「はぁっあっ…なっちゃ…っあっ…いくっ」
「気持ちいいの…?」
高校生相手に、こんなの、恥ずかしいのに。
頷く俺の後ろから、差し込んだ2本の指でぐちゃぐちゃに掻き回して。
「ぁあっ…あっ…ひぁあっ…あっ」
「もっと、腰、突き出して?」
そう言いながら、ナツは、俺の腰を引き寄せるから、上体が下げられる。
俺は、必死で前の木に手をついて、体を支えていた。
「ぁんっあっ…なっちゃぁっ…はぁっいくっんぅっ」
「ね。がんばって、背中そらしてみて?」
俺のイクって言葉はもう無視されまくりだし。
だけど、俺自身は、もう限界。
こっちも無視してイかせてもらっていいわけ?
「はぁっあっ…やぁあっ…んぅっ…ぁあああっっ」

こんな風に声を出してイクのも、ものすごい羞恥心にかられる。
なんて、考えてる余裕なんてない。
俺がイっても、ナツはあいかわらず、指を動かして、俺の中を刺激する。
「あっ…んくっ、もっ…あっぁあっ…だ…めっ」
「なにが駄目だって?」
優しい口調。
だけど、怖いし?
「はぁっ…ゃめっ…変っあっ…あっやぁっやぁあっ」
「すっごい、感じてるやん?」
「んっあっ…んぅンっ」
「ねぇ。深雪ちゃんがこんなかわいい声で鳴くから、おっきくなっちゃった」
楽しそうにそう俺の耳元で囁いて。
一気に指を引き抜かれる。
「っくぅンっ」
「かわいーねぇ、あいかわらず」
含みのある声。
ナツのモノが、いままで指が入り込んでいた箇所に押し当てられて、体が強張った。
「っなっちゃ…ちょっ…待っ」
「待てないなぁ」
なんて楽しそうに言うんだ、こいつは。
ゆっくりだけど、入り込んでくる。
「あぁあっ…ゃんっんっ…」
「どう?」
ゆっくり、焦らすように腰を前後させられて。
出入りされると、体を支えるのでいっぱいいっぱい。
「っぁつっ…あっ、はぁっあっ、なっちゃぁあっ」
「イったばっかなのに、元気じゃん?」
前に回された手の指で、亀頭のあたりをゆるやかに撫でられるし。
「はぁんっあっ…」
「ほら…顔あげてみてよ。前、人が通る」
楽しそうにそう言うもんだから、そっと盗み見ると、2人の男が会社帰りなのか、道を歩いているのが目に入る。
木で隠れてはいるものの、丸わかりだろうし?
俺はまた、顔を下げ、見られないようにしていた。
「あっ…ぁっ…んっくんんっ」
「声、出したくないの? 見られると、感じるくせに?」
わざとなんだろう。
はげしく腰を動かして、感じるところを突きまくられる。
「ひぁっ…あっ…ゃめっあっ…んーっ」
「そんな声、出しちゃって…。ほら、見られちゃった」
「くっぅンっあっ…ナツっ…ぁんっやっ」
「もっと、辱めらたい?」
「っはぁっっあっ…やっ」
「素直に言って…」
「ぁっんっあんっ…してっ…なっちゃ、ゃっあっあっ、もっとっ」
「ん、いい子だねぇ」
馬鹿な子だよ、俺は。
こんな。
年下に。
変態だなって思える。
「やぁあっっ…ぁあっやっ…あんんっやぁあああっ」





「何発?」
教室に入ると、ぐったりとしている俺を見てか、おはようの挨拶よりも先に、あいかわらずの冷めた口調。
「…ほかに、ないわけ? 智巳ちゃん。せめて、おはようぐらい言ってからにしようよ」
「…おはよ」
なんだかなぁ。
「…おはよ…。好きだな、智巳ちゃんのそういうとこ…」
「どうも」
俺は、智巳ちゃんの隣の席に座って、机にひじをつく。
「……5発…だったかな」
「…元気だな。お前ら」
「元気じゃねぇよ。ホント。なに、あいつ。絶倫もいいとこっつーか」
「5発ってなに? 5回イったってこと? ナツが?」
…言われてみれば。
俺は5回くらいイったけど、ナツの方は、そうでもないかも…。


