「玲衣くんのことさ、気になるんだけど」
放課後に教室で待ってろって言われたもんだから、素直に一人で待ってたんだけど。
同じ学年だとは思うが知らないやつ。
これはもしかしなくても告白だよな。
やばい。
妙に嬉しいし。
そりゃオッケーするつもりもないし、こいつのこと好きなわけじゃないんだけれど。
人に好かれるってのはやっぱり嬉しいもんでさ。
「あの、俺のことどこで知ったわけ?」
「ん。放課後に見かけて」
「放課後?」
「渡り廊下で。あれって、彼氏?」
……もしかしなくても、美和とやってるとこ見られたとか。
最悪だ。
「あのさ、見なかったことにしてくれるかな」
「別に、ヤらせてくれるとか思ってるわけじゃないし、だれとでもやるやつだなんて思ってないから。けど、やられてるの見て、かわいいと思ったから」
やり目的ではないってことですね。
「あのときの玲衣くん、すごいHな顔してた」
一気に羞恥心が高まる。
「っそんなん……ずっと前だろ。覚えてんのかよ」
「覚えてるよ」
一歩前へと歩みよられる。
それに合わせるようにして後ずさると、さっき自分が立ち上がったばかりの椅子へと逆にまた座り込んでしまう。
「キスしていい?」
「え……」
見上げると、頬を掴まれて口を重ねられた。
あ、やばい。
そう思うのに、どうすればいいのかわからない。
舌が入り込む。
「ぅんっ!! んっ」
そっと口を離されても、どうすればいいのか。
「びっくりした? やっぱりかわいいな」
やばいってば。
どうにか抵抗しないと。
「俺っ……」
そういえば、昔、ここで美和にも襲われたっけ。
そんなこと思い出してる場合じゃない。
なんか思い出すと変な気分になってくるし。
どうにも出来ないでいると、急にそいつの右手が、俺の股間をそっと触れる。
「っあっ……!!」
「もう少し硬くなってるね。Hなこと、考えたの?」
たぶんその通りだ。
「っだっめ…だからっ」
「どうして」
擦られる。こんなとこで。
恥ずかしいし、駄目だって。
「はぁっ……あっんっ」
このままじゃ流される。
そう思ったときだ。
ガラっと勢いよく教室のドアが開かれる。
その音に反応するみたく、俺の前にいた男は体制を整えた。
まだ服も全部着てるし、男2人がちょっと近づいてただけってレベルでやり過ごせるだろ。
そう思ったんだけど。
問題はそこにいたのが美和だってこと。
最悪だ。
こいつはやり過ごせないかもしれない。
「ごめん。邪魔しちゃった?」
だからその笑顔が怖いんだっての。
「っ違うんだよ、美和っ」
「なにが?」
「なにがって……」
ついちらっと前のやつへと目を向ける。
こいつが勝手に襲ってきたとも言いづらいし。
俺と目が合うと、そいつも理解出来たのか
「ごめん。俺が玲衣くんのこと気になってて。君と付き合ってるのなら、引くよ」
こいつ、結構いいやつだな。
「……忘れ物取りに来ただけだから」
美和は笑顔のままそう答えると、俺の机から携帯を取り出していた。
なんで俺の机にお前の携帯が入ってんだよ。
美和は俺に背を向け教室を出て行こうとする。
って、お前こいつのこと止めないのかよっ。
どうすんだよ。
「美和っ!!」
俺の呼びかけもむなしく、無視する形で、美和はそのまま教室を出て行った。
止めればいいのに。
「俺……」
どうすればいいんだよ。
苦しくなってきた。
美和が止めてくれないから、苦しいんだ。
「ごめん。俺、あいつのこと追いかけないと……」
「わかった。俺の方こそごめん」
ちょっと、こいつに対しても心苦しいな。
けれど、理解のあるやつっぽくてよかった。
俺は軽くお辞儀をして、教室を飛び出た。
っと、その瞬間、腕を引っ張られる。
「うぉお!」
「なんて声出してるの?」
美和だ。
教室の外で待ってやがったのか。
ちくしょう。
すごい勢いで追いかけようとしてたのバレたよな。
そのまま腕を取られ、ずんずんと歩いて……どこ行く気だこいつ。
「あ、美和。怒ってる?」
「ん? 怒ってないけど」
ホントかよ。
「でも、不愉快だよ」
おぉ、あっさり不愉快って。
まぁこいつ、俺にはたぶんあんまり嘘とか付きそうにないしな。
「美和だって。いろんなやつから告られてただろ」
「それで、玲衣くんは不愉快じゃなかった?」
もちろんそこまでいい気はしていない。
けれど美和が告られてても、相手の子がなんだかだまされてるような気がして、あーあって思うだけだったりしてさ。
あれ、あまり気にしてないのか、俺。
だって、美和はちゃんと振りそうだし。
「まぁ……。なぁ、美和、なんで止めなかったの?」
「……玲衣くんだって、俺が告られてても止めないだろ。なんで?」
「それは……」
美和の口からちゃんと断ってほしいから。
もしかして美和も同じこと考えてる?
