「あのね。自分から動くと積極的でかわいいねって言ってくれるよ」
別に、俺はかわいいなんて思われなくない……と思う。
「協力的でいいよな。2人でしてるんだ〜って実感できる感じ?」
そんなこと、本当にやってる最中に考えてるのか? こいつは。
「あとね、して欲しいことはちゃんと言わないと駄目だよ。イかせて欲しいときはちゃんと……ね」
「自分だけ、イけりゃいいとか、考えてちゃ駄目だからな。ちゃんと柊先生のことも考えろよ、かおるちゃん」
「っ宮本だよっ。もう、数学始めるからっ」

はぁ……。
4月から、この学校で教師をさせてもらってる俺は、あろうことか、つい最近、保健の先生に、やられてしまった。
しかも、わりとそれが合意のセックスみたいになってしまっていたし……。
その噂が……って、事実なんだけど。
生徒の耳にも入っているようだ。
というか、むしろ、生徒だけであると思うけど。
その、相手の保健の先生……柊先生が、生徒と仲いい人だから。
そんでもって、そのとき、俺は自分がかおるちゃんと裏で呼ばれていることを知った。
 なんでも、俺の名前、芳春の芳の字が、かおるって読めるかららしい。
 一体、誰がつけたんだか。
 普段はみんな、俺のことを宮本先生とか言ってくれるんだけど、 からかわれて、かおるちゃんって言われたりするんだよ……。

 特に、このクラスでは、前からからかわれてたし……。
 そう。
 さっきから変なアドバイスをくれる奴のうちの1人は、なんとやってる最中に同じ保健室に居合わせて……。
 あぁあ、思い出しただけでも恥かしさで顔が熱くなりそう。
 というか、頭が重くなるよ……。
 だから、このクラスで噂が広まっているのは、しょうがないのかもしれないけれど……。
 ほかのクラスはどうなんだろ。

 次の、授業も苦手なクラス。
 ここでも、俺はちょっとばかりからかわれている。
 このクラスは、俺がその柊先生とやっちゃった日から、今まで授業がなかったから、俺への対応がかなり気になるところだった。
 少しだけ、早めに教室についてしまった俺は、休み中で騒いでる中、教室に入ることも出来ず、廊下でボーっと外を眺めていた。
「……せんせ。やる時はやっぱ、芳春……とか、呼ばれてるんですか?」
「それともかおる?」
 いつの間に詰め寄ったのかっ。
 俺の左右後方に、生徒がいて、肩に手を乗せながら耳元でそう囁くように声をかける。
「なっ……ぁ…」
「開通……しちゃったんだって?」
「処女だったんでしょ?」
「だったら、はじめは正常位?」
「意外と、しょっぱなから上に乗ってたりして」
「趣味は乗馬ですってか?」
 囁いてたかと思いきや、堪えきれなくなったのか、だんだんと声のトーンを上げて、テンション高く、笑いそうになりながら2人言い合う。
「竜巻起こしちゃったり?」
「トルネード?」
 え、なにそれ。
 そこまで言うと、とうとう大きく笑いだして、2人は教室の中へと行ってしまった。
 ……なんなんだ、こいつらは。
 いや、俺の受け持ちの生徒だけど。
 やっぱ、ほかのクラスにも噂、きてんだなぁ。
 うちのクラスはわりと静かなのに……。
 休みたい。
 かと言って、休んだら、保健室でまた……とか言われそう。

