今年度から先生になったばっかり。
 生徒と年齢が近い事もあってフレンドリーにやっていけたらいいとは思うものの、そんな風に上手くもいかなくって……。
 正直、辛くなってきてる。
 先生ってこともあるから、一応、威厳というかなんていうか……。
 ある程度、強気でいないといけないと思うんだ。
 でも、高校生って結構、恐そうで……。
 この学校、どうしてこんなに校則ゆるいんだよ。
 あぁ……頭いいから少しくらいの自由が利いちゃうのかな。
 そうそう、頭がいいってのも厄介。
 なんか間違いとか指摘されそうだもの。


 1時間目。
 朝からハイテンションにもなれず、憂鬱な感じで教室に向かう。
 1時間目は3年7組。
「あはははっ。やっぱ最高っ。腹痛いんだけどっ」
 高校生は、朝っぱらから元気がいい。
「起立……」
 って言っても誰も聞いてくれなくて。
 泣きそうになってくる。
 駄目駄目。ここでもっと威厳を示さないと。
「はいっ、起立ーっ」
 少し、大きめな声を出すと、やっとノロノロと生徒が立ちだす。
 ……いかにも嫌々な感じが伝わってくる。
 そりゃ朝っぱらから、数学の授業なんて……
 嫌かもしれないけど、俺だって、朝っぱらからこうも考えさせられるのは好きじゃないんだよ。
 だからって俺は数学の先生だからどうにもならないけど……。

 挨拶が終わって、ノロノロと座りだすけど、ざわつきはそのまま。
 まぁ、真面目っぽい奴も中にはいるからそうゆう奴のためにも授業、進めなきゃって思うんだけど……。
 黒板に向かってると笑い声とか聞こえてくるんだよ。
 そう、このクラスってやたら笑う奴がいて……。
 拓耶と悠貴。
 なにがそんなおもしろいことがあるのか、いつも笑ってる。
 まぁ、ハシが転がってもおもしろい年代ってやつ?
 朝っぱらからうらやましい限り。
 でも、その笑いは俺のストレスを溜める以外の何ものでもないんだよ。
「拓耶。悠貴。……問題解けよ」
 そう黒板を指差すと、笑いながらも席を立って黒板に向かう。
 変に素直に従ってくれちゃうからまた厄介だったり。
 しかも、これがまたちゃんと解けちゃってたりで。
 扱いにくい生徒……。
 文句なんて言わせない、みたいなオーラが出てる気がする。
 かわいくないなぁ。
 そりゃあ、授業受けても全然わからないとか言われたら辛いんだけど。
 授業受けずにわかられるのも辛い……。
 俺ってなんで授業やってんだろうって気になってくるし。
 いつもこんな感じだった。


 憂鬱気分で2時間目。
 3年6組……。
 このクラスってホント、胃が痛くなる。
「ねぇねぇ、宮本先生彼氏いるの?」
 一番前の席の凪が聞いてくる。
 フレンドリーなのは嬉しいけど……普通にノーマルじゃないことを授業中に聞かれるのはちょっと。
 せめて、『彼女』って聞いて欲しい。
「いないよ」
 それでも、そう答えとく。
 ああ、『今は授業中だっ』って怒った方がよかったのかなぁ。
 でも答えないと凪の友達が『なんで答えてやんねーんだよ』とか怒ってきそうで……。
 やだな、俺。
 生徒を恐がってるなんて……。
 そういえば、その凪の友達、霞夜と凍也が見当らない。
 休みか……。
 駄目だろうけど少しホッとしてしまう自分がいる。
 気を取り直して、授業に入ろうと、黒板に向かった時だった。
 嫌なタイミングで教室のドアが開く音がする。
「……あー次、数学だったっけ……。もっと寝れてばよかったかも」
 嫌味でわざと言ってるわけじゃなくって、本心からそう言ってそうで尚更痛い。
 髪を赤く染めてピアスをたくさんつけてるんだ。
 ……っていっても、左右3つずつか。
 左右3つずつあればたくさんだよ、俺の中ではっ。
 さらに、カラコンで目が青くって……。
 いまどきの高校生はオシャレというか……恐い。
「数学だったら、寝てりゃ済むからいいんじゃねぇの?」
 後ろからもう一人。こっちは金髪でピアスは同じくたくさん。
 おそろいのカラコンみたいで、目は青かったり。
 寝てりゃ済むって……先生の前でよくもまぁ。
 先に来た赤髪のが凍也で、金髪のが霞夜。
 来ないと思ったのに……。
「……遅刻……遅刻」
 口で確かめながら出席簿に記録しようしていると、教卓を軽く叩く音が響く。
「宮本先生? 俺ら、気分悪くって保健室行ってたんだけど」
「だいたい、黒板なんも書いてねぇじゃん。まだ授業始まってないんじゃねぇの」
 凍也は笑顔が恐いタイプ。
 霞夜は普通に恐いかも。
 まだ始まって少ししか時間もたってないことだし……。
 実際、凪の相手をしていて授業はまだ進めてなかったから、俺は遅刻の記録をとらずに出席簿を閉じた。
「次からは……遅れてきたら後ろのドアから……」
「俺ら、あきらかに前の席なんだけど」
 そんなこと、言われても……。
 それに、俺、遅れてきたときの注意してどうすんだ?