それなのに、俺、ちゃんと断った姿見せてないよな。
「なぁ、俺は美和と違って人から告られるなんてこと、全然無いんだよ。慣れてないから、どうすればいいのかわからなくなるんだって」
美和は急に立ち止まると、俺に向き直った。
「じゃあ、玲衣くんは俺のときもどうすればいいのかわからなくて、流れで今、こうなってるの?」
……そういうわけじゃない。
と、言いたいところだが、おおむねそういうわけだ。
というか、お前、結構強引に俺を襲っただろう。
「でも、お前に言われる前から、お前のことある意味気にしてたよ」
すごい嫌ってたわけでさ。
あいかわらず、なにも答えてくれないし。
「お前が……他のやつにかっこいいとか言われてんのむかついてたし」
ただ、嫌いだったからかもしれないけど。
「玲衣くん……。俺は今、玲衣くんがかわいいとか言われてんの見て、すごいむかついてるよ」
笑顔で言うことですか、それ。
「そんなの……」
言われてるとき、お前いたっけ?
どこかから見てやがったか。
それとも、かまかけてんのか。
「キスしていい? って」
……こいつ、絶対聞いてる。
全部?
けど、さすがに声聞こえなくねぇか?
「したよね、キス」
見てたとすれば、下手に嘘をついても面倒だな。
「……断る隙がなかったんだよ」
「俺とするのと、どっちがよかった?」
んなこといちいち聞いてんじゃねぇよ。
そう思った直後、抱き寄せられて、口を重ねられる。
「んぅっ!!」
すぐさま入り込んだ舌先が、俺の舌を絡め取っていく。
気持ちいい。
さっきのやつとは全然違う。
別にさっきのやつが下手だったとかそんなんじゃねぇけど。
「ぁっ…んっ」
何度も重ねなおされて、舌の絡む音が響いた。
腰に回った手が、シャツの中に入り込んで、背中をそっと撫でた。
それだけで体がゾクっとする。
体がふらついて、慌てて美和のシャツを掴んだ。
そっと口を離してくれるが、呼吸を整えるのでいっぱいいっぱいだ。
「ほら……。ちょっとキスしただけでもうこんなエロい顔してる」
「っ……エロいとか言ってんじゃねぇよ……」
「この顔、見せたんだろう?」
お前の方が気持ちいいし。
けれどそう言うことも出来ずにいると、また強引に腕を引っ張るもんだから、転びそうになった。
「ちょっ……どこ行くんだよ」
「ここから近いから、屋上かな」
近いからって?
屋上でどうすんだよ。
って、聞くまでもないか?
