真乃凍也



「お前、付き合ってる奴とかいんの?」
「…いないよ。けど、好きな人はいる」
「そうなんだ…? じゃあ、ヤれないって?」
「いや、そうでもないな。一応、諦めてるし」
「なにそれ。完全片想い?」
「そういうことになるな。…智巳先生。俺の好きな人」
「…なるほどね。あの人、彼女想いだもんな」
「諦めてはいるけど、他で恋愛する気もないよ。…そっちはどうなの? そういう話、持ちかけてくるからにはヤれるってこと?」
「まぁね。なぁんか最近、面倒でさぁ。フリーでいたいんだけど。遊びでヤれる人、募集中」
「へぇ……」


 キスをした。

 これは本気じゃないと、お互い確かめるよう一度口を離し、目を合わせて。
 もう一度、深く口を重ねた。


 何度、ココで体を重ねただろう。

 他の人と、やる気になんてならなかった。
 フリーでいたいと思っていたのに、結局、俺は縛られたんだ。
 お前じゃなきゃ無理だなんて思ってたわけじゃないけれど。
『他の人でもいいんだ?』なんて思われたくなくて。

 お前としかしない時期もあった。

 わかってんのかよ。


 勝手に恋して、勝手にフラれて。
 お前を避けて、怒ってる俺は、なんてみっともないんだろうな。

 苦しい思いもしたけれど。
 あのとき、お前と過ごせた時間は、すごく愉しくて。

 やっぱり後悔なんてモンはねぇんだよ。