…カバン、誰も見てないよなぁ。というか、誰も部屋に入ってないはずだけど。
一応、確認。
ほら…ちゃんとバイブはありますよ。
ビニールに包まれてる。

…こんなん入ってたのか、自分。

そういえば、俺、机の上に携帯放置してたな。

万が一、緊急な呼び出しがかかったらどうすんだよ。
…その場合、放送とか使うか?
でも、ここホテルだし。

なんにしろ、携帯を手に取り、確認すると、柊先生からの履歴が。
「うわぁっ」
って、なに俺、声出してんだかっ。
そりゃ、今日、ずっと考えちゃってたけど、さっき悠貴のことでいっぱいになって、少しだけ忘れてて。
いま、すっかり全部思い出した。
電話しますって、今日の朝、言ってたしな。

…30分くらい前。
かけなおすか…。

もし出なかったら?
履歴だけでも残せば…。
でもそのあと、またかかってくるの気にし続けるのも、緊張するよなぁ。
どっちにしろ、このまま無視するわけにもいかないし。

電話をかけると、少しだけ間をおいて。
プツっと、電話が繋がる音。
「あ、夜分遅くにすみません…っ。見回りしてて…」
『いえ。折り返しかけてくれてありがとうございます』
って。
…なんか、なんだかんだいって、いつも優しいよなぁ。

『大して用はなかったんですけど、樋口先生と桐生先生、帰ってきましたし。大丈夫ですか?』
「はい、おかげさまで…」
ってか、教師2人帰って、なにがおかげさまだ。
間違えたっ。
「いや、決して帰ってくれたおかげでなんとかってわけじゃなく。なんか…っ、俺、国語教師向いてないですねっ。というか、こんなの国語教師以前に、一般社会人として見に付けてる教養というか、言葉遣いなんですけど、なんかっ…。もう、パニックになっちゃって…っ」
『いいですよ』
「…2人が来てくれたおかげで、たくさん救われたし…」
そう。
二人が来てくれたおかげで。
というか、別に、柊先生が仕向けた刺客とかそういうわけじゃないんだけど。

『で。なにをパニックになってたんですか?』
「それはっ」
柊先生から、電話がかかってたから。
なんて言えませんって。
「いろいろと…考え事してて…」
『思い悩んでたんですか?』
「はぁ…なんていうか…」
悩んでたといえば、口でどうとかってことだったりするんだけど。

「あと1日がんばります…」
…なんだこの小学生が、修学旅行ではしゃぎすぎて怒られて反省してるときみたいなセリフは。
『そう。がんばってくださいね』
俺が馬鹿な発言しても、この人って突っ込まないんだよなぁ。
だからいいというか。
もし、俺がわざとボケたんなら突っ込めよって感じもするけれど。
わざとじゃないし。


『宮本先生、明日も早いんですよね』
「…えぇ、まぁ、それなりに…」
『じゃあ、早く寝ないといけませんね』
まだ寝なくても大丈夫ですとも、言いにくい。
「………別に…」
『どうしたんですか? …寂しいとか…』
「え…?」
『そういう声に聞こえました。まだ、寝たくないんですか…?』
俺、もう少しこの人と話していたいとか思ってるんだろうな。
なんか、そういうのがバレてしまっていて恥ずかしい。

「いえ、大丈夫ですっ。あ、大丈夫ってのは、寝たくないわけじゃないというか…あれ…かといって寝たいわけでも……。よくわからないんですけど…俺のことは、気にしてくれなくて大丈夫です」
なにが言いたいのかわからなくなってきたし。
『そう…。疲れているでしょう? 今日は早く寝て、明日に備えてくださいね。明日、一緒に食事でもどうですか』
「明日…ですか」
帰るのは夜の7時予定だ。
夕飯のことだろう。
『疲れているとは思いますが、食事くらい取るでしょう? 俺の前で、そこまで気遣いしてくれなくていいから』
確かに、普通だったら、疲れて、適当に食べて終わりたいかもしれないし、人と食事ってなると気を使うし、さらに疲れるかもしれないけど。
でも、柊先生なら…。
気遣わなくていいって言ってくれてるし、俺がなんで疲れてるのかとか、全部わかってくれてる。
あさっても土曜日で、休みだし…。

