「そんじゃ、お疲れさまでしたー」
 そう告げ、別れるはずだったのに。
「奏汰、飲み会の後に話するって約束だったでしょう?」
 そうなんだよなぁ。
 やっぱり忘れてないか。  

 みやもっちゃんと、夜通しお話するとかにすればよかったかなぁ。
 俺だって、椿さんと話したくないわけじゃないんだけど。
 なんか心の整理ついてないっていうか。
 でもとりあえず、椿さんの部屋へ。
 座りあぐねていると、すぐさま椿さんは俺に詰め寄って、そっと手を股間に触れさせる。
「っ……もー」
「奏汰的には、どう思った? 宮本くんのこと」
 この人、どうやら男でも女でもいいらしく、何度か誘われた。  

 椿さんはすごくいい先輩だし、なにが嫌なのか、自分でもよくわからない。
 ただ、男ってだけだ。
 でもそれが重要でさ。
 椿さんにどんだけ言っても俺の考えわかってもらえそうにないし。
 
 男同士の恋愛みたいなのが噂になっちゃってるあの学校に勤め始めたみやもっちゃんならって思ったんだけど。
 みやもっちゃんは、普通の人間だし。
 いや、椿さんだって普通ではあるんだけど。
 
 みやもっちゃんが、あの学校でもし感化されてホモになってたりしたら。
 そしたら俺はむしろ、椿さんのこと受け入れられる気もするんだよ。
 ああ、肉体的な意味でなく精神的に。
 日常的によくあることなのかなって思えるし。

 でも、わからなかった。
 探ってみたけれど、生徒に好かれてるってことくらいで。
 よくわからないから、相談できるかどうかもわからない。
 たぶん、引かないでいてくれるとは思うんだけど。
 
 桐生さんは、男同士に対して偏見はない感じだった。
 けど、女性陣に対してもすごくにこやかに接してたし、結局、よくわからない。
 
「みやもっちゃんは……まだ、仕事でいっぱいいっぱいなのかもって」
「そう……」
 椿さんは、にっこり笑いながらも俺の体を軽く押し、三歩ほど下がった俺は壁へと背中をぶつけてしまっていた。
 ズボンの上からあいかわらず、ゆるやかに擦られる。
「誰か男にせまられたことくらいありそうな感じだったけどねぇ」
「そうですか?」
「奏汰が探り入れたときの態度とか。ちょっと気になる感じだった」
 そうだったかな。
 気付かなかった。
「でも……みやもっちゃんは、ノーマルだし……っ」
「そうだねぇ」
 そう言いながら椿さんは、少しだけ強めに俺のを撫で回してくる。
 ちょっと気持ちいい。
 ……だいぶかも。
「硬くなってきた」
「……そんな風に、撫でられたら……っ」
「気持ちいい?」
「……そりゃあ……まあ……っ」
 チャックがゆっくりと下ろされる。
「椿さ……」
「駄目?」
 手でイかせてもらったことは数回あった。
 最近はちょっと抵抗も無い。
「駄目じゃ、ないですけど……っ」
 俺の了承を得て、椿さんは俺のを取り出してしまう。
 下ろされたズボンが足元に絡まっていた。
 
