「その……ちょっと」
「あ、いいよ、もう、わかった。ごめんね」
3度目の正直とはよく言ったもので…。
2度あることは3度あるとかさ。
3度目がどっちに転んでも、どっちかにはあてはまっちゃう。
こーゆう風な言葉があっていいの?

「彩華、まーたフられたの?」
「普通、友達なら、なだめてくれるとかさぁ。結構、ヘコんでるんだよ。あたし」
友達の春ちゃんが、教室の机で伏せてるあたしの頭をつつきながら、くすくす笑う。
「ごめんごめん。けど、彩華は告りすぎ。そんな手当たり次第に告っても駄目だよ」
そんなこと言われても……。
あたし、まだ3人目だよ。
別に、そんなに告ってないよ。
それに……
ちゃんと3人とも本気だったし。
ある程度、自信もあったのに。
なにがいけないのかな。
女の子同士が駄目ってタイプの子たちじゃないはず。
あたしって、そんな駄目な子?
「春ちゃん、もう駄目だぁ……。あたし、魅力ないんだよ」
「何言ってんだって。かわいーって。彩華はかわいーよ」
お世辞は言われても嬉しくないもん。
「そんなに告らんときなって。誰でもいいから欲しがってる子みたいに見られてまうよ」
そっかぁ……。
「じゃあ、しばらくやめる……」
「そうそう。それがいいよ。しばらくはうちと遊んでような」
春ちゃんと……。
そっか。
もし、告って成功とかしちゃったら。
あたし、春ちゃんとは、あんまり遊べなくなるのかなぁ。
でも、友達と恋人は別だよ。
かといって、同性なわけだから……。
難しいのかな。
「あーもう、暗いよ。大丈夫か。そんな落ち込むな」
春ちゃんは、あたしがフられて暗いんだと思ってるかな。
そうじゃなくって、春ちゃんのことだよ。
でもまぁ、これ以上春ちゃんにも迷惑かけれないし。
「ん。大丈夫。今日はあたしんとこで夜、遊ぼ」
変に元気を出してみた。



明日は、土曜日で学校もないし。
夜たくさん遊んじゃおっかな。
「ほら、彩華。お酒買ってきちゃった」
春ちゃんは、夜、あたしのとこにきて、ビンをチラつかせる。
「えー……」
春ちゃんてば……。
「ね。今日は飲みなって。フラれたのも全部、忘れちゃいな」
「う〜ん。明日、休みだし、いっか……」
ルームメイトの子は春ちゃんの部屋に行ってて、今日は帰ってこない予定。
あたしのルームメイトと春ちゃんのルームメイトも仲よかったりするんだ。

ビンを1本ずつ手にして、同じベットに座り込む。
「ねぇ……彩華。ホントに、今日告った子のこと、好きだったんだ?」
春ちゃんってば……
フられたっての、忘れさせるのが今日の目的じゃなかったの?
でも、からかって言うだとかそうじゃないから……
それに、春ちゃんと、こーゆう話、するの好きだし。
「うん……。好き……だったよ。かわいーって思ったし」
「恋愛感情と、そうじゃない好きと間違えたらかんよ?」
そう言われて、思い返すけど……。
うーん。よくわからないかも……。
「ね……春ちゃんは? 好きな子とかさ……いないの?」
春ちゃん、すっごくかっこいいの。
モテそう。
うぅん。実際、モテてるんだよ。
うちのクラスにもう1人、千鶴ちゃんって言うかっこいい子がいて……。
その子との2ショットなんて、ホント、素敵なの。
2人とも長身で……。
千鶴ちゃんは、すっごく面倒見がいい感じ。誰に対してもやさしく接してくれるし。
春ちゃんは、少しつり目なのがまたかっこいくて……。
ちょっと性格も男らしい部分あるし、素敵なんだよ。
あたしは、中学校のころ……まだ、共学で春ちゃんがかっこいい〜なんてみんなに思われる前から友達だったんだけど。

