『もしもーし、静紀? どうした?』
「あ、あの……いきなりすみません」
『いいよ。そんなことわざわざ謝んなくて』
「……いま……1人ですか?」
『うん。ちょっと前に帰ってきたとこ』
 大学生になった篠宮先輩は、1人暮らしで平日の夜はよくバイトをしていた。
 今日はまだ水曜日。
 明日もあるし、疲れてるだろうから、あんまり平日の夜遅くにこうして電話をすることはない。
 でも、今日はもう、電話しないなんて無理。
「もし、よければなんですけど……ビデオ通話で……」
『もちろん、いいよ』
「……見て、欲しいんですけど」
『なにを?』
 篠宮先輩は、すでにビデオ通話に切り替えていて、不思議そうに首を傾げていた。
 俺もまた、ビデオ通話に切り替える。
「えっと……これから、その……1人でしようと思ってて。見てくれたら……いいなって」
『……1人でなにすんの? え……?』
 よくわかっていないみたいだったけど、俺を見て、なんとなく気づいたみたい。
 さっきイったばっかだし、俺、もしかしたらもうエロい顔しちゃってるかも。
「その……1人Hなんですけど」
『……見せてくれんの?』
「先輩さえ、よければ……」
『もちろんいいよ。見る。めちゃくちゃオカズにするし。え、俺も抜いていい?』
「あ、はい。抜けそうならぜひ。でも、俺……こんなの初めてで、よくわかないんですけど」
 自分でも、見切り発車だったと思う。
 ひとまず、机の上にスマホを立てて置いてみる。
 自分がどう映っているのか、それも小さい画面で確認できた。
 顔と、上半身が映り込む。
「……下の方まで見えた方がいい、ですかね?」
 玲衣くんたちとは違って、俺が見せる相手は、恋人である篠宮先輩だ。
『静紀は、どこまで見て欲しい?』
「えっと……下の方まで……」
『うん。じゃあ、見せて?』
 スマホをイスに置き直してベッドに向ける。
 わりといい感じに、顔と少し下半身まで入りそうな感じになった。
 俺は、さっきイったにもかかわらず、また大きくしてる性器に手を絡める。
「ん……」
『ああ……もうそんな状態になっちゃってたんだ?』
「はぁ……さっき1回、抜いたんですけど……その……まだ、したくて……」
『そっか。じゃあ、見せてくれる? オナニーしてるとこ』
 はっきりと、口にして言われた瞬間、体が一段階、より熱くなるような感じがした。
 感じてるのかも。
「はぁ……はい……」
 普段してるみたいに、右手で掴んだ性器をゆっくりと擦りあげる。
「ふぁ……ぅ……ん、ん……!」
 画面越しだけど、篠宮先輩の視線が突き刺さってくるみたい。
 いつもとは、全然違う。
「はぁ……ん……んぅ……はぁ……」
『静紀は、1人でするとき、いつもなに想像して、抜いてんの?』
「はぁ……ぁ……あっ……先輩に……いっぱい、触られるの、想像して……はぁっ……んっ」
『かわいい。すごい顔蕩けちゃってるね。気持ちよさそ……』
「んっ……はぁっ……きもちい……ああっ……ん、んぅ……あっ……んっ……せんぱい……ああっ……俺……ん、んんぅっ」
『イきそう? いいよ』
 篠宮先輩はすごく優しい。
 すぐにイかせてくれる。
 こんな早く終わっちゃったら、篠宮先輩のおかずになれないのに。
 でも、我慢出来そうにない。
 1人でするとこ……普段、見せるはずもないところを見られてるって思うだけで、めちゃくちゃ興奮する。
「んぅんっ……いく……ぁっ……んっ……ぁあっ、んぅんんんっ!」

