「大丈夫…?」
「っうるさっ…」
俺にしがみ付いたまま、顔を見せてくれないで、泣きそうな声をあげる。
恥ずかしがるだろうから、なんでもないフリしたいけど、いくらなんでも気遣わないわけにはいかないだろ。
そっと頭を撫でながら、ゆっくり指を引き抜いていく。
「あっ…やぁっ…ゆっくりっ…」
十分ゆっくりなつもりなんだけど…。
ものっすごくゆっくり抜いていった。
「はぁ…。ぃいよ…拓耶…」
「え…?」
「入れて、いいよ」
こんなぐったりした状態の陸に?
もちろん、俺だってめちゃくちゃ準備OKみたいな状態になっちゃってるけどっ。
「いきなり最後までしなくてもいいよ。今日はここまでにしよう?」
「っ…なんで…?」
「ゆっくり、知ってけばいいだろ?」
陸は俺に体を預けたまま、少しギュっと抱きついてくる。
「…ゃだよ…。もうやだよ…」
「…陸…?」
泣きそうな声が耳につく。
「…ずっと…好きで…ずっと、待ってたんだよ…」
深月のことは?
「…うん…だけど、今、無理することないよ?」
「深月のこと…やっぱ思い出すよ…? でもっ…だから…深月より……っもういいよ。俺、何言ってるかわかんなくなってきた」
急に恥ずかしさを感じたのか、俯いたままそっと離れようとする。
「陸の体を気遣ってるんだよ…? わかる? だから、ホントはしたいよ」
陸を引き寄せて、耳元で言うと、そっと頷くのがわかった。



さっきまで指が入っていた部分をそっと押し広げて、自分のモノを押し当てる。
「っん…」
「ゆっくり…入れるから…」
「ん…」
いちいち言うなって、言いたいんだろうな。
そういうの、全部わかる。
だけど、言う余裕、なくなってるんだろう。

陸を抱きしめながら、ゆっくりと中に進めていく。
「ぁっくぅっン…やぁっ、拓っ…耶ぁあっ」
明日、修学旅行、大丈夫かなぁ、なんて。
そんな場合じゃねぇのに。
「っや、ぁっ…ゆっくりってっ!」
「ん…ごめん、ゆっくりな…」
さっきと同様、ゆっくりしてるつもりなんだけど…。
陸が自分で入れた方がラクかも…なんて思うけど、そんなの無理か。
陸の体を支えながら、ゆっくりと、最後の最後まで。
全部入り込む。
「あっ…はぁ…」
「わかる…?」
「うん…。っでもっ…」
顔をあげればまた、不安そうで。
「いいよ、言って…」
「っ俺…すっげぇわがままだよ…?」
「いいよ」
「…っもっと…もっと早く、拓耶のこと、知りたかった…」
その早くってのは、付き合いだしてから?
それとも中学のときから?
深月よりも先に…ってこと…?
「深月のこと…忘れたい…よ…」
「うん…」
忘れさせてあげたい。
俺がずっと、つらい想いさせたから。
「今、深月は拓巳と付き合ってるんだってさ」
俺の双子の弟だ。
あえて深月のこと、話題に出したくなかったから、いままで伝えてなかった。
「深月は、ずっと拓巳が好きだったんだ」
「でも、拓耶は…」
「俺は、陸がいないと駄目なんだって、遅いながら、気づいたんだよ。遅すぎたね…ごめんな…」
俺は、言うことだけ言うと、そっと陸の体を揺さぶる。
「っあっ…やぁっ…ひぁっあっ」
陸は俺にギュっとしがみ付いて。
必死で耐える姿が、がんばってくれてて申し訳ないけど、すごくかわいくて堪らない。
「…変っやっ…やっだぁっ…もぉっ、やっ」
「…陸…すごい、かわいい…」
「や…めっ…ひぁあっ…ぃやっ…止めっゃだっ拓っ」
「俺も、深月よりも、陸が知りたいんだよ」
「っぅンんっ…でもっやっ…やだっ変っ…」
「変…? どう変…?」
俺は、陸の体をゆっくり動かしてやりながら、耳元で聞く。
「ゃっくっ…ゃンっ…やっ…待っ…」
どうにもしゃべれそうにないみたいだから、しょうがなくそっと動きと止めてやった。
「いいよ。言って?」
「はぁっ…あ…変…だよ、こんな…」
「なに?」
「っ…恥ずかしいよ…っ、変な…声、いっぱい出ちゃうしっ」
「かまわないよ。恥ずかしくないよ」
「なんで? …こういう声、みんな出す?」
比較するモノがあるってのがなんかまた後ろめたいけど…。
「…そういうもんだよ。陸の声、かわいいし、イイよ」
少し、陸は怒るように、俺から顔を背けた。
「それに…っ…体、変で…」
俺に抱きついたまま、そっと俺を盗み見るようして、不安そうな顔を見せる。
「変…だよ、声、殺せなくなるしっ、体、変でっ」
結構、混乱気味っぽい。
そんな姿もまたかわいくて、俺自身、我慢の限界だった。
「いいよ、全部、さらけ出して見せてよ」
「ゃ…だっ、なに言ってっ」
「どんな羞恥体だって、俺は愛せるよ?」
「ばっか、羞恥体とか言うなよ、そんなっ」
「例えばだよ。大丈夫だから」
俺が大丈夫じゃないっての。
こんなとこで止められたら、死にそう。
もう一度、陸の体をそっと動かして内壁をゆっくりと擦る。
「ひぁあっ…やっ…待っっ」
「もう待てないよ…」
そっと何度も、内壁を擦り上げて、出入りを繰り返して。
陸はただ必死で俺にしがみつく。
「っやぁあっ…ひっくっ…ぁんっ、やっ…やぁあんっ」
たまに出てしまういやらしい声を必死で押し殺すようにして。
それでも殺せずよけいにいやらしく響くのがわかる。
抑えられない恥ずかしさと、生理的な涙のせいで、泣きそうな声も混じっていた。
「っや、だぁあっ…あんっ、やっ…ひゃぁんっ」
陸の体がビクンと震え、俺にしがみつく手が強まる。
避けてたつもりなんだけど、直接、前立腺を突いてしまったようだ。
「ゃっだぁ、ソコっ…」
「ん、ごめ…」
俺はそっと一度、動きを止める。
「っ…いいよ…拓耶がっ…したいなら…そこ、突いても…」
恥ずかしそうに押し殺した声。
「大丈夫だよ。十分、気持ちいいから」
「…ん…。でもっ…深月には…したんでしょ…?」
「深月と陸は違うだろ」
「っだけどっ…深月にはしたのにっ…」
変なところで負けず嫌いだったりするんだろうか。
「じゃあ、深月にしたことは全部、受け入れてくれるつもり?」
「…っ…ん…」
深月が知ってて、自分が知らないってのが嫌なんだろうけど。
「途中で嫌だって言ってもやめないよ? 今のうちに、自分で決めて?」
「自分でって…なにを?」
「深月にしたこと、全部した方がいい?」
陸は、少し迷ってから、そっと頷いた。

