美和が、俺より運動できるのが気に食わなかった。
勉強は別に負けても気にならないけど。
勉強も出来て運動も出来るとか。
あぁ、むかつくなーって。
いままで運動能力に長けてた俺って、やっぱそれなりにちやほやされててさ。
それが美和のせいで、無くなっちゃったわけだし?
…もしかしたらツートップとか言われてっかもしれないけど。
今は、そんな一見完璧なのが俺なんかの彼氏で。
そうなると、美和がみんなからすげぇって言われてるのに対してむかついてる自分がまるで嫉妬してるみたい。
「はぁ…」
ついため息が洩れた。
「どうしたー? 玲衣」
誠樹が俺を見て、気にしてくれるけど。
「なんつーかさ。やっぱり美和見てると俺、むかつくなーって」
「…モテるから?」
そうなんだよ。
結局はそこだ。
いまもまた、後輩らしき子に呼び出されて教室を出て行った。
告られたりすんのかな…。
「あいつすっげぇ性格悪いのに、それ、みんな知らねーし」
「…なんで玲衣は知ってんの?」
「そりゃ、付き合って……」
……付き合ってるって。
…言ってなかったっけ。
互いの空気が停止する感じ。
「…なに、玲衣、付き合ってんの?」
「いや…そのさぁ」
「モテてむかつくって、そういうことなの?」
「いや、だから初めはそうじゃなかったんだけどっ。いまも別にそうじゃねぇ意味でもむかついてっけどっ」
どう言えばいいのかわかんねぇ。
「お前、なに言ってんのかよくわかんないけど。つまりさ。
男として、負けちゃってるのも悔しくてむかつくけど、彼女として、彼氏がモテてるのも、もやもやしちゃうってやつなんでしょ」
あいかわらず冷静に俺を見て、さらっと言い当ててきやがる。
「っ……まぁそうなんだけどさー…。っつーか、ほら、あれだよ。お前に俺、助け頼んだじゃん?
今日やられるかもしれないって。あんときお前がちゃんと助けてくれてたらこんなことにはならなかったんだよ」
「あぁ。マジでやられたんだ?」
他人事だと思って。
「だから言っただろうが。あいつは腹黒なんだよ。もうちょっと驚けよ」
「いや、驚いてるよ。そんなこと急にするようなヤツに見えないし」
「だろ? だから、みんなあいつの腹黒さを知ったら、きっとこんな風にモテないだろうし?
ざまぁみろなんだよ」
そう俺が言うのに対し、誠樹はなぜかくすくすと笑ってきやがる。
「なに…」
「いや。結局さ。みんなが知らないこと、お前は知っちゃってるわけだろ?
玲衣にしか、見せてない一面ってことじゃん…?」
……そう…なるのか。
うわ。ちょっとだけ嬉しいような気にもなってくる。
俺ってバカ。
あいつ、俺の前では素でいられんのかな。
「…あ、誠樹。一応言うなよ」
「りょうかーい」
嬉しくも思うけど。
とりあえず、あいつが呼び出されてた内容は気になる。
やっぱ告られてんだろうな。
一応…今日の夜、あいつ来るだろうし。
聞いてみるか。
……ってね。都合よく行かないのが世の中なわけですよ。
いっつもうざいときに来るくせに、話があるときには来ないわけ?
あーだからって、呼び出すのも面倒っつーか、気に食わないっつーか。
…思えば俺から呼んだことってそんななかったか。
しょうがねーなー。
半年に1回くらいだぞ。
俺から赴くなんて。
むかつきながらも部屋に行く。
「美和―? しょうがなく俺の方から来てやったんだけどー」
そう中に入り込むと、今日、美和のこと呼び出してた後輩らしき子…。
だと思う。
俺の記憶が確かなら。
「あ…なに、取り込み中か。まぁいいや、俺、あとで…」
ホントは、その子に告られたかどうかが知りたかったんだけど。
別に、美和が浮気するとかどうとか考えてるわけでもねーし、あいつの腹黒さ知ってついてけるやつってそういねーとか思ってるし。
とりあえず部屋を出ようとすると、
「待って」
そう美和に声をかけられる。
腕を取られ、振り返ると美和が俺へと口を重ねてきた。
な…んで。
なに。
いや、後輩…だろ、そこにいんの。
おかしいだろ。なに後輩の前で口重ねてんの。
「っ…ばっか、離し…っ」
思いっきりどかすと、美和は後輩の方へと視線を向け
「わかったかな…。この人、俺の恋人なんだ」
…っつーか、俺は見せしめか。
んなのに利用すんなっての。
いや、実際付き合ってるけどさー。
告白を断りきれないから、彼女の存在アピールみたいな?
まぁ、恋人いるからって言ってくれるのはいいけど。
じゃ、俺がいなかったら付き合ったのか?