「うーん…」
「…深雪ちゃん、真面目な話。ナツのこと、どう思ってるわけ?」
いきなりなに言い出すんだか。
「どうもなにも。向こうに流されて、やっちまってるっつーか」
「やりたくないわけ? 迷惑とか」
そういうこと、あんまり考えてないからなぁ。
「…迷惑ってわけじゃ…」
あいつに、やられなかったらどうなるんだろうとかも考えたことないし。
「ただ、俺も、男だし、抱かれるより抱きたいっつーのがあるけど」
「…ふぅん。そういうの、ナツに言えば?」
「は…? いや、俺、別にそんな迷惑じゃないし、いきなりそんなこと言っても…」
「キリないよ? いつまでも、やられて。このままずるずるいくんなら、いまのうちにケリつけとかんとさぁ。俺ら、もうすぐ学生じゃなくなるし?」
そうだ。
もうすぐ、社会人。
いつまでも、こんなんグダグダ続けるのもなぁ。

「てかさ。社会人になったら、俺、引っ越して一人暮らしだし、あんま会わなくなるからさー。そのまま自然になくなるんじゃ…」
「まぁ、深雪先輩がそれでいいならいいけど。自然になくなるより、ちゃんとケジメつけた方がよくないかなって思ってさ」
「…先輩とか言うなって。いろいろ思い出すし」
「高校のころ、やられてたのとか?」
「ま。そういうこと」
高校のころ。
智巳ちゃんともよくやったなぁって。
一年浪人してる俺は、今、大学では同じ学年になってしまってるけど。
先輩って言われると、浪人してたのが思い知らされる感じも、なんだか、よろしくないし。

「…んー…じゃあ、今日あたり言ってみるわ」
「…まぁ、俺の弟だし? ちゃんとわかってくれるだろうから」
そう。
ナツは智巳ちゃんの弟で。
まだ、高校生だしなぁ…。
「ブラコンだね」
「まあな」
「みとめんなよ」



もう就職先も決まったし、結構、どうでもいい大学での時間を、ぐったりと睡眠時間に使う。
なんつーか、なんもやる気しないし?

ナツのこと。
どうすればいいんだろう。
別に好きだとか考えたことはなかった。
というか、恋愛対象とかとは違う感じだし。
向こうが俺をどう思ってくれてるかはわかんないけど。

『今日、夜、時間ある?』
とりあえず、メールを送って。
返事も待たずに、俺は熟睡状態。

「終わったぞ」
いつものごとく、智巳ちゃんの声で目が覚める。
「ん…ありがと」
携帯に目を向けると、ナツからは、OKのメールが。

俺は、智巳ちゃんと一緒に、家へと向かった。

「ただいま」
「おじゃまします」
俺と智巳ちゃんの声が重なる。
「おかえり」
そう出迎えたのは、ナツ。
俺を見て、にっこり笑う。
「…ま、俺は部屋行くから」
智巳ちゃんは、俺らに気を使ってか、さっさと自分の部屋に。
俺は、ナツに誘われるがままに、ナツの部屋へと足を運んだ。


「めずらしいね。深雪ちゃんから、誘ってくれるなんて」
そう言って、俺の口に口を重ねる。
「ん……」
さて。
どう切り出すか。
「…っ…はぁ。あのな…ナツ…」
とりあえず、体を引き剥がして、距離を取る。
「真面目な話なんだけど」
「…どんな」
ナツの方も一応、俺に手を出すのをやめて、ベッドに座り込んでいた。

