平日も、いつもと変わらない。
 駕崎は基本部活で。
 俺は、真乃や白石とつるんで。
 サボったりしてるうちにも、毎日が過ぎていく。

 平日に駕崎となにかするなんてことなかったし、今までどおりだ。
 問題は土曜日。
 明日は、中学へ行く番になるのか?
 残る予定だった先週は、急遽、試合が入って応援に行っただけなんだし。
 となると、明日、元々は、行くはずの日にあたるだろ。
 
「駕崎!」
 夕方、部活に行こうとする駕崎を呼び止める。
「どうした?」
「……明日って、中学行くのかよ」
 聞くまでもなく行くって言われそうだし、気にしてる自分が少し恥ずかしくも思った。
 けれど、一応、確認したかった。
「行かないつもりだけど」
 なんでもないみたく、駕崎がそう答える。
「……先週は、ただ偶然大会が入ったから行っただけなんだろ。だったら、明日、元々は行く日だったんじゃ……」
「元々はそうだったけど。先週、霞夜と遊んでないし、その分、明日は残ろうかと思ってたんだけど。 霞夜、もう用事入れてた?」

 用事なんて、別に決めてない。
「俺と遊んでないからとか…っ。別に気にする必要ねぇしっ」
「でも、俺は霞夜と遊びたいよ」
「まぁ、お前がそう言うんならいいけど」
 遊びたい……ってのは、やりたいってことなんだろうか。
 そういった考えが過ぎって顔が熱くなる。
 馬鹿か、俺は。
「……霞夜、今日の夜、来れる?」
「あ、あぁ。行くよ」
 いつものことなのに、変に緊張してしまう。
 なんなんだ、俺は。

 それより、駕崎が俺以外でしてないか、ちゃんと聞きださねぇと……。



 夜、部屋を訪ねると、あいかわらず机に向かう駕崎の姿。
「駕崎―、また勉強かよ」
「もうやめるよ。霞夜……。鍵しめて……?」
 鍵くらい、いつもしめてる。
 それなのに、妙に体が熱くなる。

 鍵を閉めて。
 つい考え込むようしばらくソコで立ち尽くしてしまっていた。
「霞夜? どうした?」
 意外と近くからのその声に、はっとする。
 振り向くと、駕崎が目の前に立っていて、後ずさると、ドアで背中をぶつけた。

「なんでもねぇんだけど……っ」
「体調悪いの?」
 駕崎が、確かめるよう俺のデコに手を当てる。
「っ熱なんてねぇよ」
「そう? 顔、赤いから……」
 赤くなってるであろう頬の部分を駕崎の手が撫でていく。
 それだけで、もっと顔が熱くなる。
 ……意識しすぎだろ、俺。
 駕崎は、俺の体調気にして触ってるだけだってのに。
 最悪だ。
 なんでこんな。

 駕崎の手をどけようと、手首辺りを掴みにかかるが、逆にその手を掴まれ、指を絡めとられる。
「な……っ」
 何をする気だと、言おうとした口を塞ぐよう駕崎が俺にキスをする。
 挿入された舌先は容赦なく俺の舌を絡め取って、卑猥な音が頭の中に響いた。
「んっ……ぅっ、んっ!」
 前んときと、同じ。
 また、体が熱くなってきやがる。  
 
 まだキスしかしてねぇのに。  
 熱い。
 口を離してすぐ、駕崎の手が俺の股間のモノをズボンの上から掴んでしまう。
「っ……んっ」
「霞夜……。めずらしいね。霞夜がもう、こんなにしてるの」
 耳元でそう教え込まれる。
 熱くて、もうソコが硬くなって。
 指摘されると、恥ずかしくてむかついて。
 けれど、なにか反論しようにも出来なくて。
 体に力が入らない。
「ぁっ……駕崎……。あんま、触んな……っ」
 いらだってつい、そう言ってしまう。
「どうして」
 どうしてだなんて、拒む理由とかねぇけど。
 ただ、自分だけが、やりたがってるみたいなのはものすごく嫌だ。
「はぁっ……駕崎は? 俺と、やりてぇの?」
 俺だけだったら最悪だ。

