「……先生?」
「ん……すごくかわいかったです。なにか芳春は、俺にして欲しいことある?」
 もしかして、口でしてくれたお礼ってことだろうか。
 今、口で抜いて貰ったし普段から柊先生にはいろいろとしてもらっている。
 充分だ。
 充分なのに、少しだけ俺の中で引っ掛かる。
 奏汰のせい。
「なにか考えてる?」
「えっと……その。ちょっと質問が」
「質問?」
「友達からの電話の内容でもあるんですけど。男同士ってその……普通はドライでイくもんなんでしょうか」
 気になっていたことを口にすると、柊先生は軽く笑って、俺の体をベッドへとすべて乗せてしまう。
「友達にそんなこと相談されたんだ?」
「まあ、そんな感じです」
 俺はドライでイってないなんてこと、さすがに桐生先生には相談し難い。
 柊先生にしか……。
 柊先生は、うーん、と少し首を捻る。
 俺、なにかまずいこと言っただろうか。
「あの、そんな気にしないでください。友達もなんとなく自己解決してるみたいでしたしっ!」
「いえ。そろそろしようかと思ってたんですよね」
「え……?」
「合コンなんか行って女に走られても、俺としては困りますし。他の男にドライでイかされても癪ですし」
 柊先生は、出しっぱなしだった俺のモノをまた手でやんわりと撫でる。
「待っ……あの、今日はもう……」
「負担はかけたくないんですけど、そんな誘われちゃったら無理でしょう?」
「な、誘ってないですよ。俺、今日は結構イっちゃったし」
「その方が、ドライでイけるんじゃないですか?」
 にっこり笑って、俺のズボンと下着を引き抜いてしまう。
 こうなったら、柊先生を止めることは難しい。
 けれど心の準備みたいなものがまだ出来ていない。
「待ってくださ……っ。俺、まだ……っ」
「嫌? 俺にドライでイかされるの」
 その聞き方はずるい。
 嫌なんて言えるわけがないのに。
 断るすべを失っていると、柊先生は俺を残してベッドを降りた。
「せっかく家ですし。ローション持ってきますね?」
「あの! 俺!」
 柊先生を止めることも出来ず、背中を見送る。
 本当は、たぶん逃げれないこともない。
 なんだか緊張してしまうが、してもいいかもなんていう思いもあって。
 もやもやしているうちにも柊先生が戻ってきてしまう。
 手にはローションと、スポーツタオル?
「……あの、タオルって」
「手、縛っておきましょうね?」
「な、なんでですか?」
「縛らないと、芳春は自分で自分の弄っちゃうでしょう?」
「っ……」
 弄りませんって即答しろよ、俺。
「お願い、素直に縛られて?」
「……でも……」
「嫌なら手錠でもいいんですけど」
 それは跡が残りそうだし、困る。
 ぐだぐだと攻防を続けていてもキリがないので、しょうがなく俺は手を差しだした。
 柊先生は、すっごい笑顔で俺の両手首を縛ると、俺の体を押し倒しその先をベッドの柱に括り付ける。
 無様にも両手をあげた俺は、もう柊先生のなすがままだ。
「あの、ちゃんと取ってくれるんですよね!」
「もちろんですよ。俺のこと、信用してくれてるんですよね?」
 信用してなきゃこうも素直に括られたりはしない。
「やっぱり芳春は少し酔ってるんじゃないかな」
 クスリと笑いながら、柊先生の指先が俺のモノをなぞった。
 また硬くなってしまっている俺のモノ。
「っ……違……俺っ」
「そんなに俺とセックスしたい?」
「違うんですっ! なんかっ……体が」
「うん。理性はあるみたいだけど、酔ってるよね。いつもよりエッチだ」
 酔ってる?
 わからない。
 自覚がないだけ?
 だって、コップ半分くらしか飲んでないし。
 でも、さっき頭を揺さぶられて、ぼんやりして。
 ……そっか、酒、回った?
「あの……俺が酔ってたら、エロくても、変じゃないですか?」
「……酔ってても酔ってなくても、変じゃないよ」
 そう言うと、柊先生は俺の脚をパカっと開いた。
「っ……」
「膝、立てててくださいね」
「ん……っ」
 俺の恥ずかしい所が丸見えの位置で、柊先生はたんたんとローションを指に絡める。
 あれで、グチュグチュされるのは好きだ。
 ……なに考えてんだ、俺。
 柊先生はローションを纏わせた指を、ゆっくりと俺の中に挿しこんだ。
「んぅんっ! んっ」
「一気に2本、入っちゃいましたね」
 奥の方まで入り込んで、引き抜いて。
 まるでローションを塗りたくるみたいに抜き差しされてしまう。
 その指の動きが止まると、先生は俺に覆いかぶさりながら、空いた手で頬を撫でてくれた。
「はぁっっ……んっ……せんせ……っ」
「道具使ってもいいんですけどね。せっかくなんで俺の指で開発しましょう?」
 また恥ずかしいことを口走ると、先生は奥まで差し込んだ指を少しだけ引き抜く。
 浅めの所で、ゆっくり折れ曲がった指先がある一箇所をぐーっと押さえつけた。
「はぁああっ……ゃあっ」
「ゆっくり……ね。締め付けないで」
「ぁっえ……?」
「そうやってぎゅうぎゅう締め付けてくれる芳春もかわいいんだけど。締め付けず我慢してごらん」
 よく意味がわかわず、それでも言う通り締め付けるのを我慢してみる。
「そう。そのまま。いいって言うまで我慢してて」
 ドクドクといろんな所が脈打って、わけがわからなくて。
 柊先生はまた、探るようソコを押さえたり緩めたり。
 耐え難い刺激に体が疼く。
 腰がいやらしくくねってしまうのが自分でもわかって、恥ずかしさから涙が溢れた。
「やっ……ぁあっ……それ……っぃやっ」
「どんな感じ?」
「ひっ……くっ……も、やっ……締めたぃ……っ」
「それはダメ」
 手で自分のモノを擦り上げたくなるが、縛られていてそれも叶わない。
 広げたままのソコが、ヒクついてしまい、顔から火が出るんじゃないかってそう思うのに。
「いやらしいね、芳春」
 柊先生は耳元で笑って、俺の羞恥心をさらにあおる。
 そもそも素直に言うことを聞く必要はないんじゃないか?
 チラリと先生に目を向ける。
「ダメ」
 まるで俺のしようとしていることがわかったのか、そう先に釘を刺された。
 なんなんだ、これ。
 とっとと射精したいのに。
 こんな苦しい変な感覚味わわされて。
 ドライでイかせてくれるつもりなのかもしれないけれど、こんな面倒ならもう、イかなくてもいい。
 その想いが通じたのか、柊先生は空いた手で俺のモノを掴む。
「あっ……」
「芳春が、イかせて欲しくてしょうがなさそうな顔するから」
 イかせてもらえる。
 そう思った矢先、先生は俺の根本をぎゅっと掴んでしまった。
「ひっ……あっ……なんでっ」
「先にお尻で射精するの覚えちゃったからねぇ、芳春は。すぐ射精しそうになるでしょ」
 すごく恥ずかしいことを言われている気がするけれど、考える余裕がない。
 ぎゅっと掴まれたまま、柊先生が中の指をぐにぐにと動かしてしまう。
「ぁあっあっ……ゃんっあっ……やめろよぉっ」
 あ……俺、柊先生相手になんて言葉遣いしてんだ。
 もう、最悪だ。
「違ぁっ……やっ……やめて……くださっ……ひぅっ」
 柊先生のいいつけも守れず、ぎゅうっとソコを締め付けてしまう。
 そのとき、いままで耐えていたモノから解放されるような、よくわからない快感が押し寄せてくる。
「ぁああっあっ……あぁあああっ!!」

