岬は、俺が思っていた以上にかわいかった。
喋り方も、態度も、少し鈍いところも、全部かわいくて、守ってあげたくなるような子で。
実際に会って話した瞬間、たまらなくなった。
かわいがりたくて仕方なくて。
なんとか平静を装ったけど、誰かに取られてしまう前に、どうにかしなくちゃならないと思った。
ちゃんと早く俺のにしないと、きっと後悔する。
後から出て来たやつに、奪われるのはもうごめんだ。
ゆっくり、大事に育んでる場合じゃない。
だから、すぐキスをして、大丈夫そうだったから、それ以上のこともした。
さすがに最後まではしないでおいたけど、もう好きになってたし。
岬も俺を好きだって言ってくれた。
2週間くらい、毎日、岬と遊んだ。
キスして、エッチなこともしたけど、やっぱりまだ最後まではしていない。
いつもならしてたけど、いましたら、セフレになるような気がして。
それは、なんか違うと思った。
ある夜のこと。
いつもみたいにキスをして、手でイかせてあげた後、岬が俺に尋ねた。
「続き……しないんですか」
寝転がったまま、体を起こす俺をじっと見つめる。
「ゆっくりでいいよ」
「先輩には、俺以外にもこういう相手がいるから……ですか?」
抜き合ってもいい友達はいるし、しようと思えば出来る。
それは、岬にも伝えてあった。
俺は、軽い気持ちでやれる男だって。
だから岬も、たぶん、軽く考えようとしてくれてたんだと思う。
「いるけど、それは岬としない理由じゃないよ」
「理由……聞かない方がいいですか?」
うんって言ったら、本当に聞かないでいてくれるかもしれない。
でも、知りたいんだろうな。
「すぐ手出しちゃったのは俺だし、いまもめちゃくちゃしたいけど。岬と、セフレになりたいわけじゃないんだよね」
「したら、セフレになりそうってこと?」
「もうちょっと、岬の気持ちが固まってからしよ」
「俺の……気持ち?」
「うん。俺のこと……どういう意味で好きかまだよくわかってないでしょ」
そう告げると、岬は素直に戸惑っていた。
「先にHすんのもいいし、岬がH好きになってくれたら嬉しいけど。セフレは違うな……って俺は思うんだよね。あくまで俺は……なんだけど。岬は、俺とセフレになりたい?」
「セフレって……よくわかんないです。やるだけの関係ってこと?」
「やれるくらい仲いい友達ってパターンもあるけど。もし、セフレになってって俺に言われたら、どう?」
岬は、すぐには答えなかったけど、とくに嫌そうでもなかった。
「俺は、そういう相手いないから……よくわかんないんですけど、真乃先輩がセフレだよって言うなら……」
受け入れてくれるってこと?
本当に、押しに弱いな。
騙されそうでちょっと心配になる。
「ありがと」
でも、少しはいやだって思って欲しいんだよね。
だからいまはしない。
「セフレって、どっちかが恋愛感情抱いたら、壊れちゃうんだよね」
「え……」
「どっちも抱けたらいいんだけど、それはもうセフレじゃないでしょ。友達同士でやれるくらい仲良いとか、割り切ってやるだけとか、いろいろあるけど。同じ好きじゃないと、辛いだけだから。どういう好きかわかんないうちにHしてセフレみたいになるんじゃなくて、もうちょっと時間かけようって思うだけ」
納得してくれたかどうかはわからないけど、岬は頷いてくれていた。
「岬のこと、好きとか言っておきながら、そういうの続けたままでごめん。終わらせらんなくて」
「俺は別に……」
「やらなきゃいいって思うだろうけど、たとえば、ゲームが好きで繋がった友達と、ゲーム抜きで遊べって言われても難しいみたいな感じで……そういう友達だから」
そんなの理解できない、納得できないって岬が思うなら、俺はどっちかを選ぶことになる。
友達は変わらないとか終わらないなんて、あいつの言うことはきれいごとで、やっぱ無理なんだろう。
つーか、ほとんど終わってたのに、復活させちゃったし。
せめてセックスはしないでおくとか、ちゃんと線引きが必要なんだと思う。
でも俺たちは体から始まった関係だし、あいつとセックス抜きで遊ぶとか……。
「わかりました」
「え……」
「H出来るくらい仲いい友達ですよね? それを終わらせるのは……寂しいですよね」
「……寂しいけど、そんな理由、普通通らないよ」
「でも、二股とか浮気とはちょっと違いますよね」
違う。
違うって言いたいけど、実際はなにが違うのか、説明するのは難しい。
こっちが少数派でしょ。
「岬がそう思ってくれるんなら、嬉しいけど」
「よくわかんないけど……真乃先輩は、そういう人なんだなって」
「うん」
「セフレとばかりで……俺と……あ、違……えっと……恋人としないってなると、その恋人も、寂しくなっちゃうかもしんないけど……」
ああ、本当にかわいいな。
自分が恋人だったらって、考えてくれてんだ?
「それはないかな。ただ……なかなかさ、切れない友達ってのもいるんだよ」
「……白石先輩ですか?」
「凪ともやれるけど……凪とはやんなくてもいい。セフレじゃなくて、やることも出来る友達ってだけ」
「他にも、いるんですね」
「うん……友達なんだけどね。こういうの、嫌?」
岬は、首を横に振ってくれた。
「そういう友達の中に、俺を入れるつもりはないってことですよね」
「うん」
「……わかりました」
そう頷いた後、岬は俺の手を掴んだ。
「あの……キスしていいですか?」
「どうして?」
「……なんとなく、したいです」
「いいよ」
キスをして。
ぼんやりする岬を抱きしめて、頭を撫でて。
やりたい気持ちをなんとか抑える。
こういうとき、他で抜けたらいいけど、いまはさすがにそういう気にもなれないし。
ゆっくり風呂にでも浸かって、紛らわすとしよう。
|
|