さっきのやつに対してあまり抵抗しなかった俺が、美和相手に抵抗するってのもなぁ。
しょうがなくついていく。
屋上に出ると、放課後ということもあってか、誰もいないようだった。
ドアへとすぐさま押し付けられ、股間のモノを掴まれる。
「っ…いきなり…っ」
「いきなり? ココ、固くしてるってことは、もう準備できてるんでしょ」
何度も何度も擦られて、もううまく頭が働かなくなってくる。
「んっ…んぅっっ…」
あ、ズボン脱がされる。
下着も。
「美和…ここですんの……?」
「いや?」
耳元で聞かれながら直接擦りあげられると、気持ちよくておかしくなりそうだった。
「はぁっ…あっ…美和ぁっ」
座りだしてしまいそうで、美和の首へと腕を回す。
「知ってる? 最近の玲衣くん、昔に比べてすぐいやらしくなるから」
なんだよ、それ。
言い返したいけど、余裕ない。
何度も擦りあげられ、濡れた音が響いた。
「んっ! ぅんっ、ぁあっ」
「もうたくさん濡れてきたね」
濡れてきたとか。
恥ずかしい言い方しやがって。
美和はぬるぬるした液を掬い取ると、俺の足の間へと指を滑り込ませる。
「入れるよ」
「っ…もぉ……?」
「そう。もう入れるよ」
そうわざわざ教えてくれてから、ゆっくりと指先を押し込んでくる。
「ぁああっ……」
美和は指を入れてしまうと、少し俺から距離を取った。
じっくりと俺のこと見てきやがる。
そのまま、中に入り込んだ指でぐにぐにと内壁を押し広げていく。
「ぁっんっ、あっ…美和っ…ひぁっ…ん、っ…ゃっ」
「や?」
わかってるはずだ。
そんな風に強く前立腺を押されたら、すぐにでもイってしまうって。
いつもは避けるくせに。
焦らしまくるくせに。
「ぁあっん、っぃく…っはぁっあっ…美和ぁっ…」
「いいよ、イって」
いいの?
もう、無理だよ。
ギリギリで止めたりすんじゃねぇの?
大丈夫かよ。
「あっんっ…もぉっ…ぁあああっっ」
こいつ、意外とあっさりいかせてくれたし。
変な感じ。
そう思っていると、一旦指を引き抜いた直後、俺の体を反転させ後ろからまた壁へと押し付けられる。
「っ…美和?」
「入れようか」
「待てよ」
「すっきりしちゃったって顔したね、さっき。わかってるよ。昨日もしたばっかだし溜まってないんでしょ」
わかってて、なんでイかせてんだよ。
理解できないまま、美和のが後ろから入り込んでくる。
「ひっぅっ…あっ」
指1本とは比べ物にならないが、それでも俺の精液でもまとってんのか、美和のは俺の中へとスムーズに入り込む。
「待っ…ぅん、やばぃっ」
「ん…? 女の子みたいに潮吹きしようか」
「っ……」
こいつ、わかってて…。
「昨日からもうたくさんイってるもんね。イってすぐだし。こんな風に刺激されたら漏らしちゃいそうでしょ」
「っ…やっだよ…っ」
「そう?」
けれども、少し腰を動かされ中を刺激されると、だんだんと尿意を催してくる。
「んっ…美和…」
「玲衣くんはあんなやつにエッチな顔見せたんだよ。だから、俺だけにもっと見せて」
ゆるゆると亀頭を撫でられ、催促されているかのようだった。
「っぁ…ゃっだ、バカ、出るってっ」
「いいよ」
耳元で、少し企むような声がした。
亀頭に爪を立てられる。
「イっ…ん、や…だっ、もぉっ…んっ…んぅっ!!」
立てられた爪が尿道に突き刺さるんじゃないかって。
強めに弄られてしまうともう俺の中で限界だった。
美和に突っ込まれたまま、美和の手にかかるようにして失禁してしまう。
「ひっ…んっ」
「ん…泣かなくていいよ。玲衣くん。かわいいね」
「こんなの、かわいいわけねぇだろぉがっ」
「かわいいよ。俺はこういう玲衣くんもかわいいってちゃんと思ってる」
俺のを掴んでいない方の手が、俺の体をぎゅっと抱きかかえてくれる。
なんで、こんなみっともない姿をかわいいとか言えるんだよ。
バカすぎるのに、気持ち悪いのに、妙に嬉しくてどきどきしてしまう。
「はぁっ…美和…ぁ…も、やだっ」
「どうして? すごくかわいくてたまらないよ」
「変態…っ」
「それはお互いさまだよね」
ああもう最低だ。
美和にそんな風にされると、また欲しくなる。
今度は直接手で擦りあげられ、性欲を刺激されていく。
そのまま、後ろも前立腺辺りを擦るように出入りしてくれる。