 それよりっ
「遅れてこないようにっ」
 だよな。
「早目にくるとなんかいいことあんの?」
「授業始まってねぇじゃん」
 そうやってつっかかってこられるとよけい授業始められないってのっ。
 もう……だったらどう注意しろってんだよ……。
 少し笑いながらも2人は席につく。
 ああ、俺ってからかわれてるんだ……。
 そう思って、憂鬱なまま、もう心を入れ替えて授業に取り掛かろうとしたときだった。
「早目に来るとね。宮本先生の丸秘情報が手に入るんだよ♪」
「なっっ」
 凪と席が近い……そりゃもう隣と後ろだ。
 その2人に向かって凪が変なことを口走る。
 悪気がないからまたこれも困る。
 そりゃ、悪気があっても困るけどっ。
「なに? 俺らが来るまで宮本先生って自分情報してんの?」
「聞くと教えてくれるよ。ね?」
 ね? とか言われても困るんだけどな……。
 しかもそれは別に授業の初めに企画的に行われてるものとかじゃなくって。
 毎回、俺が来て授業を始める前に凪が話かけるからなのに……。
「それは早目にこないと駄目なわけ?」
「いつも授業の前に聞くもん」
 だから……それは勝手に凪が……。
 凍也も霞夜も、俺に聞かずに凪に聞くし。
「じゃ、今度、早目に来てみっかー。なぁ、霞夜」
「……ってか、別に5時間目とかんときに数学あったら間に合うけど」
「ねぇよ。数学俺らのクラス朝ばっか」
「あー……じゃあ、来てみっか……」
 なんだ、この会話は……。
 しかもなんて単純なんだ、こいつらはっ。
 俺情報なんて、なんもおもしろくもないのにっ。
 あぁ、凪が『丸秘』とか言うから……。
 別に秘密なんて俺ないのに。
 とにかく一件落着……?
 いや、次からどんな質問をこの2人にされるんだ……?
 駄目だ……もう逃げ出したい……。
 奴らに背を向けるのもなんだか恐くって、それでもとりあえず、黒板に向かって授業を始めるが、気が気じゃない。
 早く、終わってくれることばかりを祈ってしまっていた。


 もう限界だ……。
 1週間のうちで7組と6組が続く、この曜日が一番辛い。
 せめてもの救いは3、4時間目がなにも入っていないこと。
 とはいっても、高校の数学って予習しないと俺も忘れちゃってることとかあるしいつもは勉強とかしてるんだけど……。
 今日はなんだか疲れてしまった。
 5月ということで少しばかり職場に慣れてきたから気が緩んでるのか?
 慣れたところでこの生徒たちへの対応にはあいかわらず困ってはいるけど……。
 保健室で少しだけ、休ましてもらおう。
 ついでに胃薬も貰って……。
 ああ、カウンセリングとか受けたくなってきた。
 保健室って、精神的なものは癒してくれないのかな……。


「……柊先生、すいません……胃薬もらえますか?」
「あ、宮本先生。顔色悪いですね、大丈夫? あいにく、胃薬とかそうゆう飲み薬は今は学校で取り扱わないようになったんですよ。 体に合わない生徒もいるとかなんとかで……」
 もう……絶望的。
 せめて薬で胃だけでもリフレッシュするつもりでいたのに……。
「俺の私物でよければ、別の薬ならありますけど……飲みますか?」
 別の薬って……
「……何薬なんですか?」
「惚れ薬です」
 にっこりそう笑われても……今の俺には『もう、ご冗談を』とか笑える状態じゃなくって……
 むしろひく……。
 柊先生の私物ってくらいなんだから、おおかた頭痛薬か胃薬じゃないのか?