さておき、キスとかさー。
人に見せるためにするもんじゃないとか思うわけで。
デリカシーの問題だ。
つい舌打ちしてると、
「…相手の方、嫌がってるみたいでしたけど…」
そう後輩に指摘される。
「いや…別に嫌がってるわけじゃ…」
「じゃあ、それらしいとこ見せて欲しいんですけど…」
それらしいって。
恋人らしいとこ?
「ばっか、人に見せるもんじゃねぇしっ」
「俺は構わないよ?」
美和もバカだ。
っつーか、こいつはワザとだ。
少し目が企んでる表情。
「してくれる?」
けれど、後輩がいるからか、声のトーンは普段の優等生っぷり。
するって。
なにをしろと。
キスくらいなら、見せても…いっか。
いや、でも。
俺から?
俺、美和に自分からキスとか。
戸惑ってると、美和が俺へと不敵な笑みを。
恐…。
その後、後輩に向き直る。
「俺はね…。この人のことがすごく好きだから。
この人のどんな所でも、口付けできるよ…?」
さわやかになに言ってるんですか。
バカだなーなんて思いつつ、ため息をつくが、振り返った美和にまた口を塞がれた。
逃げようとするが、体をキツく抱きしめられる。
「んっ…」
尻とか触られるし。
よろめきながらもキスをしたまま数歩後ずさると壁にぶつかって、美和がもっと深く口を重ねてきやがった。
舌が絡まって頭がボーっとしてくる。
「ぅんっ……んっ」
足が、フラつくし、立ってられっか……?
そう思ったとき、美和の手が俺の股間をズボンの上から掴みあげる。
「んぅんっ!!」
緩やかに撫でられながら、やっと口を開放され、とりあえず呼吸を整えていると、美和が耳元で、
「このまま犯そうか…」
俺だけに聞こえるよう囁いた。
「な…」
「抵抗しないで」
強く股間を握って、圧力かけてきやがる。
「っ…ぃっ………」
こいつホントにやりかねないし。
耳に舌を這わして、いやらしい音をわざとらしくたてられる。
「っ…んっ…んぅっ…」
ぴちゃぴちゃいってる。
股間も掴まれたままだし。
顔を背けると、舌から逃れられるが、それも一瞬で、目の付近に口付けられ、その後、首筋へと噛み付くようなキス。
「ぃっ…ばっか…っぃたぁ…っ」
強く吸い上げられて、絶対に跡残されてる。
っつーか、キスマークなんて内出血なんだよ。
痛ぇよ、バカ。
睨む俺に笑顔を向け、シャツの中に、美和の左手が入りこむ。
胸の突起に軽く爪を立てられて、体がビクついた。
「んんっ!!」
押し退けようとすると、
「玲衣くんが嫌がったら、信じて貰えない」
あきらかに状況を楽しむようにそう言って、ズボンのチャックを下ろされる。
しゃがみ込んだ美和は、取り出した俺のにねっとりと舌を這わせた。
「んーっ…ぅンっ…ゃっ…」
「嫌なんですか?」
横からの後輩の声。
急に人がいることを自覚させられ、体が大きくビクついた。
そっちを見ても、視界がぼやけて、後輩がどんな風に俺を見ているのかわからない。
「…っ…んっ…ンっ…」
見られてるし。
慌てて口を手で抑える。
なんでこんな。
美和の口の中に含まれる感触。
舌が絡まってくる。
もうやめて欲しいのに。
「んぅんっ…ぅんっ…」
ホントもう、立ってらんねぇ。
その場にしゃがみこむと、美和はやっと口を離してくれていた。
と、そのまま一気にズボンと下着を引き抜かれる。
「なっ!!」
マジでやる気じゃねぇだろ?
違うよな?
そう思って目を向けても、ぼやけるし、何考えてるかわかんねぇし。
俺が足を閉じようとすると、逆らうよう大きく広げられる。
指先が、奥の窪みを緩やかに撫でていく。
さっきまで美和が舐めてた俺のから溢れる液が滴ってるのもわかった。
美和の指が、入りそうで入らない。
ヒクつく。
「ぁっ…んっ…ンっ…」
「恥ずかしい…?」
優しい口調で、そう言いながら、俺の頭をそっと撫でた。
体中がゾクゾクするし、恥ずかしくてたまらない。
じれったく入り口辺りをさ迷わせて、美和が俺の反応をいちいち見てきて。
やめて欲しいと目で訴えるのが通じたのか、やっと俺から少し体を離し、後輩へと向き合う美和を確認出来た。
「…わかってくれた? ものすごく俺の好きな人なんだ。もっと証明してあげてもいいんだけど。
これ以上は、見せられないかな。
俺だけものにしたい…」
気持ち悪…。
やめろよ、エセ優等生。
そう思うのに、なんか.…ちょっと嬉しいし。
妙にドキドキして体がますます熱くなった。
むかつくけど。
後輩はわかったのか、美和がなにか話すと、やっと部屋を出て行ってくれていた。
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