『宮本先生。今、一人ですか』
 さすがにひとりじゃなきゃ、「会いたいんです」などとは口走れない。
「一人ですけど…」
『今日は大部屋だと聞いてたもので』
 あぁ。そういえばそうだったような…。
 大部屋なのは生徒だけなのか。
 しかし、どうやら相部屋の先生もいるようだ。
 運良くなのか、俺は一人だが。
「一人部屋ですよ」
『テレセックスでもしますか?』
「っなに言ってっ」
 俺が真剣に考えてるときにこの人は……っ。
『会えない分、せめてたくさん声、聞かせてくれてもいいじゃないですか?』
 いつもなら、馬鹿にするような言い分なのに、ものすごく突き刺さる。
「……っ……したいんですか?」
『もちろん』
 会えないのはしょうがないこと。
 俺のことを望んでくれているようで。
 会いたいと、そう思ってくれているんだろうか。
 そういう風に、思っても、うぬぼれじゃないよな。
『ね……。自分の、擦りあげて』
「なに、言ってっ」
『いいじゃないですか。それとも、もう誰かとやっちゃって、溜まってないとか』
「そうじゃないですけどっ」
 そう言いつつも、俺の手は、すでに自分のモノを取り出してしまっていた。
 本当のところ、ものすごく中途半端な状態でたまってしまっているから。
『じゃあ……ね? して?』
「っん……」
 俺、なにしているんだろう。
 こんなこと……。
『本当は、俺がたっぷり舐めて、口に含んであげたいんですけどね』
 いやらしいトーンの声でそう言われると、つい想像してしまい、顔が熱くなる。
「っぁっ……んぅ」
『声、出して……聞かせて? いつもみたいに。後ろに、指、入れてみて』
「な……出来な」
『自分で後ろ使ったことはないんですか?』
「っない……です」
 一人でやる余裕、最近なかったし。
『じゃあ、初体験ですね』
 そういう問題なのか?
『指、濡らして、ゆっくり』
 なんで、俺は従ってしまうんだろう。
 見えないから、ばれないから。
 ズボンを下ろし、濡らした指を、そっと後ろへと挿入していった。
「っん……っぁ」
『ちゃんと、してくれてます?』
「っあ……」
『わからないんで、答えて欲しいんですけど』
 そりゃ、そうだろう。
 柊先生としては、俺がただ、なにもせずに聞いてるだけかもしれないし?
 意外とテレセックスは、お互いを信用していないと出来ないものなのだろうか。
 一人で言ってるだけじゃないかって、不安になるだろうし。
「っして……ます」
『そう。よかった。奥まで、入りました?』
「っぁ……まだっ」
『ゆっくりでいいですよ』
 俺はゆっくりした速度で、中指を押し込んでいく。
 それだけでも、ものすごく変な感覚。
 指の付け根までしっかりと咥えこんでしまっていた。
「っあ……せんせ。……入り……ました」
 こんなこと言うなんてものすごく恥ずかしい。
 けれど、黙っているわけにもいかないし。
 柊先生の方から、また聞いてくれれば、『はい』だけで済んだだろうけど、そんな催促みたいなこと、しないだろうし。
 俺から答えるしかなかった。
『じゃあ、そっとね。まずは小刻みに抜き差ししてみて』
「っんぅっ……」
 言われるように、少し指を動かしてみると、体が熱くなって、おかしくなりそうだ。
「ぁっ……せんせ、もぉ、やめ」
 こんなこと。
『してくださいよ』
 俺の体は、もうさっきから、溜まっちゃってるし、したがってるかもしれないけれど、
電話越しに聞かれるなんて。
 手の方は、すでに止まらなくなっていて、言われるまでもなく、掻き回してしまっていた。
「っあっ……ぁっ切りますっ」
『イク声、聞かせてくださいよ』
「っそん……なっ、ぁあっ、んぅっ」
 断らなきゃとか、話さなきゃって考えると、声が殺せない。
 不意に溢れ出る声が、大きく響いてしまっていた。
『感じます? いやらしいですね』
 楽しそうに企むようにそう言われ、ものすごく恥ずかしいのに、余計に感じてしまう。
「っぁっあっ……俺っ、おかしっ」
『おかしくないですよ。いやらしくて、Hなだけです』
「っそん……なっ、ぁあっ、せん……せぇっあっ、ひぁっ」
『いいですよ。イっちゃって』
 リアルに目の前で見られてないせいで、一人でやってるのに、声を聞かれることに関
しては、なんだか恥じらいが薄れていた。
 柊先生の声が頭の奥まで響く。
「ぁあっっ……んぅっ、あっあっ、ゃああああっ」

