『あっ…んっ…あぁあっ…』
……なんかいやらしい声、聞こえるんですけど。
目を向けると……
…やばいでしょう。
恐いんですけど、一応、家でDVDを確認した。
確認したんだけれど、ホント俺って、タメ口聞き捲くりだし。
途中から敬語に戻したかと思いきや、まるで柊先生がご主人様で俺が犬みたいな…そんな関係性を匂わせる。
自分で、犬ですって言ってるし、俺。
ないだろ。
ありえない。
縛られて柊先生にねだり捲くったり。
縄…痛くないのか?
柊先生の足舐めたりしてるんですけど。
……コレ、見た状態で、この次、どう会えばいいんだ。
もちろん、柊先生自身は覚えてるわけだよな。
…DVD見てないフリするとか…。でも出来るか?
結構、衝撃的だったし。
恥ずかしいのも恥ずかしいけれど、なんていうか先輩に対する態度として結構、よろしくない。
侘びくらい入れないと…とは思う。
足…は舐めてるけど、アレは舐めてないんだな…。
柊先生のことだから、酔ってないときにやらせたいとか。
DVDに残ってない部分でなにかしたかもしれないけど。
胸とか…すごい弄られてるし。
こんなとこで、そんなに感じるんだろうか。
ちょっと自分で触れてみる。
……別に、気持ちよくないな…。
なにやってんだろ、俺。
にしても、避けようがないよな。
学校へ行けばたぶん、顔を合わせる。
翌日。
さっそく、職員室で柊先生を発見。
「宮本先生、おはようございます」
俺の視線に気付いたのか、そう声をかけられ、俺も緊張しながらも平静を装った。
「おはようございます」
席につくけれど、気が気じゃない。
いや、普段だって、別にそんなしゃべってないよな…?
普通だ。
避けてる感じでもない。
普通。
朝会が終わり、それぞれ授業の準備に取り掛かる。
柊先生を盗み見ると、なんでもないように職員室を出て行った。
…そりゃそうか。
「…柊となにかあった?」
「えぇええ!!??」
「…そのリアクションでわかりました」
樋口先生だ。
この人はなんで…っ。
「あのっ…俺、なんか変な態度、取ってました?」
「別に」
「じゃあ…っ…カマかけたとか…」
「半分正解」
半分…。
「え、半分って」
「なんとなく、修学旅行から帰ってきて、なにかあったかなぁって思っただけだから。別に引っ掛けるつもりはなかったんだけど」
俺が勝手に引っかかったってことですね。
「で、なにがあったかは踏み込んでいい領域?」
「…別に、なにも大してなかったんですけど…。あ、ホントですよ。別に、踏み込むなって言ってるわけじゃなくて…ホントに、大してなにも…」
やっただけ…だしなぁ。
「大したことはなくとも、少しはあったんだ?」
「あ…まぁなんていうか…。一緒に飲んだんですけど、俺が結構酔っちゃって。あまりよろしくない態度を取ってしまったというか…」
樋口先生は納得したのか、軽く頷いて。
「まぁ、酔ったときは無礼講って言うし、大丈夫でしょ」
そう助言してくれた。
「ありがとうございます」
本当は、その乱れっぷりが恥ずかしくてどうにもならないんですけど。
でも、実際、先輩である柊先生に対して、どうなんだろうってな態度取っちゃってたと思う。
無礼講…と言ってもらえて少しだけ気持ちが軽くなった。
今日はなんだか柊先生を探してしまう。
…というのも、探して話がしたいわけではなく。
逆に避けたいから…だと思う。
職員室にいないと安心して。
居合わせると緊張する。
…疲れるな。
でも、避け続けても進まないし。
俺だって、恥を忘れるわけじゃないし。
一度話した方がいいのかなぁ。
でも、柊先生も俺が言うまでは、いままで通り、何事もなかったフリとかしてくれるんだろうか。
DVDのネタでチクチクいじめられたり…はしないよな。
今日の仕事も終わり、職員室から下駄箱の方へと向かう途中。
どうしても通らないと行けないのが保健室の前。
まぁ、素通りすればいいんだけど。
そう思っていたのに。
廊下に柊先生が。
……さすがに素通りできないな。
「お疲れ様です。柊先生は、まだお仕事ですか?」
