「浩二。今日はここまでにしとく?」
 俺だけ口でしてもらって、鈴にはなんにもってのもなんだか悪いよな。
 ……鈴のも、口でしようか。
 というか、俺自身、これだけじゃきつい。

 結局家に帰って、また一人Hすることになるだろう?  
 それはちょっと。
   
 じゃあどこで?  
 あんまり遅くまでは連れまわせないし。  
 車の中か。  
 でも俺の車、あんまり大きくないしなぁ。  
 
「……浩二?」
「あ、うん。えっと……」
「もしかして、したりない?」  
 俺って、態度に出やすいのかなぁ。  
 鈴が、鎌かけてるとは思えないし。
「鈴、どこか……その、出来るとこ移動してもいい?」
「どこ?」  
 どこだろう。  
 そこなんだよなぁ。  
   
 その隙にも、体を寄せた鈴が、俺のシャツの中へと手を突っ込んで、胸元を撫でる。
「鈴っ?」
「あ、うん、前も思ったんだけど、浩二ってココすごく固くなるよね」  
 なんでもないことのように、指先で胸の突起を押しつぶす。
「んっ……ん」
「移動するって、どこなら大丈夫かな」  
 やばい、気持ちいいし。  
 例えば、会話中に軽い感じで手を撫でられたりするような感覚で、鈴はそこを撫で続ける。
「はぁ……っんっ」
「……浩二って、ここ触りながらだとうまくしゃべれないの?」  
 場所を示すみたく、軽く摘まれてしまう。
「んぅっ…!」  
 鈴の腕を取り、止めさせようとするが、俺の胸に興味があるのか、手を止めずに俺を覗き込んだ。
「こないだ、ここ弄ったときさ。浩二、ここより早く下触って欲しいって感じだったから、あんまり好きじゃないのかと思ったんだけど。ホントは、好きなの?」  
 こないだしたとき。  
 それはもう、すでに中を弄られた後だったから、うまく胸の愛撫に集中が出来なかったんだよ。  
 鈴って、考えて無さそうで結構俺のこと見てるよな。
 ぐにぐにと押さえつけられたり、指先で転がされ、落ち着いてきていた体がまた熱くなる。
「んっ…ぁっ…あ…っ」  
 気持ちいい。  
   
 脱いでないわけだし、胸くらいなら、ここでも大丈夫かも。  
 なんて考えが頭を過ぎる。
 
「浩二? 聞いてる?」  
 俺はとりあえず、頷いて示す。
「はぁっ…んっ!」  
 胸も弄って欲しいだなんて、言えないと思っていた。  
 それがいま、鈴の方からしてくれている。  
   
 これで止めたりしたら、本当に俺、胸触られるの嫌いだって勘違いされるんじゃ。  
 そう思い、止めかけていた鈴の腕を離した。
「鈴……っ」
「ん? なに?」
「……っ好き……っ」
「……俺のこと? それともココ?」
 鈴が好きだなんて、もう大前提の話だってのに。
「ぁっ……両方っ」
「あ、両方した方がいい?」
 ちょっと、通じてない。
 けれど、鈴は両手で片方ずつ俺の胸を撫でた。
「はぁっ…っあっ」  
 無い胸を少し強引にもまれ、硬くなってしまっている突起を転がされていく。
「すごい、ボーっとしちゃってるね。俺の言ってることわかる?」  
 わかるけれど、本当にボーっとする。  
 頷いて示すが、いっぱいいっぱいだ。
「あっ…っぁんっ…」
「浩二の喘ぎ声ってホントかわいい」  
 嬉しい反面、恥ずかしくてたまらない。  
 恥ずかしいことを言われている感覚に、また体が熱くなる。  
 
