「雪寛さん? ……あの、俺、週末ちょっと帰ろうかなって思ってるんだけど。あの……」 留守電に入れる内容じゃないよな。 ……会いたいとか。 会いたいっていうより、俺の場合、やりたいだし。 俺に初めて、セックスを教えてくれた人。 正直、この人がいなかったらそれほどセックス好きになってなかったかもしれない。 けれど雪寛さんには、亡くなってるけど奥さんがいるし。 なにより、俺の幼馴染で、今となっては同じ職場で働く桐生の父親。 桐生は、俺と雪寛さんの関係をわかってくれていた。 なにも言わないけれど、いい気はしないだろう。 自分の幼馴染が、自分の父親としてたら……。 俺には恋人がいない。 桐生にもいない。 だからよく、桐生ともセックスしたけれど、雪寛さんは俺の初めての相手で、正直、やりやすい。 まあ一番初めに俺に手を出してきたのは桐生だけど、そのときは途中までだったし。 「はぁ……」 「どうしたの、浩ちゃん。ため息なんてついて」 職員室で、桐生がそう話しかけてくれる。 なんだか優しくされると申し訳ない。 「ちょっとさ。欲求不満」 「相手しようか?」 「……うーん」 「ああ、俺の気分じゃない?」 もちろん、桐生とのセックスだって気持ちいいんだけど。 「……久しぶりに、雪寛さんとしたいなって」 「……父さん?」 「ごめん。やっぱ嫌だよね」 「いいよ。別に。俺じゃ役不足ってのは残念だけど」 「そうじゃないよ。比べてないし」 「まあ、俺もあの人には、ちょっと開発されたしね。最後まではしてないけど」 結局、雪寛さんから折り返し電話を貰い、予定を立てて。 週末、雪寛さんの家へと向かった。 「浩ちゃん、元気してた?」 雪寛さんはあいかわらず笑顔で俺を出迎えてくれる。 すごくかっこいい。 年齢的にはおじさんなんだけど、若く見えるし。 こういうとこ、桐生と似てるよな。 「はい、元気ですよ」 「久しぶりだね。どうした? また俺としたくなった?」 その通りだ。 恋愛感情があるわけじゃないけれど、好きな相手だし。 「ごめんなさい。こんな欲求不満の解消みたいに使っちゃって」 「気にしないで。俺も、こういうこと好きだから」 雪寛さんは、俺をベッドの上に寝かせると、シャツを脱がせてくれる。 上からじっと見つめられ、それだけで体が熱くなった。 「……浩ちゃん、少し見ないうちにちょっと色っぽくなったね」 「そう……ですか?」 「たくさん抱かれてるの?」 「そんなに多くは……。3人くらいかな」 「そんな相手いるのに、ここ来てくれるの?」 「……友達には、言いづらいこともあるし……」 「そう……」 雪寛さんは優しい声でそう答えると、手の平で俺のほとんどない胸をそっと撫でる。 「っ! んっ」 ゆっくりと、肉を寄せるように揉まれると、体がゾクゾクした。 「……浩ちゃん、胸揉まれるの好きだよね」 こういうのが好きだとはあんまり人にバラしたくはない。 さすがに恥ずかしい。 「はぁっ……雪寛さ……っ」 「あんまり、胸は揉まれてないの?」 「だって……言いにくくて……っ」 「すごくかわいいのに」 「ね……ここ、気持ちいいのってやっぱ変?」 「変じゃないよ。大丈夫」 胸全体を撫でられると、次第に膨れ上がった乳首がむず痒くなってくる。 それに気付いてか、雪寛さんの指先がそっと乳首に触れ、先端を撫でていく。 「ぁ……っんっ……はぁ……」 押しつぶされて、ゆっくりと転がされて、ただ乳首を撫でられてるだけなのに、気持ちがよくてたまらない。 「ぁっ! んっ……んぅっ!」 「声、出していいよ」 「俺っ……乳首だけで……こんな声、出ちゃうの、恥ずかしくて……っ」 「いいよ。俺はもう浩ちゃんのこと知ってるから」 「ぅん……んっ」 もう片方の乳首に口付けて、舌先で撫でられる。 口に含まれて、転がされて、熱くて、頭がボーっとした。 「ぁっんっ……あっ……あっ! ……雪寛さっ……」 「ん……かわいいなぁ、浩ちゃん。