「あの…な。もう、こういうのやめないかって」
「ふーん」
ふーんって…なぁ…?
「ホンキで言ってんだけど?」
「うん。だから、いいけど?」
「え…?」
あ。
今、俺、なんか、ズキンって。
ショックとか受けちゃってたりするわけ?
やめたくないって言われるの期待しちゃってたっつーか。
そりゃ、ずっとこういうの続けられるのも、どうかなぁって思ったわけだけど。
だからって、あっさりそう言われると…なぁ?
「ナツ、いいわけ…?」
「…なに? よくない?」
「いや…いいんだけど…」
「もしかして、いざ引かれるとさびしいってやつ?」
まさにそれなんだろう。
「かわいいねぇ。深雪ちゃん」
そう言うと、楽しそうに俺をベッドへと押し倒す。
「っっだからっ…やめっ」
「ちょっとからかっただけ。俺が、あっさりいいよって言ったら、どうするかなぁって。困ってくれて、嬉しかったし。かわいいし。ホントは、やめたくないに決まってるじゃんか」
そう言って、俺のシャツの中に手をもぐりこませる。
「っなっ…」
俺がなにかを言おうとするのをふさぐように、口を重ね、胸元をいやらしく手が這いまわっていた。
「っんっ…ンっ…」
「かわいいよ。深雪ちゃん」
「っあっ…も、やめ」
「わかった。わかったから。お願い。今日だけ」
いつもはこんな風に俺に頼むことなんてなかったのに。
最後に…ってこと…?
「…今日で終わりだからな」
「わかったって。くれぐれも欲しがったりしないでよ? 名残惜しくなっちゃうから」
「はいはい」
「深雪ちゃん…」
シャツを捲り上げて、胸の突起を舌でゆっくり舐めまわされて。
それだけなのに、体がビクついて反応を示す。
「あっ…やっ…ナツっ」
「なに…?」
「…っ…ん…なんでもな…」
なんだよ。
こんなあまったるいこと、したことねぇくせに。
妙に感じるし。
「なんでもない?」
「いつもみたいに、すればいいだろ…?」
「んー、今日は、特別。気持ちを込めて、やらせていただきますから」
なに言ってんだか。
そう思ってると、俺のズボンを脱がして、ナツは足のひざ裏に手を回す。
ぐいっと持ち上げられたかと思うと、あろうことか、ナツが、俺のアナルに舌を這わす。
「っなっあっ…あっ馬鹿っ」
「なんで…?」
「っんっ…なトコっ」
「よくない…?」
ゆっくりと舌先がチロチロと、入り口をさまよって。
その感覚に体が震える。
「っんぅっぁっあっ…馬鹿っ」
次第に力づよく舐められて、ナツがそこに口付けると、ゆっくりと、舌先が中へと入り込んできた。
「っんっ、やっあっ…やめっ」
何度も出入りを繰り返されると、羞恥心とか薄れてくるし。
そんなんするのかよ、とか突っ込む気力なんてなくなってくる。
「はぁっあっ、ナツっあっ…やんっやっ」
「なに…? 言って…?」
いったん口を離して。
それがまた、もどかしい。
「っんっ…だ…めっ」
「なにが?」
「っもっ…やっ…はやくっ」
「ほしがらないでって、言ったのになー」
「い…からっ…」
「いいからって。こっちが約束したんだけど」
ナツが自分の指を舐めてるのが視界に入る。
「っんっ…あっ、なっちゃぁ…」
「わかったから」
ナツの指が、舌のかわりにそっと差し込まれて。
ピストン運動を始めると、体がまた少し跳ね上がってしまう。
「あっんっ、はぁっあっ」
「気持ちいい…?」
「っあっ…やぁあっ」
「言って…もっと欲しい?」
「んっあっ…ぅんっ…いいっあっ…」
俺に従ってか、そっと2本目の指を差し込んでくれる。
「あっ…く…ぁあっ」
「ねぇ。3本目も、いこうか」
3本目。
俺の中に入り込んで。
「っあっ…なっちゃぁ…」
「広げられるの、好きだよねぇ」
「んっっ…」
つい頷いてしまう自分って、ホントにこの関係を終わらせれるのだろうか。
「はぁっ…あっくっ…ナツ…っやぁっあっ…」
「深雪ちゃん、そんなに欲しがらないでよ。ずっと、かまいたくなっちゃうじゃん」
ずっと。
なんで俺、この関係、やめようとしてんだっけ?
そう。
俺は、ナツが好きなんじゃなくって、たぶん、こういう気持ちいいことが好きだから。
ナツにだって申し訳ないし。
こんな風に、続けるのはよくないはずなんだよ。
「気持ちいい…? すごい…ぐちゃぐちゃになってきた」
「ナツ…っんっあっっぁあっ…やうっあっ」
「どう…?」
「あっぁんっ…ぃくっやぁっなっちゃぁあっ」
「まだ、やり始めたばっかだよ」
「あんっあっ、いいっ、はぁあんっ」
「いいよ…イっちゃって?」
優しく頬を撫でてくれながら、そんなやさしいこと言ってくれちゃって。
めちゃくちゃドキドキすんじゃん。
「はぁっあっ…ナツっあっんっ…やぁっあぁああっっ」