 両方とも先端を摘まれると、軽く体が跳ね上がった。
「ぁあっ……んっ!」
「掴まれるの、気持ちいいの?」
 我慢できずに、何度も頷いた。
「ぁっあっ…鈴っ……っ」
「うん。悦さそうな顔してる。もっと、強くても大丈夫?」
 悦さそうな顔とか、恥ずかしい。
 それでも、少し強めに摘んだ先端をぐにぐにと揉まれると、背筋がゾクゾクしてしまう。
「はぁんっ…ぁっあっ! だめっ」
「駄目なの?」
 反射的に駄目だと言ってしまったが、鈴はこういうとき、素直に手を止めてしまう場合がある。
 止めて欲しくない。
「っ気持ちぃい…っぁっ…いい……っ」
「いいの? コレ」
 頷いて、鈴の手を取り、少しねじらせた。
「んぅんんっ!!」
「ああ。ねじって欲しいんだ?」
 鈴は俺の望み通り、軽くねじったり引っ張ったりしてくれる。
「ぁあっ! やぁっ…んぅっ…」
「すごい声。人に聞かれちゃうよ」
「んんっ…」
 つい出てしまったというか、少し忘れてしまっていた。
 そうだ。
 外なのに。
 脱いでないとはいえ、この声はまずい。
 抑えなきゃ。
 何度も、鈴が胸を弄ってくれて、イきそうになる。
 俺だけこんな。
 けれど、我慢できそうにない。

 すでにしまっていた股間のモノを自分で取り出した。
 けど、このまま出したら鈴に掛かるから、俺は右手で軽くこすりながらも、左手で飛ばないようにガードする。

 声はなんとか自分で抑えないと。
「んっ! ぁっん、鈴っ…っぁっ…ぃくっ」
「あ。イきそうなの? ホント、かわいいね、浩二」
 胸を愛撫したまま、鈴は俺の頬にキスをした。
 俺なんかより、鈴の方が何倍もかわいいに決まってるのに。
「やぁっ…あっあっんっ……んーーっ!!」

 ああ。
 最悪だ。
 なにやってんだよ、俺。
 こんな、外で胸弄られて。

 だって、弄ってもらえてうれしくて。
 つい。
 ……こうやって、「つい」でいろいろしちゃいそうで危ないけれど。

 
 もう2度もイかせて貰った。
 けれど、回数の問題じゃない。
 そろそろ、鈴の、欲しいよな。
 俺だけ、2度もイってしまって申し訳ない気持ちもある。
 鈴もしたいだろうし。

「浩二、気持ちよかった?」
「うん……」
「足りた?」
「うん……」
 やっぱり、これだけしてもらって足りないだなんて、言いにくい。
「あのさ、鈴は……?」
「……うーん、外じゃ浩二、嫌なんでしょ? 金曜日まで待つよ」
 
 外を拒んでいるのは俺で。
 鈴はしたいんだよな。
 ……でも、金曜日まで待つって……。

 以前、初めてHをするまで、鈴とはずっと体抜きの関係を続けていた。
 だから、鈴が今、やらなくても構わないってのは、なんとなく理解出来る。
 なんていうか、平気なんだろうなって。
 
 俺たちは体のみで繋がっているわけではないし、無いなら無いで構わないと思っていたけれど、それはもう以前の話だ。
 俺は、欲しくなっちゃってる。
 というのも、元々、俺はHが好きだし。
 他の人と比べて鈴とのHがすごくイイってわかっちゃったし。
 好きで、繋がりたい気持ちが強いわけで。

 そういえば、俺は鈴としてない間、他にも結構、セフレみたいなやつがいて、欲求不満の解消が出来ていたけど、鈴は?
 高校生だし、やりたい盛りじゃないの?
 気を使って、俺のことは誘わないにしても、他で、誰かと……。

 そう思うと一気に不安が押し寄せる。
 いや、俺だってしてんじゃん。
 それに、わかってる。
 好きな人とするのと、他とするのとでは違うって。
 鈴もそれわかってくれてて、俺のこと許してくれてんじゃん。
 ……だからそれも、身をもってわかってるとか。

 俺以外としてるかどうかなんて、いままで考えたことなかったけど、ありうるよな。
 それを鈴が言わないでいることも、無いとは言えない。
 だって、俺は別に聞いてないし。
 普段、俺だって言わないし。