 しょうがなく、俺は授業を続けて、やっと……夕方。
 精神的に疲れながらも、今日1日の仕事を終えていた。
 やっと帰れる……
 職員室で、帰り仕度をしていたときだった。
「宮本先生。3年3組のアンケート……」
 その声に振り向くと、柊先生。
「……アンケート」
 アンケートっ!?
 あぁあ、しまった。
 確かに、今日の朝、保健関係のアンケート用紙をもらって、ちゃんと配ったけど、回収し忘れたっ。
 馬鹿馬鹿……。
「……えと……明日でもいいでしょうか」
「駄目って言ったらどうしますか?」
 駄目って言われたら……?
 寮を回る?
 ああ、でも、自宅からきてる奴もいたっけ。
 もしかしたら、学校にプリント置いてってる奴もいるだろうし。
「……冗談ですよ。明日、下さいね」
「はぁ……。すみません」
「それと……返事、もらってないんですけど」
 にっこり笑ってそう言われる。
「……返事……」
「ちょっと、ここじゃなんなんで」
 手をひかれて、職員室をあとにする。
 一応、帰る準備が出来てた俺は、カバンも持って出てきていた。
「あの……柊先生? 返事って……」
「忘れた? 付き合わないかって、誘ったじゃないですか」
 付き合わないか……? それのことかっ。
「いや……その、だから男とはって答えたと……思うんですが……」
「あんなに積極的だったじゃないですか」
「……あれのせいで、今日、何度も生徒にからかわれたんですよ。もう気分は授業どころじゃなかったんですっ」
 少し、怒り口調になるものの、それでも、先輩にあたる柊先生には、あまりはむかえなかった。
「生徒がどうとかじゃなくて……宮本先生の気持ちはどうなんですか。周りに影響されて自分の気持ちを押し殺しちゃもったいないですよ」
 自分の気持ち……?
 生徒にはからかわれたくない……。
 けど、柊先生のことは……
 好き……?
 まさかまさか。
 男だぞ。
「男だからとか、気にしてます?」
 うわぁ、読み取られた。
「……だって……」
「気持ちよければよくないですか?」
 そんなもん?
 違うだろー。
「薬が……入ってたからですよ。そうじゃなきゃ、男相手に、気持ちいいなんて感じないですよ……」
「じゃ、試していいですか?」
「え……いや……」
 駄目です…って、先輩には言えないんだよ。
 廊下だというのに、柊先生はいきなり俺の肩を掴んで壁に押し付けると、ズボンの上からそっと、俺のモノを擦り上げる。
「な…ぁ……ちょっと……」
「薬なしで、気持ちよかったら付き合ってくれますか……?」
 だから……
 気持ちよければいいってもんじゃないだろって。
「好きじゃないなら、男相手にそうそう気持ちよくもないですよ」
 つまり……なに。
 やられて気持ちいいって感じるのは、柊先生を好きって想いがあるからって事?
 ズボンのチャックを外されて、直に擦り上げられて……。
 気持ちよくないはずがないじゃないか。
 そりゃ、ものすごく恐い人とかにでもされない限り……。
「っ…ン…っ…やめ……っぁ…」
 こんな……廊下で……。
 駄目だって。
「ちょ…柊先生……っ…誰かに…」
「見られないとこ行きます……?」
 ああ、わかってくださりありがとう……。
 とか、変にありがたがってる場合じゃないよな。
「保健室、行きませんか?」
「え……」
 いやです。
 ……なんて言えないだろ。
「俺、明日も仕事なんで……」
「ん……知ってますよ」
 だよなぁ……。
 困った。
「いいですよ」
 いいですよ?
 軽くポンっと肩を叩いて、そのまま、柊先生は俺にキスをする。
「…ん……」
 なになに…??
「じゃ、明日も仕事、がんばってください」
 そう言って、柊先生は、自分1人で保健室の方に行ってしまった。
 なに……。
 あっけない。
 結局、中途半端に触られた欲望が苦しくて、俺は自分の家に着くなりすぐ一人でふけってしまっていた。
 はあ。馬鹿だな。