「はい。では、ぜひ…」
『うちでもいいですか?』
「え…柊先生の家ですか?」
『食事、用意しますので』
…そこまでされると、気遣っちゃいそうですが…。
どこかそこら辺の店で、2人でいるところを生徒に見られるのも恥ずかしいしな。
「ありがとうございます。明日、たぶん、7時には着くと思いますので」
『はい。明日、がんばってくださいね』
「ありがとうございます」
『じゃあ、また…』
「はい、失礼します」



電話が切れてもまだなんだかドキドキしていた。
初めてじゃないか?
学校以外の場所で会うの。
あ、ここで会ったけど、学校行事だし。

誘われちゃった…。
食事に。
っていうか、家?
…俺、なに緊張してんだろう。
すごい柊先生のこと意識してるじゃんか。

…いまの電話も。
昨日、電話でHなことしちゃったから、そのイメージ強くて、ちょっとテンパってたし。
まったくそれに触れられないのが逆に少し寂しいとか思っちゃったり。
触れられても困るんだけど。
…明日かぁ。

なんか、せっかくバイブくれたんだしなぁ。
あ、貸してくれてるだけなのかもしれないけど。
俺のいない間、コレでって言ってくれてて。
それなのに、使わないのは、なんか申し訳ないというか。
…俺、なんでそんなところ、律儀なんだろう。

結局、カバンから取り出して。
…そういえば、口でするのって。
こういうの、舐めるわけで。
大丈夫か、俺。

そのバイブを口でくわえ込む。
唇とバイブが乾いているせいか、うまくくわえ込めないし。
…とりあえず、今はくわえ込むのは止めよう。
俺は、舌でバイブを舐めあげていく。
あぁ、なんか、いやらしい気分になってきた。
ってか、こういうことする時点で、すでに気分はいやらしいんだけど。

ホント。
これをいまから、入れるわけだろう?
いや、先に指で少し慣らしておくか。

バイブをとりあえず脇の机に立てて。
ズボンと下着を脱いでいく。
俺は横向きに寝転がり、舐めあげた指を、前から足の付け根の方へと押し入れていく。

「んーっ…」
自分の指なのに体が妙にびくついて。
どんどんと入り込む。
「くっ…ん…っ」
昨日やったばっかだし、結構平気だ。
それほど慣らす必要もないだろう。
指を引き抜き、さきほど机に立てていたバイブを手に取る。

おっきいって…。
仰向けになり、足を広げ、少し腰を浮かせながらそのバイブを押し込んでいく。
この格好、恥ずかしすぎだ。
「ぅんんっ…んっ」
圧迫感。
だけれど、自分で調整できる分、テンパることはなさそうだ。
どんどんと押し込んで、奥まで入って。

スイッチ。
とうとう入れますか。
スイッチをオンにして、バイブから手を離し、両手で口を押さえた。
「んーっ…ンっ…ぅんっ…」

恥ずかしいって。
誰も見てないからいいんだけど。

柊先生の声とか顔とか、こういうときに限ってうまく思い出せない。
柊先生のこと、たくさん考えてるのに。

声が聞きたいとか思ってしまう。

駄目だっての。
「ぁあっ…んっ…んーーーっ」


結局。
後ろを使って。
前も手で擦りあげていると、すぐにイってしまう。
なんとなく、後ろめたいような感覚。

見回り前にお風呂に入ったんだけど、もう一度、シャワーを浴びて、ベッドに寝転がった。

すごい恥ずかしい。
なにしてんだか。

明日で修学旅行最後…。
やっぱり俺、柊先生のこと気にしてる。
悠貴のことが解決したからってのもあるんだけど。

明日は柊先生の家に行くのか…。
いまから、無駄にドキドキしてしょうがなかった。