 普段から持ち歩いてるあたり、そこらへんが妥当だろう。
 胃も痛いが、頭も痛いから丁度いい。
「もらっていいんですか……?」
 そうそう、私物ってことは柊先生がお金を出して買ったわけで。
 じゃあ、『もらっていいんですか……?』じゃなくって、『いくらですか』かっ。
 俺ってばタダで貰うがめつい奴みたい。
「あぁあ……いくらですかっ」
 慌てて言い直す俺に少し笑って、コップに水を入れてくれる。
「タダでいいよ、そんなの」
 カバンから取り出された薬を渡され、俺は感謝しながらその薬を水で飲み込んだ。
「少し、横になったらどうですか」
「え……ベット借りてもいいでしょうか……」
「もちろん。ここは保健室ですから」
 たったそれだけのことで、ものすごく温かい気持ちにさせられる。
 
「あの……話、聞いてもらえますか」
 無理なお願いをしているとはわかっていたが、それでもつい、さっきの柊先生の対応が俺の気をよくしていてそんなことを言っていた。
「いいですよ」
 にっこりそう答えてくれて。
 やっぱ、保健室って癒されるなぁ……なんて思ってしまうわけだ。
 俺はベットに寝ころがりながら、柊先生に話を聞いてもらうことになった。



「……どうしても、生徒と上手くいかないんです……。俺、3年生の担当なんですけど、さっき7組と6組で授業してきて……。 どっちのクラスもざわついちゃってちゃんとした授業にならないんです……」
「7組と6組ね。例えば、誰が駄目だとかある?」
 駄目な生徒の名前をあげるなんて……。
 こんな風に生徒を差別するのってよくないだろうけど……でも限度がある。
 悪い生徒もいればいい生徒もいるんだから……。
「……7組に拓耶と悠貴っていう子がいるんですけどね。彼等はいつも笑ってて」
「あぁ、知ってます。彼ら、すっごく笑うでしょ。いつも楽しそうで。そっか、でもそれも授業中だと先生にとっては辛いですよね」
「あと……6組には、凪と霞夜と凍也って子が……ちょっと俺とは合わない感じで……」
「はは。3人とも保健室常連者ですよ。まあ、笑い事じゃないけどね。でも3人ともいい子ですよ。 凪ちゃんなんてフレンドリーに話し掛けてきたりしないですか? あっと……でもそれじゃあ授業が進まないか。 霞夜ちゃんと凍也は? なにが合わないんですか?」
何が合わないかって……
「俺……からかわれてるみたいで。言葉たくみに言いくるめられちゃって……いろんなことがちゃんと注意出来ないんです。 俺が、恐がってるってのもあるのかもしれないんですけど」
「見た目、恐い感じしますからね。でも、彼等はそうでもないんですよ。口は悪いけど、それほど人に迷惑をかける行動だとかはしてないですし……。 あんな格好ですけど、あの2人、友達たくさんいるでしょう? 仲良くならないとわからないかもしれませんが、いい子なんですよ」
 友達がたくさんいるだとか、いい子って言われても俺には全然わからない。
 まだ、仲良くないからか……。
 柊先生がうらやましい。
 なんていうか、どんな生徒とも仲がよくって……。
 どうしてだろ。
 授業中より、コミュニケーションとかとりやすいからかな、やっぱ。
 うらやましい……。

 でもなんとなく少し落ち着いて……保健室に来て、やっぱりよかったと思う。
「ちょっと暑いですね。まだ5月なのに」
「……暑いですか。それは、『あつい』違いですよ。……宮本先生、体が熱いんでしょう?」
 そう聞かれて、自分の体が火照っているのだと気づく。
 なんでだろ……。
 薬、俺の体に合わなかったとか……。
「……大丈夫ですか?」
 そう聞かれて頬に手を触れられると、その手がまた少しひんやりとしていて気持ちいい。
「柊先生……」
 少し自覚すると、体がどんどん熱くなっていくような気が。
 お酒でも飲みすぎちゃったみたいに。
「なんか、熱くって……薬合わなかったんでしょうか」
 そんなこと聞かれても、柊先生も困るだろうに。
 それでも、自分だけで考え込むのも辛くって聞いてしまっていた。
「熱いならとりあえず、1回、抜きます……?」
「……え……」
 抜くって……?
