こんなのは半年前の自分じゃありえなかった。
こんなにも……柊先生が欲しくて仕方なくなるなんて。
駐車場で、車の助手席に乗せられた俺は、隣に座っている柊先生のモノへと体を屈め舌を這わしていた。
「ん……んっ!」
「ホント……上手になりましたね」
ちゅくちゅくと音を立てるよう口付け舌を絡めていく。
亀頭を咥え込み、吸い上げて、少し溢れ出て来た先走りの液を拭うよう尖らせた舌先を突き立てると、先生は決まって俺の頭を優しく撫でてくれた。
「はぁっ……ん、ん、せんせ……っ」
決しておいしいわけじゃないのに、たまらなく欲しくなる。
こうして先走りの液を溢れさせてくれるのは先生が感じてる証拠。
いつもされてばかりで本当に気持ちよく出来ているのかわかりにくいけれど、このときだけは感じてくれているのだと理解出来る。
だから嬉しくて、何度も何度も舌を這わす。
「んっ……あ、ん……せんせぇ……あっ」
「なに?」
「もぉっ……あ……んっ……」
「恥ずかしがってないで、言ってって、いつも言ってるよね」
「んっ……はぃ……」
「んー……じゃあ言って。なに?」
チラリと目を向けると、にっこり微笑まれてしまう。
やっぱり恥ずかしくて、俺は視線を逸らしつい、柊先生の足に軽く爪を立ててしまう。
「あ……その……」
「言えないならやめちゃおうかな。いいよ。おしまいにしても」
おしまいにする……つまり、このまま柊先生を気持ちよくすることも出来ず終わるということ。
俺は小さく首を振る。
こんな状態で終えられたら罪悪感でいっぱいになってしまう。
絶対この人は、解ってて俺を煽ってるんだろうけど。
「ん……飲ま……せて」
「それは俺を気遣って言ってるのかな」
「違……。あ……飲ま、せて……俺の頭、おかしくしてくださ……っ」
そう言いきると、先生は俺の頭を掴みゆっくりと腰を蠢かす。
「んぅっ、んっ!」
舌の上を先生の熱いモノで撫で上げられていく。
こんなの、結局俺がしてもらっているみたいだ。
それでも先生が出してくれさえすれば……。
そんな自分勝手な解釈をしながら、俺は与えられる刺激に体を震わせる。
「はぁっんっんぅんっ!」
「ふっ……気持ち良さそうだね、芳春……。出すよ」
「ぁっはぁっ……んぅんんっ!!」
俺の頭を固定し、先生が口内へと吐精する。
入り込んでくる熱い液体を、反射的に俺は飲み込んでいた。
「んっ……ん」
先生に体を起こされても、頭がぼんやりして働かない。
助手席でぐったりしている俺の口内へと、先生は指を差し込み掻き回した。
「はぁっ……あ……」
「飲んじゃった?」
「ぁ……はぃっ……あっ」
「そんなすぐ飲み込まなくても、もっと味わってくれてもいいのになぁ」
先生の声が右から左へと抜けていく。
本当に、アルコールのような中毒性でもあるのか。
先生の精液を飲まされると、わけがわからないくらいに俺の体にも熱がこもる。
頭がおかしくなる。
精神的なものだということくらいわかってる。
どこかで冷静にそう感じるけれど、抗おうとは思えなかった。
ただ、身を委ねていたい。
俺は口内を先生の指先で撫でられたまま、つい自分の右手でベルトを外す。
「したい?」
「はぁっ……ん……」
「言って」
「っ……したぃ……」
「もっとちゃんと……言葉にしてよ、芳春」
「あっ……あっ……セックス、したい……です」
「かわいいよ、芳春……。本当に、セックス大好きになっちゃったね」
「好き……。先生……して……」
「どうしようかなぁ」
先生は、あいかわらず俺の舌を撫でたまま。
むず痒くて、くすぐったくて、気持ちいい。
俺もまた、先生の手つきに合わせるよう取り出した自分の物に指先を絡める。
手が止められなくて、何度も何度も擦り上げていく。
「一人で楽しんじゃうの?」
俺は違うと小さく首を振る。
その反動で、口内を撫でていた先生の指が俺の舌を撫で上げた。
「ふぁあっ……あっ!」
「また……たくさん俺の手、濡れちゃった」
くすくす笑いながら、先生は濡れた指先で俺のものに触れる。
亀頭から溢れる液を拭い、ゆっくり焦らしながら、その指は先生を受け入れる場所へと到達した。
「……そこ……」
「ん……いいよ。入れてあげる」
ずるりと指先が入り込むと、それだけでイきそうなほどの衝撃が走った。
「ぁああっ! あっ」
「ここの感度も、どんどん良くなって。ホントかわいいです。育てがいがあるっていうか」
こんな場所に入れて欲しいと思う日がくるだなんて思ってなかった。
それなのに今は、なにか入れてないと……。
違う。