「えっと……昨日くばったアンケート、回収」
 次の日。
 忘れないように朝、さっそく回収。
 それと同時に思い出すのが柊先生の昨日の行為で。
 連想するのが、以前、犯されちゃったこと……。
 ちょっと憂鬱。
 今日、これ届けるんだよなぁ……。
「あのさ、涼。これ、今日、保健室持ってってくれる?」
 保健委員の織部涼に頼むことにした。
 ずるい奴だな、俺って。
「いいですけど……なんでコソコソ言うんですか?」
「あ……」
 つい……。
 そうだよ。別に、保健委員が保健のアンケート持ってくのって結構当たり前の事だしっ。
 コソコソ頼んだら余計怪しいよな。
「別に、なんでもないって。頼むね。今日の帰りまでには……」
「はい」
 うん。
 やっぱ、うちの生徒はいい子だよ。
 からかわないしさ。

 それでも、帰り。
 やっぱ、ホントにアンケート出してくれたか気になるんだよな。
 いや、涼を信じてないわけじゃないんだけど。
 俺、1日、出すの遅れてるし……。
 そっと、保健室のドアを見ると、『外出中』の文字が……。
 こっそり、アンケート用紙が出してあるか見ちゃえばいいよね。
 いや、別にこっそりする必要ないか。
 それでも、なんとなくこっそりと、俺は保健室の中に入り込んだ。

 誰も……いないよね。
 一応、ベットの方まで調べてみる。
 うわぁ……なにしてんだろ、俺。
 まぁいいや。
「アンケート、アンケート〜……」
 探していると、ガチャっとドアの開く音。
 俺は、あわててベットの方に逃げ隠れる。
 別に、なにか悪いことしているわけじゃないんだから隠れなくてもよかったんだけど……っ。
「涼くん、ありがとね。……宮本先生も保健委員に頼むとはね」
 やっぱり、俺が来るって思ってたのかな。
 昨日はそのつもりで、何事もなく解放してくれたのかもしれない。
「あのー……柊先生って、宮本先生と付き合ってるって噂があるんですけど……」
 やったけど、付き合ってないってば。
 俺の前では言わないけど、やっぱ、うちのクラスの生徒もそーゆうこと気にしてんのか。
「んー。付き合ってないよ」
 ここで、柊先生が、付き合ってる……とか言ったらどうしようかと思ったよ。
「俺のね、片思い」
 そう言われて、なぜかドキっとする。
 だって、付き合ってとか……そんなのちょっとした社交辞令っていうか……
 いや、社交辞令でそんなこと言わないけど、好きじゃなくても言えるじゃないか。
 ……言えないか? わからなくなってきた。
というか片思いって……?
「片思い……?」
「そ……。でもほら、俺って、手が早いじゃん?」
 自分でわかってるなら、自制しろよ……
 なぁんて、先輩には言えないけれど……。
「好きとか……そーゆうの信じてもらえないかなぁって」
「うん……」
「うん? はっきり言うね。でもさ……。人それぞれいろんな愛情表現があると思わない?」
 軽く笑いながら、そう言った。
「俺は……テクニックで愛情を伝えようかとね」
「はぁ……。テクニック」
 あいかわらず恥かしいことを口走る先生だ。
 というか……
 つまりなに……?
 俺はさ……この先また、テクニックを駆使されてアタックされるわけ……?
 間違ってるよ、この人……。

 涼が出て行くのが音でわかり、俺もそっとベットから抜けて外へ行こうとするけど、 どうしても見つからずに抜けるのは無理だろう。
 柊先生ってば、なんか、こっちに近づいてくるし……。

