「春耶、今日、アンケートの集計、一緒にしない?」
そう誘ってきたのは隣のクラスの保健委員、水巳流乃だ。
俺も保健委員で、今週中までにクラスのアンケート集計をしなければならなかった。
とはいえ、もう金曜日。提出期限はは月曜だけど。
一人でやるのもつまんねぇしな。
「うん。じゃ、どっちかの部屋でやる?」
「んー…じゃ、俺が春耶の方、行くよ」
休み時間、そう約束して、席についた。

ま、それから学校が終わるまで、いつもどおり平凡。
帰る途中、俺の隣にいたアキがそっと、俺を見上げた。
あいかわらずかわいくてたまんねぇんだけど。
「水城くん、今日…そのっ…遊ばない?」
やべぇ、かわいすぎる。
いますぐ抱きしめたい。
「遊ぶ遊ぶ。あ、でも、委員会が…」
「あ、無理ならいいんよ」
「夜、いい?」
「うん」
かわいいなぁ。
抱きしめてしまいたい衝動を必死で抑えて、自分の部屋へと戻った。

アンケートを取り出してる最中に、流乃が来る。
「どう書けばいいのかな」
「別の紙に、書くんだっけ。意外に面倒だな」
質問の項目が多すぎる。
2択とかならいいけど、文章で答えてる部分とか、すっげぇ面倒。
こりゃ、時間かかるぞ…。

単調すぎる作業に嫌気がさしてくる。
だけど、無記名とはいえ、人のアンケート見るのってなんか楽しかったり。
これ、絶対、啓吾の字だ。
「意外におもしろいな」
「春耶ーぁ。いちいち見てたら時間かかるよ」
「あ、うん」
「おもしろいけどね」
2人でしゃべりながらやってると、ホント、いつのまにか時間がたっちまう。
だけど1人だとダラダラして余計出来なかったりするんだよなぁ。

「流乃、あと何問?」
「あと2問。この文章のって、どう書くわけ?」
「似たやつは同じにして、集計すんじゃねぇの? ってか、俺あと4問もあるんだけど」
ノロいなぁ。
ため息をついたときだった。
インターホンの音がして、俺は流乃を残してドアを開ける。
「アキっ、来てくれたんだ?」
あぁもう6時半?
「ごめ…邪魔、しちゃって」
「うぅん。えっと…どうしよう」
アンケートを明日に回してもいいけどな。
でも、流乃に帰れとも言えないし。
あ、流乃に、明日またやろうって言えばいいか。

っつっても、流乃はあとたったの2問だし、今日中に片付けたいよなぁ。
「すぐ、俺の方からアキんとこ行くよ」
「…うん…」
アキが頷くのを確認して、俺はそっとドアを閉めた。

「ちょっと、いいの…? いまの、彼女でしょ」
流乃がためいき混じりに俺に聞く。
「あぁ。一応そうだけど…。いいの、ってなに?」
「俺見られてさー。彼女ほったらかして、ほかの男と遊んでるみたいじゃん」
ちゃんと、委員会って言ってるけど…でも、そう見えるか?
部屋だしなぁ。
「残念ながら、そこまで深くないっていうか…。嫉妬とかしてもらえるほど、愛されてないかも」
「よくあっさり愛とか言うよね…。そーかなー。まぁ、春耶が彼女とどういう関係かは知らないけど。あーゆうタイプの子って、見せないだけで、意外に嫉妬心、強そうだし」
嫉妬…。
してくれたりするんだろうか。
あぁ。そんな目にあわせたくないけど、ちょっと期待みたいなの、してんのかも。
変にドキドキする。
「…ボーっとしてないで、集計やるか、やめて彼女んとこ行くか、どっちかにしようよ」
そんな、集計やめるっつったって、流乃に悪いだろ…?
だけど、そう言ってくれるのが、やさしくてなんだか嬉しかった。
「うーん…。どうしようかな…」
結局、ボーっとしちゃうな。
とっとと、やると…
って、急いでもあと1時間はかかりそうだよな。