俺がイったと同時にナツは勢いよく、指を引き抜いていた。
「はぁ…あ…ナツ…」
変な感じ。
いつもなら、たぶん、俺がイってもそのまま突っ込んで、かき回したりしてそうなのに。
自分のモノでも入れる気なんだろうか。

そう思ってた俺の気持ちとは裏腹で。
ナツはタバコに火をつけて、終わりみたいな雰囲気を醸し出す。

俺は、なにも言えずにただ、寝転がったまま。
「…じゃ、終わろっか」
沈黙をやぶったのは、ナツのその言葉だった。
「え…」
終わるって?
「終わるつもりで来たんでしょ? いまだって、やるつもりなかったんでしょ」
「まぁ…」
そうなんだけど。
「もう深雪ちゃんも来年から社会人だしねー。しかも教師だし。いつまでも、こういうのよくないっしょ」
さすが、智巳ちゃんの弟っつーか。
考え方がよくわかってるっつーか。
「セフレみたいだし」
軽く笑いながらナツがそう言うのが、ものすごく突き刺さってきた。
「セフレって…違うだろ?」
「会ったら必ずやってるし、そうじゃないって言えるわけ?」
「だって…っ、別にやるだけの関係ってわけじゃ…」
やるためだけに会ってるわけじゃないし。

でも、俺、さっき。
ナツが好きなんじゃなくって、こういう行為が好きだから、ナツに悪いって。
そう思ったはずで。
つまりは、自分自身は、そんなこと考えてるくせに、ナツにセフレって言われて、ショック受けて。
自分勝手もいいとこだ。

いままで、ナツに好きだとか言われていい気になりすぎてたのかもしれない。
好かれてあたり前っつーか。
いざ、捨てられると、いままでナツの存在がどれだけ大きかったのかがわかる。

「深雪ちゃん、俺と会って、やらずに楽しめる?」
「っ…そんなん…」
ナツとどこかで遊ぶとか、やっぱりうまく想像できないし。
「教師だっつーのに、こういう軽い遊びでやるとかそういうの、やっぱどうかと思うんやん?1回きりならともかく、俺ら長いし。ケジメ、つけたいんやんね?」
まさしく、それなんだよ。
「ナツ…」
「いいよ、そういうのわかるし。俺も他に、真面目に恋愛するから」
「俺のことっ…」
俺のことは、真面目じゃなかったのかーなんて。
言いかけたけど、言えるわけがない。

俺だって、ナツのこと、真面目に見てたわけじゃないから、言える立場じゃねぇのに。

ナツのこと。
好きだけど、恋愛とかそういうのとは少し違って。
だけど、やるのはもちろん好きで。
ナツの方が、俺のこと、恋愛対象で見てくれるのが、申し訳ないような気がした。
俺は、そういう風に、見てないから。

このまま、ナツを都合よく、使うみたいなのは、やっぱ、駄目だろうし。
ナツ自身も、傷つくだろうし。
いつもいつも。
俺は、ナツを好きだっていう態度はとってないから。
たぶん、きっと、あまり満足してないんだろう。