肉体の問題じゃなくて。
深月が知ってる俺のことを全部自分が知ってないと、これからずっと引きずるって。
そう心の中で思ってるんだと思う。
「じゃ、陸、自分で動ける?」
「っ…そんなの、関係ないよ。深月がしたことはいいよっ」
「そっか。そうじゃないとわからないこともあるかなとか思ったけど。じゃあ…」
俺が次を言いかけると、それを制するみたいに、抱きついてた手を俺の肩に置く。
「…陸…?」
「っやるよっ…」
そんな、泣きながら言われると申し訳ないんだけど…。
陸はそっと、腰を浮かせてゆっくりと少しだけの動きで出入りを繰り返す。
「っひぁっあっ…ぅンっ、ぁんっ…はぁっやっ…もぉ、いい…」
なにがもういいのか…。
とりあえず、自分で動くことに関して理解した、と言いたいんだろう。
「じゃ、俺の首に、痕、つけて…」
「…う…ん…」
陸はそっと首に口をつけ、吸い上げる。
その行動の1つ1つがかわいらしくてたまらなかった。
「んっ…はぁ…残った…」
「じゃ、いくよ…?」
「な…に…?」
「途中で止めないからね?」
「……う…ん…」
不安そうにしながらもそう答えてくれて、俺は陸の頭をそっと撫でてから、陸の体を床に押し倒す。
「っぁっ…拓…っ」
「動くよ…」
陸の足を大きく広げて、奥の方まで入り込みすぐさまそっと少し引き抜く。
「ゃっ…やぁああっあっ」
不安そうな顔をさらに歪ませて。
俺がそっと髪をかき上げてやると、その腕にしがみつくように爪をたてた。
「っひぁっあっ…やぅっやっ…」
内壁を何度もこすりあげてやると、声を殺す余裕や羞恥心を感じる余裕がないのか、何度もかわいらしい声が耳につく。
シャツをめくりあげて、胸の突起にも指先を絡めた。
「はぁっ、ぁんっ…っやぁっ、あっ、ぁあっんぅっ」
「陸…。中…出すよ…?」
「っあっ…んぅっ…やぅっやっ」
「嫌なら…止める」
意地悪で言ってるわけじゃない。
陸のこと、ちゃんと考えてるつもり。
途中で止めないっつったって、嫌がられたら、やっぱり止めるかもしれない。
それで陸が罪悪感、感じちゃうかもしれないけど?
感じる必要なんかないのに。
構わないのに。
陸が嫌なら俺はしなくて。
俺は、陸が望むようにしたいって、考え方だから。
俺がしたがってるのに陸が断るってのとは、違うんだよ。
陸がしたくないなら、俺はしない。