「行っといでよ。俺、残りは一人でやるから」
迷ってる俺にしびれをきかしてか、そう言ってプリントを束ね出す。
「っ…悪いな。流乃…」
「かまわないよ」
流乃がプリントや筆記道具を片付けて、部屋を出て行くのと入れ違いで、深敦と啓吾が入ってくる。
「春耶―っ。晃がっ…もうっ」
深敦の方は混乱した様子でなにが言いたいのかさっぱり。
「っなに…」
って、俺が言いかけようとしたときだった。
啓吾の足が振り上げられたかと思うと、俺の頭上に振り落とされる。
「っイってぇえっ」
「ごめーん。足が、長くって」
いきなりカカト落としくらわされた。
「っこれ以上馬鹿になったらどーすんだよ」
「安心しろ。俺らの学年には深敦がいる。最下位にはならねぇよ」
「てめぇっ、そこまで俺、馬鹿じゃねぇよっ」
今度は、深敦が啓吾に蹴りかかる。
「じゃぁ、深敦より、水城の方が馬鹿だって?」
「んなこと言ってねぇだろ。だーっ、これだから頭のいい奴はむかつくっ」
「褒めてくれてどうも」
「褒めてねぇよ。馬鹿っ。俺だって、そこそこ頭いいんだよ」
「しょせん、そこそこだろ。天才には及ばんて」
「天才に及ぼうとは思ってねぇよっ」
「及ぼうってなんだよ。言葉使い、おかしくね?」
「啓吾に言われたかねぇよ。変ななまりのくせにっ」
「なまってて欲しいって泣いたのはどこのどいつですか」
「っ泣いてねぇだろっ、馬鹿っ」
「別に、どいつか聞いただけで、事実がどうだとか、言ってねぇだろ。身に覚えがあるわけだ?」
「うるさいっ、馬鹿。むかつく、馬鹿だろ、お前っ」
…なんなんだ、こいつらは…。
言葉での言い合いとともに、深敦の蹴りをことごとく啓吾がすり抜けている。
落とされたの俺なんだけど…。
なんかもう、怒りとかなんもなくなってきてるや。
「俺、アキんとこ行きたいんだけど、行っていい?」
そう口を挟むと、やっと2人は動きをとめこっちを見る。
「春耶くん、それなんだよねぇ」
啓吾はにっこり笑うと、俺の体を後ろから抱く。
「な…に…」
「アキが、『水城くん、委員会って言ってたけど、委員会の仕事って、教室でしないのかなぁ。部屋にいたけど…別の子と一緒だったんよ』って、めちゃくちゃ不安そうに洩らしてましてよ。お前は、強姦したあげくに浮気かよ」
「ちょっ…強姦とか言うなよ。お前だって深敦のこと無理やりやったんだろって」
「深敦から、欲しがったよな」
「っなっ…あれは、お前が、止めて…っ」
「ちゃぁんと気持ちよくさせたからいいだろ」
「俺だって、アキ…」
「薬とテクニックと一緒にすんなよ。まぁいいから。話、進まねぇって。あんまりアキのこと不安がらせるなよ…」
そっと耳元で言ってくる。
「わかったって。お前こそさ…。あんまアキのこと心配しすぎて、深敦、不安がらせるなよ」
深敦に聞こえないように、そっと耳打ちした。
「…へいよ。わかってる」
すると、深敦が自分だけ話題に入れないからなのか、俺らを嫌そうな目で見る。
「深敦…?」
「…ぅわ…。客観的に見ると、やっぱホモって気持ち悪ぃ…」
そう言って一歩引くもんだから、俺はつい条件反射的に、啓吾から逃れようとするが、啓吾は離してくれない。
「友達同士でも、抱きつくくらいするだろ? 深敦、意識しすぎじゃねぇの?」
「だって、お前ら、ホモくさいもん」
「ホモくさいとか気持ち悪いとか言われたまま、立ち去るわけにはいかねぇよなぁ。水城」
「え…?」
なに言ってんの、啓吾…。
すると、啓吾の手が、ズボン越しに俺の股間を弄る。
「っなっ…」
「男同士でベタベタする画が気持ち悪いっつーんなら、水城だけ見ときな」
そう言って、ズボンのチャックを下ろし、中から取り出して直にこすりあげてしまう。
「っちょっ…っと、啓吾っ?」
「お前の喘ぐとこって、見たことないから見てみたいんだよなー。な、深敦も見てみたいだろ?」
「うん」
期待の眼差しみたいなもん、向けられるし。
「…マジかよ、おい。止めるやついねぇのかって」
「深敦、客観的が嫌なら主観的になりゃいいやん?」
「自分はいいんだよなー」
なんて、俺様主義。
深敦は俺に近づくと、ジーっと顔を見て。
「焦ってるって感じがさ、朔耶とそっくりでかわいいよな」
俺、やっぱ朔と似てるのか。
そういう場合なのかよくわかんねぇけど。
深敦の方を気にしている隙に、啓吾が俺の手を取ると、片手に手錠をはめ、驚く間もなく、もう片方の手首にも手錠がかかる。
「っな…に、準備してんの…?」
「手錠は常に持ち歩かないと」
「はじめからやる気で、来た…とかじゃねぇよな?」
「さぁ?」
後ろで手錠を止められて。
啓吾相手じゃ一筋縄にいくわけがない。
嫌がればはずしてくれるってわけでもなさそうだし。