「暗くなっちゃったねー」
 なんでもない感じで鈴が言う。

「鈴って……溜まってないの?」
「……どうしたの、急に」
「だって。金曜日まで待てるんだよね?」
 
 なに言ってんの、俺。
 鈴よりいくつ上だよ。
 鈴のこと、縛りたくないし、困らせたくも無い。
 それなのに。  

 待ってくれてるのに、なに言ってんだよ。

「ごめん、鈴。なんでもないっ。聞かなかったことにして」
 慌てて付けえ加える。
「……どうしたの、浩二。なにか、嫌なことでもあったの?」
 鈴の優しい声。
 怒ってないのだとわかりほっとした。

「浩二?」

 俺がしたいと思うときに、鈴がそうでもないってことが、ものすごく辛い。
 気持ちが一方通行な気がしてしまう。

 でもそれって全部、俺のわがままじゃん。
 求められたい。
 でも外じゃ嫌。
 じゃあ、後日にしよう。
 それも嫌。

 ああもう最低だ、俺。
 いまから、俺の家連れてっちゃう?
 でもそれって、やるためだけに鈴を呼ぶみたいで……。
 利用してるわけじゃないんだけど。
 体目的って思われそう。
「気分悪い? あ、向こうに自販機あったから、なにか買ってこようか?」
 背を向ける鈴の服をつい反射的に掴んでしまう。
「っ……鈴」
「……どうしたの?」
 やっぱり、したい。
「……いい……から」
「いいって?」
「……外でも、いいから」
「……え……」
「……して……いいから」
 鈴が俺の元へと歩み寄るのにあわせて、服を離した。
 背中の木にもたれかかる俺を、鈴がじっと見上げてくれる。
 表情を見られている気がして、つい顔を逸らした。

「浩二……。無理しなくていいよ。さっき捕まっちゃうかもって浩二も言ってたじゃん。浩二が嫌ならしない。俺は、金曜日に浩二の家に行けるならそれで充分」
「鈴は?」
「だから、浩二が嫌ならしない」
 俺がじゃなくて。
 鈴自身のことが聞きたいのに。
 したいって思ってくれてる?
 俺が嫌ならしないって。
 俺がいいならするってこと?

「……したい……」
「……浩二、足りなかったの? ごめんね」
 鈴が謝ることじゃないのに。
 申し訳ないやら恥ずかしいやらで、泣きたくなってきた。

「じゃあ、もっかい、口でしようか」
「鈴……俺……っ」
 鈴から、求められたい。
 俺ん中入りたいって言って欲しい。
 けど、それはきっと無理な話だ。
 鈴は、俺に対してものすごく気を使ってくれている。
 だから、わがままとも受け取れるような言葉を、ぽんぽん言うようなやつじゃない。
 求めることとわがままって、境界線わかんないよ。

「……なに? 浩二」
「……したぃ」
「うん。わかった。口で……あ、さっきみたいに乳首の方がいい?」
「違っ……。H……したい」
 あまりにも恥ずかしくて、泣きそう。
 っつーか、泣きかけてる。声震えてるし。
 気持ち悪いってば、俺。

「……え……Hって。でも外じゃ嫌なんだよね? 無理して俺に合わせようとしてくれてる?」
 俺は首を横に振って違うと示した。
「うーん、移動するにも、ちょっと……寮じゃ難しいしなぁ。浩二ん家は今度行くし」
「もっ……いいからっ」
 どのみち、俺ももう昂ぶってきてて、いまさらどこかへ移動する余裕なんてなかった。

 鈴が他の人としているかもしれない。
 そう考えれば考えるほど、苦しくて、いますぐ欲しくてたまらない。
 縛りたくはないけれど、鈴は俺のだから。

「……欲しい」
 そこまで言うと、鈴がズボンの上から俺の股間を確かめるようそっと触れる。
「んぅっ!!」
「ホントに、いいの?」
 頷くと、鈴は俺のベルトを外してくれる。
 ジッパーを下ろされ、ズボンが膝下辺りまで下りてしまうと、足が外気に晒されやっぱり恥ずかしくて、一瞬、やめたほうがよかったんじゃないかという考えが過ぎった。
「浩二、さっき自分で取り出してこすってたよね。すごく可愛かった」
 その場所を示すみたいに、下着の上から鈴が俺のを掴みあげる。
 体が少しビクついて、鈴を見ると、思いっきり目が合った。