 目で訴える俺ににっこり笑うと、柊先生はいきなり寝転がっている俺の股間を擦り上げる。
「っぁっ……なにす……」
 反論しようとしたが、自分のそこが勃ってしまっているのに気づき、ものすごい羞恥心にかられた。
 俺、馬鹿だ。
 体が熱いとか言って、柊先生に訴えて……
「ごめんなさっ……気にしないで下さい、その、自分でなんとかするんでっ」
「つらい体を介抱してあげるのが、保健の先生の仕事なんですよ」
 やさしくそう言うと、柊先生は俺のズボンのベルトを外しチャックを下げ、中から取り出してしまう。
「っいいですっ……そんな」
 俺の言うことなんて無視で、柊先生は、包み込んだ俺のモノを直接上下に擦りだす。
「っン……ぁっ……や」
 こんなの……どうすればいいんだよ。
「宮本先生、彼氏いないらしいじゃないですか」
「えっ……ぁ……」
「凪ちゃんが、メールで教えてくれるんですよ。宮本先生の丸秘情報を」
 だから、別に秘密でもなんでもないのにっ。
 でも、生徒とメールとかもしちゃってる柊先生がちょっとうらやましい。
「俺と付き合いませんか?」
 ……一瞬、耳を疑うが、顔をしかめる俺に、もう一度……
「付き合いませんか?」
 って……。どうやら聞き間違いではないらしい。
 そんな馬鹿な……。
 男にそんなこと言われるなんて。しかも、あんなところを扱かれながらっ。
「はぁ…っ、ぁっ……俺、男は……」
「男だって、かわりはないですよ。女とのセックスより、あなたを気持ちよくする自信くらい、あります」
 なにを堂々とこの人は恥かしいことを口走っているんだろう……。
 あぁあ……体も熱いし思考回路が定まらなくって混乱してくる。
「……でも……ンっ……ぁっ」
「女よりも男の体知ってるんですよ……。ただ、刺激を待つ女より、刺激を与えてくれる男の方が、よくありません?」
 だったら、自分はどうなんだって話だ。
 刺激を待つ女が刺激を待つ男に代わっただけじゃないか。
 そんなことよりも今のこの状態。
 どうすればいいんだ?
 柊先生はベットに乗りあがり、あろうことか、俺の足の間に。
「ぁ……」
 ズボンに手をかけ、下着ごとゆっくりと引きおろされてしまう。
 もう、俺が逆にズボンをあげようとしてる手にも力が全然入らなくってどうにもならない。
「さすが宮本先生……薬が入ってるのに、いつまで理性保ってるんでしょうね」
「……くすり……?」
「言ったでしょう? 惚れ薬って」
 え……。
 誰があれを本当だと思うんだ?
 冗談じゃなかったのかっ?
 じゃあ……媚薬とか……。
「そろそろ体、熱くてたまらなくないですか?」
「はぁ…っ……っ…」
 駄目駄目。
 意識すると余計に体が熱くなってくる。
 落ち着かないと……。
 って、俺、下半身丸出しの状態で何が落ち着けるんだ?
 パニクってきた。
 だって本当に柊先生の言うとおり、体が熱くってたまらない。
 柊先生は俺の足を左右に開けさせ、膝を折り曲げる。
 なんだかほてった体が、外気にさらされ心地よさとか感じてしまう。
 って、俺、何感じちゃってるんだかっ。
 一度開けされられた足って、閉じづらいな……。
「宮本先生、処女ですか?」
「なっぁ……」
 なんてこっぱずかしい事をっ。
「男はって抵抗があるくらいなら、処女ですよね。それとも……俺と付き合いたくないから言い訳ですか?」
 言い訳とかじゃなくって……。
 ホントに男とはよくわからないんだけどっ。
 そりゃ職場が決まったとき、この学校ホモ多いって噂だから、 男同士の恋愛に対して、嫌悪感とか抱かないよう前もって気持ちの整理はつけてたけど、まさか自分が関わるなんて……っ。
「……初めて?」
「……あ、その……」
 そんなこと、言えないじゃないか……。
「答えないのなら処女じゃないとみなして、ハードにいきますけど」
 にっこりそう笑われると、逆に笑顔が恐い。
 あぁあ、凍也と同じタイプの人間?
 柊先生は自分の指を一舐めし、俺のモノからすでに溢れ出してしまっている先走りの液をその指で拭いとると、後ろへ一気に押し込んでいく。
「ひぁ……ぁあっ」
 内側から指で中をかき回されるみたいに動かされると、うそみたいに、さっき以上に体が熱くなってくる。
「ぁあっ……んやっ……せんせっ……」
 体が熱くって、どうにもならなくって、次第に射精感が高まっていく。
 なんで……こんなところに指入れられて体熱くなってるんだ?
