「宮本先生。今度の木曜日、夜会ってくれますか?」

 授業の合い間の休み時間、突然、柊先生に声をかけられる。
 声をかけられるのも、誘われるのもよくあることだけれど、こう前もって約束するのは珍しい。
「あの……木曜日ですか?」
「金曜日だったら、そのまま泊まれたのにって思いました?」
 あいかわらず先生は、俺の心をすぐ読み取ってしまう。
「そういうわけじゃないですけど、金曜日の方がお互い気がラクじゃないですか?」
 やっぱり、翌日仕事というのと休みというのとではだいぶ違う。
「俺は木曜日がいいんですけど、ダメです?」
「いえ、ダメじゃないです。じゃあ仕事後に……」



 そう約束した数日後、木曜日を迎える。
 もしかしたら、金曜日は柊先生になにか用事があるのかもしれない。
「せんせー。なぁにボーっとしてるんですかー?」
 からかうよう生徒に声をかけられ、いまが授業中だと言うことを思い出す。
 なにやってんだ、俺は。
「ボーっとなんてしてないってば。それより早く問題を……」
「もう解きましたけど?」
 本当に、俺はボーっとしてしまっているのかもしれない。
 気を取り直し、授業に集中する。
 そのつもりでも、つい柊先生のことを考えてしまうのはもうしょうがないこと。
 仕事をすべて終え、俺は保健室へと向かった。

「失礼します」
 ドアをノックし扉を開けると、期待通りそこには柊先生がいた。
「宮本先生、お疲れさまです」
「お疲れさまです」
 柊先生は、すでに荷物をまとめ、すぐにでも帰る準備を整えている。
「じゃあうちに一緒に来てくれますか」
「先生の家ですか?」
「はい。うちでご飯食べましょう?」
 先生の家でご飯を食べるのは初めてじゃない。
 それでも木曜日だということ違和感が拭えない。
 どうして今日なんだ。
 まあ、俺も嬉しいから大した問題じゃないけれど。
 俺は、誘われるがまま柊先生の車へと乗り込んだ。
「明日も仕事ですし、今日はお酒抜きにしましょう」
「そうですね……」
「なにか気になります?」
「あ……木曜日に柊先生の家に行くのは珍しいと思って」
「……宮本先生、最近仕事に集中しすぎじゃないですか」
 唐突な先生の言葉に俺は首を傾げる。
「そう……ですか?」
「はい。今日が……なんの日か忘れちゃうくらいに」
 隣から柊先生の手が俺の手に重なる。
 たったそれだけで、俺は少し緊張してしまっていた。
「誕生日、ですよね」
「え……」
 空いた手で携帯を取り出し日付を確認する。
 確かに俺の誕生日だ。
 すっかり頭から抜けていた。
「俺、最近忙しくて」
「わかってます」
「……誕生日覚えててくれたんですね」
「当たり前じゃないですか」
 柊先生は俺の手を取ると、唇を寄せる。
 なにをするか眺めていると、柊先生は片手で運転したまま、俺の指先を口に含んだ。
「ん……」
「今日は誕生日なんで、して欲しいこと言ってください」
「して欲しいこと……ですか」
 つい反射的にかぁっと顔が熱くなる。
「……そんなの……わかりません」
「じゃあ、俺が勝手に決めちゃっていいですか?」
「それだと、俺じゃなく柊先生がしたいことになりません?」
「そうかもしれませんね」
 柊先生は軽く笑い、駐車場に車を停める。
「せっかく1つ歳取ったことですし、新しいこと覚えてみます?」
 企むような先生の声に緊張が走る。
「なんですか、新しいことって……」
「それを今から教えるんですよ」
 俺は、断ることも受け入れることも出来ず、ただ柊先生と部屋に向かう。
 先生の部屋に入り扉が閉まると、すぐさま、先生は後ろから俺の体を抱きしめた。
「あ……」
「ちゃんと教え込んであげますね」
「ま、待ってください! 今日はご飯食べるんですよね?」
「それもありますが、宮本先生の誕生日祝いがしたいんです」
「いま先生が俺を抱いてるのと、関係あるんですか?」
「ええ。教えたいんです。いろんなこと」
 後ろから耳元で囁かれ、体がゾクリと震え上がる。
「ん……」
「嫌ですか?」
 あいかわらずだ。
 その聞き方はずるい。
「嫌じゃ……ないですけど」
 俺たちは2人、ベッドに乗り上がる。
 先生は座り込む俺を後ろから抱き、ベルトを外した。
 ズボンのホックを外し、チャックを下ろす。
 それだけで俺はもう期待してしまう。
「期待してますか?」
 やっぱり柊先生にはなぜか悟られる。
 なにも答えないでいると、先生は俺のモノを取りだし、指先を先端に這わせた。
「ぁ……あっ」
 ピクリと跳ねる体を、先生の空いた手がぎゅっと抱えてくれる。
 まだ少し撫でられただけだというのに、気持ち良くてたまらない。
「はあっ……ぁ……んぅっ」
「もうトロトロですね」
「あ……だって……っ」
「ちょっと久し振りですもんね」
 柊先生の言う通り、久し振りのせいか、すぐその気にさせられてしまう。
「ん……はぁっ」
 溢れ出て来た先走りの液を、柊先生の指先が拭う。
 糸の引く様を見せつけられ羞恥心を煽られるが、それすら俺を感じさせる要因となっていた。
 優しく柊先生が、俺の亀頭へとぬめりを撫でつける。
「ぁあっあっ……ん、んっ」
 ゆるゆると円を描く柊先生の指先に合わせ、俺の腰はわずかに揺れ動く。
 柊先生だって、気付いているだろう。
 恥ずかしくなる俺の背に、柊先生の熱いモノが押し当てられる。
 こんな俺を見て、興奮してくれている。
「ぁん、ひゃっ、んぅっ」
「芳春……声、かわいくなってきた」
「やっ……」
「いや? もっと聴かせて」
 だからそうやって耳元で囁くのは反則だ。
 従いたいと思ってしまう。
 俺は小さく首を横に振るけれど、俯くと相変わらず優しく俺の亀頭を撫で続けてくれる柊先生の指先が視界に入った。
 溢れ出た液が何度も何度も塗りつけられていく。
「はぁっん! あっぅんっ! ひぅっ」
「声、殺してる?」
 俺の腰を抱いていた手が唇を撫で、指先が口内へと差し込まれる。
 催促するよう舌を撫でられ、なんだか自分でもさきほど以上にエロい気分になっているのがわかった。
「は……んっ、んぐっ」
「上も下も、すごい溢れてる」
 柊先生の指先へと溢れ出てしまった唾液が伝う。
 飲み込もうとしても、2本に増やされた指先で口内を掻き回されると、それすら上手く出来なかった。
「……芳春……かわいい声で鳴いて」
 また囁かれ、先生の舌が耳に絡みつく。
 ゾクゾクして、たまらなくて。
 気付くと俺は小さく頷いていた。
「……ぁ……ん!」
「もっと……あんあん言える?」
「っ……あ、ん!」
「おかしいなぁ、芳春はもうちょっと上手に鳴ける子でしょ?」
 先生は少し俺を苛めるよう、撫で続けてくれていた亀頭に軽く爪を立てる。
「やぁんっ!!」
「そう……上手。その調子で……ね」
 絶妙な強さで立てられた爪が、先端を引っ掻くたび、声が抑えられなくなってしまう。
「あ、んっ! あ、ぁあっ、あんぅ!」
「亀頭だけでイきそう?」
「っ……ん、あっあん、あっ、ぃくっ!」
 ときどき爪を引っかけながら、何度も先端を撫で回される。
「ひぁっ……ぁあっ! あぁああっ!」
 俺は柊先生の言う通り、先端を撫でられただけで達してしまった。