「……したいよ」
 耳元で熱っぽく言われ、体がゾクっとした。
「駕崎……んっ……先週は、する気、しなかったのかよ」
「霞夜、疲れてるみたいだったし」
 駕崎はなかなか手を止めてくれず、ゆるやかに布越しで俺の股間を撫で続けた。
「ぁっ……疲れてたのは、お前だろっ。中学行ってきて……。なぁ……中学で、してんの?」
 はっきりと、いましかないと思い、聞いてみる。
「してないよ」
 駕崎は、すぐにそう答えてくれていた。
「じゃあ……っ。もっと、俺としたいとか思わねぇの? 2週に1回だけとか…っ。いまなんて、3週近くしてねぇし…っ」

 耳元で、駕崎が軽く笑ったような気がした。
「なに……」
「霞夜は、俺としたかったの……?」
 俺が、駕崎としたかった……?
「ばっ、違っ……!」
「あぁそうか。顔が赤かったのって、なにかいやらしいことでも考えちゃってたんだ?」
 違う、とは言い切れない。

「っ駕崎、俺が先に、聞いて……っ!」
「あぁそうだったね。したいと思ってた。毎日でもやりたいくらいだし」
 毎日……?
 馬鹿か、こいつっ。
「霞夜は?」
 俺は別に。
 駕崎が、やりたいなら別に、やられてもいいとか思ってた。  
 それだけのはずなのに。
 3週間経って。  
 中学校でしてないって言ってくれて。  
 こんな少し触られただけで熱くてたまらなくて。

「っ……俺は……っ」
 答えれないでいると、駕崎がしゃがみこんで、俺のズボンと下着を下ろしていく。
「駕……崎っ」
「すごいね、霞夜……。こんなにベトベトにして。したい?」
「駕崎が……したいんだろっ。だったら、しても……っ」
「霞夜は、したくないの?」
 駕崎の指先が、俺の亀頭を撫で、ヌルっと滑るのがわかった。
「ぅあっ!!」
 体が震える。
 駕崎が直接、俺のを握って、上下に擦るとくちゃくちゃといやらしい音が響いた。
「ぁっ! はぁ……っんっ」
 駕崎の手のリズムに合わせて声が洩れる。
「霞夜……。答えて。したい?」
 そう聞きながら、駕崎が俺の先端にねっとりと舌を這わした。
「ンあっ!!!」
 したいのか? 俺は。
 熱い。
 熱い。
 気持ちいい。
 もっと、駕崎に求められたいし、気持ちいいことして欲しい。

「っ……したぃっ」
 俺がそう言うと、少し強めに、俺のを手でしごいてくれる。
「はぁっあっあっ! 駕崎ぃっっ」
「すごい、体ビクついてるね……大丈夫? ね……あんまり一人で抜いてないの?」
「んなのっ、ぁあっ……してなっ」
「……してないの? じゃあ、本当に久しぶりなんだ? 濃いんだろうな。イって見せて」
 濃いとか言ってんじゃねぇよ、馬鹿。
 でももう限界だ。
 イきそう。
 イって見せてって……?
 見られてる?
 駕崎の視線が突き刺さる。
「ぁっあっ! ぃくっ……あぁあっあぁああああっっ!!」
 駕崎の手の中に出してしまい、俺は、体を落ち着かせながらも、一応、駕崎の様子を盗み見た。