「いい? 下ろしちゃって」
 さすがに、下ろさずにHするのは無理だ。
 頷くと、下着をズボン同様、膝下あたりまで下ろされてしまう。

 外でこんな風にされるのは初めてだ。
 あ、屋上とかでならあったかもしれないけれど、こういう公共の場でってのは。

「すごいね、浩二。2度もイったのにまたこんなにおっきくして……。ね、後ろ向いて? 舐めて濡らしておこう?」
 舐めてって。
 あ……あそこだよな。
「っ…いいよ、鈴。そんなことしなくても、少し、濡れた指で慣らしてくれたら入るしっ」
「俺が、舐めたい」
 なんか、求められているような気がして、体が一層熱くなる。
 鈴がしたいって言うのを拒めるはずがない。

 俺は鈴に背を向け、腰だけを突き出すような形で、前の木に手をついた。
「……鈴……無理、しなくていいから。きれいじゃないしっ」
「平気」
 どうして平気なんだろう。
 慣れてるのかな。
 なんて不安なことをいろいろと考えてしまいそうになった。
 鈴の舌が、入口付近を這う感触に体が跳ね上がる。
「あっ! んっ」  

 ぴちゃぴちゃと音を立てながら、丁寧に舐めあげられ、少しずつ唾液を塗りこまれるような感触。
 それに合わせるみたくゆらゆらと腰が揺れてしまうのが自分でもわかった。
「んっ…ぅんっ! はぁっ…ぁっ…ぁあっ」
 気持ちいい。
 ずっと、舐めてて欲しいくらいで、頭がぼーっとしてしまう。
「はぁっっ…ぁあっ…んぅっ…んぅうっ」
「ん、浩二。中、入れるよ」
 中?
 ボーっとした頭で、言葉の意味を理解しようとする。
「ひぁ!? あっ!」
 ぬるって。
 鈴の舌?
 俺が言葉の意味を理解する前に、ゆっくりと入り込んできた。
「ぁっっ…中ぁっ……やあっ…」
 舌なんてそんなに長くはない。
 けれど、指で言うところの第二間接くらいまでは入るんじゃないか。
 なんて考えてる場合じゃない。
 入り込んだ舌が、中の比較的浅い部分を嘗め回す。
「くぅっ…ぁあっ! …だめっ……」
「はぁ……いや?」
 そっと口を離してそう言うと、今度は代わりに濡らした指先を挿入されてしまう。
「ぁあっ…んっ…あっ…鈴っ…あんっ…やぁ…っ」
「これもいや?」
 少し、動かされてるだけなのに。
「ぃくっ…いっちゃうっ…あぁんぅっ…ぃいっ」
「イイんだ? イってもいいよ?」
「やぁっっイきたくなっ……っ」
「イってもいいのに。もっと味わいたいってこと?」
 俺の横へと体を移動させた鈴に頭を撫でられながらも、コクコクと頷いた。

「じゃあ、指増やすね」
 2本……3本。
 言葉通り、指を増やされていく。
「すごい、3本奥まで入っちゃった」
 抜き差しするように中で指を動かされ、膝がガクガクと震えてくる。
 
「あぁっんっ! やぁっっ…もっとっ……ぐちゃぐちゃってしてっ」
「……こう?」
 奥の少し手前あたりで、3本入り込んだ指を掻き回すみたく動かされると、絡まっていた唾液と腸液のせいでか、クチュクチュと濡れた音が響く。
 いやらしい音に比例して、気持ちよくてたまらない。
「はぁっ…あぁんっ…いいよぉっ。もっとぉっ」
「浩二……少し、声、抑えないと、ちょっと危なくない?」
 声なんて、もう考えてられなくなっていた。