終わろう。



俺は、ズボンをはきなおし、ベッドから降りた。

「ナツ…。俺、もうすぐ一人暮らしだし、仕事慣れたころに遊びに来いよ」
「うん。なるべく行かないつもりだけど、行っちゃうかも」
「あはは♪来いよ。じゃあな」
俺は、ドアに手をかけて、もう一度、ナツの方を振り返った。
別に、この関係を終わっただけで、もう会えなくなったりするわけじゃないのに。
「ねぇ、深雪ちゃん。俺は、真面目に好きだよ」
ナツは、タバコの火をけして、俺の方をジっと見る。
「でも、深雪ちゃんの気持ちわかるからさ。じゃあね」
最後は笑顔で、俺に手を振る。
ナツが笑顔でいるんだから、俺もそうしないと。
「じゃあな。また」
俺も笑顔で、部屋を後にした。


部屋を出てすぐ、脱力からその場に座り込む。
これでよかったのかわからなくて。

でも、俺は本気じゃないのに、ずっと付き合うのも、絶対、申し訳なくて。
俺の方も心苦しいし、ナツだってそうだろう。

「はぁ…」
俺は一息つかせてから立ち上がり、智巳ちゃんの部屋へと、お邪魔した。



「…何発?」
お決まりの言葉が飛んでくる。
「してないって。……最後までは」
「ふーん。終われたんだ?」
終われた…というか。
終わったんだろう。
「…なんか、フラれた気分」
「お前の方がフったんだろ」
「…そうなるのかな…」

ものすごく、しずんだ気分。
ぐだぐだ、こういう関係続けるのも、どうかって思ってたけど。
「智巳ちゃん…慰めてよ」
「都合よすぎだし。…一回、フラれた相手に、そうやって甘えられるの、キツいんですけど」
「……ごめん」
「ま、いいけど? 深雪先輩らしいし」
智巳ちゃんは、そっと俺を押し倒して、優しく口を重ねてくれた。
あまったるくて、まどろっこしいくらいで。
蕩けそうなやつ。
それだけで頭がボーっとしてくる。
「んっ…はぁっ…いいよ、智巳ちゃん、早く…」
「…いきなりそう言われてもな…」
「…していい?」
「まぁいいけど。弱ってんのな。お前の精神」
もうめちゃくちゃ。
俺は起き上がって、逆に智巳ちゃんを押し倒した。
俺は自分のズボンを脱ぎさって、智巳ちゃんのズボンのチャックを下ろす。
智巳ちゃんのモノを何度も手で擦り上げて。
そっと舌を這わして。
「…深雪先輩、やらしー…」
「んっ…うるさ…」
自分の指もついでに舐めあげて、自らその指を足の付け根、奥へと押し込んでいく。
「ぁっ…んっ」
2本入り込んだ指で中を広げて。
智巳ちゃんのもたっぷり、濡らして。
「…いい…?」
「…ん…いいよ」
確認をとってから、智巳ちゃんの体をまたいで、いままで自分が舐め上げていた智己ちゃんのを、自分の中へと押し込ませていった。
「んっあっんーっ」
ゆっくりと、腰をおろして。
智巳ちゃんの手が、やさしく俺の腰を支えてくれていた。
「ぁっあっ…ん」
奥の方まで入り込んでくる。
「久しぶり…どぉよ」
「はぁっあっ…すご…智巳ちゃぁ…」
俺は、そっと腰を動かして、その感触を味わった。
「ぁあっあっんっ…はぁっ」
智巳ちゃんも、俺の腰を掴んで、揺さぶりをかける。
「ぁっあっ…はぁっ…やぁあっ」
体がガクガクするほど揺さぶられて、目の前の視界がおかしくなりそうで。
智巳ちゃんとしてるのに、頭の中からナツのことが離れない。
俺って、最低だ。
「智己ちゃぁ…っやぁっも、いくっあっ…ん、きてっ」
「んっ…やらしいね…。はぁ…イクよ…」
「はぁっあんっあっ…やぁあっっ、あぁああっっ」