「すごいね……霞夜」
「な……にが」
 駕崎は立ち上がると、精液まみれの手を俺の視界に入れてくる。
 見るからに濃度の高いソレが、駕崎の手に大量に乗っかってて、恥ずかしさから涙が溢れそうになった。
「っんなの……っ見せんなよっ」
 顔を逸らした隙に、駕崎がベトベトの手で、俺の内股を撫でたかと思うと、付け根の奥、入り口を指先が触れる。
「ぁ……っ」
 何度も、行き来していくうちに、以前の気持ちよかった感覚を思い出して、また熱が集中してく。
「ぅンっ! あ……っあっ!」
「霞夜……ここ、撫でられるだけで、イイ?」
 じわじわと、間接的に感じさせられる。
 もっと、強く押さえつけて欲しくて、中に入れて欲しくて。
 自分でもそこがヒクついてしまうのがわかって、泣きたくてたまらない。
「っンっ!! ぁあ……駕崎ぃ……っ駕崎、はやくっ……」
「どうした? いつもの霞夜じゃないみたい……」
「てめぇが、1週間も余分に待たすせいだろぉがっっ」
 むかつく。
 腰が、求めるように揺れてしまう。
 ヌルヌルと、入り口を滑る指先が、やっとゆっくりと入り込んできた。
「ぁっ! あっ、あぁああっ!!!」
 奥まで入り込んだ指は、すぐに出入りを繰り返しながら、前立腺を擦っていく。
「あっんっ! ぅンっ! 駕崎ぃ……っ、ぁあっ! やっ!」
「……もう1回、先にイっとく?」
 最悪だ。
「やっっ……やぁあっ!!! もぉ、あっあっ……やぁあああっっ」

 こんな……。
 ドアで立ったまま、2回も……っ。
 すごい、早いし。
 恥ずかしいのに、止まらない。
 トクトクと溢れ出る液がまだ収まらないのに、一旦指を引き抜いた駕崎が俺の体を反転させ、後ろからもう一度、指先を差し込んだ。
「あっ! あっぁっ!! やっ駕崎ぃっ……」
 さっきより太い。
 2本?

 駕崎は、グっと場所を示すよう前立腺を押さえつけ、すぐに締め付けてしまう俺に反発するよう中を指で広げていく。

 ドアに手をついて下を向くと、床には自分の出した液が溜まっていた。
 瞬きをすると、涙がこぼれる。
「はぁっあっ……やぁっ、もぉ、やっ……ぁっ!」
「いや……?」
 これ以上、恥を晒したくはないのに。
 何回でも、すぐにイってしまいそうになる。
 こんな感覚は初めてだ。

 イきたい。
 イきたくない。

 混乱する。
「駕崎ぃっ……ぉかしいっ」
「どうした……?」
 指の動きを緩め、本当に心配するよう聞いてくれていた。
 それがまたもどかしくて、つい自分の手で自分のを擦り上げてしまう。
「ぁっぁあっ……駕崎っダメ、俺……っ、またっぃくから、早くっ、もう、入れっ」

 わかってくれたのか、指を引き抜かれていく。
 駕崎のが押し当てられ、体中が心臓みたいにバクバクした。
「入れるよ、霞夜……」
 ゆっくり。
 指なんかとは比べ物にならない熱量のモノが入ってくる。
「ぁっんっ……あっ! あっ!? やぁあっ」
 またイきそうになって、慌てて自分のモノの根元をギュっと指で掴む。
「霞夜……。我慢しないで。さっき、自分でこすっちゃってただろ。イきたいからじゃないの?」
 見られてた……?

「違……っ! もぉ、い、からっ……はやくっ」
「霞夜、1回、先イっても、まだイけるんじゃない……? 手、離しなよ。苦しいだろ」
 
 苦しい。
 イきたい。
 けど、イくたくねぇ。
 こんなにも、何回も、駕崎より先に。
 俺だけ? 俺だけがこんな、気持ちよくてよがってんのかよ。
 お前は?
「もぉっ……次は、お前なんだよっ」
「俺のことは、いいよ。霞夜が気持ちよければ、嬉しいし……っ」
 熱っぽい声で、少し途切れ気味にそう言ってくれながらもゆっくりと、中で駕崎のモノが小刻みに揺れる。
「ぁっあっ! ん……ってめぇがヨくなきゃ、俺もっ……もうっ」
「気持ちイイよ……。すぐにでもイきそう……っ」
「んっ! も、ぁっ、我慢出来なっ……は、ゃくっ」
 早く早く。
「霞夜……大丈夫?」
「んっ、ぃいからっ……。もぉ、あっ、次はお前とイくっ」
 そこまで言うと、駕崎が腰を強く俺へと打ちつけて、少し激しい愛撫に体が跳ね上がった。
「ひぁっ! ぁ、あっ……んーっ」
「ごめ……。痛くない? はぁ……、手、離して……。いいよ。俺ももう、いきそうだから……っ」
 駕崎がいきそうだって。
 嬉しい気がして、指を外すと代わりに駕崎の手が、俺のを擦り上げれくれる。