キスしてもいい?」 「……はい」 雪寛さんの口が俺の口を塞ぐ。 舌先が入り込んで、俺の舌と絡まって、ものすごく気持ちがいい。 少し舌を差し出すと、吸い上げてくれる。 「んっ……ん……」 俺と口を重ねたまま、雪寛さんは俺のズボンのチャックを下ろしていく。 すでに硬くなってしまっているものを取り出され、そっと手で撫でられると体がビクついた。 それを確認してか、雪寛さんは俺の口を解放してくれた。 「はぁっ……あ……」 「浩ちゃんて、少し成長期遅かったよね」 「……そう……かなぁ」 「初めて浩ちゃんとした頃って、まだ浩ちゃんの体、小さかったし。いまはこんなに大人になって」 「も……なんかそれ、すごい子供扱い……っ」 雪寛さんからしてみれば子供だけれど。 「ううん。いい体に成長したなぁって」 「いい体……?」 「うん……」 雪寛さんは、俺のズボンと下着を引き抜いて、足の間へと座り込むと、じっと俺の体を見下ろした。 「……そんなにじっと見られると、なんか恥ずかしいんですけど」 「そう?」 「だって……桐生の方が綺麗だし、雪寛さんだって……」 「浩ちゃんには浩ちゃんの良さがあるから。ほら。肌とかほどよく柔らかいし」 太ももを撫でられ、腹の辺りも手が滑っていく。 それだけなのに、体がゾクリと震え上がった。 「雪寛さ……っ」 「ああ……、そんな風に腰まで揺らして。誘うのが上手くなったね」 「っん……そんなつもりじゃ……」 それでも、触って欲しくて腰が揺れる。 雪寛さんは、俺の望みどおり、勃ちあがったモノを手にし上下に擦りあげてくれた。 「はぁっ……あっ……あっ……んぅっ」 空いている雪寛さんの左手が、俺の右足を深く折りたたんでしまう。 恥ずかしい部分まで丸見えだ。 あいかわらず、視線が痛いくらいに突き刺さる。 俺は、膝を折りたたまれた状態で、それでも雪寛さんが擦りあげるのにあわせるよう腰を揺らしていた。 「ぅんっ! あっ、雪寛さぁ……」 「……入れようか。もう欲しそう」 頷くと、雪寛さんは用意していたジェルを手に取る。 「雪寛さ……俺、後ろから……っ」 「うん。いいよ」 雪寛さんは俺の体を起こし、後ろから抱きしめてくれる。 「……慣らさずいけそう?」 「ジェル、つけてくれるんでしょ」 「うん」 少し腰を浮かすと、ジェルをまとった雪寛さんのモノが押し当てられ、入り口をぬるぬると滑った。 「はぁ……雪寛さ……っ」 「そのまま、ゆっくり飲み込んで」 「っん……」 俺は雪寛さんに支えられるようにして、ゆっくりと腰を下ろす。 中へと少し入り込んでしまうと、体が大きくビクついた。 「はぁっっ……んっ」 「いいよ……」 俺が飲み込むのにあわせて、そっと雪寛さんが下から腰を突き上げる。 ずるずると奥へ入り込む感触に震え上がりそうな体を、雪寛さんはぎゅっと抱きしめてくれた。 「はぁっ! あっあっ……んぅっんっ」 気持ちいい。 胸も揉んでくれるし、乳首も指先で押さえつけてくれる。 足りないと思う間もなく、勃起した俺のを擦ってくれて、たまらなくて。 やっぱり、雪寛さんとのセックス、大好きだ。 慣れてるだけなのかもしれないけど。 演技する必要も、隠す必要もない。 「ぁんっ! んっ……雪寛さぁっ……あっぃくっ」 「いいよ」 「ぁあっんっ! あっ、ぁあっんっ! あぁああっ!」 俺が気持ちよくイけるよう、追い上げてくれて、イった後、ゆっくり落ち着かせてくれるのも大好き。 落ち着きかけた体の中を、雪寛さん自身が出入りして、体中の力が抜けてしまう。 「はぁ……あっ……あん……んぅ」 「浩ちゃん、俺もイっていい?」 「……んっ……はぃ……あっぁっ、俺っ」 「なに?」 「ぁ……ん、もっかい、あ……イけそう……」 「じゃあ、次は一緒に……ね」 「はぁっぁん……ぁあっ!」 ゆるゆると内壁を擦られ、感じる場所を雪寛さんの硬い部分が擦っていく。 