「でね。みんな信じてくれないんだよ」
 彼女である鈴が、かわいい顔で俺を見上げて。
 どうやら、俺らが付き合ってるってことを、友達が信じてくれないらしい。
「別に、バラしちゃいけないとかそういうわけじゃないけど、あまり言うなよ」
「うん……」
「やっぱな。俺ら、教師と生徒だからな?」
「でもさぁ」
「わかった。そいつには今度俺から言ってやるから」
 鈴は、少し考え込んでから。
 にっこり笑って
「わかった」
 そう頷く。
 そんな笑顔がかわいくてたまらなかった。





「ぁっ…ん…あっ! ぁああっ」
「へぇえ。こういうの好きなんだ?」
 俺の部屋。
 俺と同じ1年担当の教師、樋口智巳だ。

 なんかいかにも俺の方が下に見られてる感じ。
 ちょっと気に食わないから−4点。
 ソコを狙って突き上げられて。
 だめだもう、気が狂いそう。
「あっ…はぁっくんっ…ぅンっ…ぁあっ」
「桐生とはどうだった…?」
 答える余裕ないってば。
 聞くなよ。
「ぁあっ…やんっ…あっあぁあああっっ」





「智巳ちゃんは何点だったわけ?」
 職員室でそう俺に聞いてくるのは、4年生の数学担当、桐生だ。
「…職員室でそういうこと聞くなよ」
「いいじゃん。俺らしかわかんないだろうし」
「……90点」
「お。意外に低いね。俺の方が優等生じゃん」
 そう。
 俺が桐生につけた点数は96点だから。
「まぁいろいろと。テクニックはイイんだけど」
「だよねえ。智巳ちゃん、うまいから」

 それを聞いていてなのか、少し不機嫌そうな樋口智巳が、隣でため息をつく。
「恋人同士じゃあるまいし? そう雰囲気とか求められてもな」

 ま、そうなんだけど。
「ってか、彼女いたよな」
「……いるけど」
「3年の鈴だろ? その子とは、どうなのさ」
 どうって言われてもなぁ。
「まだ、やってない」
 そう俺が言うと、2人の動きが停止状態。

「やってない……って?」
「悪いかよ」
「いや、悪くないけど。だって、こんなにもエロいこと好きなのにさぁっ」
「……でかい声で変なこと言うなよ」
 確かに、好きと言えば好きだけど。
「まぁ、向こうが俺に気を使ってんだと思うけど」
「先生相手に攻めるのって、やっぱ抵抗あるしなー」
「ってか、やっぱ、渡部先生が女なんだ?」
 そこなんだよな……。
「……攻めんのめんどいし」
「でも彼女も、どっちかっつーと、女役じゃねぇの?」
「いや、鈴は攻めだろ」
「うーん、微妙なとこだなー」
「……お前ら2人、よく職員室でそういう話出来るよな」
 
 でもまぁ、2人の言うことは俺も思ってたことで。
 なかなか進まねぇんだよな。

 今日くらい、カタつけっか…。





「渡部先生、補充って……」
 補充なぁんて嘘をついて、一人教室へと彼女である風見鈴を呼び寄せる。
 少し、怒ってるっぽいんですけど…。
「……怒ってる?」
「少し」
 なんで……だ?
「理由、わかるでしょ?」
 そんなこと言われてもな。
「なにか…教えてくれる?」
 とりあえず、そう聞くと。
「俺、浩二としたことないのに…。隣のクラスのやつがやったって」
 呼び方が渡部先生から浩二に変わる。
 2人のときはいつもそうだった。

 隣のクラス……。
「いつものことだろ?」
 俺が、別のやつとやるのは。
「そうだけどさあ。やっぱり、少しは嫉妬するもん」
 かわいすぎ。
「……あのさ。ぶっちゃけたところ鈴、どっちがいい?」
「どっちって……」
「だから俺ら付き合ってんじゃん。お前がこれから先、肉体関係なしでいいっつーんなら、別にいいんだけど」
 なんか、俺がやりたがってるみたいで、ちょっと変に恥ずかしいじゃんかよ。
「っよくないっ……けど。そりゃ…浩二のこと好きだから、やりたいなって思うし」
「どっち?」
「……男か女かってこと?」
 俺はそっと、うなづく。
 なんか、初々しいカップルみたいになってんな、俺。
「俺は……浩二とならどっちでも」
 俺もまあどっちでもいいんだよなぁ。
「ホントに……?」
「どちらかといえば、そりゃ……男の方が……」
 ま、それが普通の男の考え方だよな。
 俺みたいにやられ慣れてる男でもないかぎり。

