やばいって、俺。
 椿さんとキスしてる。
 舌とか、絡まってくるし。
「ん……」
 しかもこの人のキス、めちゃくちゃ気持ちいいかも。
 ……違う。
 俺がいま、ボーっとしちゃってるからだ。
 さっきドライでイっちゃって、すごく気持ちよくて。
 そんな中、キスしてるから余計気持ちよく感じちゃって。
 ……頭働かない。

 働かないのに、椿さんの手が俺のを掴んで擦りあげる。
「んぅうっ! ンっ!」
 椿さんが口を離してくれて、その隙に大きく息を吸う。
「っ……はぁっ……んぅっンっ」
「奏汰、さっきすごい声出してたね」
 そういうのスルーしていただきたいのに。
 俺のを掴んでいた椿さんの指先が、さっきまで棒が入り込んでいた箇所を撫でる。
「あっ……」
「指、入れるよ」
「えっ……ちょっと、椿さっ」
「さっき、棒入れちゃったし、ヌルヌルしてるから、大丈夫」
「いや、物理的な問題じゃないんですけどっ」
「そう?」
 そう? じゃなくってっ。
 そうこうしているうちにも、指先が少しだけ入り込んでくる。
「んっ! んぅ……」
「まだ、体に力入らないんでしょ」
 その通りで、どう拒めばいいのかよくわからない。
 ゆっくりと、指が入り込んできているってのは理解出来るのに。
 椿さんの指……。
 俺ん中、入ってる。
 チラっと椿さんの顔を窺うと、俺の股間あたりへと視線を送っていた。
 椿さんは、ちゃんと服着てるのに、俺だけ下半身丸出しで、こんな足開いてて。
 恥ずかしくて、胸元のシャツを掴む。
 ゆっくり、ゆっくり、指が抜かれたり、挿し込まれたり。
 よく見えないけど、考えただけでたまんない。
 俺、いますごいエッチなこと、この人としてるんだ。
「あっ……ん……っ」
 やだ。
 なんだろ、俺。
 いま、ゾクってして、腰揺れたかも。
 だって、椿さんが指動かすから。
 腰動かさないと、スムーズに抜き差し出来ないし。
 別に助けるわけでも欲しいわけでもないんだけど、自分への負担が軽減される気がして。
 それで、ほぼ無意識に動いちゃってるんだと思う。
「はぁっ……んぅっ! ンっ」
 ほら。
 少し腰浮かすと、ラクに入ってくれる。

「奏汰、Hなこと考えてる?」
「はぁ……っ、考えてなっ……」
「すごい勃起してるし、Hな顔してる」
 Hな顔ってなんだよ。
 そう思っていると、椿さんと目が合った。
「中、探っちゃうね?」
「え……っんっ!」
 前置きをして、椿さんが中を指で押さえつける。
 さっきゾクってしたとこ。
 変なとこ。
「ぁあっ! んっ……そこっ」
「うん、なに?」
「ゃ……あっ……! だめ……もぉっ」
「ホント、イきたくて仕方ないんだ?」
 空いている椿さんの手が、俺の股間を撫でて、亀頭に軽く爪を立てる。
「ゃああっ……んぅっ! やぁっ」
「いつもより、Hな声出てる」
 少しからかうように言われてしまうが、抑えられなった。
 自分でもわかってる。
 なんだ、この声。
 いやらしい。
 抑えなきゃ……。
 口を押さえるべきなのに、掴んだシャツが離せない。
「ぁあっ、あっ! はぁっ」
「中撫でられながら、亀頭弄られるの好き?」
 わからない。
 ……たぶん、好きかもしんない。
 めちゃくちゃ気持ちいい。
 中から押さえつけられて、ゾクゾクして。
 痛いって思う直前くらいの絶妙な強さで亀頭を指先や爪で弄られて。
「ぁんっ……んぅっ!」
 やば……。
 あん、とか言っちゃった。
 最悪。
 でも、頭ボーっとしてうまく働かない。
「はぁっ……あぁあっ……あんっ! やぁっ」
「んー……どうしたの? 涙まで流しちゃって。奏汰、気持ちイイ?」
「ひぁっ……ぁあっ、んぅっ……ぃくっ……」
 椿さんの問いには小さく頷いて応える。
 けれどとにかくイってしまいそうで、それどころじゃない。
 もう何度か椿さんにイくところは見られてるからいいんだけど……っていうか、今日何度目だ?
「椿さぁっ……ぁあっんっ! あんっあっ、あぁああっっ!!」