「……良かった?」
「はぁ……あ……はぃ……」
「それは良かったです」
 柊先生は萎えた俺のモノを左手で掴むと、亀頭に右の手の平を当てる。
「……なに……」
 まったく意味がわからなくて、俺は抵抗もせず後ろの柊先生に聞く。
「言ったでしょ。誕生日だから新しいこと学ぼうって」
 新しいこと。
 確かにそう言われていた。
 それがなんなのかわからないでいると、手の平が亀頭を擦る。
「ひぁっ!? あっ、あぅ……なにっ」
「知りたい?」
 俺はビクビクと震え上がる腰を抑えられないまま、頷く。
「芳春は、後ろで射精することも、ドライでイクことももう覚えたし、漏らしちゃったりもしたでしょ」
 改めて説明され、かぁっと顔が熱くなる。
 それでも、やめて欲しいと言う余裕はない。
 ただ、わけのわからない刺激に耐えるよう先生の腕に爪を立てる。
「ぁあっ……あっ!」
「だから……次は、潮噴きしてみようか」
 潮噴きだなんて、一部の特殊なAVで女の人がするものだ。
 ……そう俺は思っていた。
「うそ……っ」
「本当」
「やだっ、あっ……俺っ」
「出来るかな、芳春」
「俺っ……あっ……あっ、男、で……」
「男なのに潮噴き覚えちゃうのって、すごくかわいいよ」
 そもそも理解出来なくて、俺は首を横に振る。
 それでも、柊先生は少し強めにソコを何度も何度も擦ってしまう。
「ぁあっ、やぁっ……やだっ、変っ、やぁっ!」
 ビクビクと震え上がる体を、先生はぎゅっと抱きしめてくれた。
「んやぁあっっ!!」