罪悪感、感じてるのは、俺の方。
全部。
100%、俺のせいだ。
陸がこういうの、したがらなかったのも。
するのが不安だったのも。
俺のせいなんだ。
弱いなぁ、俺。
罪悪感でつぶされそう。
深月と同じことしたからって、どう罪が消えるわけ?
深月より愛してあげてるって?
そんなの、俺が思ってても、伝わる?
陸がいないと駄目なんだよ。
皮肉だな。
陸がいたから、勇気付けられて。
深月と付き合うことも出来たんだ。
逆に、気づいた。
陸がいないと駄目だって、よりいっそう強く思った。
深月と付き合ったおかげで、俺のこと、もっと考えてくれてるやつに気がついた。
いつもそばにいてくれて。
励ましてくれて。
深月のいない生活は平気でも。
陸のいない生活なんて、考えられないんだ。
そばにいすぎて、近すぎて。
わからなかったんだよ。
考えたこともなかった。
深月と付き合いだしても、陸はそばにいたから。

「…いいよっ…あっ…」
「大丈夫…?」
「っわかっなっ…あっ…いいからぁっ」
「ん…」
深月のことだけじゃなくって、陸は、やっぱりこういうの、少し苦手なんだろうなって思う。
それなのに、こうやってがんばってそう言ってくれるのが、ものすごく嬉しくてたまらない。
前立腺のあたりを何度も突き上げると、陸の爪が俺の腕や背中に立てられる。
耐えがたい刺激に必死なようで。
そっと、陸のオデコにキスをする。
「大丈夫…だからね…」
「やぁっ…んっぁっあっやぁあっっ」
そう。
俺が、大丈夫? って、聞くんじゃなくって。
大丈夫だよって、言ってあげないと。
陸は、口では嫌がりながらも、俺の言葉に答えて、そっと頷く。
「陸も…イってね。好きだよ、陸…。イクよ…」
「やぁあっんっ…やっあっ…やぁああっっ」



ぐったりした陸をそのまま寝かせて。 俺はその寝顔を、じっと見つめていた。
中学3年、卒業後。 まだ残っていた受験。 第一志望の受験日、駅で電車を待ってると、陸がホームに来て。
『本当は、ずっと好きだったんだよ』って、軽いノリみたいに言ってくれた。
だけれど、ものすごい決心があったんだと思う。
泣きそうな声だった。
それでも笑顔で、俺に、『受験がんばれよ』って。
その受験、受かっちまったら、陸と違う学校になっちゃうのに?
そんな泣きそうな声、出すもんだから、本当は、陸も俺と離れたくないんだって、思ってくれてるんじゃないかとか考えてた。
だけれど、『がんばれよ』って、嘘で言ってくれたわけじゃない。
本当に、陸は、俺に受験をがんばって欲しいって思ってくれて。
それでいて、離れてしまうことに関して、寂しさを感じたんだろう。

そのときだった。
やっと、陸のいない生活を考えてみた。
だけど、うまく想像できなくて。
俺には陸が傍にいるのがあたりまえだったから。

だから、俺は、がんばらなかったんだ。
陸にがんばれって、言ってもらえて。
応援を裏切るのは嫌だけど。
だけど、陸と離れるのは、もっと嫌だったんだ。
俺が、受からなかったら第二希望の高校で。
陸と一緒だったから。

