、脱力感だけが伴って、バイブを入れたまま、ソファでぐったりとしてしまっていた。

「…お待たせ…。待ってられなかった…?」
先輩が、俺のバイブを取った手に手を添えて、そっと掻き回す。
それだけの行為でも、イったばっかだし、こんな太いのが入ってるだけで変に感じてしまっていた。
「あっ…はぁっ…ンっ…先輩…っ…ぁンっっ」
「…ホントは…優斗に最後までやるなって言われたんだけど…ね…。…いい…?」
駄目な理由が全然、見つからない。
頷く俺に、そっと笑ってから、先輩はバイブをそっと引き抜いていった。

「にしても…待っててって言ったのに、一人でイっちゃうなんてずるいね…」
「…すい…ませ…」
あぁ…違うって。
俺、なにあやまってんの?
別に俺は悪くないっての。
もう、思考回路めちゃくちゃ…。
ソファの前に立つ先輩のベルトに自然と手をかけていた。
先輩のモノを取り出して、舌先で何度も舐めあげながら愛撫していく。
先輩は、俺の頭を撫でながらも、感じてくれているようで、次第にソレは硬さを増していった。
「上手だね…。いままでどれくらいやったことある?」
軽く笑いながら言ってくる。
どれくらい…?
そんなんもう、数えられないっての。
「…たくさん…」
そう言って、笑い返してやった。

先輩が、俺の横に座ってから、腕を引く。
俺はというと、引っ張られるがままに、体を先輩に向き合わせ、流されながらも先輩の体をまたぐような形になっていた。
「…入れれる…?」
「…ん…」
俺は、先輩のモノを手に取り、ゆっくりと自分の中に収めていった。
「ぁっ……ひぁあっ…ンぅ…っ…」
久しぶりに、入り込んだ生々しい感触に背筋が痺れるような感覚。
「あ…っ…先輩ぃ…」
「…ん…」
先輩は、俺の背中に手を回して体を支えてくれながら、首筋に口付ける。
「ふっ…ぅン…」
…やばい…。
「…やばいな…」
一瞬、俺の気持ちを読み取られたのかと思って、体が強張った。
「…な…に…」
「…啓吾くん、彼女、いるんでしょ…?」
そう言いながらも、そっと俺の体を揺さぶっていく。
「ンっ…はぁっ…んっ…っ」
彼女ではないが、それに近い存在のやつなら。
とりあえず軽く頷いて示す。
「あっ…せんぱ…っ…ひぅ…ンっっ」
俺も、もう自ら腰を振ってしまっていた。
自然と溢れてしまった涙を、そっと指で拭い取ってくれたり…
「…いい…?」
「…ぃい…っ…ぁあっ…くぅンっ…やぁあっ」
もう、腰も、いやらしい声も止まんなくなってきて…
ホントに、自分で自分がやばいと思っていた。
「…ハマりそう…」
耳元で、そう囁くように言われた。
「優斗が…最後までやるなって言ったのには…いろんな意味があったんだなって…」
いろんな…意味…?
「はぁっ…ン…な…に…」
「…ん…。啓吾くんの体を気づかってと。もう1つ…俺が啓吾くんのこと、好きにならないように…かな」
いっぱいいっぱいの状態で、その言葉の意味を理解するのが難しかった。
兄貴は、俺の体を思って、最後までやらないようにしてくれて…。

先輩が…俺のことを好きにならないようにだって…?
じゃあ最後までやっちまってる今はどうなわけ…?
「ぁくっ…ン…も…イク…っ」
「…いい…? 中で…イって…」
そんなこと、いちいち聞いてくれるんだ…。
頷く俺に、そっと口を重ねた。
「ん…っはぁっ…やっ…ンっ…あっ…やぁああっっ」

今までとは違う。
こんな風に気づかわれて。
不思議な感覚だ。
俺の体を支えた先輩の手の感触とか、首筋に這わされた舌の感触だとか…。
涙をぬぐってくれた指の感触が、やり終わってもまだ残っていた。
「…やったっての、秘密にしとかなきゃだね」
軽く笑って、俺の頭を優しくなでて、もう一度だけ、ゆっくりとキスした。
最後のキスは、逃げれないこともなかったのに、そのまま受け取っていた。


もう会わないと思っていた。
皮肉にも、次の日。
学食で鉢合わせる。
自分が席取りで、他のやつはいなかった。
もしかしたら、このタイミングを見計らって、俺のところへ来たのかもしれない。

先輩の近くに、一人、かわいい感じの子がいて、先輩もその子をかわいがるように頭を撫でていた。
あぁ…この人って…
誰にでもやさしい人なんだ。
聞かなかったけれど彼女、いたんだな。
まぁ、あれが彼女って決まったわけじゃないけれど。

結局、あんなのただやっただけ。
お仕置きなんて言いながらも、全然辛くないなんて思っていた。
けれど今、妙に辛い。

先輩にとっては、アレはなんでもない行為で、忘れてしまうようなことで…。
それとも…
彼女がいるから、秘密って…?
何事もなかったフリしてくれてるわけ…?


なんでもないみたいに俺の横を透った先輩は、そっと俺の首筋を指で撫でる。
振り向いても、先輩の後ろ姿しか確認できない。

秘密にしとかなきゃだね…
そう思うんなら、跡なんか残すなっての。

覚えていてくれて…
嬉しいのかよ、俺は。
あとくされなく忘れてくれたほうが楽なのに。
別に、この人に対して好きだとか、そういった感情があるわけじゃない。
けれども、なんだか苦しくてたまらなくなった。