「お疲れ様…。もうちょっとかな」
「そうですか」
あぁ、今、ほっとした自分がいる。
柊先生はまだ仕事なわけだし。
とりあえずこれで今日は終われそう。
「ちょっと、来てくれません?」
にっこり笑顔を向けられてしまい、断る理由が見つけられない。
俺がなにか言う間もなく、柊先生が保健室へと入っていく。
このまま『今日は用事があるので』と後ろから呼びかけて去って行くのはさすがに無理だ。
精神的に。
入り込んで扉を閉める。
「あの…」
なにか用ですか? ってのもなんか冷たく感じるなぁ。
言葉に詰まる。
「今日、俺のこと避けてました?」
おっと…。
直球できましたね。
詰め寄られ、つい後ずさると今入ってきたドアに背中をぶつけた。
「あ…」
それに気を取られていると、顎を掴まれいきなり口を重ねられる。
なんか、すごい緊張する。
舌が入り込んできて、俺の舌に絡まって。
「…舌、出して…」
一度口を離すと、そう囁く。
「っ…俺…」
催促するよう柊先生の指が俺の口の中に入り込んで舌をそっと撫でる。
「…んっ…」
くすぐったいようなかゆいような感触。
断れない雰囲気で、少し舌を出すとその上を柊先生の舌先が撫でていく。
含まれて、吸い上げられて、いやらしい音がした。
やばい。
きもちいい。
「ぁっ……はぁ…っ」
やっと口を開放されたころには、なんかもう自分で言うのもなんだが、出来上がっちゃってる状態だと思う。
頭がボーっとして。
緊張してたことも忘れそう。
「かわいいね…。芳春」
「っ……」
柊先生の左手が俺の頬を撫で、右手が俺の股間に触れる。
「ぁ…」
ソコ、硬くなってるって、柊先生にバレ……たよな。
キスだけでこんな…。
恥ずかしくてどうしようとか思ってる隙にも、柊先生の手がズボンのチャックを下ろしていく。
「あっ…の、あのっ!!」
「どうしました?」
いや、どうしましたじゃなくて。
柊先生はあいかわらず自分のペースで、取り出した俺のモノを直に掴み擦りあげる。
「くっ!! んぅっ…」
やばいと思うのに、逆らえない。
柊先生に…?
欲望にか?
気持ちいい。
柊先生の手は、ホントに絶妙な強さで握って、擦ってくれるから。
偶然?
俺の好きな愛撫、わかってくれてるとか…。
「んっ! ぁっ…あっ!」
たまに体が跳ねてしまう。
そのたびに、柊先生が耳元で、軽く笑ってるような気がした。
「ぁあっ! …そこ…っ」
亀頭を指先がすべる。
ぬめった感触に背筋がゾクっとした。
「ココ? ぬるぬるだね」
わかってます。
やばい。
そんなとこ、何度も撫でられたら足に力が入らなくなる。
それがわかってなのか、一旦手を止めた柊先生が俺の腕を引く。
「あ…先生…?」
ベッドの方へと連れて行かれるが、ベッドに乗りあがることもなく、後ろからまた股間のモノを掴まれる。
掴まれたのを理解した直後、今度は亀頭に軽く爪を立てられた。
「ひぁっ! あっ」
その刺激に、ビクついて、目の前にあるベッドへと手を付きシーツを握った。
「痛い?」
爪が、食い込む。
痛い……気がする。
「ぁあっ…ぃっ…痛ぃっ…」
「痛いのに、感じるんだ…?」
「っ違っ…いますっ…」
自分でも説得力がないってわかってる。
痛いはずなのに。
ジンジンとしびれるような感覚が、刺激的で性欲を刺激する。
最悪だ。
ズボンと下着を下ろされ、いままで前を弄っていた手が今度は後ろから双丘を撫で、入り口に触れる。
「せん…せ…っ」
「ローション無くても充分、俺の手、濡れちゃいましたよ」
指先が、ぬめりを入り口に塗りたくるようにしてから、ゆっくりと入り込んできた。
「ぁあっ!! あっ…んぅんんっ!!」
体が震えて、膝もガクガクして。
耐えるようベッドにしがみつく。
そのせいで、まるで腰を突き出しているみたいになってしまい、恥ずかしくなった。
奥まで入った指が、抜き差しを繰り返しつつも、感じる部分を擦っていく。
「ぁあっあっ…んっ! あっ、ぁあっ!!」
「ちょっと下手になっちゃいました?」
耳元で柊先生の声がする。
下手?
