別に約束したわけじゃない。  
 だけれどなんとなく。  
 駕崎が中学へ行くのが週一から2週に1回に変わったから。  
 そのあいた土曜日。  
 俺は、駕崎の相手をするべきな気がしていた。

 
 付き合いだした日。
 この日も土曜日で、駕崎は中学へ行かなかった。
 その次の土曜日。
 本来なら行く順番なのかもしれないが、とりあえずは残るらしい。
 来週は行くんだろうな。
 
 変に緊張しながらも、一応、駕崎の部屋へ行くと、なんでもないみたいに、勉強をしていた。  

「お前、なにやってんの?」
「ちょっとだけ、数学のノート整理してたんだ。でももう終わったから」  
 終わったって。  
 手をあけられると、どうすればいいのかわかんねぇ。  
 こんなやられに来たみたいで、やだし。

「霞夜、どうして来てくれたの?」
 その言葉に緊張が走る。
「っだからっ……俺のせいで駕崎、やれねぇわけだし……っ」
「つまり、やっていいってこと?」
 そう直球で聞かれ、体が熱くなるのがわかった。
「っ……やりたきゃやりゃいいだろっ」  
 駕崎は、俺の頬を取って上を向かせると、そっと口を重ねる。  
 舌が入り込んで、俺の舌を絡め取って。  
 体中がゾクゾクするようなキスだった。
「んっ……ンっ」
 俺はどうすることも出来ず、棒立ちのまま。
 駕崎の唾液が流れ込むようで、自分のかもしれないけれど、口の端からあごを伝った。
「んーっ」  
 やっと開放され、俺は駕崎の視線から逃れるように俯いて、大きく呼吸した。
 
 駕崎が、俺に歩み寄るようにして一歩前に出るもんだから、それにあわせるように後ずさると、足に力が入らなかったのか、よろめくようにして、その場に座り込んでしまう。
「力、入らない……?」
「っ違ぇよ……別に、ちょっと、足がもつれただけ」  
 そう言って、駕崎に手を引かれるがままに立ち上がる。  
 駕崎は、俺の体を後ろから抱いて、俺のズボンのチャックを下ろしていく。  
 体が緊張でこわばっているのが自分でもわかった。
 
 駕崎の手が、俺のモノを直に取り出して、ゆっくりと擦りあげる。
「っんっ……ぁっ、あっ」  
 何気なく顔をあげると、前に置かれていたわりと大きめ鏡に自分の姿が映っていて、恥ずかしさからすぐに顔を背ける。
「っ待っ…あっ、駕崎……っ」
「なに?」  
 とはいえ、鏡は目の前にあるわけじゃない。  
 少しだけ離れている。  
 もしかしたら、駕崎は気づいてないかもしれないのに、あえて気づかせるのは馬鹿かもしれない。  
 でも、どっちにしろ、駕崎は優しいからどかしてくれるかもしれないし。  
 言った方がいいよな。
「……鏡、あるから……」
「そうだね」
「っそうだねって、てめぇっ」
「霞夜は恥ずかしいの?」  
 そう聞かれて『恥ずかしいです』とも言いにくい。
「……別に、そういうわけじゃねぇけど」  
 つい、そう答えてしまう自分がいた。  
 駕崎は、また手の動きを再開させる。
 俺はなるべく鏡を見ないようにした。
「ぁっ、あっ……んぅっ」
 俺だけがいやらしい声を出してて、ものすごく恥ずかしく感じた。
 前、やったときは、慣れない刺激に恥ずかしさなんて考える余裕はなかったけれど。
 いまだって、もちろん慣れたわけではないが、少しだけ余裕があるのか、やたら恥ずかしく感じてしまう。

 駕崎が手を止め、俺のズボンと下着を下ろしていく。  
 いったん、やることに同意した以上、なにも言えず、俺はされるがまま、下半身をさらけ出していた。
「霞夜……出して?」
 俺にローションを手渡し、駕崎は右手を出す。  
 よくわからないまま駕崎の手にローションを垂らした。
 左腕はあいかわらず、俺の体を支えるように抱いている。
 
