坂井百合音



「百合……音」
 こんな夜遅くにわざわざメールで呼び出すなんて。
「どうしたの?」
 ルームメイトがいたら困ること……なのだろう。
 
 とりあえず2人、屋上に続く階段へと足を進める。
 深夜2時。
 静まり返ってはいるが、いつ誰が来てもおかしくはない。
 平日のこの時間に出てくる人なんてそういないとは思うけど。

「言って」
「ちょっと……」
 いつまでたっても恥ずかしがり屋だな、誠樹は。
「したいの?」
 しょうがないから聞いてあげると、誠樹の体がこわばるのがわかった。

「……ん」
「昨日、抜いてあげたばっかだよ。どうしたの?」
「……そう……だけど」  
 
 また、俺の知らないところでなにか、欲情しちゃうような出来事でもあったとか。


「……理由教えて」
「理由って……っ」
「言えないなら、やめておこう?」
 誠樹は、一瞬だけ俺をにらみつけすぐさま顔を俯かせた。
「別……に」
「理由、無いの?」
「無いっていうか……。昨日、ただ手で抜かれただけだったし」

 そういえば、久しぶりに前だけで……だったな。
 疲れてそうだったから、誠樹の体を気遣って負担の無いよう処理だけしてみたんだけど。

 最近ずっと、後ろも使ってたから、前だけじゃ物足りなくなっちゃったのか。
「物足りなかった?」
「わかんねぇけど……っ。中がっ……なんか」
「疼く?」
 誠樹は、潤んだ目で俺を見た。
 図星ってことだろう。

「なんか……俺、変かも」
「どうして」
「こんな体……っ」

 俺は誠樹の手を引き抱き寄せた。
「大丈夫。中が疼かなくなるまで俺がずっと掻き回してあげるね」  

 腕の中で誠樹は頷いて、腰を寄せる。
 本当に、Hな体になっちゃったなぁ。

 俺のせいでしょ?
 ちゃんと、責任取ってあげるからね。