「陸…。ごめんな…」
気づいてやれなかったから。
遅すぎたから。
独り言みたいに呟く俺の声が届いたのか、陸はそっと目を開ける。
「あ、起こしちゃった…?」
陸は、少し首を振ってから、横を向いて、俺の視界から目をそらした。
「…俺…ずっと拓耶に謝らなきゃって思ってた」
「なに?」
「拓耶が、幸せならいいやって思って。深月のことも応援したよ。だけどやっぱり、どこか諦めれなかったし、ちょっと期待とかしてたんだと思う」
「うん…」
恥ずかしいのか、陸は俺の方も見ずに、言い続けるもんだから、ちゃんと聞いてるんだと、軽く頭を撫でてやった。
「…ずるいんだ…俺…。せこいんだよ。迷惑かけないように、ずっと黙ってればよかったのにっ…。それとか、受験終わってから言えばよかったのにっ」
あぁ。告白のことか。
やっぱり、陸も、同じこと、考えてたんだ?
「家で、考えてて…。拓耶が受験、受けちゃったらもうお別れだってっ…」
「うん…」
「ひどいね、俺。受験前に、あんなこと言っちゃってっ…。拓耶、だから受験、集中出来なかったんでしょ?」
たしかに、まともに受けてたら、第一志望の学校も、受かる自信があった。
だけど、受かったらそこに行かなきゃならないし?
陸の言葉が影響されたのはもちろんあるけど、集中出来なかったわけじゃない。
「違うよ…。白紙で出したんだ」
「え…」
「集中出来なかったわけじゃないよ。受けなかったってのが正解かな」
「どうしてっ」
「陸が、罪悪感、感じることないからね。俺はよかったと思ってる。陸があの時、言ってくれて、俺はこの学校に来れて。陸とまたずっと一緒にいれて。陸は…? あの時言えて、よかったって、思ってはくれない?」
陸の頭を撫でる手に、陸が指を絡ませる。
「ん…。俺…最悪だよ…。よかったって思ってる」
泣きながら、そう答えてくれる。
「いいんだよ、それで。俺も、よかった」
あのときわかったんだ。
陸がいなかったらって考えて。
離れ離れになることくらい、平気だと思ってた。
だけれど、陸の気持ちを知って、そばにいてくれた陸のことを考えてみて。
ものすごく愛しくて、離れるなんて無理だと感じた。
「よかったよ…。間に合った。電車の中とか、受験中も、ずっと考えてたんだ。深月と離れる生活は想像出来たけど、陸と離れる生活は、想像出来なくて…。あんまり比較とかして順位つけるのも嫌だけど、深月より、陸の方が大切なんだなって、わかったんだ」
陸は、絡ませた指を俺から離し、今度は、俺とは逆方向へと体を向けてしまう。
ちょっと、クサかったかな。
「陸ーっ」
「馬鹿だよ…。でも…うん…。嬉しい…」
「こっち向いて」
「やだ」
「向いて欲しいな♪」
陸は黙ってたけど、しばらくしてから、そっとこっちを向いてくれた。
頬を赤らめて、涙目で。
すごくかわいらしかった。
「もう…わかったから…。深月よりも思ってくれてるって…信じるから…。やるときは、深月のこと忘れるからっ」
不安そうな顔で、そう言ってくれてもね。
でも、かわいいし、俺のために言ってくれてるってのがわかる。
そんなすぐにうまく忘れれたりするかはよくわからないけど。
「うん。がんばろうね♪」
軽く口を重ねて、もう一度、陸の体温を感じた。




「あ。そうそう、図書館でね。実は宮本先生がいたんだ」
これだけは伝えとかないと。
変に誤解されてそうで。
「…うそ…」
「ホント」
「っだから、あんなところでっ」
「気づいたから止めたんだよっ。ごめんって」
「拓耶はよくても、俺なんて宮本先生、担任なのにっ」
「あはは♪」
「っ笑い事じゃないよぉっ」
陸はまた怒って、俺へと背中を向ける。
「ごめんー、ごめんって。ね?」
俺の謝る声を聞いて、陸がそっと振り返ってくれる。
「…いいよ。しょうがないから」
少し怒ったまま、そう言ってくれて。
「しょうがないって、何?」
「拓耶がそういう奴だって、知ってるから。しょうがない」
うれしいな。
たまらなく。
俺のこと知ってくれてるのが、こんなにうれしいなんて思わなかった。
「ね、俺も、首に痕、残していい?」
「嫌」
「いーじゃん。じゃ、鎖骨あたりは? 普段見えないから、いいでしょ?」
「…明日、修学旅行でお風呂入る…」
「げっ、そっか。あー、俺らは一緒に入れないのか。ちぇ。なおさら残したいんだけどな」
俺のモノだって、みんなに見せびらかしたいのに。
「…首…。目立たないところ」
ボソっとそう言う声が聞こえる。
「いいの…?」
「目立たなくだからねっ」
鎖骨とか、普段見えないところにある方が、やらしいもんな。
本当に、見えないならいいけど、明日、修学旅行のお風呂で見られる可能性があるとなるとね。
「じゃ、いただきます♪」
「なにそれ」
俺はそっと、陸の首筋に口を這わして痕を残す。
口を離すと、陸は、少し嫌そうに、そこの位置を手で抑えた。
「陸が気にするほど目立たないって」
「……いいよっ、もう…」
「うん」
恥ずかしがって、普段はあまりいろいろ言ってくれないから。
今日は、さらけ出してくれて、うれしかった。
こうやって、見えるところに痕残させてくれたのも初めてだし。
もっともっと、俺こと知ってくれたかなぁ?
俺も知ったし。
ずっと、そばにいるんだよ。
近い存在。

陸には、ずっとそばにいて欲しいと思ったし。
俺もまた、ずっと陸のそばにいたいと感じた。