 違うか、薬のせいか。
 それにこんな声まで……自分でもなんだかいやらしい気がして恥かしくなってくる。
「っぁ……ひぁ……やっ…」
「……俺って、あんまり気の長い方じゃないんですよ。処女には優しいんですけど、宮本先生は処女じゃないみたいだから、もう入れちゃっていいですか?」
 馬鹿な……。
 ありえない。
 入れるって……だって、アレをだろう?
 イキナリ入るわけがないじゃないかっ。
「あ……や……」
 ゆっくりと指が引き抜かれて、柊先生が自分のズボンのベルトを外す音がする。
「待っ……ぃや、柊先生っ」
 俺、このままズボン持って逃げればいいんだろうけど、体が思うように動かない。
 やられちゃうの……? 俺……。
 でもなんていうか……怖いだとか、嫌悪感とかとは違って、ドキドキしちゃってるような……。
 だって最近、忙しくって疲れてて……全然、抜いてなかったし、一人身だし。
 でも、いきなり入れるなんて、無理。
 というか、男にやられるなんてホントわけわかんない……。
「いいですか?」
 にっこり俺のを上下に扱き上げながら笑う柊先生に向かって、俺は、駄目だと首を振る。
「……駄目……っあ……無理……」
「無理じゃないですよ。経験者ならある程度、受け入れれる体にもうなっちゃってるでしょうし……」
 だって俺は経験者じゃないし……。
 柊先生は、自分のをそっといままで指が入り込んでいた箇所へと押し当てるもんだから、このままじゃホントに入れかねない。
「や……待っ、俺っ」
「なに?」
「ぁ……俺その……初めて、なんです……」
 なんかすっごく恥かしいこと、口走ってる。
 恥かしくって涙が溢れそう。
 顔とか絶対、必要以上に熱くなってる。
「じゃあ……どうして欲しいですか……?」
 どうしてって……
 というか、初めてだってことに対して驚きとかはないのかな。
 そう、さっき、確か処女には優しいって……。
「だからその……やさしく」
「やさしく?」
「してくださ……」
 アレ……。
 なんか、おかしくないか?
 やさしいとか、そんなこと以前に、俺ってばやる事自体に関してはどうなんだ?
 これじゃあ明らかに同意しちゃってるじゃないか。
 でももう後戻り出来ない状態。
 体も……薬のせいかめちゃくちゃ熱いし。
「熱いですか……?」
「は……い……」
「遠慮しないでなんでも言ってくださいね……」
 なんか…そういう風に言ってもらえると、すっごく嬉しい……。
「柊せんせ……俺……熱くって……おかしいんです……」
「……我慢してました? 大丈夫ですよ。後で正常に戻りますから。俺が、解放してあげますから……ね」
「は……い」
 また、ゆっくりと指を挿入され、中をやさしくかき回されると、自分の腰あたりが変に浮いてしまう。
「ぁ……ん、ぁっ…あっ…っ」
「薬のせいですかね。宮本先生……すごくやらしくて、かわいらしい……」
 上から、俺の体に被さるように見下ろして、少し不敵に笑う。
 それがなんだか色っぽく見えてしまいドキっとする。
「はぁ……ン……っ…ん……柊せんせっ…ぁ……っあっ」
「だいぶ……慣れてきたみたいですね。もう1本、入れますよ……」
「ん…っぁっ……やっ…」
「ちゃんとローションつけますから……ね?」
 やさしく、小さな子供に言い聞かすように言ってくれる柊先生に、俺はそっと、頷いてしまっていた。
 俺が涙でぼやけた視界の中から自分と繋がっている柊先生の手を見つける。
もう片方の手で、まだ入り込んでいない指先にローションを出しているのが目に入った。
「っやっ…ぁ……」
 その指先がゆっくりと、すでに入っている指に沿って入り込んで来る。
「ぁっ……駄目……っ…いや…っっ」
 少し、冷たく感じるローションと、そこを押しひろげられるような感覚に不安や緊張が入り混じる。
「……大丈夫ですよ」
 奥の方まで入り込んでしまった指先で、中を探るようにかき回す。
 いやらしくクチュクチュという音が耳に響いて、薬のせいで熱い体がさらに熱を帯びていき、どんどんとわけがわからなくなってくる。
「ふぁ…あっ…ンっ…ぁ…」