ベッドに運ばれて、啓吾は相変わらず俺の後ろから体を抱いて離さない。
「じゃ、深敦くん、脱がしてあげて」
「え…深敦がすんの…?」
「だって、客観的だと気持ち悪いとか言われんだぜ?」
そういう問題でなく。
「あー。俺、やられてばっかだから。たまにはやらせろって。でも啓吾相手にするってのもなんか変じゃん?」
変じゃねぇよ。
というか、変だけど、代わりが俺…?
深敦は、さっさと俺のズボンと下着を引き抜いてくし。
「っちょ…お前ら、いいかげんに…っ」
「最後まではしねぇよ。な、深敦」
「啓吾に見られながらやってっと、下手とか言われそうでむかつくからな」
そういう問題じゃないってば。
俺は、啓吾の足の間に体を入れ、後ろから抱かれ。
体重を啓吾に預けたまま、深敦に足を開かされる。
「っ…おいおい…。まじで、やばいだろ」
「春耶って、混乱するとおもしれぇな」
深敦は、関心したようにそう言うと、啓吾から受け取ったローションを指に塗りたくる。
「イキナリ後ろやんの?」
「なんだよ、文句あんのかよ」
うわぁ、逆ギレされた。
自分の進め方が間違ってるのかもしれないって思うと、初心者扱いされそうで、嫌なんだろうけど。
そりゃ、俺も啓吾も攻めたことあるし。
深敦は初めて…なのか?
間違い指摘されたらむかつく気持ちもわかる。
わかるけど、それはちょっと違う。
別に間違い指摘したつもりとかでなく、純粋に受けの気持ちとしてっ…。
ってもう、わけわかんねー…。

啓吾が耳元で、軽く笑うと、後ろからひざ裏に手を回し、一気に持ち上げられる。
「っなっ」
両方の足で、開脚状態。
恥ずかしい部分が、丸見えみたいな。
「深敦、そこだよ」
「わかってんだよ。うるさいなー」
2人で、進めないでくれって、頼むから。
深敦はわかってると意気込んだものの、少し慎重に俺のアナルに指を触れる。
「っン…」
ローションの冷たい感触に少し体が震えた。
「んな不安そうな顔すんなよ。俺、手、きれいだもん」
そんな、心配はしてねぇけどっ。
「そのまま、ゆっくり入れたげて」
深敦に言ってるんだろうけど、わざとなのか、俺の耳元でささやくように啓吾が言う。
「うるさいなぁ。今やるって」
いいから、煽るな、焦るな、啓吾に反抗するなよっ?
もう駄目だ。
ゆっくり深敦の指が中に入り込んでくる。
「っンぅっ…ゃくっ」
すっげぇ変な感触。
深敦が指をどんどんと奥に押し込んでいくのを、ただ見守ることしか出来なくて。
たぶん、啓吾も見てるんだろ。
体が変になる。
「ゃめっ…深敦…」
啓吾は耳元で楽しそうに笑うし。
「で。…どうすんだよ…」
不服そうに深敦が、啓吾の方を見てそう聞いている。
あぁもう、なんか、新人ナースにあたっちゃった不幸な患者の気分。
「いっつも自分がやられて気持ちいいと思うように動かせば?」
「なっ…動きなんて覚えてねぇよ」
「じゃ、まず小刻みに前後に動かしてあげな。あまり引き抜かずに、短く…。こうやって…」
って、片方の俺の足を離したかと思うと、俺の目の前で、指を動かして示してみせる。
「っめっちゃ、恥ずかしいこと、目の前ですんなよ」
「予告したげてんの」
深敦は深敦でなぜか真剣そうに、それの真似をしようと、自分の指を見つめてから、そっと動かしにかかるし。
「っンっ…はぁっ…ちょっ…と」
「少し、慣れてきたと思ったら、抜き差しする距離、長めて…」
ってだから、目の前で、やんなって。
俺も深敦も啓吾の指につい見入る。
「こんくらい…かな…」
独り言みたいに呟きながら、少しずつ内壁を擦る距離を長めてく。
「っぁっんぅっ…ゃめっ…ン」
少しだけ、小刻みに前後してた指先が、次第に、大きく抜き差しを繰り返し、何度も出入りを繰り返す。
「っあっ…ゃくっ…はぁっ…あっ」
なんでこんなことしてんだよ。
次は?
と言わんばかりに、深敦の視線が俺の目の前、啓吾の指に行くのがわかる。
「少し、かき回してあげて。こうやって…」
深敦に言ってんのか? お前。俺に言ってんだろ?
耳元でそう言いながら、楽しそうに指を動かしてみせる。
それと連動するみたいに、深敦の指が中を掻きまわしてきた。
「っやっ…あぁっ…くっ…」
「深敦。第二間接くらいまで入れたところで、軽く指曲げて探ってみな。そこら辺、前立腺あるから」
深敦は、了解したのか、奥の方まで入れた指を軽く曲げ、少し引き抜いたりして探りをかける。
「っンっ…ゃくっやっ…ぁあっ」
あーもう、恥ずかしいくらいに反応して体がビクンとしなる。
「ここかよ」
「俺じゃなくって、水城に聞きなって」
啓吾も、わかってんだろ?
うん、そこかな。とか言ってあげてやれよ。俺に振るなって。
「春耶…ここ?」
示すように何度も、そこを指先を曲げて突付いてくる。
「っンぅっ…ひあっ、ゃあっっ」
体がもう、変にしなる。
ビクビク震えてたまらない。
刺激が強すぎる。
「初心者って、怖ぇよなー。容赦ねぇだろ」
楽しそうに耳元で俺にそっと言う。
「春耶、聞いてんのかよ。違うなら違うって言えってば」
あー、馬鹿馬鹿。
合ってます、そこだってば。
だから、何度も突くなって。
「っぅンっあぁあっ…ん、ソコっ」
あんま俺に変な発言させるなよ。
「合ってんじゃんかぁ」
あまりにも何度も突くからもうイかされそう。
「ぁっあっ…深敦っ」
「じゃ、場所わかったらいったん、動きとめたげて?」
「っ…くっ…ん…」
わざとだな、啓吾。
ひでぇっ。
「俺、焦らすの好きだから」
耳打ちで教えてくれる。
「…さすがにこれは、イジメじゃねぇの…?」

