人にはいろんな性癖がある。
 それは理解出来るし、俺に影響ない分には問題ない。

 夏休み中、家で百合音とくつろいでいる際、クラスメートで友人の玲衣から電話がかかってきた。
 玲衣っていうか、玲衣の彼氏からだ。
 
 2人のセックスがだんだん行き過ぎてきているってのはなんとなく理解出来てたけど、まさか電話越しに聞かされることになるとは思ってなくて。
 いや、聞くくらい構わない。
 引くわけじゃないんだけど、なんていうか、うっかりこっちも興奮してきちゃうわけで。

 俺、友達の喘ぎ声聞いて興奮とか、最低だ。
 ひとしきり聞いてしまって、受話器をオフにする。
 ため息を着くと、床に座り込んで本を読んでいた百合音がベッドに座る俺を見上げていた。

「電話。声、洩れてたよ」
「……ああ、ちょっとボリューム大きかったね」
 百合音は、小さくため息をついて、俺の足を撫でる。
「困ったお友達だ。……誠樹、すごくエッチな顔してる」
「……ん」
「誠樹、もしかしてエロい気分になっちゃった?」
 百合音は言葉を待つよう、足を撫でたまま、ジっと俺の目を見つめてきた。
 鋭い視線で、答えないといけないようなそんな気にさせられる。
「……う……ん」
「する?」
 百合音は、いつでも冷静だ。
 俺がしたいと言えばしてくれるけれど、なんだか俺だけがすごくエロいみたいで恥ずかしい。
 今回はしょうがないか。
 俺だけ、はっきりと電話であんな声聞いちゃったわけだし。
「誠樹、どうする? やめとく? しばらくすれば落ち着くかな。昨日抜いたばっかだし」
 昨日抜いたばっか。
 そうだ。
 昨日の夜、百合音に口で抜いて貰った。
 けれど、エッチはしていない。
 ……したい。
「百合音……怒ってる?」
「なんで?」
「前、俺が勝手に欲情したとき、怒っただろ」
 せっかく溜めないよう適度に抜いてるのに、どうして勝手にエロいこと考えるんだって。
 そんなようなことを言われた。
 あのときは、ルームメイトの先輩がAV見てたせいで、触発されただけなんだけど。
「怒ってないよ。したい?」
「……ん」
「頷くだけじゃなくて、口で言って」
「……したぃ……」
「なにがしたい?」
 なんで。
 なんで言わせるんだろう。
 こんな恥ずかしいこと。
 わかってるくせに。
 もう、ズボンの中で自分のモノが硬く張りつめる。
 百合音の指先がいまにも、そこに触れそうなくらいに近づいて太ももを撫でていた。
「はぁ……」
「誠樹?」
「……抜い……て」
「うん。いいよ」
 そう言うと、百合音は俺のズボンのチャックを下ろしてくれた。

 ……違うんだ、本当は。
 抜くだけじゃ嫌だ。
 俺も、玲衣たちみたいに、セックスしたい。
 溜まってるわけじゃないんだよ。
 そりゃ、抜いて欲しいけど、もっと……それだけじゃたぶん物足りない。