「ひぁあっ!! んっ、ぃくっ……駕崎ぃっ、あっ、あぁあああっっ!」

 また、イってしまうと、同じくらいに駕崎のが流れ込んでくるのがわかった。
「ん、ぅん……っ」
 熱くて。
 気が遠くなりそうで。
 その場に座り込みそうになる俺の体を駕崎が後ろから抱きかかえた。

「駕崎……」
「今日はなんだか、霞夜の方から求めてくれて、すごい嬉しかった」
「っ求めてとかっ……。別にっ」
「霞夜は、俺に気を使って、しょうがなく土曜日、相手にしてくれてるのかと思ってたから」  
 気を使って。  
 確かに。  
 土曜日はしなきゃいけないような気分になっていた。  
 そういうの、わかるんだな。こいつ。  
 俺の感情、読まれてる。

 ただ、今日は違う。
 駕崎がしたいならさせなきゃって想いよりも、俺がしたいって……そう思った。
「そもそも、お前がしたがるからしょうがなくっつーのもさ。お前が喜べばいいって……俺も思うからだし…」  
 なにも思わないで、ただ、義理でやらせてるつもりはない。

「お前が、俺を欲しがらないと、またどこかでやってんじゃないかとか、心配する」
「……ちゃんと、いつでも霞夜のこと欲してる」
「っ…いつでもとか、困るけど」
 駕崎は軽く笑って、後ろから俺の髪を撫でた。
「本当は、霞夜のこと、すごく独り占めしたいんだよ。ずっと思ってた」

 俺だって。
 お前のこと、誰にも渡したくねぇって思ってる。
 駕崎の腕に絡めた自分の手に力を入れた。
「俺はお前だけだし……っ。お前は嫌かもしんねぇけど、やっぱりお前のこと、全部知ってたいとか思うんだよ」
 そういえば、以前、駕崎に怒られた。
 『俺の日常生活全部、霞夜に言わなきゃなんないの?』
 そう言われて。
 そういうわけじゃねぇし、俺だって逆の立場だったら困るけど。
「悪ぃ、駕崎。今の、あんま気にしなくていいから。別に、日常全部話せって言ってるんじゃねぇしっ」
 また、駕崎の気分を害するような気がして、すぐに訂正した。

「ごめん、霞夜……」
 駕崎は、俺の体を一層ぎゅっと抱きしめて、謝ってくれる。
「なに……」
「ずっと謝らなきゃって思ってたから。霞夜に、酷いこと言ったよね。俺のこと、知ろうとしてくれて、すごい嬉しいのに。霞夜に後ろめたいことしてて、知られたくなかったから、話せなかったし。聞かれないよう、冷たくあたっちゃったから……」
 ……日常生活全部話さなきゃいけないの? ってやつか。
 俺が、日常うんぬん言っちまったから、あきらかにそのこと気にしてるって、バレたよな。

「……お前が、俺のためにしたことなら、いい」
「霞夜を傷つけたよ……」
「ついてねーよ。多少ついたとしても、治ればなんでもねぇんだよ」
 駕崎は俺の耳元にキスをして。
 首筋にも、口付けされる。
 その感触に体がピクンとはねた。
「もう、後ろめたいことなんてなにもないから。全部、知って……」

 俺は体を捻らせ、そう言ってくれる駕崎に、自分から口を重ねた。
「ん……っ。駕崎……」
 やっぱり、俺はお前が好きだ。

「駕崎……。俺、お前のこと、誰にも譲る気ねぇから」
 そう言う俺に、駕崎は了承してくれるよう、もう一度、口を重ねてくれた。