 ビクビクと大きく体が震え上がって、イってしまう。
 けれども、柊先生は根本をぎゅっと掴んだまま。
「なにっ……あっあっ」
「ん……まだ気持ちいい?」
 探るよう指がぐるりと中を掻き回す。
「ひぁあっ……ぃくっいくっ」
「じゃあ、もっかいイこうか?」
「ぃやっ……やぁあっ!!」

 もう一度、体が大きく跳ね上がった後、柊先生はやっと俺のモノから指を離してくれた。
 直後、遅れるようにしてどろりと精液が溢れ出る。
「なに……これっ……」
 顔を手で隠したいのに、それすら許されない。
 トプトプと、溜め込んでいた精液が溢れてくる最中、また柊先生は音を立てるように中を指先でぐにぐにと弄り出す。
「ひぁっあっあっ!? ぁあっ……やっ、やぁっ」
「どう? 初めてドライでイって。まあ精液も出しちゃいましたけどね。こんだけ出したら次はちゃんと出来るでしょう?」
 よく理解出来ず、ただ顔を横に振る。
 それでも、柊先生は指の動きを止めてくれず、小さく体が痙攣した。
「ひぁあっ……ぃくっ……あっ……やだっ……もぉ、やだぁっ……」
「どうして? 連続でイっちゃって、ヨくない?」
 体の自制が効かず、妙な感覚で。
 ただ、気持ちいいのは確かだ。
 気持ちよすぎて、おかしくなる。
 頭も、体も。
「ぁああんっ……やぁあっ……やだぁ……っ」

 柊先生がクスクス笑って、俺の中からやっと指を引き抜いて、タオルを外してくれる。
 俺は柊先生に腕をひかれるがまま、抱きしめられていた。
 体がたまにビクつくのがまだ収まらなくて、それをなだめるよう柊先生が俺の背を撫でる。
「ぁっ……はぁっ……あっ」
「んー……芳春、いつもより子供っぽい喘ぎ方しててかわいかったよ」
 なんだかどこかにしがみついていないとおかしくなりそうで、俺は柊先生の背に手を回した。
 まるでそれが引き金になったかのように、柊先生は俺の体をさらに引き寄せ、またお尻の中へと指を差し込む。
「はぁっ……んぅ……くぅっ」
「そうやって、爪立てちゃうのもかわいくて好きだな」
 中がぞわぞわして、なんだか疼く。
 もう何度も射精したはずなのに、またイきたい。
 そうだ、なんか違う。
 射精したいんじゃなくて、イきたい。
「ぁあっ……せんせぇっ……やぁっ……気持ちぃいっ……あっ気持ちいいの、もっとっ」
「はいはい」
「もっとしてぇっ……あっあっ……いくっ……あぁあああっっ!!」



 ぼんやりした頭が覚醒するまで、どれくらいの時間がかかっただろう。
 気づくと、柊先生と一緒にベッドで寝転がっていて、ふつふつとしてしまったことが思い出されていく。
「やっぱり芳春にはちょっと早かったかなぁ」
「え?」
「誰かに取られたくないとは思ってるんですが、正直、あそこまで乱れられちゃうと、誰かを求めそうで」
 乱れてなどいない……とは言えないのが辛いところだ。
「俺も……変なこと聞かなきゃよかったってちょっと思ってます」
「でも、よかったでしょ」
 よかった。
 ホント、クセになったらどうしてくれんだ。
 そっか……奏汰はこんな気持ちで……。
 こうなることくらい予想出来たのに、なにやってんだ、俺。
 ちゃんと責任取ってくれるんでしょうね、先生。
 ……なんてこと口には出せず、心の中で柊先生に呟いた。