 椿さんは、俺のパンツまで少し下げてしまうと指先で亀頭をそっと撫でてくる。
「っ……んっ、椿さ、それっ……楽しいですか?」
「楽しいよ。すごくね」
 くにくにと撫でられ、体がピクンと跳ね上がってしまう。
 こういうのを見られるのはちょっと苦手だ。
「はぁっ……んっ! ……ん……」
 先走りが出てくると、そのぬめりを亀頭にぬりつけるみたいに弄られ、それがまた気持ちよくてたまらなかった。
「っ……んっ……」
「宮本くんがたとえノーマルであっても、彼は彼。奏汰は奏汰なんだから。素直になればいいのに」
 素直とかよく意味がわからない。
「はぁっ……んぅっ」
「……奏汰は、普通に女の子とHしてたんでしょ? そんときもこんなHな息遣いしてたの?」
 はっきり言って、女の子とのときはこんなんじゃなかった。
 そもそも、こんな丁寧に撫でられたことないし。
「んっ……くっ……!」
「すごいね。もうトロトロだ」
 耳元で、そう呟きながらも俺の亀頭ばかりを弄る。
 少しじれったいような愛撫に、つい腰が揺れてしまっていた。
「はぁっ……椿さっ……」
「腰、とまんない?」
「んっ……すいませっ……っ、とまんなっ」
「いいよ。いやらしくてかわいい」
 なにがかわいいのかまったくわからないんだけど。
 椿さんは、右手で亀頭を撫でたままやっと左手で竿を擦り上げてくれる。
「はぁっ……あっ」
 両方擦られるとさすがに、一瞬ふらついた。
「んぅっ! んっ!」
「声、出していいよ。出した方がラクだろう?」
「んぅんっ!!」
「女の子の前じゃないんだから。恥ずかしがることないじゃない?」
 確かに、女の子の前で気持ちよくて喘ぐなんて恥ずかしいけれど。
 その点、椿さんなら……。
 声殺してんの、息苦しいし。
「はぁっ……んっ!」
「声我慢してると、気持ちよくイけないよ」
「ゃっっ……だっめっ、椿さっ」
「駄目? なにが?」
 なにが?
 じゃなくて。
 わかってるだろうに。
 さっきよりも強めに指先がぐるぐると亀頭を撫で回してくる。
 そんな風にされたら、おかしくなるってば。
「そこっ……んぅっ! そんなっ……強くしなっっ」
「ココ?」
「ぃっ……あっ、爪っ…やっ」
 軽く爪でカリカリと弄られ、体がビクビクと震え上がった。
「こんな強いと上手く感じれないかなぁ」
 ぴりぴりと痺れるような刺激。
 声を殺す余裕も無くなっていた。
「椿さっっ……ゃめっっ……やめてくださっ」
「どうしようかな」
「変っ…になるっ……だめっ……もっ……んぅんんんっ!!!」

 強めに爪を立てられると、わけもわからずイってしまう。
 気持ちいいとかそういう次元を越してしまっている感じで。
 足に力が入らず座り込んでしまう。
「変になった?」
 力が抜けてしまっている俺のを掴んだまま軽く擦りあげられる。
「はぁっ……んぅっ」
「すごい、トロけちゃってるねぇ。次はちゃんと気落ちいいことしてあげるから。ね」
 そう言って、横から体をかがめた椿さんは、なんのためらいもなく俺の、いままさに精液が出てしまった亀頭に舌を這わした。
「あっ……んっ……んーっ」
 あったかい舌が、たっぷりと絡まって、さっきの強すぎてわけのわからない感じとは違う。
 確実にものすごく気持ちがいい。
 指で強めに擦られるのもいいけれど、舌の感触はたまらない。
「っ……ンっ! んっ! あっ」
 こんな声、絶対、女の子の前じゃ出せない。
 椿さんの前でも充分恥ずかしいんだけど。
 一度、あんな強い刺激でイかされるとその後はもう、ちょっとどうでもよくなっちゃって。
 椿さんが言うように、トロけちゃってるんだと思う。
「椿さ……んっ!」
「ん、なに?」
 ホント、気持ちいい。
 仕事始めて、女の子どころじゃなかったし。
 こういうことしばらく全然してなかったから。
 いや、椿さんにはちょこちょこされちゃってるんだけど。  

 久しぶりだからなのか、そもそも椿さんがうまいのかわからない。
 けれど、やっぱフェラって女の子より男の方がうまいかな。
 まあ、女の子にだってそんなガチで口で抜かれたりはしてないけれど。

「んっ……俺っ」
「欲しくなった?」
 口を離し立ち上がった椿さんの視線を感じる。
 顔も上げれずただ、息を整えた。
 俺を置いたまま、椿さんが隣の部屋に行ってしまう。
 どうせすぐ戻ってくるんだろうけれど。