智巳ちゃんのが流れこんできて。
奥の方まで貫かれて。
俺の方も、なにもかも忘れてしまいそうなほどに気持ちよくて。
それでも、晴れた気持ちにはなれなかった。






「深雪ちゃーん。がんばって教師してる?」
「ちょっ…学校には来るなって」
「まぁまぁ、いいじゃん?」

終わりを告げてから。
もう4年ほどたっていた。
あいかわらず、ナツは俺に会いに来てくれるけど、前みたいに、まじめに好きだとか言うことはなかった。

ま、いまだに、肉体的な行為しちゃうときもあるけど、前とは全然、違った感じ。
ナツも、付き合ってる人がいるらしいから、そこら辺、俺への気持ちがまた違ってきてるんだろう。


「どちらさま?」
「新しい彼氏さん?」
「それとも愛人とか?」
ほら、すぐ生徒に絡まれてるし。
「あはは。かわいー。違うよ。古い愛人」
「…おい…」
放課後。
補充の件で、教室前の廊下で時間をつぶしていたときだった。
ナツがきて。
教室から出てきた生徒に絡まれて。

ナツは人懐っこくて、俺にももちろんすぐになついたし。
生徒たちと、すっかり打ち解けて話しこんでいた。

「…なんか、娘を嫁に出した親の気分」
「…お前が言うなよ。娘もいなけりゃ結婚もしてねぇくせに?」
あいからず、智巳ちゃんは、俺に冷めた口調で、それでも暖かく突っ込んでくれて。

今という時間がものすごく充実していた。
「…ま、わかるけどな。その気持ちは」
「お…わかるんだ?」
「っつーか、問題児を、志望校に受からせた気分っつーか。卒業させれたときの感じ」
「教師らしい例えだねぇ」
「手がかかるんだけど、いざ離れると、うれしいけどさびしいみたいな感じな」
まさにそんな感じだった。

「ナツの方は、ちゃんとしたやつと付き合ってんのか…? 変な相手だったら、どうにかしてやらないと」
「お前よりは、いいやつなんじゃないの」
「ひでぇね。俺って結構、モテるのに」
「それは重々わかっておりますが?」

もしかしたら、俺を安心させるために、いい彼氏がいるんだとか、でまかせだったりしたら…なんて考えちゃったりもするわけだよ、こっちは。
少し考え込む俺を見てか、智巳ちゃんがコツンと俺の頭を小突いた。
「…智巳ちゃん…?」
「…子離れしろっての」
「…ん…」

「っつーわけで、ラブラブなんだよねぇ」
俺にそう話しを振られて、疑問符が頭の中を飛ぶ。
「…はい?」
いきなりなんなんだ?
ナツが俺に抱きついて、そう生徒に伝えて。
「二人が、どれだけ仲良しかって話しだよ」
生徒の一人がそう教えてくれるけど…。
「ナツ、お前、どう話したんだ?」
「別に? 俺ら両思いで、毎日電話して、メールして、愛を確かめあってるけど、遠距離なんだよって話を?」
なんちゅーでまかせを…。
しかもホントくさいし。
「…今日の補充は無しですか」
冷めた声。
声のした方に視線を向けると、冷たい表情で、俺を見て。
めちゃくちゃ不機嫌そう。

「…やるから、教室で待ってろ」
ナツはあいかわらず、にこにこして抱きついてるし。
「…わざとだよな?」
「もちろん。あの子なんでしょ。今の彼女」
「…まだ、付き合ってはいないけどな」
「ま。俺が抱きついてて、やきもち妬くくらいには、深雪ちゃんのこと、好きみたいだし?いい子なんじゃないの?」
煽ってくれたわけですか。

「…ありがとな」
「どういたしまして」

いまはこんな関係で。
きっとそれでよかったんだと思う。
俺らが終わりにしたのは、セフレみたいな関係だけで。
ほかはなにも終わっていないから。