 百合音は取り出した俺のを手で包み込むと、ゆっくりと擦り上げてくれる。
 俺の好きな速度で、馴染みのある手。
「ん……んぅ……」
 入れてくれないかな。
 どうにかして欲しい。
 そんなことを考えていると、腰が浮いてしまい顔が熱くなった。
「あ……っ」
 百合音は気づいてるのか気づいてないのかわからないけれど、百合音が手を動かすタイミングに合わせるよう腰がくねくねと動いてしまう。
 いつもはこんなことしないのに。
 自分でもそう思うけれど、今日はなんだか止められない。
 普段の刺激だけじゃ物足りなく感じてるのか、もっとエッチなことしたいって思ってるせいか。
 百合音には、いろんな自分を見られてきているけれど、恥ずかしくて顔を横に向ける。
「はぁっ……んっ! んぅっ」
「イけそう?」
「んぅっ……んっ! んぅっ」
「誠樹の、そうやってたくさん声殺してるの、かわいくて好きだな」
 そう言った直後、ぬるりと亀頭部分に熱いなにかが纏わりつく。
「ひぁっ!」
 目を向けると、百合音が舌をそこに絡めていた。
「ん……どうしたの、誠樹。今日はたくさん腰振って」
 やっぱり、気づいてるんだ。
 恥ずかしいのに、止められず動かすたびに百合音の舌がぬるぬると絡みつく。
「ぁっあっ! ……んぅっ」
「ズボン、脱ごうか」
 俺が答える前に、百合音はズボンと下着を引き抜いてくれる。
 そんなことされたら、ますますしたくなるのに。
 百合音は、俺の両足をベッドの上へと乗せてしまうと、また、右手でゆっくり俺のを擦り上げてくれた。
 俺は、両手を後ろにつき、百合音に見せつけるような体勢。
 百合音の視線が、足の間へと突き刺さる。
「んっ……んぅっ……」
「うん……たくさん先端から溢れてる。ああ、俺の唾液と誠樹の先走りだね」
 もう、我慢出来ない。
 何度も腰が浮いてしまう。
「はぁっ……ん、百合音……っ」
「なに?」
 入れて欲しい。
 早く。
「ぁ……ぅんっ」
「どうして、素直に言ってくれないの、誠樹は」
 百合音の口調が少しだけ不機嫌そうなものに感じた。
 いままで、握ってくれていた股間のモノから手が離れると、その指先がゆっくりと下へ下へと移動していく。
「あっ……あっ」
「ココ。ヒクついてる。すごく欲しそうだ」
 襞を撫でられ、体が小さく跳ね上がった。
 入れられそうで入れられない。
 焦らされてる?
「っあっ……わかってんならっ」
「言われたいんだ。言って。俺になんでも。そしたらなんだってしてあげる」
「っ……しろよっ……言わなくてもっ」
「どうして?」
「……恥ずかしいしっ」
「なにが恥ずかしいの? なにも恥じらうことなんてない。俺は誠樹のことなんだって受け入れる」
「んっ……」
「ね……全部言って」
 百合音は、指先であいかわらずヒクついてしまう俺の後ろの口をゆるゆると撫でる。
 腰を寄せても、浮かせても、入れてくれず撫でるだけ。
「はぁっ……あっ! あっ」
「すごく欲しそうだね」
 欲しい。
 耐えられない。
 催促するよう、百合音の空いた手が、俺の膝を撫でた。
「百合音ぇ……っ。あっ……欲しぃ……っ」
「うん、どうして欲しい?」
 一度、口にしてしまうと、まるでせき止めていたダムが決壊してしまったように、口をついた。
「入れ、て……っ。俺ん中、ぐちゅぐちゅしてっ」
「ん……いつ、誠樹はそんなエッチな言葉使い、覚えたんだろうね」
 言ったのに、百合音はすっと立ち上がり俺から離れてしまう。
「ゃだっあっ……んっ……百合音っ」
「うん、待って。泣かなくていいよ」
 百合音は、自分の鞄をごそごそと探り出す。
 ローションでも取り出してくれるのだろうか。
 その時間がもどかしくてたまらない。
 涙も、たくさん溢れて、視界がぼやける。
「はぁっあっ……百合音ぇ……早く……早くしてっ……も、我慢できなっぁっ」
「もっと早くに誠樹が素直に言ってればよかったんだよ」
「ぅんっ……」
「それで、ぐちゅぐちゅされたいんだ? 誠樹は」
 百合音は、思った通り、ローションのビンを手にし俺の前にまたしゃがみこむ。
「はぁ……ぅんっ……され、たいっ」
「もっかい、おねだりして?」
 ねだるなんて。
 そんなことしたくないのに、しないと百合音はしてくれそうにない。
「……して……。俺ん中、入れて……」
「入れて、どうするの?」
「はぁ……ぐちゅぐちゅして欲しい……っ」
「いいよ」
 やっと、百合音はローションをまとった指先を1本、ゆっくりと俺の中へ差し込んでくれた。
「ぁああっあっ! あっ」
「2本入れるね。1本じゃうまくぐちゅぐちゅ出来ない」
「ぅんっあ、うんっ! してっ」
 百合音は、すぐ2本目の指を差し込みながら、ローションを上からタラタラと零していく。
 指が出し入れされるたび、ローションが中へと塗りこまれた。
「ぁんっ! あっ! あっ、んぅんんっ!!」
「すごい、腰ガクガクしちゃってる。大丈夫?」
「ぁあっ、あっあっ、ぃいっ、ぁあっ」
「聴こえる? ぐちゅぐちゅ音してる」
 わざとなのだろう。
 音を立てるよう百合音が指を中で動かしてくれる。
 足も腰もガクガクして、体を支える腕にも力が入らなくなってきた。
「はぁっあっ、ぅんっ! あっぁあっ、百合音ぇっ……前もっ」
「前もなに? 何度も俺に言わせる気? ちゃんと素直に言ってって」
 百合音は、そう言うと、指の動きを緩めてしまう。
 それがもどかしくて、腰を揺らすが上手く感じられない。
 言わないと、百合音はしてくれないんだ。
「ぁっあっ……舐めてぇ」
「どんな風に?」
「はぁっ、舌で、先の方、チロチロして……吸ってっ」
「うん、いいよ」
「あ、あ、後ろもっ……」
「うん、ぐちゅぐちゅするんだよね?」
「ぁあっ、ぐちゅぐちゅしてっ」
 百合音は、俺が言った通り指で中を音を立てるよう掻き混ぜながら、先端へと舌を這わせ、チロチロと舐めあげてくれる。
 ときどき溢れる先走りの液を、じゅるりと吸い上げてくれた。
「ぁああっ、あっ! 百合音ぇっぁんっぁあっ! あぁああっっ!!」