 それでもやっぱり、こんなに大きな声をあげてイってしまうのは恥ずかしい。
 隣の部屋に聞こえてやしないかとか考えてしまうから。

『悦かったですか?』
「……ん」
 脱力状態。
『ホント、会いたいです』
 そう言ってくれる声がやさしくて。

 俺も、会いたいんだと、実感していた。




 −ピンポーン−
 インターホンの音が響く。
「あの……誰か来たみたいなんで…切りますね」
『わかりました』
 そう素直に柊先生は言うと、電話が切れる。
 あっさりすぎるとそれはそれで寂しかったりもするんだけど。

 ドアを開けた先にいたのは、いままで電話で話していた相手。
 柊先生だった。
「なっ……え?」
 わけがわからなくて。
 言葉が続かず、しばらく無言になってしまう。
 どうしてここにいるんだ?
 もしかして俺ってだまされた?
 ホントは、この人、修学旅行に遅れてくるだけだったわけ?
「っなんでそうやって騙すんです?」
「一言めがそれですか。せっかく会えたのに」
「っ……俺、会えないと思ってたから、こんな……」
 駄目だ、俺。いますっごい情緒不安定で。
 恥ずかしいこと口走りそう。
「……宮本先生。だましたつもりはありませんよ。ホント。修学旅行には来ないつもりでした。というか…会いに来ただけです」
「……どういう」
「ちょっと入っていいです?」
 柊先生は、俺の部屋に入り込んで、ドアが閉まると早々に、俺を壁へと押し付ける。
「あなたに会いに来たんです。こんな一方的でストーカーみたいな行為、どうかと思いますけど。だけれど、宮本先生の方も会いたいと願ってくれたから」
結構、意味わかんないんですけど。
「もうちょっと説明してくれますか」
「来るだけ来といて拒まれたらどうしようかとも思いましたけど。まぁそれはそれ
で顔が見れれば満足ですが」
黙り込む俺の頬を撫でて、柊先生は自分の顔へと向かせる。
「…仕事終えてすぐ、飛行機で来ました。平日なので、席が空いててよかったです。
急ぎすぎて汗かいちゃったんで、ちょっとシャワー借りてる間に電話、入ったんですよ、ちょうど」
「今日から合流するんですか?」
「いえ。朝一で帰ります。だからね。あと2日、我慢できるように、今日は朝までたっぷり可愛がってあげるから」
 馬鹿なことを。
 そう思うのに。
 なに俺。
 なんか期待してる?
 すごく嬉しいような。
 柊先生の手が、すでに股間をズボンの上からいやらしくなで上げる。
「……駄目です」
「どうして?」
「声、出ちゃうんで」
「さっき、散々、出してたじゃないですか」
 ものすごい羞恥心にかられる。
「だって、あれは……っ」
 なにを言えばいいのかもわからず、言い訳をしようとしてしまう俺も馬鹿だ。
 柊先生はにっこり笑って。
「大丈夫ですよ。ずっとドアの前にいましたけど、直接的にはまったく声、聞こえませんでしたから」
 そう教えてくれた。
 
 声が聞こえなきゃいいって問題なのかわからないけれど、柊先生はズボンのボタン
を外してチャックをおろし、中に手を潜り込ませる。
「っ……やめっ」
「イったばっかで、キツいですか?」
 イったばっかりだからなのか。
 なんか違う。
 なんていうか。
 柊先生のこと、前より意識してる。
 変に恥ずかしくてたまらない。
「イったばかりなのに、もう大きくしてますね」
 耳元で優しく囁いて、指先が入り口をそっと這う。
「っ……ぁっ」
「どうしました?」
 何度も入り口を彷徨われると、変に腰が動いてしまうのがたまらなく恥ずかしかった。
「はぁっ、ゃめっ」
「やめた方がいいですか」
「っ違っ……ぁっあっ、もぉ」
「どうしました?」
 そうやって改めて聞きなおされると恥ずかしいけれど、止められそうになかった。
「っ焦らさないでくださ……っ」
「どうして欲しい……?」
 低いトーンで囁かれるだけで、腰が砕けそうだった。
「っ……そんなこと」
「たっぷり虐めていいですか?」
 その言葉を耳元で言われると、限界で。
 足の力が抜けてしまい、その場に座り込んでいた。