「ぁっ…っくっ」
「どうしました?」
 わかってるくせに。
 わざとそういうことを言う。
 それで感じてる俺も俺だけれど。
「柊先生が…っこんな趣味あったなんて…っ」
「こんな趣味ってどんなです?」
「っ…手錠とか…っ」

 後ろで手錠をかけられた状態。
 ベッドで全裸の俺の片足を持ち上げ、その足の指先を丹念に舌が絡んでいた。
「知らなかった?」
 知るわけがない。
 が、予想はついたかもしれない。
 たぶん、サディストなんだろう。

「もぉっ…やめてくださ…っ」
「どうして?」
「ぁっ…くすぐったいですっ」
「…へぇ…。くすぐったいんだ?」
 違うけど。
 くすぐったいような、じれったいような。
 耐え難い感覚だった。
「っあっ…ンぅっ」
 声も、もう我慢できそうになかった。
 思えば、全裸にされるのも初めてで、羞恥心が高まる。

「くすぐったいの、好きなんですか?」
 そう聞いて、柊先生の舌が、ゆっくりと、足を這い上がってくる。
「んんんっ…!ゃめっ」
「ほら…。もっと、足、広げて…」
 ガバっと両足を広げられ、いやらしい箇所を柊先生にさらしてしまう。
「っ…なにしてっ…」
「そのまま。足、閉じないで」
 そう言われ、どうにも動けずにいる俺を見てか、小さく笑うように息を漏らすのが聞こえた。
「足、舐められただけで、感じた?」
 柊先生の指先が、俺のをそっと撫で上げる。
「っ違…っ」
「そう。違うんですね」
 違わないけれど、柊先生は俺の言葉を否定しないで
「じゃあ、どうすれば感じてくれる?」
 逆にそう聞いてきた。
「…っそんなの…」
「感じさせてあげるから」
 そう言って、鞄から、性器型のバイブを取り出す。
「っなっ…」
 スイッチを入れたソレが、俺のをそっと撫でていくと、体が恥ずかしいくらいにビクついていた。
「っんぅっぁっ…やめっ」
「涙目になってますけど。感じてるから?」
 ゆるゆると撫でられて、振動が伝わると、体が熱くてたまらなくなってきていた。
「はぁっ…ぁっ…せんせ…っ」
「じゃあ、入れますね」
 唐突な言葉に、顔を上げる。
「っなっ…」
 いったん、離されたバイブが、俺の目の前でうねりを見せていた。
「そんなの…っ」
「なに?」
「入れたら、駄目ですっ」
 そういう俺を無視して、足を広げるようにされながら、バイブの亀頭部分が、入り口に押し当てられる。
「っ駄目だってっ」
「なんで?」
「っあっ…声、抑えられなっ…」
「だから、それは大丈夫です。さっきも…」
「っさっきより、出ちゃうからっ」
 必死で話すうちに、ついタメ口になる。
 けど、かまってられなかった。
「もう、いいでしょう…? 声、たくさん出して叫んでくれて、かまわないから」
 そう言って、ゆっくりと押し込もうとする。
「っ駄目っ…入れないでくださっ…」
「駄目です。俺の前で、狂ってください」
 哀願する俺をあっさりと、笑顔で無視して。
 ゆっくりと押し込みかけた優しい手つきとは打って変わって、勢いよく、バイブを中へ押し込んだ。
「ぁっ!やぁああっっ」
 急に入り込んでくる異物に体が過剰にびくついて反応をしめしていた。
 痺れるような振動とうねりがたまらなく気持ちよくて、恥ずかしがる余裕なんてなかった。
「やっぁっあっ…んーっ」
「かわいいですよ。すごい素敵です」
「だっめ…っぁあっあんんっ…!!」
 ビクつく俺を見下ろして、やさしく頬を撫でてくれる。
「すっごいビクビクしちゃって、かわいいですね」
「やぁっぁんんっ…もぉっ止めっ…」
「写真、撮ってもいいですか?」
 ありえない言葉に目を見開く。
「ね。かわいいんで、撮らせてください」
そう言うと、携帯をこっちに向ける。
「っぁっやめてくださぁっ…」
「すごい、感じてますね。動画にしましょうか」
柊先生の手が、俺の中に入り込むバイブを掴んだかと思うと、ゆっくりと中をかき回していく。
とはいえ、うねりと振動のあるそれでかき回されるだけで気が狂いそうだった。
「やぁんんっ…もぉっ…やあっ…やぁああっ」
「イっていいですよ」
「ぁっあああっ…せんせぇっ…だめっ…ぁあっ…やぁあああっ」  
 
大きな声を出してイってしまうと、柊先生はやっとバイブを引き抜いてくれた。
 ものすごい脱力感と、エクスタシーに見舞われる。


「…すごいかわいい声、出してましたね」
なにかを言い返す元気がない。
 
「や…もぉ…」
脱力する俺を無視して、柊先生は指を差し込む。
 さっきまでバイブが入っていたそこはすんなり指を受け入れてくれる。
「2本くらい余裕ですね」
 そう言って、2本目の指を入れてきては、そっと探るように動かして。
 甘ったるい、少しだけじれったいような刺激に頭がボーっとした。