顔を横に向け、ぼやける視界の中、柊先生を確認する。
下手って。
だって、俺はされる方だし。
そう目で訴えてしまったのが通じたのか。
「声、殺すの。前より抑えられなくなってる」
そう指摘され、ここは学校だということを思い出させられた。
やばい。
「ぁっ…んっ…ぅん!! あっ…ンぅっ」
「そう…上手だねぇ。殺して洩れちゃう声もいやらしくて好きだな…」
一旦、動きが止まったかと思うと、そっと2本目の指が入り込む。
「あぁあっ!! ゃっ…ああっ」
すごいかき回されていく。
そんな風にされたら、せっかく声、少しだけ抑えれてたのに。
出来なくなる。
わかっててやってるのかもしれないけど。
俺ん中、女の子みたいに……ってなに考えてんだ、俺。
自覚したら恥ずかしくてたまらない。
少し引き抜かれた指が、前立腺を何度も突いてきた。
「ひぁっ…あっぁあっ…」
「声、殺せない?」
「あぁあっ…出来なぁっ…ぁあっ、あっ…やぁあっ」
「そう…じゃあいいよ。たっぷり声出して…聴かせて」
「やっぁあっ…やぁあっ! はぁんっ…ぃくっあっ…あぁあああっっ!!」
ベッドにしがみつくようにして、欲望を放つ。
柊先生の指が引き抜かれて、そっと覆いかぶさるようにして頭を撫でられた。
「気持ちよかったですか?」
「っ…ん…」
頭がボーっとする。
というか、急になにしてるんですか、この人。
なんとか立ち上がり柊先生に向き直る。
「なんで急にこんな…」
息を整えながらもそう問うと、
「俺のこと避けてるように見えたんで」
って。
あぁ…やっぱりなにかぎこちなかったかな、俺。
やる前にも一応、避けてました? って聞かれましたけど。
なんだかんだ、答えず流しちゃった…というか、さくさく進められてしまったというか。
「その…避けてるつもりはなかったんですが…」
会ったら困るなぁ程度には…。
「DVD見たんですか」
嘘を付いてもどうせ今日の俺の態度がおかしいってのはすでに感じとられているんだろう。
DVDを観てないにしちゃ、よそよそしすぎるというか。
ばれてるかな。
「一応、軽く見流しました。…すいません。酔っていたとはいえ、無礼を働いて…」
「かまいませんよ。あれ、記憶にないこといろいろしちゃってました?」
記憶になさすぎだっての…。
「…はい…あまり覚えてなくて…」
そう言うと、柊先生が俺を見てにっこりと笑う。
「体はだいぶ覚えてたみたいですね」
「え…」
体はって。
なにかしただろうか。
「それが気になったんです。DVD観て、思い出せたかなぁって」
「思い…出せてないんですけど」
「はい。でも、頭では覚えてなくとも、体の方は覚えてたみたいなんで、俺は満足です」
満足です…って言われても。
「え、あの、ちょっと意味わかりません」
柊先生の手が、俺の頬をそっと撫でながら、ジっと俺を見る。
「つまりですね。もちろん、すべて忘れられてても、俺はあのときあの時間を楽しんだので、イイんですけど。やはり宮本先生の中にも残りたいじゃないですか」
「はぁ…」
覚えてなくてすみません…そう思ったが、さっき満足って言ってくれてたし、とりあえず言葉を待つ。
「で。記憶には残ってないようですが、体は覚えてたみたいなんで」
いや、だからそこが疑問なんですが。
何度言われても理解に苦しむ。
「あの…体は覚えてたってとこの意味がわからないのですが」
直球で聞いてみる。
「…言いましょうか?」
え、聞かない方がよかったのか?
「さっき…痛いのに気持ちよかったんでしょう? ちゃんと痛みを快楽に変えられるようになったみたいじゃないですか」
「いや…それは…っ。なんか…」
え、そうなのか?
「こないだ、たくさん痛いことしましたもんね」
「たくさん…でしたっけ…」
…確かに、少しはしてた。
それは痛いんじゃ…ってこと。
爪で引っかかれたり強くつねられたり。
あのときは、酔ってて痛覚が鈍くなってるのかと客観的に思ってたんだけど。
痛いくせによがってた…?
いや、違うだろ。
「あぁ、DVD、途中で切れちゃったんで。残ってなかったですねぇ。たくさんしたんです」
……たくさん…したのか。
「な…なんで酔った人相手にそんな…っ」
「宮本先生がして欲しいって泣いてたんで」
……もう…だめだ。
反論の余地がない。
「それに…」
なに…。
抱きしめられて、柊先生の手が急に尻を撫でるもんだから、体が軽くビクついた。
「後ろで感じるのがうまくなってる」
「なっ…」
なに言ってるんですか!?
……とは、口に出さずに心の中で呟いた。
図星な気がしてならない。
黙っていると、急に体を半転させられ今度は後ろから抱きしめられる。
「せんせ…っ」
「今度はココ、せっかく調教したんで、試しましょうね」
そう言って、シャツの上から胸あたりをそっと撫でた。
胸…。
「そこは…そんな感じないです…。あのときは酒が入ってておかしく…」
「そう。今度、試させてください」
そんなことを言われても…。
それでも嫌とは言えないんだよなぁ…。
そういえば、DVD、途中で切れちゃったって…。
俺、柊先生の、口でしたんだろうか。
気になる。
「あ…あの…」
「どうしました?」
後ろから声がする。
こんなの、顔見て言えないし。
「……口でしました?」
そう聞くと、柊先生の指先が俺の口に触れる。
妙に緊張した。
どっちなんだ?
「…してませんよ」
にっこりと笑ってくれていそうなのが浮かぶ。
「あ…そうですか」
だからってなんでもないんですけど。
ただ、聞いただけなんですけど。
…でも意識ないときに済ませておいた方が楽だったかな。
ただ、どっちにしろ、男の物を舐めるってのには抵抗がある。
舐めた事実が今、発覚してもショックはショックだろうけど。
実際、してないみたいだが。
はぁ…。
ついため息が洩れる。
「足は舐めてましたけど」
「……それは観ました…」
……足舐めるのも充分、問題だな…。
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