 動けずにいると、俺のまえにまた椿さんがしゃがみこむ。
 うつむいた視線の先に、金属製の棒が目に入った。
「……あ……」
 わけがわからないくらいに心臓がバクバクしていた。
 緊張と期待?
「ちゃんと、ぬるま湯で洗ってきたから、冷たくないよ」
 そう教えてくれる椿さんになんとか頷くので精一杯だ。
 その棒で、俺のモノを根元から撫で上げていく。
「んぅっ!! ンっ」
 そっち系の知識ってあんまないんだけど、バイブの類らしい。
 振動が、気持ちよくて以前使われたときから俺自身、クセになってるんだと思う。
 そりゃあ、手で擦るよりバイブレーションの方が刺激的でしょ。
 精神的には手の方がクるかもしれないけれど。
「んっ……はぁっ…っ……んぅっ!!」
「気持ちいい?」
 頷いて示すと、頬をそっと撫でられた。
「奏汰。入れたいな」
 それには首を横に振って示す。
「まだ抵抗ある? 宮本くんだってたぶんしてるよ」
「っみやもっちゃんはっ……してなっ」
「賭けようか? 宮本くんがしてるって裏が取れたら奏汰に入れる。裏が取れなければ、奏汰から言い出すまで俺は手を出さない」
 どのみち、みやもっちゃんがしてるのなら、俺も1回くらいいいかなって思ったりもする。
 けれど、裏が取れなかったら。
 もう椿さんは、こうやって俺に手を出すこともなくなるのか。
 いや、俺から言い出せばしてくれるんだろうけれど、言い出せないだろ。
 Hは抵抗あるけれど、手で抜かれるくらいなら気持ちいいし。  

 考えまとまんないけど、とにかくこの賭けは乗らないほうがいい。
 俺はまた首を横に振る。
「じゃあ、どうしたら入れさせてくれる?」
 そう言うと、金属の棒を俺からそっと離してしまう。
「あっ……」
 つい顔をあげると目が合った。
「だってっ……んなとこ、気持ちいいわけないし。感じなかったら感じなかったで気ぃ使うし。演技とか俺無理だしっ。男とか……わかんないし」
 椿さんは軽く笑って、傍にあったケースに金属の棒を置いてしまう。
「男に抵抗あるのなら、とりあえず今はただ性処理してるだけだって、そう思ってくれて構わないから。ちょっとしたお遊び」
「でもっ……後ろとかっ」
「うん。処女は取っておこうか。先に、こっち。前なら弄られても、もうそんな抵抗ないでしょう?」
 前なら、もう何度か弄られているし、わざわざ改めて聞くことなのだろうか。
 そう思っていると、さっき金属の棒をしまったケースからまた1本の棒を取り出す。
 さっきよりもすごく細くて、少しカーブしている。
「ちゃんと消毒して、潤滑剤に浸しておいたから、安心して」
 わからないでいると、少し萎えてしまっていた俺のモノを手に取り、上を向かせた。
「いい?」
「っ……なに」
「入れてもいいってこと」
 尿道に?
「っ……俺っ、そんなのっ」
「これは男同士じゃなくても、ちょっと過剰なHしてる男女なら経験してる人もいるんじゃないかな」
 椿さんの冗談なのか、はたまた俺を騙そうとしているのか。
 もしかして本当のことなのかわからないけれど、今、入れられそうなのは確かだ。
 尿道オナニーする人もいるって聞いたことはあるけれど、あんなのは都市伝説だろ?
「そんなの、入るんですかっ?」
「拡張用の、一番細いのだから大丈夫。さっき使ってたバイブも尿道用だよ。奏汰にはまだ入れられない太さだけれど」
 ボールペンくらいあったよな、さっきの。
 慣れればあんなのが入るのか。