啓吾の指示に従って、今度は2本目の指を入れてしまう。
さっきよりも太くて、中をかき回されると、体中が熱くなっておかしくなる。
「はぁっあっ…やぅっンっ…やめっ…もぉっ」
あーもう、体中が蕩けそう。
「前立腺、突いたげやぁって」
俺は無視?
「ひぁっ…やめっっ…あぁあっ」
「気持ちよくないのかよ」
頼むから、そんな不安そうな顔で俺を見るなって。
「っくんっ…ゃふっ」
「水城―…。イイって言ってあげろって。でないと深敦がトラウマになるだろ」
んな馬鹿な。
確かに、気持ちいいし、伝えてあげないととは思うけど…。
「水城…」
あぁもう。
「っんっ…ぃいっ」
っつーか、よすぎる。
「なに?」
ぎゃぁもう、聞き返すなよ。
「っあっ…深敦っ…いいっ」
「気持ちいい?」
「ひぁあっ…ぅっンっ…いいっあっ…」
「よかった。じゃ、次は」
「っ止めなっ」
つい、動きを止めようとする深敦を制してしまう。
「深敦…。水城、イかせてやんなって」
「…う…ん」
緊張するようにそう答えると、何度も前立腺をかき回しながら擦っていく。
「っあぁっ、やっくっ」
「後ろだけで、イっちゃうのかなー」
啓吾が楽しそうにそう呟く。
「っぅくっ…んっ、あっやぅっ啓吾っ」
「しようか? 前」
めちゃくちゃ楽しそうだな。
俺がなにも答えないでいると、啓吾の手が、俺のを掴んで擦りあげる。
「っあんんっ…はぁっ、あっ」
後ろから突かれ掻き回される刺激と、前を何度も擦りあげられる刺激で、思考回路がおかしくなりそう。
「ぁんっあっ…もっ、やくっやぁっ…あぁああっっ」
啓吾と深敦の手でいかされて、ぐったりと体の力が抜ける。
啓吾がそっと俺の首筋にキスをして。
深敦がゆっくりと指を引き抜いた。



「やられるのとやるのじゃだいぶ違うのなー」
深敦が関心したように言うのに、めちゃくちゃ共感する。
「…新手の苛め?」
「水城がホンキで嫌がるんだったら、やらなかったって。そこまで意地悪じゃねぇよ」
まぁ、いいんだけどさ。
「…っとになぁ。ってか、お前ら何しに来たんだ?」
ホントにやりに来たのか?
「あー。アキんとこ、行ってやれって言いに」
「っだったら、引きとめんなよっ」
俺は、慌てて、アキの部屋へと向かった。