 ビクビクと体が震えあがり、吐精してしまうと百合音はそれを飲み込んでくれた。
 そのまま、俺はぐったりと体を寝転がらせる。
「はぁ……」
 それでも、百合音の指は入りこんだまま。
 なんだか体に力が入らない。
 力が入らないのに、百合音はまたゆっくりと中の指を動かし始めた。
「ひぁっあっ……なにっ」
「さっきは誠樹がしたいことしたでしょう? だから今度は、俺がしたいこと、してもいいよね?」
 ダメとは言いづらい。
 けれどもうイったのに。
 ……それは、俺の勝手?
 また、小さな音が耳に付く。
 くちゃくちゃとした濡れた音。
 さっきよりも緩やかな刺激で、中を掻き回される。
「はぁっ……ぅん……んぅっ……ふぁあっ」
 頭がぼーっとして、力が入らない。
「ぁんっ! あっ……ぁあ……」
「うん、かわいい声。蕩けてる誠樹は、いつもに増してかわいいよ」
「はぁっ……あ……んっ……あぁあ……ぁあっ」
「もう、なにか言う力も無くなっちゃった?」
 小さく頷くと、百合音は指を引き抜いて俺に覆いかぶさる。
 頬に口づけられ、涙を舌で拭われる。
 ジーっと、チャックが下ろされる音が響いた。
 百合音の……。
 百合音、入れる気なんだ。
 それがわかっても、頭がぼーっとして、なにも出来ない。
 百合音のモノが押し当てられ、心臓がバクバクと音を立てる。
「百合……音……」
「うん、入れていい?」
「ぅん……」
 また頷くと、ゆっくり百合音のモノが入り込んできて、さすがにその刺激には背すじが震え、体が跳ね上がった。
「あぁあああっ!」
「かわいい……誠樹……。中、すごい熱くて締め付けてくる」
 その感触を確かめるみたいに、百合音はじっくりと中を掻き回していく。
「はぁあっ……ぁんっ……あ……ぁあっ」
 気持ちよくて、たまらなくって、また腰がわずかに揺れてしまうと、百合音もそれに気づいたのか、俺の腰を撫でながら、抜き差ししてくれる。
 内壁の弱い部分を突き上げられると、なにかに掴まっていたくて、俺は百合音の背中に手を回した。
「ぁっあっ……百合音ぇっ……ぁあっあっ」
 ぎゅっと体を抱きしめると、軽く口にキスをして、何度も何度も、俺が気持ちよくなれるよう内壁を擦ってくれる。
 傷つかないように、ちょうどいい速度で蠢かれると、愛情みたいなものをすごく感じてしまう。
「ぁんっ! あっ……ぃくっ……あっぁんっ」
「今日はなんだか、いつもより感じてるね。玲衣くんに触発でもされたの?」
 玲衣がすごく乱れてる声を聞いて、ああ、乱れてもいいんだってなんとなく思うことが出来た。
 こんな風になってしまうのは、別に変なことじゃないんだって。
 前よりも、素直に感じることが出来ているのかもしれない。
「一緒にイこう?」
「あっ……我慢できなぁっ」
「大丈夫……俺も、もうイっちゃいそう……」
 そう言うと、俺に体を密着させ腰を突き付けてくる。
「ひぁっあっ! あっ!」
「苦しい? 大丈夫?」
「ぁあっぁんっ、んぅっ」
「うん……はぁっ、イくね……。誠樹も……っ」
「ぁあっ、あっんぅっ、ぃくっあっいくっ、あぁあああっt!!」


 自分がイクのと同じタイミングで百合音のが、どくどくと流れ込んでくる。
 久しぶりの中出し。
 体がゾクゾクして、震え上がってしまいそうになり百合音の体に抱きついた。
「はぁ……はぁ……」
「本当にかわいいね、誠樹は。これからも、したいときは素直に言って」
「……ん」
「抜くだけじゃ足りないならそう言ってくれていいから。なにも言われずに、不満に思われる方がつらいよ」
 俺は百合音に抱きついたまま、頷いた。
 けれども、すべて了解したわけじゃない。
「……百合音、わかってんだろ、どうせ」
「なに?」
「俺が……したがってるって、わかってたくせに」
 百合音が、俺の耳元で小さくため息をついた。
 少しくすぐったい。
「なにもかも、自分にとって都合のいいように解釈しちゃいそうで怖いんだ。ほら、俺って誠樹のこと好き過ぎるから、いつでも誘われてるような気分だし」
「なに……それ」
「だから、誠樹にはその気がないのに、俺の勝手な解釈でセックスしちゃダメでしょう?」
 そりゃあ困るけど。
「……百合音は、したいって思わないの?」
「思うに決まってるじゃないか」
「俺に合わせてとかじゃなくてさ。たまには百合音の好きなときに、してくれてもいいし」
「誠樹……」
 俺の言葉が引き金になったのか、中に入ったままだった百合音のモノがまた硬さを増す。
「あっ……」
 さすがにいまはダメだなんて、いきなり言葉を撤回するのもなんだか申し訳ない。
「……いい? ね、ローションと精液で、すごい中、ぐちゃぐちゃになってる」
 しょうがない。
 俺は2回イってるけど、百合音は1回だけだ。
 頷いて、百合音へとまた、しがみついた。