 そうだ。
 ここ、外なのに。
 学校で、生徒に見られちゃったってレベルの問題とはわけが違う。
 それでも頭がうまく働かない。
 俺の声、どれくらい先まで聞こえてしまっているのだろう。
 恥ずかしい。

「ぁあっ……んぅっ…やぁっ」
「声、殺せなそうなら、もうちょっと緩めようか」
 鈴の指の動きが鈍くなる。
 入り込んだだけの指。
 少しだけ、緩やかに動くだけ。
「これくらいでも、浩二ならイけそうだよね」
 イこうと思えばイける……と思う。
 けれど、緩い刺激でなんとなくイくんじゃなく、ココってとこでイきたいし。
 さっきまで散々、激しい愛撫をされていたわけだよ。
 いまさら……こんなことなら、さっき吐き出しておけばよかったって気にすらなってくるし。

 焦らされているような感覚。
 辛くてたまらない。
 うまく物事が考えられなくなってくる。
「あ…んっ…やぁっ…声、がまんするっ…あっ…する…からぁっ」
「ん……どういう意味?」
「して…もっとっ…あっ…さっきみたいにっ…」
「浩二って、声出したがりだよね。我慢出来るの?」
「するっっ……あっっぉねがっ……もっとっ…」
 鈴はわかってくれたのか、また強めに中をかき回してくれる。
「ぁっ! んぅんっ…んんっ!!」
 気持ちいい。
 鈴の指が俺ン中、ぐちゃぐちゃってしてくれて。
 頭を優しく撫でてくれて。
 好きで好きでたまらない。
 気持ちいいって、好きだって。
 何度も口に出して鈴に伝えたいけれど、ぐっと我慢した。
「んぅっ! ぁっんーっ…はぁっんっ!」
「いいよ、イって」
 鈴のを入れてからって思っていたけれど、それどころじゃなかった。
「ひぁっん、あっ…んぅっんっ!! んんぅんんっ!!!」

 イってしまったのがわかってか、鈴はゆっくりと指を引き抜いてくれる。
「浩二、大丈夫?」
「……ん……」
「ごめんね。外でしたいだなんてわがまま言っちゃって」
 いや、最終的には俺がしたがっちゃったんだけど。
「鈴は悪くないよ」
「ありがとう。でもわかったから。浩二と外でするのは無理そうだね」
 え……。
 というか、俺とするのは無理そうだって。
 どういうこと?
 Hするのが無理ってわけでなく、俺とするのが?
 他の人となら可能ってこと?
 ……駄目だ俺。
 今、すっごいマイナス思考になってる。

「……どうしてか、聞いていい?」
 やっぱり、気になってしまう。
「どうしてって。無理じゃないの?」
「あ……いや、難しいとは思うんだけど」
「浩二、声、我慢するの辛いでしょ」
「うん……」
「だから、無理して我慢して外でするのもなって」
 つまり、俺のこと考えてくれてってこと?
 気になることはいろいろあるけれど、それでもやっぱり嬉しくて、ぎゅっと鈴の体を抱きしめた。

「鈴……声、あんま出さない奴が相手だったらよかったとか思ってる?」
 こんなネガティブな発言、最低だ。
 そう思うのに、鈴は優しく俺の事を抱き返してくれる。
「思ってないよ。俺、浩二の声、好きだし。だからどうせなら、聞きたいって思ったし」  

 鈴がかわいくて愛おしくて、ずっと抱きしめていたいくらいだった。
「浩二……気持ちよかった?」
「うん」
「……もう遅くなっちゃったし、続きは今度でも大丈夫?」
「鈴は? いいの?」
「いいよ。待ってるから」
 求めてくれないってわけじゃない。
 ただ本当に、俺のことを思って待っててくれるだけなんだ。
 ……そう思うことにしよう。

 けれど結局おあずけか。
 まあ、鈴の指もすっごい気持ちよかったし、こうやって抱きしめてくれるわけだし。
 元々は今日、会う予定もなかったわけだし、もう数日くらいなら。

 ……なんとか、我慢出来るかな。