「ぁっ…あんっ…はぁっ」
「気持ちいいですか」
 そう聞かれて、つい頷いている自分がいて。
 恥ずかしいってば…。

「ですよね…。腰、動いてる」
「っなっ!…あっ…」
 緩やかな動きに耐えられなかったのか、自覚もなく無意識のうちに腰が動いていたのだろう。
 自覚して恥ずかしくて、顔が焼けるように熱くなる。
 とにかく顔を逸らして、その恥ずかしさから逃げようとした。

「はぁっあっ…ンっ…」
「もっと、腰、動かして…」
「やっ…あっ…」
「恥ずかしいですか。すごくイイですよ、かわいいです。俺の指だけで、こんなに感じてくれて…」
 柊先生は、指を引き抜くと、俺の手錠も外してくれる。

「宮本先生…来てくれますか…?」
「っでもっ…」
 手を引かれて、俺は、座る柊先生に誘われるように、その体を跨いだ。
 腰を下ろすと、柊先生のモノが、狭間にあたる。
「っ…せんせ…」  
 
柊先生の手が、俺の頭を押さえて、口が重なった。  
 
なんだろう。  
ただ、欲求不満だからとかじゃなくって。
 恋人同士みたいじゃ…。
 って、俺はなにを考えてるんだろう。
 そう思うと、余計に恥ずかしくなって顔が熱くなる。  

 口が離れると、柊先生が俺をジっと見て。
 なんとなく目が離しにくいし。

 柊先生が、俺の体を支えながら、ゆっくりと入り込んでくる。
「んっ…くんっ…」
「少しの間しか、離れてないのに…。なんか、すごい会ってなかったような、そんな気分じゃないですか…?」
 思えば、まだ1日くらいしかたってないのに。
 この人も、おんなじ風に考えてくれていた?
 なんか、実は結構、価値観とか近かったりするんだろうか。

「動いてくれますか?」
 俺の頬を撫でながら、柊先生はそう言ってくるけれど。
 動くって。
 自分から?
「そんな…ことっ」
「さっきだって、腰動かしてたじゃないですか。好きなように動いてみてくれればいいですから」
 そんなこと言われても。
 俺が動けずにいると、少しだけ催促するように、下から突き上げられる。
「んっ…あっ…」
 少しだけ。
 柊先生が俺の体を揺さぶるから、それにあわせるようにして自分も腰を揺らしてしまう。
「そう…続けて?」
「あっ…こんなの…っ」
 それでも、一度味わった刺激を緩めることも出来ないし。
 柊先生の背中に手を回して、腰を揺らしてしまう。
「ぁっあっ…んぅっ…せんせ…っ…」
「かわいいです…。ホントに…」
「やあっ…あんっ…あっあっ…」
 恥ずかしい。
 俺の背中を緩やかに撫でてくれて。
 ゾクゾクして、体中がおかしいのに。
 自分が動くだけの刺激じゃ、物足りない。
「あっ…あのっ…せんせぇっ…」
「なんですか…?」
「っもぉっ…動いてくださ…っ」
「動けない…?」
 頷く俺ににっこり笑うと、繋がったまま、俺を押し倒す。

「どう動いて欲しいんですか…?」
「っ…もぉ…早く…」
「言って欲しいな。奥まで突いて欲しいとか、掻き回して欲しいとか…」
「んっ…」
 柊先生は、なかなかうごいてくれなくて。
 ただ、俺を見下ろす。
 このままじゃ、また腰が動いちゃいそう。
 でも、それじゃ刺激が足らなくて苦しいし。
 今の状態も苦しいけど。
「はぁっ…せんせっ…掻き回して…くださ…」
 言ってしまったあとですごい羞恥心にかられた。
 顔を逸らす俺の頬に、柊先生はキスをする。
「じゃあ、お望みどおりに…」
 耳元でそう囁くと、柊先生がゆっくりと俺の中を掻き回していく。
「ぁああっ…やぁっやああっ…」
「ん…気持ちイイですか…」
「ぃいっあっ…あっ…駄目…もぉ、イっちゃいそうっ…」
「俺も…いいですか? 中に出して…」
「中っ…? そんな…」
 掻き回されて、イイところを突かれて。
 もう限界だ。
 俺ってこんなに、性欲強かったっけ?
 なにもかもどうでもよくて、ただただ快楽が欲しいって。
 そんな情けないこと考えてる。
「ぁあっせんせぇっ…やっあぁああっっ」