「ずいぶん……感じてる?」
 俺を見て少し笑うと、そっと指をずらして内壁をつつく。
「っひぁっ…ぁっ…やぁっ…なにっ」
 すごい…ソコつつかれるたびに、痺れるような快楽が襲ってくる。
「やめっ……ぁンっ…ぁあっ…くぅ…ンっ…や…ソコ…やぁあっ」
 ベットにつかれている柊先生の手に、自分の手を絡めて必死で握る。
「や……じゃなくて、イイでしょう……。もっと快感に素直になってみたらどうですか…?  生徒の前では大変でしょう? 俺の前ではそんな風にすることないから……全部見せて……」
 俺……生徒の前では、威厳示さなきゃとか情けないとこ見せなくないとか……
そうゆうこと考えてて、結構、辛くって……
だから、柊先生の言ってくれた言葉がなんだか嬉しかった。
ストレスだとかもやもやが全部吹き飛ぶ感じ。
俺がどんなに恥かしいところをみせてしまってもこの人は、全然、俺を変な目で見ないし……。
逆に、『見せて』とまで言ってきた。
いや、恥かしいには恥かしいんだけど……
なんとなく、この人なら、いい気がしていた。
「ぁ…ん……ぁっ…せんせぇ……」
「なに……?」
「…はぁっっ…や…もぉ…イク…」
「後ろだけで。イっちゃうんですか……?」
「ぁっ…あ…イっ…ちゃうっっ…やっ…もぉ…っ」
「そんなに気持ちいいですか?」
「はっぁっ…イイ…っぁっあっ」
そこまで言うと、指が俺のイイところを突くのをやめてピタリと動きを止めてしまう。
「ぁっ…ぃやっ」
「なにがですか?」
にっこりそう言われ、つい自分がやめられるのを嫌がってしまったのが、恥かしくなってくる。
だからなにがって聞かれると、困るんだけど。
「言ってくれないと」
「っ柊せんせ……俺っ…ぁ…」
 柊先生は、指を引き抜いてしまうと、腕を引いて俺の体を起こさせる。
「熱い?」
 その問いに頷くと、柊先生は、俺のシャツのボタンを外して、着ていた物をすべて取り去ってしまう。
 引き寄せられ、誘われるがままに、俺は柊先生の足を跨がされていた。
「こんなトコまで硬く尖らせて……ホント、かわいい」
 そう言うと柊先生は、俺の背中に手をまわし乳首をそっと舐め、口に含みながら吸い上げる。
「っンぅっ…っぁ…」
「さっきの続き……何が嫌か言ってくれませんか?」
 にっこり笑ってそう言われても……
「っ……そんな……」
「恥かしがって言わないんだったら、いつまでもこのままですけど……いいですか?」
 全然よくない。
 なんていうか、もう俺の体は欲しがっちゃってたまらない状態だし。
「っせんせぇ……イかせ……」
「もっと……具体的に言ってもらえますか?」
「っ…ぁ…指で……中……」
「指でいいんですか?」
 指でいいかって……
 指じゃなかったらアレ……?
「わか……んな」
「きっと……絶対、気持ちいいですよ。恐い?」
 だって、あんなモノが入ってしまうんだろうか。
 でも、指であんだけ中かき回されたから大丈夫かも。
 なんか……いやらしいんだけど、俺、だんだん欲しくなってきた。
「せんせ……」
「手、回して……?」
「……は…ぃ」
 そっと、柊先生に抱きつくように、頭に手を回す。
 柊先生は、俺の背中に回した両手で双丘を押しひろげると、中にゆっくりと自分のモノを押し込めていく。
「ぁあっ…せ…んせぇ…っ…や…ぁ…っ」
 奥の方まで入り込んでしまうと、ゆるりと俺の体を揺さぶって中を刺激する。
「ぁン…ぁっ…あっ…やぁあっ」
「どうして欲しいか、言ってくれますか?」
「ひっくっ…ぁンっ…あっ…ぁあっ…も…っと…」
 そう言ってしまったのを聞いて、柊先生が軽く笑うのが耳元で聞こえた。
 羞恥心で顔が熱くなる。
 でももう駄目……。
「っおねが……せんせっ……」
「もっと……どうして欲しい?」
「…っ…わか…んな……ぁ…あっ」
 それでも、柊先生は、少し激しく俺の体を揺さぶりながらイイ所を突いてくる。
「ひぁンっ…ぁっ…あっ…せんせぇっっ……」
「ノってきてくれたとこ、悪いんだけど……授業始まったんで……この時間って、生徒が来るかもしれないんで声、抑えてもらえますか……?」
