オチもなく、日常の一場を。

■居酒屋にて5■1年後設定。
柊秋正→保健室の先生。恋人は宮本先生(数学教師)
桐生→数学教師。恋人は工藤雪之丞(昨年の卒業生)
渡部浩二→英語教師。恋人は風見鈴(生徒)
須藤→寮の管理人。

テーマ『帰り道』4人→2人。



渡「今度は宮本先生も誘おうよ」
桐「宮本先生?」
渡「俺、あんまり話したことないから気になってて」
桐「そうだね。鈴の担任だし、いいんじゃない?」
渡「あんまり接点ないんだけど、桐生は宮本先生と話すんだろ?」
桐「わりとね。同じ数学担当だし。恋愛相談とかたまに」
渡「じゃあ、誘いやすいね」
桐「うん。でも柊がいるとしゃべりにくいかな」
渡「うーん。いつものメンツから柊先生だけチェンジってのもなんか、気がひけるな」
桐「じゃ、3人でも、いいんじゃない? たまには。そんな大きな飲みって感じじゃなく。軽く夕飯一緒に食べるだけなら」
渡「そっか。じゃあ、桐生、今度声かけといて……」
桐「浩ちゃん、声かけてみたら?」
渡「俺? 接点ないけど」
桐「うん。そうなんだけど。だからこそっていうか。浩ちゃんから声かけられたら嬉しいんじゃないかなって」
渡「桐生でも変わらないんじゃない?」
桐「俺は担当一緒だから、どうしても仕事上での付き合いみたいな形になりがちでしょ」
渡「そっか」
桐「今の宮本先生って、数学教師と柊と、同じ学年担当の先生としか話してなさそうだからさ。浩ちゃんと接点持てるのは嬉しいと思うよ」
渡「面倒だって思われなきゃいいけど」
桐「大丈夫でしょ。とりあえず1回くらいは」
渡「じゃ、今度、声かけとく」
桐「よろしく」
渡「……桐生は優しいね」
桐「なんで?」
渡「んー。みんなのこと見てるなって」
桐「んなことないよ」
渡「みんなが仲良くなれるように考えてる」
桐「宮本先生誘いたいって言ったのは、浩ちゃんの方だろ」
渡「そうだけど。俺は、桐生がいなかったら須藤さんとも柊先生ともほとんど話してなかったと思う。職場の人と、そんなに仲良くつるもうだなんてあんまり考えてなかったから。最低限自分に関わりのある学年とか担当の人とだけ、それなりに話してればいいかなって考えてた」
桐「……悪いことじゃないよ。職場以外にも浩ちゃんは友達たくさんいるし」
渡「仕事とプライベートは別だって割り切っちゃえばね。けど、せっかく同じ場所にいるんなら、理解できることも多いだろうし、学年や担当が違う人とも仲良くしたいって思えたのは、桐生のおかげだよ。そうじゃなきゃ、俺にとって学校はホントにただ、仕事と仕事のための付き合いをする場になってた」
桐「宮本先生が、どういう考えかはわからないけれどね。もしかしたら、付き合わなきゃいけない人が増えたって考えちゃうタイプかもしれない。でもあの人、まじめっぽいからさ。そろそろ、職場でも息抜きして欲しくて。それって、俺じゃ無理な気がするんだよ。どうしても、数学担当の先輩ってイメージから抜けられないからさ。けど、俺が浩ちゃんに「宮本先生誘って」って言うのもやらせだろ。だから、浩ちゃんの方から誘いたいって言ってくれてよかった」
渡「うん。俺、宮本先生の負担にならないよう声かけるから」
桐「ありがと」
渡「だから、桐生がお礼言うのおかしいんだってば」
桐「そう? ま、いいけど」
渡「……今日はどうする? 飲む?」
桐「うーん。少し飲もうかな。いいの? 浩ちゃん」
渡「いいよ。俺ん家でいい?」
桐「オッケー。酔わない程度に貰うわ」
渡「たまには酔うくらい飲んでもいいけどね」