「あれ……?」
そう後ろから声がかかって、俺は瞬時にベットに乗りあがり横向きで寝たフリをした。
 あぁ……なんか、あきらかにベットに昇るの見られてた気がするけど……。
「宮本先生……? 今の、聞いてました?」
 あくまで狸寝入りを決め込む俺に対してか、軽く笑うと、そっと、後ろから股間あたりに手を触れる。
「…っっ…」
 体がビクンと跳ねてしまう。
 なに考えてんだよ、この先生は。
「宮本先生……。起きてるんでしょ。起きないとこのまま犯しますよ……?」
 あぁあ、せめて『襲っちゃうよ』とか、かわいらしいことを言えないのだろうか。
 犯すだなんて……。
 俺は、しょうがなく柊先生の方を向いた。
「起きても、犯しますけど」
「え……なに」
 柊先生が、ベットの上に乗りあがって、俺の両腕を押さえながら口を重ねる。
「ンっ……んっ」
 舌が絡めとられると、もう頭がボーっとしてきちゃって……。
 柊先生が、俺の足の間に体を押し入れるもんだから、嫌でも足を開かされていた。
 口が離されても、もうなんだかボーっとしたまま……。
「ぁ……」
「気持ちよかった……?」
 ばかな。
 たかがキスっ。でもこないだはされなかったし、昨日は軽くだったもんな。……たしかに気持ちいいんだけど。
「も……やめて下さいっ。こーゆう悪ふざけは……」
「ふざけてないですよ」
 ベットから降りる俺を、柊先生は、ただ見守る。
「……」
 なに……。
 止めないんだ……。
 いいけど……。
「止めて欲しかった……?」
 また読み取られた……。
 いや、止めて欲しかったわけじゃないけれどっ。
 ベットから降りた俺に続いて柊先生もベットから降りると、俺に向き直る。
 先輩に、そんな風に見られるとなぁ……。
 逃げられないし。
「嫌いですか?」
「……そんなこと……」
 言えない。
「じゃあ、好き?」
「そういう……わけでも」
 ああ、俺ってあいまいすぎ。
 でも、あいまいに答えざる得ないよ。
 前から、そっと股間の辺りを擦られても、なんか、逃げれない自分がいる。
「っ……あの…」
「していいですか?」
「……駄目って言ったら、やめてくれるんですか?」
「ごめんね……。やめれそうにない」
 だったらそうやって紳士ぶって聞くのはどうなんだよ……。
 ズボンのジッパーをおろされて、直にとられてしまい、どうしようとか考えてる間もなくて……。
「…ん、せんせ……」
 後ずさろうにも、後ろがベットで逃げれない。
 完全に流されてるよな……。
 でもほら逆らえないんだって……。
 肩を捕まれて、体を反転させらてしまい、何事かと後ろを振り向きかける俺の首筋に柊先生はそっと口づける。
「っン…」
「ベットに手、ついててくれますか……」
「…はぁ」
 はぁ、じゃないよ俺。
 それなのに、従って手をついてしまう。
「内心嫌がりつつも……したがってくれるんですね」
「え…ぁ…」
 前に手を回されて、掴まれたモノを擦りあげられると、いろいろと考えてられなくなってくる。
「ん…っ…っせんせ……」
 俺はもうどうすることもできなくて、柊先生にズボンと下着を下ろされてしまっていた。
「……恥かしい?」
「…っ…」
 当たり前じゃないか……。
 どうにも言えずにいる俺に軽く笑うと、どこから取り出したのか、俺の横で見えるようにしてローションを指につける。
「ズボンから足、抜いてくれませんか……」
「……そんな」
「してくれますか?」
「……」
 無理ですとか、言えないし……。
 ズボンから足を抜いた直後くらいに、柊先生は、俺の足の付け根あたりに指を忍び込ませる。
「っっ…や……」
 少しだけ、躊躇しながらも、ゆっくりと指が中に押し込まれていって、俺はどうすることもできず、ただ、あまり刺激がこないように体を強張らせていた。
「んぅっっ…やぁあっ」
 ベットのシーツを握る手に力が入る。
 中を執拗にかき回されると、もう理性が飛んでしまって、気持ちイイとか、そういうことしか考えられなくなってくる。
「はぁっ…あっ…せんせ…ぇっ…」
「薬が入ってなくても、宮本先生は、結構やらしいんですね」
 そんなとこ刺激されたら、駄目だよ……。
 やらしくもなっちゃうってば。
 入り込んでいる指に沿ってもう1本の指がゆっくりと入り込んでくる。
「くぅン…っ…ぁっ…や…っ…」