「っあっ…ぁあっ…いやっ…」
 自分で言ってることが理解出来なくなってくる。
 恥かしいのに……。
 だって、さっき、『全部見せて』って言ってくれたからっ。
 隠すのとかつらいから、全部さらけ出してしまいたい。
「……生徒にバレちゃったら……宮本先生、困りません?」
「…っぁ…」
 少し、困った感じに言われると、自分がものすごくわがままなのが思い知らされて、恥かしくってたまらなくなる。
「…ごめ……なさ……」
「俺は、いいですけどね」
 笑ってそう言うと、俺の体を押し倒してから激しく突き上げる。
「やぁっ…ぁあっ……んっ…ンっ…くぅ…んっっ」
 めちゃくちゃ気持ちよくって、自分の腰が浮く。
 その時、ガラガラっと、保健室のドアが開く音がする。
誰か来たんだろうけれど、もうそんなことに気を止めてられない。
「んっ…ぁっ…あっ…んンっ…っ…ンっ…」
「柊先生、俺、次サボるからよろしく」
「じゃ……名前書いといて……」
「へーい」
 聞き慣れた声……。
 凍也だ。
 よりによって、俺の受け持ちの生徒とは。
 カーテンで区切られているせいで、見られはしてないけれど、声が……絶対聞かれてる。
 こっちには、コップがカチャカチャとあたる音が聞こえ、凍也がなにかを飲もうとしているのがわかった。
 いつまで滞在するつもりなんだろう……。
 激しく突き上げられると、もう声殺せない。
「ふっ…ぅくっ…ぁっ…ぁっ…んや…っ…ンっ…んぅ…」
「声……我慢できないみたいだから、ちょっと、ソフトにしましょうか?」
 そう言うと、柊先生は、激しい突き上げを止めてしまい、焦らすように内壁を擦りあげる。
「ぁ…ん…んっ…くぅン…っ…」
「柊先生、また誰かとやってんのかよ」
 少し、呆れてるのか、軽く笑いながら凍也が言う。
 また……って?
 柊先生って、やっぱ、結構、ココでやっちゃってるわけ?
 なんか、柊先生のこと別に好きってわけじゃなかったのに、少しショックを受けてしまう。
「ぃや……せんせ……っ」
 俺は自然とベットにつく柊先生の手に自分の手を絡めた。
 焦らされるのがいやなのか、柊先生が他の人とやってんのがいやなのか、わからなくなってくる。
 他の人ともやってるんなら、誰よりも激しくして欲しいだとか……
 変に嫉妬心まで出て来てしまう。
「声……聞かれてますよ」
「ん………っいや…っ…」
「じゃあ……どうしますか?」
 もう……声とかどうでもいい気になってきていた。
「……し……て」
 俺……変態かも。
 もうおかしくなってるよな。
 柊先生に軽く笑われてしまう。
 それでも、俺の頭をそっと撫でてから、腰を激しく突き上げられる。
「っぁっあっ…んやっ…ぁあンっ…せんせぇ…」
「イイ……?」
「…っぁ…ン…ぃいっ…っ…やっ…もっと…っ」
 激しく内壁を擦り上げられながら、先端でイイ所を突かれると、涙が溢れてくるほどに気持ちがよくって、自分の腰まで揺れてしまう。
「ひっくっ…ン…っや…っやンっ…もぉっ…ぃくっ」
「……イきそう?」
 俺は、何度も頷いて応えていた。
「っはぁっ…んっ…やぁっ…いくっ…せんせっ…ぁっあっ…ぁあああっっ」
 学校なのに……教師という立場も忘れて俺は欲望を放ってしまっていた。


「ね。女とやるより悦くないですか?」
「……そ……んな」
 確かに気持ちいいけれど……『はい』なんて言えないし。
「柊先生、また処女食ったわけ? ね、次の授業、俺、買い物行ってくっけど、保健室にいたって記録しといていい?」
 凍也だ。
 ったく、こうやってサボってるのかよ。
 一見、いつも保健室だらけで病弱っぽいのに、こんな出歩いてたなんて……。
 柊先生を見ると、口元に指をあて『シーっ』と、言葉を封じさせる。
 そのまま柊先生はベットから降り、俺を置いてカーテンの向こう……凍也の方に行く。
「1・2時間目はちゃんと授業受けた?」
「出たって」
 嘘だ。
 遅刻してきたくせに。
 あぁ、でも結局は授業始まってなかったから遅刻にならないのかなぁ。
 というか、なんで柊先生がそう聞くんだ?