 大きく体が跳ね上がり、一瞬なにが起きたか理解出来なかった。
 ただ、先生が手を止めてくれて、ゆっくり目を開くとその手がベタベタに濡れていた。
 精液とか、先走りの液とか、そんなものではない。
「ひっ……う、俺……っ漏らし……」
「違うよ。潮噴いちゃっただけ」
 失禁となにが違うのかわからない。
 もう一度、先生は手の平をあてがう。
「分からなかったんなら、次はちゃんと見てようか」
 そう言い擦られると、俺はまた耐えがたい感覚に襲われる。
「やぅっ、あっ! ぁあっ、あぁあっ!」
 今度ははっきりと、確認した。
 自分のから、透明の液が噴き出す瞬間を。
「俺……あ……」
「かわいいよ、芳春……」
 そっと手を離され、顔を寄せらせる。
 振り返った俺へと、先生は口を重ねてくれた。
「ん……はぁ、ん……」
 ねっとりと絡みつく舌先に、俺の頭はぼんやりするが、背中に当てられた柊先生のモノは硬く主張したままだ。
「いまは強制的に噴かせちゃいましたけど、中弄って、たくさん潮噴きしちゃうのもいずれ覚えましょうね」
「はぁ……俺、そんな……」
「うん、ゆっくりでいいよ。順番に、年を重ねるたび、体で覚えて……」
 先生の指先が、すでに待ち構えるようヒクつく俺の秘部へと入り込む。
「ふぁっあっ……ん!」
「気持ちいいこと覚えて、俺無しじゃ生きられない体になってください」
 ずるい。
 俺は、反論するよう先生の腕に爪を立てる。
「はぁ……俺、もうなってます……っ」
「……俺無しじゃ生きられない体に?」
 耳元で確認され、コクリと頷く。
「……体だけじゃ……無いですよ」
 心から柊先生のことを求めてる。
 きっと、この人無しじゃ俺はどうなってしまうかわからない。
 さすがに生きていられないとは言わないけれど、俺のなにか一部分は欠けてしまうことだろう。
「俺だけ……こんなにも心も体も……ずるいです」
 俺の言葉を聞いてか、柊先生はぎゅっと体を抱きしめてくれる。
「ずるくなんてないよ、芳春」
 入れたまま動かされないでいた指先が、ゆっくりとソコを押し広げていく。
「んっ……はぁっ、あっ……」
「……俺はとっくに前から、芳春無しじゃいられない」
 囁かれ、それだけで体がビクリを跳ね上がる。
 指を引き抜かれうつ伏せに寝かせられかけるが、それを拒むよう俺は振り返った。
「あの……今日は前からでも、イイですか」
「ん……バックからの気分じゃない?」
「……はい」
 理由は伝えなかったけれど、どうせすぐにバレてしまうだろう。
 仰向けに寝転がり、ゆっくり柊先生のモノが入り込むと、俺は先生の背に手を回した。
「はぁっ……ん、せんせっ、あ、せんせぇ」
 自分でも恥ずかしいくらい口調が甘えている。
 そんな俺を甘やかすよう先生は頭を撫でてくれ、俺の体を抱き起してくれた。
「……芳春……そろそろ名前で呼んでみる?」
「え……」
 先生のモノを奥まで咥え込んだまま、しがみつく俺に先生はそんな提案をしてくる。
「柊……さん」
「それもいいけど……下の名前」
「……秋……正さん」
 たったそれだけのことなのに、恥ずかしくてたまらなかった。
「もっと、言える?」
 先生は、そう言いながらも下から俺の体を突き上げる。
「ひぁっあっ、ん、秋正さぁっ……やぁっあっ」
 まだ呼び慣れないけれど、いつかはこれがまた普通になるのかもしれない。
「好きだよ、芳春……」
「はぁっ……あっ! 俺もっ……好き……あっ、秋正さっ……あぁあっ!!」
「はぁ……中で、出していい?」
 その言葉に、俺の体は震え上がる。
「ぁっ俺っ……出来な……っ」
「分かってる……ちゃんと、俺が綺麗に掻き出してあげる。だから……いい?」
 熱っぽく頼まれたら断れるはずがない。
 それ以前に、なんだか出されたいだなんて思ってしまう自分がいた。
「出し……てっ」
「いいんだ?」
「はぁっ、はい……んぅっ! ぃくっ……ぁあっ、いくっ」
「ああ……そんなにイクイク言われると焦らしたくなるな」
 からかうよう少しだけ速度を緩められ、俺は反射的に先生に爪を立てた。
「んやぁっ! やっ……!」
「このままじゃ中途半端にイっちゃいそうですね」
 わかってるくせに、どうして苛めるのだろう。
 ……そんなこと、俺もわかってるんだけど。
「はっん、んっ……動……いてっ」
「もっと、言って?」
「ひぅっ……ん、秋正さっ……ぁあっ、俺っ……も、イっちゃう……っ」
「ほとんど動いてないのに?」
 さきほど突き上げられた余韻だけで達してしまいそうで、俺は必死に先生へとしがみつく。
「いくっ……やっ……やだっ……もっとっ」
「……いいよ」
 先生は俺を許してくれるよう頭を撫でると、下からまた突き上げてくれた。
 すぐさま俺は我慢出来ず、その場で射精してしまう。
「ぁあっ! あ、ん、あぁあっ!!」
 俺の中に、先生のものが流れ込んでくる。
 震えあがってしまう俺の体を、先生はぎゅっと抱きしめてくれた。