「っアキっ?」
「あ…水城くん。委員会、終わったん?」
「…まだなんだけど…。途中で止めてきたよ。あ、部屋でやってたんだ。隣のクラスの保健委員とっ」
って、言い訳くさい?
でもホントのことなんだけどっ。
委員会っつーと会議みたいだからな。
そういうんじゃなくって、委員会の集計仕事なんだけど…。
「…っ…水城くん…。ごめん…けど、今日、もう遅いし…体調悪いから…また、今度でいい…? 誘っといてあれだけど…」
な…に…?
そりゃ、今度でいい? って言うのを駄目とは言えないけど。
「体調悪いんだ…? 大丈夫? 看病するよ」
「うつしちゃうと悪いし…。いいよ」
「いいよ。うつして。明日休みだし…」
「っ…一人でいたいっ」
少し、感情任せにそう言って、アキはすぐさま、言ってはいけないことを言っちゃったみたいな…申し訳ないような焦った表情を見せる。
「っう…ん、わかった」
それ以上、俺はなにも言えないから、アキの部屋のドアを閉めた。
っと。
後ろから笑い声が2つ。
いつからいたのか、啓吾と深敦。
「っでらウケるんだけどっ」
啓吾にいたっては、バカ笑いもいいとこだ。
「…お前って、笑いのツボはまると抜けれないタイプだろ」
俺がそう言うのにも答えれないで、苦しそうに笑い続ける。
「…大丈夫か、お前…」
「まぁ、啓吾はほっといてさ。春耶は大丈夫?」
「え…。あぁ、まあ平気だけど」
「平気なのかよ」
啓吾が、ちょっとつまらなそうに笑い続けながらも俺に聞く。
「なんだよ、啓吾」
「今、アキちゃんに、嫌われたくせに」
「嫌われたって…」
そりゃ、断られたのはめちゃくちゃショックだよ。
「体が大丈夫ってなだけで、精神はキテるよ、すっげぇ、大丈夫じゃねぇって」
「やっぱり?」
…人の不幸が楽しいんだろうな、こいつは。
ったくもー…。

「委員会、長引いたのがいけないんかなぁ。ってかお前らのせいだけど」
「そりゃあさ。委員会って言いつつ部屋にかわいい男つれこんで? すぐ行くって言いながらも、ずっと待たせたあげくに、現れたと思ったら、髪の毛乱して、服しわくちゃで、おまけに首筋にキスマーク残してちゃあな」
「え…」
……そりゃ、やべぇよな…。
「っアキっ、違っ」
って、ドア開かねぇっ!?

「啓吾、わざとだろ?」
「もちろんね」
「…深敦は?」
「別にそこまで、深く考えてなかったんだよ」
…ったく、こいつらは。
「言い訳とかある?」
「最近、お前ら甘々でラブラブで、イライラしたから」
啓吾があっさりそう言い放つ。
なんだ、その言い訳は。
ラブラブに見られたのはちょっと嬉しいけど。
「深敦は?」
「…攻ってどういうもんかなーって」
俺を不幸にしようとは思ってなかったんだ?
「何言ってんだよ、深敦だって、ちょっとからかおうって言っただろ」
「んな言い方してねぇよ。啓吾がそう言ったのに、軽く頷いただけだろーっ」
「なんなんだ、お前ら」
「でも、一応、アキのこと心配して、お前の部屋行ったんだぜ? 不安そうな顔してたからな。ちょっと煽った方が、真実を知ったときの喜びが大きいんだよ」
また、それらしい理由つけやがって。
「煽らなくっていいよ」
「障害があるほど燃えるって言うだろ」
それはそうだけど。
「じゃ、あとでホントのこと伝えろよ。もちろん、俺らだって、協力すっから」
当たり前だ。
キスマークの言い訳…っつーか、ホントのこと、伝えねぇと。
「結局なに? 俺とアキが仲いいの見て、ねたんでたんだ?」
少し見下しながらそう言うと、深敦は、怒って、顔をそらす。
「ねたんでねぇよっ」
なんて言って。
「こたえない奴だな、てめ。イライラしただけだってのっ」
「それって、ねたんでんじゃんか」
2人してそろって、ムっとする姿がなんとも…。

俺から見たら、こいつらの方が、ずっと仲良くって、俺の方がねたんじゃうんだけどな。
俺も、人からねたまれるくらい、アキと仲良くなりてぇなー…なんて…。

それにしても。
意外にも、アキが嫉妬してくれてるみたいで。
こんなことで、分かるのもあれだけど、アキの気持ちが少し、確かめられた気がする。
怒らせちゃったのは悪いけど、すごく嬉しかったり。

こいつらも煽ってくれたことだし。
早くホントのこと伝えて、よりいっそう、絆を深めたいなーなんて思った。