…どうすればいいんだか。
「えっと…」
「……シャワー…借りていいですか」
少しだけの沈黙を破るように静紀が言う。
「あ、うん、どうぞ」


どうする、俺。
出てくるのに合わせて『あ、服洗っちゃったから、待ってて』なんつって、古いパターンで居座らせるとか。

いやいや、それ以前に。
風呂一緒に入っちゃうとか。
いやでも、俺ら別に付き合ってるわけじゃないし。
いや、別に風呂一緒に入るって、男同士だから変なことじゃない。
そうだ。
そうなんだよ。
ほら、夏で汗かいちゃったし俺もー…なんつって。

「あのさ、静紀…っ。俺も一緒にいい…?」
風呂場の方へと向かいかけてた背中を呼び止める。
「…どうしてですか…?」
振り返ってそう聞く静紀の顔はほのかに赤い。
「…あの…好きだから」
…俺、何言ってんだ。
意味わかんねぇ。

それでも静紀は頷いてくれて。
俺は一緒に脱衣所へ向かった。

やばい。
かわいすぎる。

なんとなく沈黙で。
少しこちらの様子を伺う静紀。

俺が……脱がす?
いやいや、風呂入るだけだし。

でも戸惑ってるよな…。
「静紀…。脱いで…。俺も脱ぐから」
つい、そう言ってしまうと、静紀は顔を俯かせ、着ていたシャツを脱いだ。
俺も、脱ぎにかかるが、視線は静紀に釘付け。


たぶんお互いがなんでもないフリをして、ズボンと下着を脱いでいった。
全裸になり、あいかわらず沈黙のまま、顔を見合わせて、とりあえず風呂場へと足を進める。

…というか、もう限界でしょう。
静紀の顔を掴み、口を重ねた。

少し抵抗されるが、そんなのは無視だ。
たっぷり舌を絡めていく。
「んっ……ぅン…」
静紀の体がふらつくのが分かり、名残り惜しいが開放してやった。


「あ、椅子、いいよ」

風呂場にあった椅子は静紀に座ってもらう。

「どうせだから、静紀の体、洗っていい?」
…なに言ってんだ、俺。
でも、2人でいるのにこう、それぞれ洗うってのもなんか、おかしな話だ。

静紀は顔を赤くして、それでもそっと頷いた。
「っ…俺…っ」
「…手、どかして」
「っ…恥ずかしい…です…っ」
「大丈夫…」
…なにが大丈夫なんだか。
それでも、俺は静紀の両手を掴み、隠してた股間を露わにさせる。
「あっ…あんまり……見ないでくださ……っ」
「見られると、感じる…?」
なんで、この子はこんなに俺のサド心をくすぐってくれるんだろう。

掴んだ静紀の手の指に、舌を絡めると、それだけで体をビクつかせる。

かわいいな…。
俺は、両手を解放してやり、ボディソープを手に取ると、泡立てずに静紀の胸元をその手で撫でた。
「っ!! ンっ…」
ヌルヌルする感触が心地よくて。
桶に溜めた湯を少しだけ手に取り、さらに手を滑らせていく。
「っんっ…あっ…んぅ…っ」
静紀の乳首が撫でるたび指や手の平にひっかる。
硬く尖るソコを、何度も指先で優しく撫でた。
「はぁっ…あっ…ん…んぅ…っ」
「洗われるだけで、感じる…?」
「っ…違…っ」
「違わないよね…」
示すように、俺は静紀の股間のモノを直に掴む。
すでに硬く勃ち上がっている。
「ぅくっ…やっ…」
「違うの…?」
「あっ…だってっ…んっ…胸っ…触るからっ…」
「そう…。じゃあ、胸で感じちゃったんだね…」
「っ…やっ…だっ…」
ヌルヌルと、指が静紀の股間のモノを掴みきれずにすべる。
が、その感触に静紀は体を震わせてくれていた。
「はぁっあっ…んっ…ぅん…っやぁあっっ…」