 ぐったりと寝転がる俺の中へと柊先生が指を入れ、残った液を掻き出してくれる。
「はぁ……あ……ん……んっ」
「感じないでくださいね。でないと終わらないんで」
 そう言われても、好きな人の指が入っているのだ。
 どうしてもつい感じてしまいそうになる。
 必死で、他ごとを考えようと思っても難しい。
「あっ! んぅ……」
「ああ、掠めちゃった? 芳春のイイ所」
 小さく跳ね上がる俺の体を先生は見逃してくれない。
「せんせ……あっ……まだ……ですか?」
「ん……」
 先生は、俺の中に指を入れたまま、耳元へと顔を寄せる。
「ごめん、芳春。今日はたくさん出しちゃったから、もうちょっと残ってるかも」
「っ……」
 まるで囁くような口調に、俺の体はまた熱くなってしまう。
 入り込んでいる先生の指をぎゅっと締め付ける。
「んっ……んぅっ!」
 締め付けた拍子に、先生の指の感触をまざまざと感じてしまい、また体が震え上がった。
「ぁっ……ぁあっ」
「……そんないやらしい声出さないでください」
 そう言う先生の声だって、少し熱っぽい。
 ぬるつく指先が、内壁を押さえつける。
「ぁあっあっ! そこっ」
「ココ……好きですよね」
 ワザとだ。
 さっきまで感じないでなどと言っていたくせに、その指先は確実に俺を感じさせるものだ。
 ぐにぐにと中を拡げられていく。
「ぁんっ! あっ……はぁっ……せんせぇ……」
「もう1回、イかせていい?」
「はぁっ……はいっ……あっ……秋正さっ……ぁあっ」
「ずるいですよ……俺だってめちゃくちゃ我慢してるのに、名前で呼ぶなんて」
 そんなこと、先生には言われたくない。
 いつも、先生が俺にしていることだ。
 視線を落とすと、先生のモノもまた硬くなっているのが視界に入る。
 もう一度……そんな欲望が膨れ上がってしまう。
 つい、自然と俺は先生のモノへと手を伸ばした。
「ぁっあっ、秋正さぁっ……いくっ」
「俺の握りながらイっちゃうの?」
 恥ずかしいのに、俺は止められず掴んだ先生のを軽く撫で上げる。
 先生もまた、俺の中を掻き回しながら、空いた手で俺のを擦り上げてくれた。
「イっ……ぁあっ! いくっ、ぁっあっ! あぁあっ!!」
 精液を吐き出し、ぼんやりしている間にも、先生は中から全部を掻き出してくれていた。

「すごくかわいかったです」
「はぁ……」
 先生のモノを掴んでいた俺の手に、先生の手が重なる。
「あ、俺……その、すみませんっ」
 握ったまま何もできずにいた俺の手を使い、先生が擦り上げてく。
「っ……あの」
「少しくらい借りてもいいよね? 芳春の右手」
 中途半端になっている先生のを処理するくらい、もちろん構わない。
 そうさせてしまったのは俺だ。
「……いい、ですけど」
 先生に誘導されるよう擦り上げるが、なんだかまた少し変な気分になってしまう。
 俺は少しだけ強引に先生のモノから手を引いた。
「……芳春?」
「……あの、手じゃなくて俺……口で、しますから」
 そう伝えると、先生はふっと笑ってくれる。
「また欲しくなったりしちゃわない?」
「……大丈夫です」
 たぶん、さすがに何度もイったし、我慢出来るだろう。
 そう思いたいけれど、やっぱり口内を先生ので擦り上げられたらどうなってしまうのか、自信はない。
 そのときはそのときで、きっと先生はまた付き合ってくれる。
「……やっぱり、今日が金曜日だったらよかったですね」
「芳春……そんなに夜通ししたかった?」
「そ、そうじゃないですけど」
 そう言ってるようなものだと後で気づく。
「どうしても当日に祝いたかったんで。よければまた、明日も一緒に過ごしましょう?」
「……はい」
「芳春。生まれて来てくれて、ありがとう」