「柊先生―…」
 こうゆうときに限って……。
 生徒が保健室に入ってくる。
「はいはい。ちょっとソコで待ってて」
 大きめの声で柊先生が答える。
 なんで来るんだよ。
 あぁ、これじゃ、俺、邪魔されて怒ってるみたい。
「ちょっと、生徒の相手してきますね……」
「うそ……」
 思いがけない言葉に、一瞬、素で答えてしまう。
「寂しいですか?」
「いえ……そんなこと」
 ゆっくりと、刺激があまりないように指を引き抜いた後、柊先生は、小さいローターを俺に見せ付ける。
「代わりに……これでしばらく待っててください」
 そんな、留守番まかされた子供じゃないんだから。
 玩具与えて待たせなくても。
 またその玩具ってのが、大人用だけどさ……。
「いい……です。そんなのなくても待てます……って」
 そうは言っても聞き入れないのがこの人で。
 それより、『待てます』って……。自分、かなりこのセックスに合意してる…?
 柊先生は、さっきまで指で拡げたソコに、なんなくローターを押し込んでいった。
「電源、遠隔操作なんで、入れときますね」
 遠隔操作とは……。
 遠く離れたとこからも操作出来るもので……。
 それを理解しようとしている間に、柊先生は電源を入れてしまう。
「あっ…んぅっ」
 慌てて声を殺すと、柊先生は、よく出来ましたと言わんばかりに俺を撫でて、そのまま置き去りにして行ってしまった。

「っ…ん…っ…はぁ…」
 電源を切ろうにも出来ないし…。
 抜く……?
 でも、気持ちいいし……。
 そんなこと考えてられなくなってくる。
 次第にローターの刺激が強くなってる気がするのは気のせい……?
「やっ…ぁ…っ…んっ…んーっ…ンぅっ…っ」
 声も殺せなくなってくるし、体も支えられなくなってくる。
 俺はもう、必死でベットにしがみつくみたいになっていた。
「ぁくっ…ぁっ…くぅ…ンっ……」
 それでもとうとう耐えられなくてベットから完全に崩れ落ちて、床に座り込んでしまう。
「はぁっ…ぁっ…駄目……」
 誰に言うでもなく、そんなことを口走ってしまっていた。

「宮本先生……生徒、帰りましたよ」
 そう言ってベットの方に柊先生はくるけれど、もう生徒がどうとか考えてられるような状況じゃなくなっていた。
「ぅくっ…あ…せんせぇ…っ」
「立ってられなかったんですか……」
「んぅっ…ふぁ…っ…ぁっ…イク…っ…せんせぇ…っ」
 柊先生は、俺の体を立たせると、後ろ側から抱いて、直に俺のを包み込む。
「やンっ…ぁ…っ…せんせっ…やぁっ…やぁあっっ…」
 柊先生に、前の方も手で刺激され、後ろのローターの刺激にも耐えられなくなり、とうとう、その場で、欲望を放ってしまっていた。