 イってしまうと、椿さんは俺のモノから手を離してくれた。
 けれど、中に入り込んだ指はそのままで、ゆっくりと掻き回す。
「はぁ……あ……椿さ……」
「かわいいね、奏汰は。お尻の中、そんなに気持ちいい?」
 なんで、こんなに尻の中が気持ちいいんだよ。
 意味わかんないし。
「椿さ、俺っ……あっ、なんで……っ」
「なに? わからなければ教えてあげるよ」
「中っ……あっ……気持ちぃ……っ」
「そう。それはよかった」
 少しだけ引き抜いた指に、椿さんがローションを垂らしていた。
 また、入り込んで引き抜いて、ローションかけて。
 すごい、中がぬるぬるしてる。
 ぬるぬるしたのが、入り込んでくる。
「はぁっ……ぁあっ……んっ」
「腰揺れちゃうんだ?」
「椿さぁっ……だめ……っ俺っ……ぁあっ、おかしぃ……っ」
 体の制御が効かなくなってるみたいな。
 そんな感覚。
 ふわふわしてて、ただ気持ちよくて。
 1人Hしてるときも、女とやってるときも、どのタイミングでイこうかとかどうしようかとか考える余地はあるのに。
 全部受身でわけがわからない。
「おかしい?」
「ひぁっあっんっ! ぁんっあっ……ぃくっ」
「いまイったばっかでしょう?」
「だめっ、あっ……イク、あっ、ぁんっあっ、いくっ」
 体がビクついて、震えて。
 止まんない。
 駄目だ、俺の体、おかしくなってる。
「ゃあっあっあっ! あぁあああっっ!!」


 やっと、椿さんは指を引き抜いてくれた。
 それは理解出来たけど、頭がボーっとして。
 この気持ちよさが持続する感じは、さっきのやつだ。
 俺、また出さずにイっちゃったんだ……。
 
 男同士ってこんなに気持ちいいわけ?
 ……別に相手が女でも、こうやってしてくれたら気持ちいいんだろうけど。
 こんなことしてくれる女なんていないよな……。  

 最悪だ。
 確実にハマった。
 男同士のセックス。
 いや、まだセックスしてないんだけど。
 指なんかとは比べ物にならないくらいデカいわけだし、あれはさすがに痛いだけかもしれない。
 ……そう思いたいけど、たぶん違う。
 気持ちいいんだ。

 でも俺が好きなのはセックスで椿さんじゃない。
 それでいいんだろうか。
 そもそも椿さんって俺のこと好きなの?
 ……恋愛感情抜きでセックスしちゃ駄目だとかそんなん思ってるわけじゃないけど。
 桐生さんも言ってたじゃん。
 ただ、抜いただけ。
 じゃあなんで、キスしたんだって言われたらわかんないけど。
 ちょっとしたムード作り?


「奏汰、疲れた?」
 ぐったりしてるのは、疲れたのと気持ちいいのと、考えまとまらなくて放棄したいのと。
 いろいろだ。
「椿さんも、俺に抜いて欲しいとか思ってます?」
「そんな風には思ってないかな。かわいい奏汰が見れれば楽しいし」

 ……かわいい俺ねぇ。
 なんか、腑に落ちない。
 胸の辺り痛いんだけど。
 ちょっと思ってた答えと違うっていうか。
 そりゃ、抜いて欲しい、って言われたところで困るよ。
 困るんだけどさ。
 俺じゃ抜けない、とか。
 その奉仕は不必要です、って言われてる気がして。

 椿さんなりの気遣いだろう。
 でも、少しくらい俺のこと求めてもいいんじゃない?
 ……わがままだな、俺。

「椿さん、俺とセックスしたいんじゃないんですか?」
「……したいよ」
 すればいいのに。
 反射的に言いそうになった。
 いやいや、拒んでたのは俺でしょ。
 困るよ、そんなイキナリ。
 ああもうなんだこれ。
 俺ばっか。
 俺ばっかり気持ちいいことされて、なにも返してないし。
 でも、勝手に向こうがしてるんだから、それでいいのに。
「すいません……」
 罪悪感から逃れたくて、つい口をついた。
「……なんの謝罪?」
「わかんないんすけど」
 すっと、椿さんの手が俺の髪を撫でる。
 くすぐったい。
「俺は奏汰とセックスしたいけど、いきなり犯そうとは思ってないから」
「俺とセックスしたいのって、俺の恥ずかしい姿見て、楽しみたいからですか?」
「……別にからかってるわけじゃないよ。奏汰。……少し寝て、気持ち落ち着かせるといい」
 別に、落ち着いてる。
 ……いや、頭ボーっとしたままだし、考えおかしくなってるかな。
 椿さんの指先が俺の目元を拭う。
 ああ、俺、涙まで溢れてたんだ?
 最悪。
 今日はお言葉に甘えて寝てしまおう。