「……好きな子ね。いるよ」
不適な笑みをこっちに向けて春ちゃんはそう言った。
意外……。
春ちゃんに、好きな子がいるなんて。
いつも、あたしが好きな子の話とかしてても、ずっと聞いてくれるだけで、春ちゃん、話してくれたことなかったのに。
「そっかぁ。春ちゃんもいたんだ。教えてくれればよかったのに」
そんなさ。
秘密にしなくても……。
あたし、いつも1人で騒いじゃってたじゃん。
春ちゃんの話もちゃんと聞いてあげたかったよ。
そんな風に、自分を隠されると……
ちょっと……友達として、ショックだよ。
あたし春ちゃんと一番仲のいい友達じゃないの?
「やだなぁ。隠さずに言ってよぉ」
笑顔で、冗談めかして言ったつもりなのに……なんか、自分でもわかる。
声が悲しそう……。
「彩華……?」
「春ちゃん……隠されるのやだ」
「ん……ごめんごめん……」
春ちゃんは、あたしの頭を撫でながら自分の胸元へと引き寄せる。
「隠すつもりはなかったんだけど。ちょっと……ごめんな」
うぅん……。
いいんだ。
おかしいな……。
隠し事なんて、平気なはず。
春ちゃん、あたしと一番仲良くしてくれるから……。
それだけで充分で、少しくらい隠されても平気なんだよ。
それなのにショックなのは、隠してた内容だ。
好きな子がいるなんて……。
誰……?
ホントだったら、お互い好きな人の話とか出来て楽しいはずだもの。
隠してたことを言ってくれてうれしいはずだもん。
なのに……。
おかしいね……。
春ちゃんに好きな子が。
「ね。どんな子? 春ちゃんが好きってんだから、すっごくかわいいんでしょ。あ、親衛隊とかついちゃってるレベルの子?」
言ってて、なんだか悲しくなってくるなぁ。
春ちゃんに、似合う子って。
あたしじゃなくって、そーゆうかわいい子。
「あのな。うち、彩華のこと、好きなんよ」
春ちゃんは、あたしを片手で抱き寄せたままそう言った。
「……もう、なぐさめはいいもん。ホントの事言ってよぉ」
「ホント。彩華……ちょっと顔、あげなって」
あたしは少し、春ちゃんから体を離して顔をあげる。
「……こんなん冗談でなんて、言わないよ」
春ちゃんってば……あたしの頬に手をあてて、そっと口を寄せる。
うそうそ……。
口が触れるか触れないかのところで、手にしていたビンを取り落としてしまっていた。
「ちょ……彩華、大丈夫?」
だって、春ちゃんがいきなりあんな……
キスとかしようとするんだもん。
ビックリしちゃったよ……。
「……こぼれちゃった」
あぁあ、あたしってドジで馬鹿。
春ちゃんに好きって言ってもらえても、全然つりあわない子だよ。
……というか
ホント……なのかなぁ。
そりゃ、あたしも春ちゃんが好き。
でも、いままで友達だったから、恋愛対象になんて見たことなくって……。
自慢の友達だったんだけど……
かっこいいよね。
春ちゃん、大好きだもん。
「ねぇ……春ちゃん。さっきのホント?」
「ん? 好きって……?」
恥かしくなって、声にも出せずそっと頷いた。
「ホントだよ」
「だって、あたし全然かわいくないし春ちゃんにつりあわない……っ」
フラれてばっかの駄目な子だよぉ。
でも、ホントはすごく嬉しいの。
だって、春ちゃんが恋人になってくれたら……
ずっと一緒にいられるもん。
別の子と、こーゆう関係になっちゃったら、春ちゃんはずっと友達でいてくれるだろうけど、今みたいに2人の時間がない気がして……。
「春ちゃんっ」
抱きつくと、軽く笑って、そっと背中に手を回してくれる。
「ホントにホントだよねっ。後からうそって言っちゃ駄目なんだよっ」
「言わない言わない。ね……。これからは友達じゃなくって……恋人として、付き合ってくれる?」
「うんっ……」



告白……されちゃった。
春ちゃんと、恋人同士なのかぁ。
「……はぁあ。春ちゃんは、いろんな女の子から言い寄られるから心配だなっ」
「何言ってんだって。いつも、彩華と一緒にいるやん?」
だって、それは友達としてだもん。
一度、恋人って思うと、他の女の子たちがライバルに思えてきちゃう。
「でも、春ちゃんに比べてあたし、フラれてばかりの女だし」
やっぱりつりあわないよね。
春ちゃんは、どちらかといえば、フる方で、あたしはフラれる方……。
はぁ……。
「あー……。そのことだけどね。彩華に謝らないといけないことがあって……。 ほら、彩華があんまりにも熱心に、告白するとか、相談してくれるもんだからさぁ。つい嫉妬しちゃって……」
そりゃ、告白する前は、必ず春ちゃんに相談してたけど。
嫉妬……?
「どうゆう意味?」
「先に、うちが、彩華の告白相手に頼んでたんだ……。その、彩華とは付き合わないでって」
付き合わ……
「えーっ」
つまり、春ちゃんが言ったから、あたしずっとフラれてたの?
「ひどいひどいっ。どーして?」
「ごめんっっ。だから、付き合って欲しくなかったんだって。彩華に魅力がないからじゃなくって、 うちがしてたんよ」
そりゃ、春ちゃんみたいにかっこいい人に頼まれたらみんな従っちゃうかも……。
「……うぅうん」
「ごめんな。機嫌なおして?」
「……いいよ。春ちゃんがしてなくても、どうせふられてたかもしんないし」
それに、春ちゃんが、あたしのこと、好きでそうやってしてくれたのって、なんだか嬉しいし。
そのおかげで、いま、春ちゃんと付き合ってられるんだし。
「許す。だから、春ちゃんも、他の人に告白しちゃ駄目だよっ。あたしも相手に頼んじゃうんだからっ」
って、あたしなんかが頼んでも誰も言うこと聞いてくれないかな。
「……ありがと。他の人に告白なんかしないよ」
春ちゃんは、にっこり笑うと、そっとあたしの頬に口付けた。
「彩華、顔真っ赤」
「春ちゃんが変なことするからだもんっ」

こうして、あたしは3回の失恋のショックなんて、すべて忘れてしまうくらいの幸せを手に入れた。
にしても、もしあのままだったら、あたしの失恋記録はどんどん加算されてたのかな。ちょっと怖い……。
早めに、春ちゃんと好きな子について語っといてよかった、なんて思ったり。