「ぁあっんっ…ぁん、あっ…美和っ…ん、やぁあっ」
「気持ちいい?」
「はぁっん、ぃいっ…あ、もぉ…やぁっ」
自分で自分が嫌になる。
本当に変態じゃんかよ。
全部美和のせいだろ、これ。
自分から腰を振ってしまっているのもわかってる。
俺、こんなことできる人間じゃなかったのに。
いやらしい。
全部、美和のせい。
「ぁあっん、美和ぁっ…ぃくっ」
「いいよ」
「やぁっ、もぉっあっん、いくっやっ…あぁああっっ!!」
美和のが中に来る。
なんだこれもう、ぐちゃぐちゃだ。
最悪。
美和はいいかもしれないけど、俺はもうぐちゃぐちゃだよ。
いや、そんなに大量に漏らしてねぇけどっ。
美和のが引き抜かれていくころにはもう足腰に力が入らなくって。
支えられるようにして、少し場所をずらしながら腰を下ろした。
寝転がろうとすると、ちょうどそこにタイミングよく美和が座る。
……膝枕とかしてくれるわけ。
あいかわらずバカだな、こいつ。
それでも、疲れている俺はそのまま、美和の膝に寝転がった。
「玲衣くん…。どうしてさ。俺と付き合ってるって言ってくれなかったの?」
少し落ち着いたところで沈黙を破るよう美和が話し出す。
「…言うタイミング逃しただけだよ」
「隠したい?」
「……言いふらす気はあまりない」
「そっか……」
嫌だったかな。
気になって、上を見上げると俺の頭を撫でてくれる美和の姿。
「いいよ、玲衣くんがそう思うなら」
「……他のやつとどうにかなるつもりで言わないってわけじゃねぇから」
「うん…。今日、追いかけてきてくれただけで、本当は充分嬉しいんだ」
あのとき追いかけなきゃいけないって思った。
そもそも、俺も告られた……まぁ直接好きとは言われてねぇけど。
そういう状態で、たぶん浮かれてたんだ。
キスさせといて、股間まで触らせて。
抵抗しないとかどうかしてる。
美和に止めてもらえなくて苦しかったから。
やっぱり俺は美和じゃないといけないんだなって思った。
少し顔を上げると、わかってくれたのか、口を重ねてくれた。
こいつ変態だけど、こいつにならどんだけさらけ出しても受け入れてくれるんじゃないかって気もするし。
でも今日みたいなのをまたするつもりはねぇけど。
やっぱバカだしな、こいつ。
「そういえばさ。美和、なんで俺がキスしたとか、知ってんの?」
「そうそう。返さないとね」
そう言って、美和が俺に携帯を渡してくれる。
「俺の携帯、いつのまに持ってたんだよ」
「掃除中に、放課後、教室で待っててって言われてたでしょう。そんなの聞いたら気になるし。玲衣くんの携帯は俺が持ってたんだ」
「それ、なんの意味があるんだよ」
「俺の携帯、玲衣くんの机の中に入れてたでしょう?」
「……うん」
「通話中にしてたから」
え、ちょっと待て。
いまいち理解できない。
俺の携帯を美和が持ってて。
美和の携帯が俺の机に入ってて。
通話中?
「え、どういうこと?」
「会話、聞いてたから」
「だから、どうやって? そんなに声って拾うもん? そもそも通話中って、いつからだよ。通話中にしてから机ん中入れてんの?」
いつ入れてたのか、わっかんねぇ。
美和がため息をつく。
俺の理解力の無さにか。
「俺が、玲衣くんの携帯を使って、自分の携帯に電話したの」
「……誰が出るんだよ」
「ハンズフリーのイヤホンつけといたから。オート着信設定にしてる」
車の運転中とかに使用するやつか。
勝手に通話中に切り替わる…。
「それだと、ある程度の距離でもマイクが音、拾ってくれるからね」
「…で、俺の様子聞いてたのかよ」
「そういうこと」
にっこり笑ってくださいますけど。
「プライバシーの侵害だろ。しかも俺の通話料っ」
「今度、俺の方からかけてあげるから、長電話しよう」
「いらねぇよっ」
やっぱりこいつのやり方って。
おかしいだろ。
一瞬、なるほど……とか思っちまったし。
「頭の使い方間違ってる」
やっぱり、頭のいいやつってちょっとよくわかんねぇ。
「お前、そんなことしたら普通、気持ち悪くて引かれるぞっ」
「普通は、でしょう?」
……そうなんだよな。
なんだかんだで受け入れてる俺もまた、普通じゃないのかもしれない。
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