なにかじゃなくて、柊先生の指とかアレとか。
入れてない方が不自然みたいだ。
……なに考えてんだろ、俺。
頭の隅でまた、冷静な自分が突っ込む。
それでも今は、考えることを放棄する。
放棄しても構わないんだって、わかったから。
先生は、なにも考えず俺がただ欲しがって求めまくってもすべてを受け入れてくれる。
「んっ……ぁっあっ……そこっ……んぅ、そこっ」
「ここ? ここがなに?」
「気持ちぃ……いい……っもっとっ」
俺の言葉通り、先生はぐっと力を込め、内壁を押さえつける。
「ぁあっあっ! いくっ」
「もうイっちゃうの?」
「ひぅっ……ぅんっ、いく……」
「ああ……本当にかわいいよ。芳春……。もっと教えて。俺に芳春のこと。どうイきそう?」
「俺っ……あ……熱くて……そこ、押されると、何度も体がビクついて……」
「うん……さっきからすごいビクビクしてる」
「もぉ、出るっ……ぁあっ」
「ダメ……」
「やっ……」
たまに先生は意地悪だ。
イくときは言ってほしいって言うくせに。
言うと、ダメだと言う。
勝手にイってもいいのかもしれない。
それでも俺はなぜか、許可を取らないといけないような気にさせられていた。
「あっ……イか……せて」
「でもこのままイったら車汚れちゃうけど」
わかってる。
このままじゃ車が汚れることも、本当は車が汚れることくらい先生がどうでもいいと思ってることも。
俺がイってしまわないようギリギリの刺激を与え続けられる。
車内にくちゅくちゅといやらしい音が響く。
「あっ……ん、ん!」
先生の目が、また俺になにかを期待している。
その期待するものがなにかも俺は知っていた。
「んっ……ん……飲ん、で……」
いくら雰囲気に酔わされ頭がおかしくなっていても、さすがに羞恥心を伴う。
小さな声で伝えると、恥ずかしくて涙が溢れた。
聞こえているはずなのに、先生はたまに俺を無視する。
そのたびに俺は、ちゃんと正しく、大きな声で答えなくてはいけない気にさせられる。
「あっ……飲んで……くださ……」
「車、汚れちゃうから?」
「はぃ……」
「それだけ?」
「違っ……先生に……あっ……あっ、飲んで欲しい、です……っ」
「なにを?」
「あっ、俺の……ぁあっ! いくっ」
「なんで芳春は恥ずかしい事、口にするとイきそうになっちゃうの?」
「わかんなっ……もぉっ……」
「ココはさっきからゆるーく掻き回してるだけなのに。ね……?」
耳元で苛められ、俺の体はますます熱くなる。
「……ちゃんと、最後まで言葉にしよう? 芳春」
催促され、コクリと頷くと、溢れた涙の雫が落ちた。
「ああっ……俺の……あ……ぁあっ、精液……飲んで……っ」
「よくできました」
先生は俺を褒めると、すでに限界近い俺のものを口に含む。
「んぅうっ! あっ! ぁあっ!」
口に含んだまま、指先がぐにぐにと中を押し広げ、俺の大好きな所を突き上げる。
「ひぁあっんっ! ぁあっ、イくっ、いっちゃうっ……やぁああっ!!」
体を震わせ吐き出したものを先生はしっかりと飲み込んでくれた。
「ん……一度イって、満足しそう?」
「はぁ……あ……」
ぼんやりしてしまう俺の中を、ゆっくりと先生はまた掻き回す。
「さっきセックスしたいって言ってたけど、どうしようか」
いまはただ1本だけの指が、妙にもどかしい。
もっと、太くて熱い先生のが欲しい。
体だけの問題じゃない。
先生と、ひとつになれるようなあの一体感を味わうのが好きだ。
そう頭の中で考えるだけで、また俺の体に火が灯る。
「ん……ん……したい……」
「ああ、泣かなくてもしてあげるよ」
「……あ……我慢、出来なっ……」
「なんだかんだ昔っから、芳春は我慢するの苦手だったよね」
そうだ。
結局、こうして体が慣らされる前から、俺は何度も我慢出来ず先生に求めてきた。
先生が焦らすから。
そう思っていたけれど、俺に堪え性がないからかもしれない。
「……ダメ……ですか?」
「いいよ。我慢しなくていい……」
そう言い、先生は俺にキスをする。
たくさん舌を絡め合う中、俺は先生の背中にしがみつく。
「んぅっ……んー……っ」
「はぁ……部屋までは? 我慢出来る?」
あいかわらず指で掻き回されたまま、そんなことを聞かれても答えは決まってる。
それが、柊先生の求める答えだってこともわかってる。
「……我慢、出来ません……」
俺の出した答えを聞いて、先生は満足そうに笑みを浮かべるのだった。
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