「俺、演技無理ですよ」
「そんなにも気を使わなくていいから。合わなければ次からはやめようって、それだけ」
 なんだか言いくるめられてる気もするが頷くと、棒の先端が亀頭に触れる。
「怖い?」
「ん……」
「ゆっくりするから。ね」
 椿さんが、俺の鈴口を軽く指で押さえて広げて。
 金属が、少しだけ入り込む。
「んぅっ……」
「そう。力抜いてて。萎えてた方が入れやすいからね。ゆっくり、もうちょっと入れるよ」
「んっ……」
 言葉通り、ゆっくりゆっくりと、中に入り込む。
 見てると怖いくらいに、ずぶずぶと収まっていく。
「っ……も、だめ……っ」
「痛い?」
「痛くはっ……」
「じゃあ、もう少し」
 どこまで入るんだ?
「んぅんんっ!!」
 体がビクつく。
「うん。だいぶ入ったよ」
 そう教えられ、改めて目を向けるが、自分のから出ている棒が酷く不自然で目を逸らしたくなった。
「奏汰。大丈夫だから。そんな怖がらないで」
 俺の前に這い蹲ると、椿さんは舌で俺のモノを舐めあげてしまう。
「あっ……んぅっ」
 萎えていた自分のがまた熱くなる。
 恐怖が、気持ちよさにかき消されてしまう。
 それがいいことなのかどうかもよくわからない。
 ぴちゃぴちゃと音を立てるようにして舐めあげられながら、少しだけ棒を引き抜かれる。
「あっ! ゃあ……っ」
 退かせた棒はまたゆっくりと入り込んで、軽いピストン運動を繰り返す。
 ゾクゾクと体が震え上がった。
「ぁっ……っ、椿さっ…っんっ!! ぁあっ」
「んー……奏汰がそんな声出すの、珍しいね。それに腰もすごいくねらせて、どうしちゃったの?」
「あっ……わかんなっぁっ俺っっあっ」
 変に腰が揺れる。
 自分でも、今、いやらしいなってなんとなくわかってはいるが、とめられない。
「コレは初めての感覚?」
 こんなの、いままで味わったことがない。
 こんなにも気持ちいいだなんて。
「だっめ……あっ椿さっ……も、抜いて……っ」
「んー、良くない?」
「違ぁっ……ぃきたっ……ぁあっ」
「そう。いいよ。イって。イク瞬間にちゃんと抜いてあげるから」
 椿さんはそう言うと、また丁寧に俺のモノにキスをして舌を絡めた。
 少しだけカーブした棒がぬるぬると出入りを繰り返す。
「ぁあっ……あっ、いくっ……も、ぁっいくっ」
 体がビクついて、棒が引き抜かれる。
 その刺激にまた、大きく体がビクついた。
「ゃあっ……あぁああっっ!!」
 
 こんなに大きな声をあげてイってしまうのは初めてだ。
 ものすごく恥ずかしい。
 それなのに、そんな俺などおかまいなしで、もう1度、椿さんは俺の中へと棒を押し込んでしまう。
「ひっ……っあっ……だめっ」
「いいねぇ。ちょうど萎えてて、入りやすいよ」
 また尿道に入り込む棒の違和感。
「だめっ……ホントにっ」
「どうして?」
 どうして。
 言わないと、続けられる?
「俺っ……っ……もっ、出るっ」
「かわいいねぇ、奏汰。尿道弄られて、おしっこ出ちゃいそうなんだ?」
 なんとか通じてよかった。
 そう思うのに、椿さんは手を休めずに棒を抜き差しする。
「あっ! 椿さっ」
「いいよ。出しちゃって」
「……ここっ」
「うん、ここで。もう床にたくさん奏汰の精液垂れてるし。変わらないよ」
 変わるだろう?
 ぼんやりとそう思うが、うまく考えがまとまらない。
「俺っっ……っ」
「いいよ」
「ごめんなさっ……もぉっ」
 ゾクゾクと体が震えあがり、また椿さんが棒を抜くと、栓を失ったソコから我慢していたものが溢れ出す。
「やっっ……」
 俺が漏らす姿を、椿さんがまん前からジっと見つめた。
 恥ずかしいやら、情けないやら、どうすればいいのかわからず涙が溢れる。
 
「っすいませっ……俺っ。こんな……汚しちゃってっ」
「……いいよ。奏汰は、ちょっと抜けてるところあるよね」
「え……」
「いや、俺としてはいいんだけど。気にしないでいいから。ここで脱いで、お風呂入っておいて」
「……はい」
 このまま、帰るのも辛いし。
 まあ、家近いんだけど。
 泊まることも初めてってわけではない。

 それにしても、すごく気持ちよかった。
 バイブで撫でられたときにも感じたことだけれど、クセになりそうで。
 
 でもあんな棒、家に無いし、潤滑剤だって。
 どうしよう。
 椿さん、またしてくれるかな。
 って、椿さんに頼ってどうすんだよ、俺。
 また、漏らしちゃったらやばいしっ。
 いや、今日は酒入ってるしな。
 普段の状態だったら、こんな風にはならないはず。
 洩らさなければいいって問題じゃないんだけど。
 
 男とか女とか以前に、好きかどうかもわからない人とここまでしちゃってるって時点で、結構アウトだよな。
 むしろ、同性ならアリ?
 椿さんも、ちょっとしたお遊びだって言ってくれてたし。

 考えまとまらない。
 俺一人じゃやっぱり無理だよ。
 みやもっちゃん……いや、桐生さんに聞いてみようかなぁ。