 
 体が。
 力が入らない。
 柊先生が、優しく俺にキスをしてくれた。
「ん…」

 そのまま、俺は眠ってしまっていた。
 目が覚めると朝の5時。
 あぁ。
 とりあえず、寝坊とかはしなくてよかった。

 昨日、柊先生が来て。
 やったんだよな…。
 なんか、寝ちゃったせいで、自分が夢見てたんじゃないかって。
 そんな気分になってくる。

「…せんせ…?」
 見渡しても柊先生の姿は見当たらない。
 ホントに。
 夢じゃないよな…。

 なにも言わずに言ってしまうなんて。
 そりゃ、俺が寝ちゃってたから起さないようにしてくれたのかもしれないけれど?
 だけれど、そんなのさびしすぎる。
 って、俺もうおかしいな。  
 

 学校に間に合うように帰るには、もうここを出ていないと間に合わないだろうし。
 しょうがない。
でもホントにもういないんだろうか。

 電話とか、かけてみたり…。
 って、そんなのうっとおしいだろうか?
 でも、俺が寝てたままだったから、別れの挨拶できなかったわけだし。
 それで電話するくらいおかしいことじゃない。  

 でも、もうちょっと後にするかな。
 とりあえず、今日の行動予定をちゃんと把握しておかないと。
 昨日する予定がすっかり出来なかったから。  
俺は、修学旅行の冊子を鞄から取り出そうとしたときだった。
 その鞄の上に、昨日、柊先生に使われたバイブが。
「っ……」
 これ。
 昨日のことが夢じゃないんだって。
 そう思える。
 っつーか、なんで俺の鞄に入れるんですか。
 会えない日々をこれで…なんて、なんて妄想をっ!?

 こんなの見つかったらシャレにならないってば。
 俺は、とりあえずソレをビニール袋で包んで外からは見えないようにして鞄の中へとしまい込んだ。
 でも、なんか形がおかしいんだけど。
 まぁいいや。  
 
まだ5時だし。  
1回くらいヌいても…。

 いや、駄目だ。
 そんなことして体力減らしてどうすんだよ、そんな元気な歳でもないだろう?
 そうだ、お風呂に入ろう。
 なにか自分では気づかない匂いとかあったりするかもしれないし。

 俺が洗面所に入ると、そこにいたのは柊先生。
「なっ…なにしてんですかっ?」
「いや…顔洗ってたんですけど」
「早く、帰らないと学校がっ」
「半休とってあります。俺は今日、昼からですよ。まぁ朝にここを出るのには変わりないんですけど」
「そ…そうですか…」
 なんか、なにも言わずに帰られてさびしいとか考えてた自分がものすごく恥ずかしい。

 そんな俺がわかってなのか偶然なのか。
「宮本先生に挨拶もなく帰るわけないじゃないですか」
 そう言ってくれる。
「…そんなこと…」
「バッチリ動画も取ったし、満足です」
「保存してあるんですか!?」
 ただ、そういう羞恥プレイで撮っただけで。
 実際は保存してないのかと思ってたのに。
「見ます? 結構、イイ感じに写ってますよ?」

 俺は首を横に振って断る。
「これで、しばらく我慢出来そうですよ。オカズにしますから」
 なに、恥ずかしいこと言ってるんだろう、この人は。
「別に…他に相手いるでしょう…?」
 俺、なにひねくれたこと言ってんだろう。
 すごい子供みたいだ。
 言ってしまった後で恥ずかしくなる。
「っすみませ…っ」
「いいですよ。なんか、そういうの子供っぽくてかわいいですから」
「子供の方が…」
 高校生の子供の方が、実際に子供でかわいいんじゃ?
 そう思って、ついまたいやみらしいこと口走ってしまいそうで。
 言いとどまった。  そう言うと、俺を壁に押し付ける。  


「俺、宮本先生にいずれして欲しいことがあるんですよね」
 俺の目を見て、そう言われ。
 何だろうって考えてみるけれど、思いつかない。

 俺の口に指を添えて。
「このクチで、イかせて欲しいんですよね」
 そう言われる。
「なっ…あっ…」
「修学旅行、無事終わってから…ね」  
 
ね。って言われましても。  
俺が答える間もなく、口を重ねられる。  
舌が絡まって。  
頭がボーっとして。  
蕩けそうだった。

 口が離されて。
 柊先生は俺から離れると身支度をし始める。
 あ、なんか新婚さんが旦那を見送るみたい。
 って、なに馬鹿な妄想してんだろう、俺は。

 でも、なにも言わずに帰っちゃってたわけじゃなくてよかった。

「じゃあ、行きますね」
「あのっ…」
 つい。
 引き止めてしまう。
「どうしました?」
「あの……」
 なにを言えば。
「俺は……なにをオカズにすれば…」
 
 あれ。
 なんか、俺、すっごい馬鹿ではずかしいこと聞いてないか?
「あ、いえ…なんでもないですっ、ホント、なんでもないですっ」
「また、電話しますよ。それにバイブもあげたでしょう…? それで俺のこと、思い出して、俺の声でイって…?」
 そう言う声が。
 すごい色っぽくて。
 それだけで、ゾクゾクした。

「ばいばい」
 最後は、タメ口で。
柊先生は手を振って部屋を出て行った。