ローションをまとった手は、後ろから俺の尻を撫でて、奥の入り口へと滑り込む。
「んっ……駕崎っ」
 駕崎がゆっくりと、1本目の指を差し込んだ。
「んぅんんっ……ぁっくっ」
 ローションのせいか、ぬるぬるする。
「はぁっ……駕崎っ……」
「もっと、後ろだけで感じられるようになるといいね」
 少し、いつもと違うような駕崎の声に、ゾクっとした。  
 そう言って、差し込んだばかりの指を引き抜いてしまう。
「な……なんで?」  
駕崎はいったん俺から離れると、引き出しからなにか取り出す。
「……なに、それ」
「霞夜……おかしいよ。いくらなんでも知らないってことはないだろ」
 携帯の半分くらいのサイズ、四角いやつ。
 スピーカーのボリュームの絞りみたいなのがついてる。
 四角いやつの上部からイヤホンのコードみたいなのが長めについてて、先には長丸い、親指くらいの長さのモノが繋がっていた。
「……ホントに知らない?」
「……なんだよ、それ。知ってないとおかしいのかよ」
 なんとなく、無知さを指摘されたみたいで、少しだけ恥ずかしく感じた。
「別に、いいよ。ローター……って。聞いたことないかな」
 駕崎は俺の前に座り込んで、ローターと言われた器具の丸い部分に自分の右手を絡める。
 さっきつけたローションをローターにも纏わせているだということは理解できた。
「足……開いて?」
 あの中学生に負けたくない一心からか。
 そいつのかわりで今日、俺は相手しているんだから、つまらない思いをさせちゃいけないって気持ちがあるからか。
 従わないわけにはいかない気がしてしまう。  
 そっと、足を開くと、駕崎がさっき指を入れた箇所、入り口あたりを確認するようにまた撫でる。
「んっ……駕崎……」
 駕崎の目の高さが、今は俺の股間あたりにあるせいで、さっきよりも恥ずかしく感じた。
「じゃあ、入れるから……」  
そう言って、ローターの長丸い部分をちらつかせる。
「なっ、なんでっ……ソレ、入れるのかよっ」
「そうだけど」
「なんでだよ、意味わかんねぇって」
「気持ちいいから」  
 お前の指の方がいいとも言えず、そっと頷くと、駕崎はゆっくりと俺の中にローターを押し込んでいった。
「っんぅっ……あっ、くっ……」
 すっぽりと、ローターが中へと収まってしまう。  
 別に、気持ちいいのかよくわかんねぇし。  
 ただ、異物感から恥ずかしさで変に感じてしまう気はした。
「駕崎……こんなん入れて、どうすんだよ……」  
 駕崎は、俺の中から繋がるコードの先、四角い部分を俺に見せる。
「これね、スイッチ」  
 そう言って、ボリュームの絞りみたいなのを少しひねる。
「っあっ!!!」  
 突然、体中が、しびれるようだった。  
 理解するのが一瞬遅れる。  
 全身がびくついて、体を支えるように、駕崎の頭に手を置いてしまう。
「やっあっ……あっ、駕崎ぃっ……あっコレっ」
「なに」
「動いて……っあっ、動いてるっ……」  
 涙でぼやける視界の中、駕崎が口角を上げ笑うのが確認できた。
「そう。もうちょっと、強くしようか」  
 駕崎の手が、また四角い器具を弄って、中の振動が強くなっていく。
「ひぁあっっ……やっやぁっ……駕崎ぃっ、駄目っあっ……あぁあっ」
「イっちゃいそう? すごい、ヌルヌルしてるよ」
 駕崎が、俺のに口付けるようにして、溢れ出している液を吸い上げる。
「ぅンっ……あっ、やめっぁあっあぁあああっっ」  
 耐え切れず、駕崎の顔面に思いっきり射精してしまう。  
 恥ずかしさに耐え切れず、涙が溢れるが、体の中の振動は収まってくれず、体を支えれない俺はその場に座り込む。
「ひっくっ……あっ、ぁんっ……あっだめっ……あっ、だめっ……」
「ん……なにが駄目?」  
駕崎は、俺の背後に回って、シャツのボタンをすばやく外し、後ろから乳首を指で転がしていく。
「やっもぉっ……あっ駕崎ぃっ……おかしぃっ、あっ」
「なに……?」
「体がっ……ぁあっ、やぁあっ」  
 イったばかりなのに。  
 また、自分のが勃ち上がっているのに気づく。  
 あまりにも、自分がいやらしくって、怒りと羞恥が入り混じった。  
 
 ビクつく体を駕崎が後ろから支え、乳首を撫でていたうちの片方の手が、俺の股間を扱き出す。
「ぁあっ、ゃめっあっ……駄目っ」
 目の前、鏡に映った自分の姿。  
 膝を立てて開かれた足の間、中からコードが出てきてて。  
 後ろから、駕崎の手が、乳首と股間を弄って。  
 あまりの嫌らしさに、頭が痛くなる。  
 ふと、鏡越しに駕崎を見ると、目があってしまう。  
 駕崎に見られてる……。
「っやっ……やだっ、あっ、やぁっやぁああっっ」  