「じゃ、お前男でいいよ」
 にっこり笑ってそう返すと、驚きの表情。
「でもっ、いいのっ?」
「なんで? 別にいいけど」
「だって。俺、隣のクラスのやつみたいに、男らしくもないよ?」
 そういうの、気にするんだ?
「別に、かまわないって」
 鈴が俺を見上げるから、自然と口が重なる。
「んっ…」
 やばいな、俺。
 口を重ねたままの状態で、鈴が俺の股間をなでて来る。
「っんぅ…んっ」
「浩二……いい?」
 口を離してそう聞かれるが、駄目なんて言えるわけないだろ?  

 でも、さすがに教室ではやばいなとか思うわけで。
 俺、そういうつもりじゃなくって、ただ、こういった会話をしようとか思って教室呼び出しただけで……。
 今、ここでやるのは……。
 そう俺が思考してる隙にも、ズボンのチャックを下ろして、直に取り出して擦りあげてしまう。
「っくっ…んっ…ぅんんっ」
 やばい…。
 こういうとき、声出すようにもう癖ついてて。
 でもやっぱり、こう生徒の前だから、殺そうかとか思ったりで…。
「っ鈴…っ…ちょっ…」
 さすがに、ここでやるのは、まずいだろ?
 俺はそこら辺のやつらと違って、こう誰かに見られそうな場所とかでやるの苦手なんだよ。
 なんて、わざわざ説明する余裕なんてない。
「はぁっ…あっ…鈴っ…」
「…浩二って、かわいい声、出すんだね…」
 めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど……。
 結構、容赦なく、ズボンと下着を下ろされる。
 相手が、一応、好きな彼女だけに、抵抗し辛い。
 黒板を背もたれにする俺の前。
 鈴がしゃがみこんで、俺のモノを舌で舐め上げてくるもんだから、体が思いっきりビクついてしまう。
「ぁあっ…くぅンっ…んっ…はぁっあっ…」
「…気持ちイイ…?」
 心配そうな顔でそう聞いてくれるけど、俺はもう自分の顔見られるのが恥ずかしくて、
顔をそらしがち。
 一応、頷いて、気持ちいいんだと示す。
 鈴は、安心したのか、手と口を離すと自分の指を舐め上げる。
「…鈴…っ?」
 最後まで、ここでやるのはさすがに…。
 人とかまだ、通るかもしれないし?  

 鈴は俺を見上げて
「いい…?」
 そんな上目遣いすんなって…。
 めちゃくちゃかわいくて、断れない。
 場所変えようとか、言った方がいいだろうか。
 なんて考えてると、指先が奥へと探りをかける。
「っんっ!」
「ここ…ちょっとひくついてるね…」
 別に俺の羞恥心をあおろうとか思ってるわけじゃないんだろう。
 だけれど、俺は恥ずかしくてたまらない。
 ゆっくり入り口を撫でられるだけで、体がビクついてしまいそうで。
「ぁっ…鈴…っ…っんっ」
 こんな場所だし。
 廊下から丸見えじゃんかよ。  

 そんな心配なんて、してる間にも、鈴の指が少しためらうようにして、ゆっくりと俺の
中に入り込んできて。
「ぁあっ…んっ…んぅっ」
 涙があふれてきた。
 やばい。
 すっげえ恥ずかしい。
 こういうことし慣れてるけど、こんな教室では、したことないし。
「誰かに、見られちゃうかなぁ…」
 俺が思ってたことを、代弁するように鈴が洩らして。
 それでも、指が中をそっと掻き回す。
「あっ…あ…っんっ…ゃっ…」
「すごい…かわいいね…」
 俺の首筋に舌を這わして、2本に増やした指が、抜き差しされてしまう。
「ぁあっ…んぅっやっ…はぁっあっっ…待っ」
「待つ…? どうして…?」
 やばい、俺。
 なに高校生相手にめちゃくちゃ感じまくってんだよ。
 だって彼女だし。
 こんな場所でしたことない。
 場所も場所だし、声殺すべきなのに、いつもと違うせいか、いつも以上に声、出ちまってるかもしんない。
「はぁンっ…やっあんっ…やめっ…あっ鈴…もぉっっやめっ」  
 ガキじゃあるまいし。
 なんだよ、処女じゃねぇんだから。
「……じゃあ、やめる…」
 少し残念そうに、鈴がそう言って、指の動きを止める。
「っ…んっ…」
 違うんだってば、もう。
 わけわかんねぇ。
「鈴…っ…。嫌がってるわけじゃなくって…めちゃくちゃ気持ちいいし…だから、その……さすがに、場所とか…」
「…じゃあ、ドア閉める?」
「…………あぁ…」
 こいつって、ちょっと天然だよな…。
 そこがまたかわいいんだけど。
 わざとじゃなくって、マジで言ってんだろうな…。