静紀のモノから、精液が飛び出し、俺の手に絡む。
あまりにも恥ずかしそうに俯くから、俺はあえて突っ込まなかった。

「静紀…椅子、なくても平気?」
「……はい…。なに…」
俺は静紀から椅子をとりあげ、一旦、お湯を流し軽く温めた床へと直接座らせる。
「足、開いて」
「え……」
「後ろは…? 入れられたことある…?」
「…指…だけ…」
「じゃあ、指、入れるね」
なにが『じゃあ』なのか意味不明だが。
静紀だって、疑問に思ってるだろう。
それでも、俺が断言するせいか、なにも言えず。

足を割り開くようにして、後ろの入り口をそっと指先で撫でる。
「っや……んっ…」
ゆっくりと、指を押し入れていくと、静紀は俺の腕に爪を立てた。
「あっ…!! んーっ」
刺激が少ないよう、そっと奥まで押し込んで。
その指先をゆっくり少し動かすだけで、静紀は軽く体を震わせ薄目がちに俺を見た。
「…どうした…? 静紀…」
「はぁっ…あっ…ぁん…っ…ぃい…っ」
もう少し強めに刺激して、ガンガン喘ぐ静紀も見てみたいけれど、こう気持ちよくてうっとりしちゃってる静紀もかわいくてたまらない。
焦らすくらいの愛撫を繰り返してみる。
「やぁあ……ん…っ…あっ…もっとぉ…っ…」
さすがにじれったいのか。
だけれど、物足りないくらいで、自然と腰を動かしてくる静紀のいやらしい姿に見入ってしまう。
「っねぇっ…あっ…んっ…やぁっっっ」
「強くしたらすぐイっちゃうでしょ…」
「はぁっ…あっ…ぁンっ…いっちゃう…っ」
もう充分、イってしまいそうだな。
先端からトロトロと溢れ出る液が見て取れる。
「じゃあ、もっかいイこうか…」
静紀は頷いて。
俺はそれを確認し、指先で静紀が感じる部分を少し強めに何度も突く。
「ひぁっあっ…ぁんっ…やぁっそこっ…ぃくっ…やぁあっ…ぃっちゃうっ」
「いいよ…。出して」
「あぁあっ…出ちゃうっ…やぁっ…やぁああっっ」

静紀がイくと同時に、指を引き抜いてやった。
ぐったりとする静紀の体を抱きしめる。

3回、イってるしな…。
ていうか、静紀がかわいすぎて、こうぐったりしてる状態で、いまからハメようとか、そんなこと考えられないっつーか。
「…気持ちよかった?」

 静紀は俺の問いに、コクリと頷いて見せる。
 
 俺は?
 いや、無理でしょ。
 マジでぐったりしてるし。
 さすがにさ。
 そこまで鬼になれないっつーか。

 シャワーを上から浴び、とりあえず纏っていたボディーソープを流す。  

 静紀はあいかわらずボーっとしたまま。
 俺はムラムラしっぱなしなんすけどね。

 2人で風呂から出て。
「静紀…疲れちゃった? 寝ていいよ」
「……ん…」
 ボーっとしたままで、静紀はベッドに寝転がる。
 俺もその隣。

 あぁ。
 静紀の元カレの気持ちがわかった。
 別にね。
 無理にやろうと思えばヤれるよ。
 だけど、こうかわいくて無理させたくないとかあるわけで。
 こういうのって、きっと後々溜まってくるんだろうな…。  

 静紀が悪いわけでもないけど、元カレが悪いわけでもないような。

 ついため息が洩れる。
 ヤりたい。
 けどヤれないみたいな。

 図書室では、『静紀が気持ちいいなら、いい』なんてかっこつけたけど。
 願いは一緒に…だよなぁ。

 もちろん、静紀に対して『先に一人で気持ちよくなってんじゃねぇ』なんて怒ることはしない。  

 静紀が『疲れたからやりたくない』とかそういうこと言ったのならば話は別だけど。
 でもなぁ。
 そう言われなくても、見てわかるから、休ませてあげたくなる。
 
 あーもう、溜まってるんですけど。
 もう一度、ため息。

 けどさ。
 やっぱ、この寝顔見ちゃったら、俺は幸せ感じるわけで。
 満たされてる気分になるんだよな。

 重症だ。
 静紀が俺の手で気持ちよくなるのなら。
 まぁいっかな。

けれどたぶん、俺は元カレみたく、据え膳、食わずに我慢し続けて怒って終わらせる気もないから。  

無理させるのも時間の問題だよなとか考えてしまう自分もいた。