強すぎない愛撫で、俺は全部委ねられる。 「雪寛さぁっ……なんで、ぁっ雪寛さんの……はぁっ……こんな気持ちいの?」 「んー……気持ちいい? ……浩ちゃんが気持ちよくなるようにやってるから」 ゆっくりと、まるで焦らすような愛撫は、俺を気持ちよくするため? そっか。 雪寛さん、俺の体すっごく気遣ってくれてるんだ。 本当はもっと激しく突き上げたり、擦ったりした方が、雪寛さんは気持ちいいのかもしれない。 けど、俺に合わせてくれてるってこと? ちょっと申し訳ないけれど、雪寛さんは俺に比べて大人だし、ここは甘えさせてもらおう。 甘えられる相手って、やっぱりすごく気が楽だ。 少し腰を寄せると、雪寛さんは出入りを繰り返しながらも、中をかき回してくれる。 「ぁあっ! あっ……気持ちいい……っだめっあっぁあっ!」 「駄目?」 「はぁっんっ! そこぉっ……あっそこ、いいよぉ……っ、ぁあっあんっ! いっちゃうっ……俺、あっまたっ」 「うん……いいよ、俺もイきそう……」 「ぁんっあっ……雪寛さっぁあっあっ! あぁああっっ!」 立て続けに2度もイってしまう俺に合わせて、雪寛さんもまた、俺の中で達してくれていた。 ドクドクと注ぎ込まれる精液がまた気持ちよくて。 普段は中出しなんて、後が面倒だしあまり好まないんだけど。 本当は気持ちよくて好き。 雪寛さんは、ちゃんと後で綺麗に掻きだしてくれるし。 「雪寛さ……もうちょっと、このままでいていい……?」 「うん、いいよ」 俺は雪寛さんのを入れたまま、後ろから抱きしめられたまま。 気持ちいい。 というか、心地いい。 「雪寛さん……。俺、最近思うんですけど。このままもう、恋人出来ないんじゃないかって」 「どうして?」 「……今日は誰でもいいからしたいとか、今日は雪寛さんとしたいとか、そういう風に思うことがあって。好きな人が出来ても、変われる気がしないっていうか」 やめられそうにない。 けれど、もしも恋人が出来たのなら、やめた方がいいって、それはわかってる。 わかってるから、好きな人も恋人も、作れる気がしない。 「そういうの、受け入れてくれる恋人ならいいけどね」 「……そんな人、いるかな」 「好きな人とするセックスは別物だからさ。それをわかっていてくれれば、他で抜いてもいいって人はいるかもしれない」 「……うん」 「それに、そうは言っても、なんだかんだでいずれは好きな人とのセックスに夢中になっちゃうんじゃないかな、浩ちゃんは」 そうかな。 まだよくわからない。 本気で人を好きになったことなんてない気がするし。 学生時代、付き合ってたやつはいるけれど、他とやって怒られて、別れてって、そんな感じだったから。 悪いなとは思ってる。 だからまた同じようなことにはなりたくない。 「やめられるかな……。俺、軽いセックス依存症じゃないかな」 「まだ若いんだし、それでいいよ。男はそういうもんだし」 「そういうもん?」 「そう。自分の遺伝子をどうにか残すためにいろんな人とセックスしたくなる生き物なの。それを、理性とか感情とかで強引にコントロールしてるだけ」 「俺、コントロール出来てないんじゃん」 「だから、出来るようになるよ。まあなんにしろ浩ちゃんはやられる方が好きみたいだし、遺伝子残すもなにもないけどね」 雪寛さんはなんだかんだで、結婚もして子供も生んで、ちゃんと生活してるもんなぁ。 こうやって俺とはセックスしてくれるけど、女の人は相手にしてないみたいだし。 「雪寛さんてすごいね。憧れちゃうよ」 「いや、息子の友達に手出してる時点で、アウトでしょ」 「でも俺、最初が雪寛さんでよかったって思ってますよ。だから、こんなにセックス好きになれたんだし」 あれ、よかった……のかな。 「褒めても、夕飯くらいしか出ないよ」 「夕飯、出してくれるんですね」 「それくらい作るよ。……そろそろ、お風呂行こうか」 「はーい」 |