 鈴が俺から離れてドアを閉め、戻ってくる。
 俺をジっと見て、シャツの中に入れた手で胸元を探る。
「んっ…くンっ…」
 さっき中をかき回されたせいで、もうそんな愛撫じゃ、じれったくて体を捩る。
「んぅっ…鈴…っ…あっ」
「なに?」
 さすがにさぁ……。
 高校生相手に、入れてとか言うのは、ちょっと恥ずかしいんですけど…。
「ん…なんでもな…」
「ホントは嫌なんだ?」
 心配そうに俺に聞く。
「違うって……」
「じゃあ、浩二が、男役、やりたいんだ?」
「……違うよ」
「でもっ…」
 じれったい。
「もぉっ……いいから……」
 なに俺。
 馬鹿すぎ。
 性欲に体が負けちまってる。
 理性とかふっとびそう。
 我慢しないとって思うけど。
 無理だろ……?
「っ鈴……っもぉっ」
「なに?」
「ぁっ……入れ……」
「……いいの?」
 鈴は探るように、また2本、指を中に入れていく。
「んぅんっ…あっ…はぁっ」
「つらくない?」
「ぃい…からっあっ…ぁんっ…はやくっ…」
 
 鈴は指を抜いて、俺の体を反転させる。
 後ろから俺の髪を撫でて。
「…入れるよ…?」
 そう確認して、ゆっくり俺の中へと、自分のモノを押し込んでくる。
「ぁああっ…鈴っあっ…鈴…っ」
 場所のせいだけじゃなくて。
 俺が、鈴を好きだからか。
 そっと、前後に腰を動かされるだけで、うまく物事を考えられないほどに感じまくってる。
「くっ…ぅんっあっ…あぁあっ…あぁんぅっ」
 涙と声が出まくってる。
 だめだって、わかってるのに。
 こんな場所で。
 いかがわしい。
 だけど、止められない。
「鈴…っぁんぅっもっとっあっ…あぁあっ」
「う…ん」
 よがりまくりじゃんか。
 
 そのときだった。
 ホント不意打ちで、教室の扉が開く。
「っ!」
「浩ちゃんに鈴じゃん」
 つい、条件反射で、そっちを見てしまう。
 桐生だ。
 嘘だろ?
 俺が、鈴を呼び出すだろうって、予測してたのか。
 で、わざと覗きに来たって……?

 鈴も俺も、一時停止状態。


「ちょうどいいから、見ててもらおっか」
 沈黙を破ったのは鈴だった。
「なっ……」
 そんなこと。
 ありえないだろ……?
「おー。見ててあげるよ」
「そしたら、桐生先生が、俺らが付き合ってるって証人になってくれるよ」
 いや、俺、お前以外ともしちゃってるから、証明にはならないと思うんだけど。
 とかいちいち言う余裕はない。
 桐生を留まらせると、また俺の中を出入りする。
「ぁあっやめっ……んぅっ、鈴っ!!」
 俺は、顔を見られないように下げる。
 涙が落ちるが、もう精神的なのか生理的なのかわけわかんねぇ。
「んぅっ…んっあっ…見な…っあっ」
 こんな。
 羞恥心にかられて、精神がいっぱいいっぱいで。
「浩ちゃーん……。廊下まで声、丸聞こえ」
 耳元でそっと、そう桐生が言うもんだから、やっと桐生がそばににいることに気がついた。
「なっ…あっ」
 丸聞こえ?
 そりゃそうだろう?
 俺、もうだめだ。
 そういったことに気がまったくまわらなかった。
 どうすればいい……?
「鈴―。俺もお手伝いしていい?」
 まるで、おねだりでもするみたいに、子供っぽく鈴に言う。
「お手伝い?」
「そぉ。浩ちゃんを、気持ちよくするお手伝いだからね」
 馬鹿なこと、言ってんじゃねぇよ。
 でも、鈴は、浩二が気持ちいいんなら…とでも思ったのか、了解するのが窺えた。