 イってしまった直後に、柊先生はローターの電源を切ると、そっと引き抜いていく。
「や……くぅン…っ」
 ああ……俺って、なんて恥かしいんだろ。
 薬が入っていないと、いやな具合に羞恥心が掻き立てられる。
 体に力が入らなくって、柊先生の方に体重を預けてしまっていた。
 脱力感にも似たエクスタシーに見舞われて、放心状態……。
「……よかった?」
 後ろから、抱きつかれたまま耳元で囁かれて、ボーっとしたまま、頷いてしまう。
「……ホント、かわいい人ですね。好きです……」
 ……なにを。
「……どこがかわいいんですか」
「え……?」
「俺なんかより……女の子の方がかわいいでしょう」
 言ったあと、なんだか言い方が嫉妬くさくて、恥かしくなった。
「そんなことないですよ」
「じゃあ…っ…その、生徒の方が若いし…っ」
「若いって……宮本先生と5つくらいしか変わらないでしょう」
 5つも変われば十分なんじゃ……。
「体は十分、若いですし?」
 ……また、そーゆう馬鹿なことを言うんですね……。
 こっちが恥かしくなってくる。
「それに……同等に近い関係の方が、いいんですよ」
 柊先生は、俺の体を反転させると、力強く口づける。
「ンっ…」
軽く抱き上げられて、ベットの上に座らされて……
ああ、この人って力持ちさん……。
「……いい?」
「え……」
「最後まで、しても」
 そんなこと聞かれても。
「……駄目って言ったとしても、するんでしょう?」
「やめますよ」
 さっきと言ってることが違うじゃないか。
 俺からしたがるのを待っているのか……?
 でも……俺はもう1回イっちゃって……。
 ある程度、満足しちゃったっていうか、なんていうか……。
 柊先生だって、それは分かってるだろうに。

 あ……そういえば、昨日生徒が、『自分だけイけりゃいいとか、考えてちゃ駄目』って。
 じゃあ、これは、ちゃんとそういうことを考えられている人間か、試されているとか……。
 なんて計算高い男なんだ。
 どうしよう……か。
 ……それほど嫌じゃないかもしれない。
 かといって、したいかどうかはよくわからない。
「……そんな、悩まないでくださいよ」
 軽く笑われてしまっていた。
「だって柊先生が……そんな人を試すような質問するから」
「試してませんよ。ただ……宮本先生が望むようにしようと思っただけです」
 とか言っちゃって……。
「したら駄目ですか……?」
 駄目? っていう聞き方はずるい……。
 駄目ではないから、イエスかノーで答えろって言われたら、ノーで……。
 軽く首を振ると、柊先生はにっこり笑って、自分もベットの上に乗りあがった。

 ベットに寝転がっている俺の体に被さって、ジっと、こっちを見られると、ドキドキしてきてしまう。
 あぁあ…俺、男相手になにドキドキしてるんだろう。
 男とやるってことより、学校でやるのはどうなんだ?
 ほら、一応、教育者としてっ。
「宮本先生は、ホント、よく表情変えますね」
「あ、その……」
 いろいろと、考え込んでますから……。
 柊先生は、足元の方に体を移動させると、俺の膝裏に手をまわす。
 やっちゃうんだ……?
「っ…せんせ…っ」
 大きく足を開かされてしまって、なんかもうパニクッてくる。
「……恥かしいですか?」
「ぁ…」
 そりゃあ恥かしいですって……。
「あの、生徒が来たらどうするんですかっ?」
「声、殺してください」
 そんなこと言われても……っ。
 柊先生は、にっこり笑って、自分のモノをゆっくりと俺の中に押し込んでいく。
「んっ…やっっ」
 頭が……おかしくなってきそう……。
「宮本先生って、感じやすいんですね…」
 どうだか……。
「せんせ…あんまり…うごかな…」
「それじゃあ、気持ちよくないでしょ…」
 そう言うと、奥の方まで入り込んだソレを、一気に入口の方まで退かせる。
「っひぁっ…ンやぁっっ」
 体中に一気にゾクリとした感覚が駆け巡って、ドコに力を入れていいのか、わからなくなった。
 自分の体なのに、自分で制御できない感じ。
「も…やめ…」
「やめませんよ…。せっかく、宮本先生が、やらせてくれてるのに…」
 確かに……駄目じゃないみたいなこと、言っちゃったかもしれないけれど……。
 何度でも、出入りを繰り返されると、自分でも、おかしなくらいに、気持ちよくって、腰が動きそうになる。
 もう、動いちゃってる……?
「ぁンっ…っやぁ…っ…せんせぇ…っ駄目ぇっ…もぉ…やぁあっ」
「じゃあ……やめます?」
 今さら、やめられないってのをわかってて、聞いてるんだろうな……。
「っ…やぁっ……して…」
「……宮本先生は……こーゆうときだけ、そーゆう風……なんですね」
 どういう…
 でももう、そんな意味とか今は、考えてる場合じゃなくって……。
 柊先生は、俺が望むように、激しく腰を動かしてイイ所を突いてくる。
「んぅっ…ぁンっ…やぁっ…あっ…イクっ…もぉ…っやぁっ…やぁあっ」
 恥らうことも忘れて、喘ぎながら達してしまっていた。