 俺は変態か。  
 駕崎の見られてるって。  
 そう理解した瞬間、熱が一気に股間に集中して、また出してしまう。
 
 今度は、それを見計らってか、駕崎は振動を止めてくれた。

「すごくかわいいね、霞夜……」
 もう、言い返す元気なんてない。  
 ローターが引き抜かれ、駕崎が後ろから俺の膝裏に手を回し、持ち上げる。
「なっ……」
 鏡に恥ずかしい部分が映って、俺は顔を逸らした。
「ね、ココに入れていい?」
 駕崎の指が、ゆっくりと入り込んで中で蠢く。
「んっぁあっ、もぉっ……やっあっ」
「いや…?」
 中をゆっくりと掻き回されて、体がまた熱くなっていく。
「はぁっあっ……ぁんっ、駕崎ぃ……っ」
 もう駄目だ。
 物事がうまく考えられない。  
 ぐったりとした状態。
 
 指を引き抜かれ、向かい合わせに駕崎の体を跨がされる。  
 恥ずかしくって死にそうだった。  
 こんな近距離で顔を見られて。  
 声も聞かれて。
「霞夜……ゆっくり腰、おろして」
 言われるように腰を下ろしていくと、駕崎のが入り口に当たる。
「っ……駕崎っ」
「そう。そのまま」
 駕崎が手を添えて、ゆっくりとソレが挿入されていく。
「ぁああっ……やっ」
「どうした……?」
「はぁっ……おっきぃ……っキツ……」
 駕崎は、俺の頬を撫でて、少し企むように笑った。
 なんか、恥ずかしくなって顔を逸らす。
「ホント……霞夜の中はキツいね。締め付けてる」
「っばかやろっ……てめぇっ」
 全部入り込んでやっと一息つくと、駕崎が俺の体をそっと緩やかに揺さぶった。
「っんっぁっあっ……ひぁあっ」
「感じる……?」
「っぁっ、ばかっ……あぁあっ死ねよぉっ」
「気持ちよくなってくれてるか、俺は心配なんだよ?」
 耳元でそう言われても。
 ホントにこいつはそんな心配してんのかよ。
 でも、そう言われると、こいつのこと傷つけたくねぇし。
「っんっぃい……っ」
「ん……?」
 聞き返してんじゃねぇよ。
「ぁああっ……もぉっ、いいってばぁっ……ぁあっあっ」
 でもやばい。
 本当にすっげぇ気持ちいい。
 もっとして欲しくなる。
 けど、そんなの要求できるわけねぇだろ。
「はぁっあっ……駕崎っ」
「もっと、動いて欲しい?」
 俺の思ってたことを読み取られ、焦って顔を上げると思いっきり目が合う。
「な……っ」
「霞夜、少し自分で腰、動かしてるよね」
 そう指摘され、顔が熱くなる。
「っんなわけ……っ」
「ホントだよ……? でもいいよ、俺が動いてあげるから……」
 駕崎は繋がったまま、俺を押し倒すと、勢いよく突き上げてくる。
「ひぁああっぁあっ……んーっ」
 熱くてもう、意識が飛びそうだ。
 くらくらする。
 何度も何度も、駕崎が突き上げて。
 それにあわせるように声が漏れ、体中がしびれた。
「もぉっ……いくっっあっ……やぁあっやぁあああっっ」

 最悪だ。
 俺だけが3回もイかされて。
 ぐったりしちゃって。
 駕崎は1回しかイってねぇのに。
 無性に恥ずかしいし、敗北感を感じた。

「霞夜、気持ちよかった?」
 んなこと聞いてんじゃねぇよ。
 そう言い返したいのに、しゃべる気力がなく、しょうがなくただ頷いた。

 お前は?
 そう聞きたくて、駕崎のシャツを軽く引いた。
「ん……? なに?」
「だから、さぁ……」
 なかなか聞かないでいる俺に、にっこり笑って。
「気持ちよかったよ」
 そう言ってくれた。
 言われたら言われたで、ものすごい恥ずかしくなり、顔を逸らした。

 中学生としたときよりも?
 そう聞きたいけれど。
 それは聞けそうになかった。
 中学生の方がよかったとしても、どうせ俺の方がいいって言うにきまってる。  

 それに、いま、そいつのことを思い出させたくない。

 それでもやっぱり、俺の中学生に対するライバル心は消せないでいた。
 もっと中学生以上になれるよう、どうにか勉強するかな……。
 そんなことすら考えてしまっていた。