 二度目の射精を迎えて、少しスッキリしてしまう。
 そんな俺を見る篠宮先輩の表情は、なんだかすごくエロく見えた。
『かわいかったよ、静紀。満足した?』
「ん……」
『その……俺の方はまだちょっとかかりそうなんだけど。もう少し、そのまま、静紀のこと見てていい?』
 前、すぐにイッちゃって、ぐったりしてる俺で、篠宮先輩が抜いてくれたことがあった。
 でも、それは俺の体を気遣ってしてくれたことで、あのときだって本当は、ヤりたかったに違いない。
 いまは……離れてるし、ヤることは出来ないけど。
 もう少し、オカズを提供することなら出来るかもしれない。
「あの……俺……篠宮先輩がイクまで……1人H、します」
『……え?』
「それで篠宮先輩が興奮できるかどうか、わかんないですけど……」
『できるよ! できるけどっ!』
 篠宮先輩は、慌てた様子でそう答えてくれた。
「あの……ぼーっとしてるより……いいですよね?」
『どっちもたまんないけど……じゃあ、どうせだし、上、脱いで欲しいなぁ、なんて』
「わかりました」
 篠宮先輩の要望通り、上に着ていた服を脱いでみせる。
 いつの間にか、乳首がピンと立ち上がってしまっていた。
 触れてみるとジンジンして、頭が一層、ぼんやりしてしまう。
「あ……」
『そういえば、静紀って乳首だけでイける?』
「したことないですけど、たぶん、イけそうです」
『じゃあ、見てみたいな』
 もちろん、構わない。
「でも、篠宮先輩に見られてるので、乳首だけって感じでもないような……」
『視姦されてるみたい? 視姦されながら、乳首いじってイッちゃう静紀も見たいから、いいよ。して?』
 篠宮先輩の目つきが、どこか変わったように見えた。
 勘違いかもしれないけど、視姦スイッチが入ったみたいな。
 ゾクゾクしてたまらない。
 篠宮先輩に見られながら、両方の乳首を指先で転がすと、俺の性器がまた上を向く。
「ぁ……ん……んぅ……ん……」
『ん……乳首、気持ちいい?』
「はぁ……はい……。きもちい……ぁ……あっ……俺……んんっ……こんな……」
『どうした? 顔真っ赤だけど。恥ずかしくなってきちゃった?』
 乳首だけ弄って見せるなんて、篠宮先輩に言われて思わずオッケーしちゃったけど、さすがに恥ずかしい。
 やってみて、恥ずかしいことだと実感する。
 実感した瞬間、腰が浮き上がるくらい、触れてもいない性器がジンジンするのを感じた。
「ぁあっ……ん! んっ……せんぱ……ぁっ……あぁあっ……」
『どうした?』
「俺……あっ、あん……はずかしいの、きもち、よくて……ぁっ、んっ……んっ……ぃっ」
『そう……それでまた、イッちゃいそうなんだ? 恥ずかしい?』
 恥ずかしい。
 そんな恥ずかしい俺を見て、篠宮先輩が舌なめずりをする。
 あの舌で……舐められたら。
 そう思うだけで、たまらない。
「くぅっ……んんっ……ぁあっ、あっ……んんっ!」
『さすがにじれったいか。でもイけるよね? 静紀がイクイクーって言いながら、イクとこ……見たいな』
 じれったい。
 焦らされてる?
 でも、篠宮先輩の言う通り、イきそう。
 恥ずかしいこと、篠宮先輩に言わされながら――
「はぁっ……いく……ぁあっ……いく、いくっ……あぁあっ……いっ……あぁああっ!!」
 すぐにまた射精してしまったけど、篠宮先輩はまだだろう。