 だって2時間目の時、『保健室に行ってた』って。
 やっぱり、嘘なのかよ。
 でも、あの時は根拠もなんにもないから言えなかったし。
「ホントか? また寝てたんじゃないの?」
「だって、朝っぱらから、数学って、やってらんねくね?」
 そう聞こえて、俺は怒りよりもなによりもショックを受けた。
 そりゃ……数学ってホント朝からやるのは辛いって俺でも思うけど。
 それに好きな奴と嫌いな奴にはっきり別れそう……。
 凍也は数学が嫌いなんだよな……しょうがないよ。
 でもっ
「……なんでそんなに、数学嫌いなんだよっっ」
 俺はつい、カーテンを開けてそう聞いてしまっていた。
「……え……」
「宮本先生、せめて服着てからカーテン開けてください」
 柊先生に笑われて、自分がまだ裸だったことに気づく。
「ぇ、あっ……あぁっ」
 俺は慌てて、カーテンを閉めて、服を着た。
 が、最悪だ。
「あーあ……。柊先生、なにしてんだよ。かおるちゃん、みんな狙ってんのに」
「だからこそ、誰よりも先に……ね」
「……かおるちゃん……?」
 少しだけ、カーテンから顔を出して聞いてみると、2人そろって俺を指差す。
「……俺っ?」
「だって『よしはる』だなんて先生に似合わねぇじゃん。だからみんなかおるちゃんって呼んでるぜ?」
「……どうして」
「芳春の芳が、かおるって読めるからですよ」
 みんな、そんな風に考えてたのか……。
 というか、俺、芳春の芳がかおるって読めるとか、今まで全然考えたことなかったのに……。
 ……そんなことより『みんな狙ってんのに』って今……。
「なんか、かおるちゃんがあんなに淫乱だなんて知らなかったー」
 いやらしく笑いながら凍也に言われると、さっきまでの自分を思い出して恥かしくなる。
「アレは……だって、薬とか飲んじゃったから……」
「ふぅうん……。ま、いいんじぇねぇの? 柊先生が彼氏なら輪姦とかされずに済むんじゃねぇ?」
「はぁ……?」
 輪姦とか……先生相手に言うなよ……。
「それに俺、別に数学嫌いじゃねぇし」
「え……」
 そういえば、別に嫌いって直接言われたわけじゃないけど……。
「朝が嫌いなだけ。朝っぱらから数学ってかおるちゃんも辛いだろ?」
 確かに……。
「だからこれからは、朝は楽しくかおるちゃん情報の会にしようぜ?」
「な……え……?」


 次の日……。
 1時間目からの数学にも関わらず、霞夜と凍也は早くから教室に来ていた。
 凍也……霞夜にも昨日の事、言ったりしたんだろうか……。
「宮本先生、彼氏出来た?」
 凪がそう聞いてくるのは、柊先生にやってしまった事を聞いたからだろうか。
「別に……いないよ」
「じゃ、付き合ってもいない人とでもやっちゃうんですか?」
 わざといやらしく敬語で凍也が聞いてくるしっ。
 ホント、逃げ出したい……。
「……なんか、したわけ? 宮本」
 誰でもかれでも呼び捨てにする奴は霞夜。
 どうしてこうなんだろう。悪気とかはないのかなぁ。
「やるっつったらセックスしかねぇじゃんかよ、なぁ? 凪」
「祝・貫通式だよね〜」
「………」
 あれ……霞夜はそうゆう話題、ノってこないのか。
 俺ってまだまだ、知らないこと多すぎ。
 先生って、ただ勉強教えてりゃいいってわけでもないもんな……。
「じゃ、俺の方が経験豊富だから教えてあげる。どうしたら相手の人が悦ぶか……」
「ちげぇよ、俺が攻としてどうされればうれしいか教えてやるよ」
「違うよっ。同じ立場として教えるもん」
「わかってねぇなぁ。凪だって、相手が悦んでるとは限らねぇだろっ?」
「なっ……。凍也はネコの気持ち、わかってないっ」
「凪はタチの気持ちわかってんの?」
 なんか俺が原因でもめてるんだけど……
 どうすればいいのかわかんない。
 俺ってホント、先生失格かも。
 にしても、2人とも俺のこと思って言ってくれてるのかな。
「あの……授業……」
「凍也なんてただ欲求不満にハメてるだけじゃないの? 相手の気持ちも考えずにさ」
「凪こそ……かわいこぶって喘いでりゃいいってもんでもねぇんだよ」
 って……全然、聞いてもらえてないなぁ。
「……おまえらそろそろだまれって……。それ以上言ったらキレる」
 思いがけず霞夜が止めに入る。
「……じゃ……授業を」
 なんかよくわからないけれど、やっと授業が始められた。

 まだ、教師生活短いのに、こんなにもいろいろあるなんて……。
 生徒の考えてることも行動もさっぱりだし。
 前途多難だと思ったが、なにはともあれ、霞夜と凍也が遅刻しなくなったから、とりあえずよかったかな……?