 桐生が、俺と黒板の間に体を滑り込ませるようにして、その場にしゃがみ込む。
 下を向いている俺の視界に、見上げて企むように笑う桐生の表情。
 溢れる涙でぼやけていた。
「っあっ…ふざけ…っ」
「浩ちゃんって真面目だからぁ、教室でやるのも、2人同時に相手にするのも初めてでしょ」
 そう言って、俺の股間のモノを掴んで舌を這わす。
「あっ…やぅっ…あぁあっ…んっばかぁっあっ…あぁんっ」
「浩ちゃん喘ぎまくりだねぇ」
 舌で丹念に俺のを舐めながらも、羞恥心を煽る言葉を投げかける。
 後ろからは鈴が、何度も出入りを繰り返して、体がガクガクした。

「ぁんっあっ…やめっあっ…もぉっ鈴っあっ…だ…めっあっ…あっ」
「イきそう…?」
 わざわざ聞かれて、羞恥心が高まる。
 顔も上げられず、何度も頷く。
「ひぁっあっ…ぁんっ…ぁああっやぁあっ」
「浩二…中、出すよ…」
「あっ…やっ…っあっ…ぁあんっあっあぁああっ」



 最低だ。
 桐生が、俺のを飲み下す。
 膝が折れた俺の体を抱くようにして支えてくれていた。
 
 生徒にイかされて。
 しかも、涙流してあえぎまくって。

 やり終わったあとも、どうすればいいのかわからず、脱力状態の俺をただ、桐生が抱い
ていた。
 意識が朦朧とする中、鈴が桐生となにか話してるのがわかった。

「だれもね、俺の恋人は浩二だって言っても信じてくれないんだよ」
「俺は信じるよ? 大丈夫」
「ほんとぉ? いっそみんなの前でやっちゃった方がいいのかなぁ」
 んなわけないだろ…。
「そうだね。みんな見てくれるもんねー」
 お前らは馬鹿か…。
 気が遠くなりかける。

 最低。
 場所選びが最悪だし。
 無駄に焦らすし、気づかないし、悪気ないし。
 おまけに、こんな場所でやっといて、さらに中出しとか。
 傍観者に手伝わせるのとか。

 マイナス点が多すぎて、点数つけらんねぇくらいなんだけど。

「浩二―…。気持ちよかった?」
 心配そうに、桐生に抱かれたままの俺の顔をしゃがみながら覗き込んでそう聞く姿見る
とな…。
「…ん…」
 そっと頷く俺に、
「よかった」
 って。
 こんな満面の笑み浮かべられたら、全部プラスに代わってしまいそう。

 不器用な愛撫とか、慣れない手つきとか。
 場所に気を使えないけれど、俺のことはちゃんと考えてくれてて。
 
 そういうのって、ものすごく愛らしくてかわいくてたまらなくて。

「鈴……。よかったよ……」
 そう言って、俺らは自然と口を重ねた。



「いやぁ、よかったねー」
 っと。
 いまだ俺を抱いたままの桐生。
「……お前、マジで邪魔だわ…」
 にらみを聞かしても、俺の弱みでも握ったかのように、得意げだし。

「桐生先生、手伝ってくれてありがとう」
「どういたしまして♪」
 なんでこいつら。
 というか、鈴。
 天然もいいとこだ。
 いつか誰かにだまされそうで、こっちがはらはらするし。

「で。鈴は何点なわけ?」
 楽しそうに俺の耳元で桐生がそっと聞く。
「…100点に決まってんだろーが」
「あっそ。やだねぇ、まったく」

 桐生は、愉しそうに笑って教室を後にした。

 鈴が座り込んでる俺よりさらに低い位置から俺の顔を覗き込む。
「なに…」
「あのね…俺、浩二のこと、好きだよ」
 いまさらなにを…。
 恥じらいながら言うのとか、めちゃくちゃかわいい。

 俺のうれしいと思うことを、わかってくれてるみたいでたまらない。
 たまに天然でわけわかんねぇけど。
 俺にとってこいつは、最高の優等生だ。