「先輩……はぁ……先輩の、どうなってますか?」
『うん……イッてないけど、かなりやばいよ……』
 そう言いながら、篠宮先輩もまた、下半身を映してくれる。
 視界に入ってきた篠宮先輩のバキバキになった性器を見た瞬間、3回もイッたのに、なぜだかまだイき足りないと感じた。
 俺は溢れ出た精液を右手の指に絡めると、下着をずらして奥の窄まりを撫で上げる。
「あぁ……ん……」
『どど、どうしたの静紀。そっちも欲しくなっちゃった?』
 篠宮先輩が少し動揺した様子で俺に尋ねる。
「だって……篠宮先輩の、すごい……おっきくなって……それ、見たら……ここ……ん、んぅんんっ!」
 そのまま、指を押し込んでいく。
 全然、篠宮先輩のサイズでもないし、熱もない。
 それでも、篠宮先輩のが入ってくる感触を思い出させるには充分すぎた。
「ぁあっ、あっ、あンッ、んっ……俺……あっ、あっ……ごめ、なさ……ぁあっ……1人H……とめらんなくて……」
『……いいよ。静紀は気持ちいいことも恥ずかしいことも、大好きだもんね』
 明らかに、さきほどよりも熱っぽい、感じてる篠宮先輩の声で指摘され、まずます体が昂ってしまう。
「はぁ……すき……あんぅ……やぁっ……とまんなぃ……あっ、あっ……すごい……あっ……先輩に、見られるの……ああっ、あン、きもちい……」
『はぁ……マジで、かわい……。静紀がエロすぎて、俺も、そろそろイきそ……』
 篠宮先輩が、自分のを手で擦りあげているのを見ながら、俺は空いている左手で、篠宮先輩の速度に合わせるようにして、自分のモノを何度も擦りあげる。
「あっ、あっ、あンッ、んぅっ……いくっ、いくっ……ああっ、また、いっちゃう……あんんっ……せんぱい……見てっ……あっ、あぁっ、いくとこぉ……」
『ん……見てるよ。ちゃんと見てる……』
「あぁあっ、いくっ……出ちゃう……ぁあっ、あっ……あぁあんぅっ!」

 勢いよく俺が射精すると同時くらいに、篠宮先輩もまた、出してくれているのが視界に入った。
「はぁ……はぁ……ああ……ん……」
 体はまだ絶頂の余韻が残ってて、動けない。
 指は入れたまま、少しずつ息を整えていく。
「はぁ……ん……はぁ……はぁ……」
『はぁ……俺も、イッちゃった』
「はい……はぁ……よかった、です……」
 このまま入れてるわけにもいかないし、なんとか時間をかけながらゆっくり指を引き抜いた。

 いつも1人でしているときは、ここまで脱力しないけど、やっぱり後ろを使って、篠宮先輩に見られながらだと、体から力が抜けてしまうみたい。
 少しぼんやりしたまま、俺は立てかけておいたスマホを手に取った。
「篠宮先輩……急にこんなの付き合ってもらっちゃって、すみません」
『いいよ。めちゃくちゃかわいかったし、俺も気持ちよかったし。むしろ最高』
 やっぱり、篠宮先輩は優しい。
 優しいから、いじめてはくれないかもしれないけど、いつか、もう少しだけ意地悪なこと、頼んだらしてくれるかもしれない。
「あの……土曜日、篠宮先輩の家、行くじゃないですか」
『うん』
「そのとき……その……いろいろお願いしてもいいですか」
 絶対、いいって言ってくれるってわかってて、それでも一応、聞いてみる。
『いいよ。なんでもお願いして? Hなお願い?』
「は……はい……。最近、ちょっといろいろ興味が出てきて……」
『どういうこと!?』
 さすがに突然すぎて驚かせてしまったかもしれない。
 友達の影響……なんだけど。
「いま話すと、またしたくなっちゃうんで、今度にしますね」
『……わかった』
「篠宮先輩も、なにかしたいことあれば言ってください」
『う、うん。考えとく……』
「じゃあ……おやすみなさい」
『おやすみ』

 篠宮先輩との電話を終えても、俺の頭はまだぼんやりしたまま。
 そんな頭で思い返す。
 いろいろ見て貰って、お願いしてもいいか聞いちゃったこと。
 具体的になにをお願いするのか、それは伝えてないけど。
「どうしよう……」
 誰かに見て貰うのは、やっぱり難しいかもしれないけど、なにかいつもとは違うこと、出来るかもしれない。
 背中を押してくれた美和くんと玲衣くんには、また明日にでもお礼を伝えるとしよう。