 やってるときよりも、むしろやり終わったあと、思い返すと恥かしい。
 爆発しそうになってくる。
 あ、そういえば『宮本先生はこーゆうときだけそーゆう風なんですね』って……。
 どうゆうことだろうな。
「柊せんせ……」
「なんですか?」
「その。こーゆうときだけそーゆう風って……」
 脱力感から、先輩の前だというのに、ぐったりベットに倒れ込んだまま、俺は聞いていた。
「やってるときは、俺のこと、求めてくれるなぁって話です」
「……もとめ……」
「ほら、普段は、俺のことをまるで避けてるみたいじゃないですか」
 そんな避けてるわけでは。
「……柊先生が、その、手とか出してきそうだから……」
「ええ……。宮本先生、普段は求めてくれないでしょう……。俺のこと」
「求めて……」
「そう……。俺のこと、求めてくれる宮本先生が好きなんです。だから、 普段、求められないと、こうやって犯したくなるんですよ」
 俺が、やられてる間は、欲しがっちゃうから……?
 うぅうん……。じゃあ、普段から俺が柊先生を求めてればこうやって急に犯されることもないってわけ……?
 だからって、普段から、柊先生にくっついてるのもなぁ……。
「今日も、避けるみたいに、涼くんにアンケート、持ってくよう頼んだでしょう」
 うわあ。でもそれは別に、保健委員に頼むくらい普通じゃないか。
 ……1日、遅れちゃったわけだし、やばいか。
「……すみません。その、出すの遅れちゃって……」
 そう不安そうな声で訴えると、柊先生は軽く笑って俺の頭を撫でる。
「締め切り、明日ですけど」
「は……? だって」
「俺、昨日までって言ってないでしょう?」
 言ってないけど……。
 なんだかよくわからなけれど、ハメられた?
「そんな、俺すごく罪悪感、感じてたのに……」
「そんな、宮本先生が見たかったんですよ」
 また、そーゆうことを……。
「柊先生は、そうやって生徒のことも、誘うんですか……」
「嫉妬みたいなこと、言いますね」
 嘘……。
 俺、嫉妬っぽかった……?
 恥かしい。
「誰にも言いませんよ……。宮本先生だけです」
 この言葉をそのまま、信じたわけではないが、そう言われて、嫌な気はしなかった。
 むしろ……いい。
「その……だったら、生徒たちにもいろいろ変なこと、言わないで下さい」
 俺が、からかわれるんですよ。
「変に恥かしがるから、余計突っ込まれるんですよ」
 でもなぁ。
「それに、この間は宮本先生が自分で、顔出して、生徒にバレたんですけど」
 こんな場所で人のことやる方が悪いのでは?
 そりゃ、俺が黙ってればバレなかったかもしれないけれど。
「……でも」
「わかりました。2人の秘密ってことですね」
「秘密……」
 なんか、やらしい。
「いいですよ。2人の秘密にしましょう」
 やだ。
 でも、バレるのも嫌。
「じゃあ……2人の秘密で……」
 少し、馬鹿らしくも思えたが、変に2人の秘密にしてみた。
 これで少しは、生徒の目も気にならなくなるかな……。
 と、同時に……柊先生の目が恐くなりつつ。
 なんだか、わからないけれど、教師になって、この学校について……。
 いろいろと、道を外しつつあるなぁと思う今日このごろ。
 責任は、とりあえず、すべて柊先生に取ってもらおうなどと、小悪いことを考えていたりする。