■お昼休み■
樋口智巳先生→数学教師(1年担当)
渡部浩二先生→英語教師(1年担当)
柊先生→保険室の先生

智巳「そういえば、最近、生徒の間で渡部先生のことがウワサになってるみたいですね」
渡部「簡単にやれるとかそんなんですか」
柊「そういうウワサ、生徒は好きだから」
智巳「もうちょっとおもしろいやつです」
渡部「変なウワサなら、聞きたくないです」
柊「知らない方がラクなことも……」
智巳「というか、俺はウワサが本当かどうか、真実が知りたいです」
渡部「……知ってもいいやつですか?」
智巳「わからないから、先に柊に判断してもらおう」
渡部「そうやって、俺のウワサは広まっていくんですね」
柊「まあまあ、生徒の中でウワサになってることなら、いずれ俺の耳にも入るだろうし」
智巳「そのウワサってが……」
渡部「…………」
柊「……ふぅん……なるほどね。それは初耳」
智巳「おもしろいでしょ」
柊「うん、なかなかおもしろい」
渡部「な、なんなんですか……聞いていいやつですか」
柊「いいやつだと思うな。それがもし真実で、浩ちゃんが隠したいなら、今後、生徒に見つからないようにした方がいいし……」
智巳「ウソならウソで、おもしろいしな。どうしても嫌ならウワサはデマだって新たなウワサを流してもいい」
柊「俺も協力するよ」
渡部「あ……ありがとうございます。じゃあ、教えてください。どんなウワサなんですか」
智巳「渡部先生が、ホストクラブ通いしてるってウワサです」
渡部「…………え?」
智巳「夏休み期間中、生徒の実家の近くのホストクラブに、何回か出入りしてるの見られたみたい」
柊「他人の空似って可能性もあるけど……」
智巳「……実際、どうなの」
柊「本当に、通ってる?」
渡部「……たしかに夏休み期間中、何回か行きました」
智巳「意外な趣味ですね」
柊「お酒飲む方だとは思ってたけど……」
渡部「でも通ってるってほどじゃ……」
柊「夏休み中に何回か見られたんなら、通ってるって思われてもしかたないかも」
智巳「ってか1回じゃなく何回かって。はまったんですか。そこまで男にちやほやされたいんですか」
柊「あ、恋人が実家に帰っちゃって、寂しかったとか?」
渡部「いや、待ってください。ちょっと誤解があるんですけど」
智巳「ホスト行ってんの認めたじゃん」
渡部「それは認めます。でも別に、男にちやほやされる場所じゃ……」
柊「されないの?」
渡部「……されるかもしれないけど」
智巳「されてんじゃん」
渡部「……仲のいい人がクラブのえらい立場の人で……その人に会いに行ってただけです」
柊「へぇ、ホストの人?」
渡部「ホストなんですけど、いまは、オーナーだったかな」
智巳「ホストのオーナーと仲いいのも、なかなかだけど。そういう交友関係あるんだ?」
渡部「…………まあ」
智巳「そもそもお店で知り合った? その人に会うために何度かお店行くって、もう通ってるようなもんじゃん」
渡部「高校生みたいなこと言わないでください。っていうか、樋口先生、知らないんでしたっけ」
智巳「……なに?」
渡部「桐生のお父さんなんですけど」
柊「え……そうなんだ?」
渡部「別に桐生も隠してるわけじゃないと思うんで、言っちゃいますけど」
智巳「……はぁ……マジで萎えるわ」
渡部「なに萎えてるんですか」
智巳「そうやってまたマウント取りやがって」
渡部「マウント取ったわけじゃないです」
柊「いや、いまのは取ったね」
渡部「柊先生まで!」
智巳「だいたい桐生の父親がホストだって知ってたところで、渡部先生がホスト通いしてるイコール桐生の父親に会いに行ってるだなんて思うわけないし」
渡部「そ、それは、そうかもしれませんね……」
智巳「俺、桐生の父親とも仲良しなんですよマウントでしょ」
渡部「マウントじゃなくて、事実です」
智巳「あー……無自覚で敵作るやつー……」
渡部「めんどくさい人ですね。ただ嫉妬してるだけじゃないですか」
智巳「…………うるさい」
柊「2人とも喧嘩しない。それで……実際、仲いいんだ?」
渡部「はい。昔よく家に泊まりに行ってたんで。夏休み期間中、実家に帰ったついでに、桐生のお父さんの仕事場まで顔出してきた感じです」
柊「となると、ホスト通いって感じとはちょっと違うね」
渡部「数日通ってたんで、別に嘘ではないですけど」
智巳「全然おもしろくない結果だったんで、渡部先生犯していいですかー」
渡部「むちゃくちゃ言いますね」
智巳「どうせやってんでしょ。桐生の父親と」
柊「思考が高校生みたいになってるよ、智巳ちゃん」
智巳「だって渡部先生だし。そこんとこ、どうなんですか」
渡部「い、いいじゃないですか。やってたって」
柊「ああ……やってんだ」
智巳「あいかわらず乱れてますね。ホスト通いよりインパクト強いわ。同僚の父親に抱かれに職場押し掛けるとか」
渡部「職場ではしてません。変な言い方しないでください。これでも2人のこと信用してるから話したんですよ」
柊「もちろん、言わないよ」
智巳「やらせてくれたら言いません」
渡部「樋口先生、別に俺とそんなにしたくないでしょ」
智巳「それなりに楽しいし、気持ちいいんで、してもいいです」
渡部「してもいいって……まあ別に俺もそんな感じですけど」
柊「本当は仲良しだもんね」
智巳「それは違います」
渡部「いや……もうなんでもいいです」